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「ウッドショックは落ち着いた」という認識は、もはや過去のものです。2025年に入り、住宅業界は再び激しい価格上昇の波に直面しています 。
主要建材メーカー各社が、原材料費や物流コストの高騰を背景に、相次いで価格改定を発表。
「売上は立っているのに利益が残らない」という事態を防ぐためには、従来のコスト削減とは異なる、新しいアプローチが必要です。
本記事では、最新の市場動向を整理し、この局面で工務店が利益を死守するための「成長型コストダウン」の考え方を解説します。
2025年は春だけでなく、シーズンを通じた断続的な価格改定がトレンドとなっています。特定の部材だけでなく、構造躯体から内装、設備に至るまで、住宅全体に関わる主要メーカーが動いているのが特徴です。
無垢材フローリングや室内ドアなどで知られるウッドワンは、木材価格の変動や為替、物流費の影響を受け、価格改定の方針を打ち出しました。 2025年9月以降の発注分については対象部材は一律5%の値上げとなっております。詳細はこちらから。
フローリングや室内ドア、システムキッチンなどを扱う永大産業も、価格改定に踏み切りました。
床材、室内階段、室内ドア、収納などの製品を中心に2026年1月発注分以降から5%の価格改定が行われる予定です。詳細はこちらから。
業界最大手のLIXILも、持続的なコスト上昇への対応として価格是正の方針を示しています 。 サッシ、ドア、エクステリア、水回り設備と多くの品目で価格改定が発表され、2026年4月以降発注分から平均3~15%程度の値上げとなる見込みです。詳しくはこちらから。
これまでのコストダウンといえば、商社や販売店に「もっと安くならないか」と相見積もりを取るのが一般的でした。 しかし、現在の大手メーカーによる値上げは、世界的な原材料高とエネルギーコストの高騰が背景にあります。メーカーや商社も利益確保に必死であり、単なる「お願い営業」で価格が下がるフェーズではなくなっています 。 売り手側(メーカー・商社)も「現状維持」の姿勢を貫く傾向が強まっており、従来の交渉術は通用しにくくなっています 。
「他社も上がっているから仕方ない」と、値上げ分をそのまま見積もりに反映させていませんか? お客様の予算感が上がらない中で原価だけが上がれば、契約は取れても粗利が確保できない「利益なき繁忙」に陥ります。住宅着工棟数が減少傾向にある中、この状態を続けることは経営体力そのものを奪うことになります 。
外部環境(メーカーの値上げ)を変えることはできません。変えられるのは自社の「原価構造」と「調達戦略」だけです。 利益(粗利30%以上)を死守するためには、以下の3つのステップで原価を見直すことが重要です 。
長年の付き合いがある商流が、必ずしも現在の「最適価格」とは限りません。 まずは、自社の現在の仕入れ単価や掛け率が、市場の「限界価格(最安値圏)」と比較してどの位置にあるのかを把握することから始まります 。 「うちは安く仕入れているはずだ」という思い込みを捨て、客観的なデータに基づいて現状を診断することが、コストダウンの第一歩です 。
次に、モノ(材料費)のアプローチです 。 特定の商材に発注を集中させることでボリュームディスカウントを狙う、あるいは標準仕様を明確にして使用部材を絞り込むなど、購買力を高める工夫が必要です 。 場合によっては、価格改定の幅が大きい部材を見直し、品質とコストのバランスが取れた代替案を検討する柔軟性も求められます。
資材単価が下がらない局面では、工事(コト)の効率化がカギを握ります 。
仕入れ先の変更や仕様の見直しは、社内の抵抗や既存取引先との摩擦を生む可能性があります。そのため、現場任せにしていても決して進みません。 成果を出している工務店では、例外なく経営者(または決裁権を持つ責任者)が自らプロジェクトに入り込み、最終的な意思決定を行っています 。
コスト削減を「苦しいから削る」という後ろ向きな理由で行うと、組織は疲弊します。 そうではなく、「浮いた利益で新商品を開発する」「社員に還元する」「ブランド力を高める」といった企業の成長(グロース)のためにコストダウンを行うのだ、という目的を明確にしましょう 。 この意識転換こそが、全社一丸となって利益体質を作る原動力となります 。
2025年の資材高騰は、一過性のものではなく、構造的な変化です。 「いつか価格が下がるだろう」と待つのではなく、「原価は上がるもの」という前提に立ち、それでも利益が出る筋肉質な経営体質を今すぐ構築する必要があります。
まずは自社の原価が適正範囲にあるのか、市場価格と乖離していないか、フラットな目線で現状を診断することから始めてみてはいかがでしょうか 。
