公開日:2024.04.30 更新日:2024.07.24

【コラム】住宅業界の採用動向とポテンシャル採用に取り組むための3つこと

住宅業界において企業が抱える課題は様々ですが、コロナ禍以降、日々コンサルティングをしていて感じる三大経営課題は、集客減少、採用育成、コストダウン(利益向上)です。但し、この中でコストダウンについてはほぼすべての企業が経営課題に感じているのに対して、集客減少と採用育成は少し課題の感じ方に差異があります。特に売上5億円(棟数換算で約20棟)以下の工務店ほど集客減少を経営課題に感じ、売上10億円(棟数換算で約40棟)以上の工務店ほど採用育成に経営課題を感じています。

なぜこのような感じ方に違いがあるのでしょうか?その背景にあるのは単なる売上の規模感だけではありません。業績アップに重要な点は“今”を見るのではなく“未来”を見据えて“今”から準備を行っていくことです。今回は住宅業界の採用動向とポテンシャル採用に取り組むための3つのことについてお伝えさせていただきます。

集客減少の経営課題を解決する方法と間違った認識

まず経営課題の感じ方の違いについて解説します。その前に当然ながら売上10億円以上の工務店でも集客減少に悩まれています。しかしその悩みの質は異なります。この規模感の企業になると、集客が減っていることに対する課題ではなく集客が足らないことに対する課題です。足らないとは事業計画を立てたうえで現状のままでは足らないというのと、営業マン1人当たりに対する配客数が足らないということです。ここに売上の規模は関係ありません。具体的に課題を感じているのか?それともただ漠然と課題というより不安を感じているのか?の違いです。

そして何のために集客を行うかについてですが、目的は契約(売上)です。実は契約が取れない、売上が上がらない一番の原因は集客減少ではなく(営業)人員減少です。「集客が昨対比30%減少したから契約棟数が減った…」よりも「営業人員が昨対比30%減少したから契約棟数が減った…」の方が圧倒的に多いのです。営業人員が減れば当然集客は意図的に減ります。よって集客減少の経営課題を解決するには採用育成が重要です。結論、“今”は採用育成の課題を感じていないだけ。“今”は壁にぶち当たっていないだけなのです。

離職率を過度に気にする必要はないと言い切れる理由

しかし採用育成というと、先日も静岡市の食品メーカー「いなば食品」による社宅の老朽化が原因で一般職採用の90%が入社を辞退した報道や、ある退職代行業者が4月15日までに対応した678件の依頼のうち、4月に入社したばかりの新入社員が110人を占めていたなどネガティブな報道を目にします。勿論、両方事実ですが、1つの事象をどう捉えるかが大切です。こうした報道をネガティブに捉える人ほど離職率を気にしています。離職率とは、一定期間に組織を離職した労働者の割合です。計算式は「離職率=(一定期間内の離職者数)÷(期初または前期末の常用従業員数)×100」です。厚生労働省の調査では、2020年3月に大学を卒業して入社した新入社員のうち、就職後3年以内に離職した人の割合は32.3%。2年以内の離職率は24.5%。1年以内の離職率は12%でした。これは新入社員に限った統計データではありますが、言えることは離職率を気にしたところで一定数は離職するということです。

だからこそ気にすべきは離職率ではありません。特に住宅業界は市場が縮小していますので量にこだわった採用もさることながら、質の担保の優先順位が高くなっています。コストダウン(利益向上)にも関わりますが、生産性を高めながら成長していくのであれば、辞めない人を取るのではなく、辞めさせないようにしなければならないのです。

自社がポテンシャル採用を実現するために行うべきこと

中小企業においては会社にぶら下がる辞めない人を採用するより、辞めるかもしれないけど優秀な人を採用し、場合によってはフレキシブルなジョブチェンジや、その人のために社長直轄で新しい部署をつくるなど辞めさせないようにしなければならないのです。辞めさせないためには給与面とヤリガイの両方のバランスです。あとは会社としても成長していくべきです。このことが時代と共に変化している点です。育成に課題を感じられているとしたら、採用の失敗は育成では取り返せません。それだけ採用、特にポテンシャル(可能性の高い人材)採用が重要であるということをご理解いただけたかと思います。

ポテンシャルが高い良い人材を採用するには、一緒に働きたい人物像と反対に一緒には働きたくない人物像を採用段階で明確に発信していくことが大事です。そして、自分たちよりも優秀な人を採用する意識。あとは求職者に対する惹きつけが最も重要で、惹きつけとは言い換えれば憧れですので、社長自らが採用の最前線に立つことも必要ですし、エース社員を出すことも必要です。採用は採用メンバーの選定が肝で、採用する側も実は採用される側に選定されています。採用とは“今”ではなく“未来”の自分たちを助ける大切な仕事です。

今回のコラムのまとめ

  • 採用育成に経営課題を感じていないのは“今”であり“未来”を見据えた準備が“今”必要
  • 採用においては時代の変化とともに量から質の担保の優先順位が高くなっている
  • 自社が質の高い採用を行っていくためには離職率を過度に気にする必要はない
  • 辞めない人ではなく辞めさせないために中小企業でもポテンシャル採用に挑戦すべき
  • 採用の失敗は育成では取り返せないため採用メンバーの選定が肝になる
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