この記事の射程:本州の住宅会社経営者から見ると、北海道は「特殊な遠い市場」に映りやすい。だが、人口減少局面に入った全国市場の「先行モデル」として読むと、北海道で起きていることはそのまま今後5〜10年の地方都市で起きる。本稿では、地理的要因・人口動態・着工構造(持家/分譲/貸家)・商圏特性・主要プレイヤー(一条工務店の動向、業界再編・倒産動向、急成長ローカルビルダーを含む)を順に解きほぐし、最後に**「県内TOPビルダーになるための具体戦略(出店・採用・商品・財務)」**を実装可能な行動レベルまで提言する。データは公的統計(住民基本台帳・住宅着工統計・賃金構造基本統計調査)と、当社(ピュアグロース)が独自に整備する住宅会社データベースに基づく。
目次
まず、北海道が全国47都道府県のなかでどこに位置するかを5つの軸で整理する。
| 指標 | 北海道 | 全国順位 | 全国平均との比較 |
|---|---|---|---|
| 人口 | 約500万人(2025年) | 8位 | 約234万人 / 県(北海道は2.1倍) |
| 世帯数 | 約247万世帯(2025年) | 8位 | 約120万世帯 / 県(北海道は2.0倍) |
| 平均年収 | 約445万円 | 33位 | 全国平均より約15万円下 |
| 新設住宅着工戸数 | 約2.9万戸(2024年) | 5位前後 | 全国総数の約3.7% |
| 持家比率(着工構成) | 約40% | 高位グループ | 全国平均(約27%)より10pt以上高 |
この5軸を一望すると、北海道の市場特性が立体的に浮かび上がる。人口・世帯規模では全国上位8位の大市場でありながら、所得水準では下位3分の1に沈む。それでも着工戸数は全国5位前後を維持し、持家比率の高さが市場の重心を支えている──これが北海道の構造的な与件である。
つまり、北海道は「規模はあるが所得は低く、それでも持家需要が分厚い市場」と要約できる。本州の都市部の感覚で「平均年収が低い=単価勝負はできない」と判断するのは早計で、土地代・物価が本州都市部より大幅に低いため、可処分所得ベースで見た住宅取得力は実際の年収順位ほど低くない。札幌の土地代は東京の約10分の1、家賃も半分以下だ。この実質購買力の差が、北海道の持家比率の高さの背景にある。
北海道の住宅市場は、地理的要因を抜きに語れない。本州とは異なる5つの物理的条件が、住宅会社の経営戦略を根底から規定している。
第1の要因:圧倒的な広さと低い人口密度。北海道の面積は83,450km²で全国の約22%を占める。これは東北6県の合計や、九州+中国地方の合計よりも広い。一方で人口密度は約60人/km²と全国最下位で、東京(約6,400人/km²)の100分の1にも満たない。住宅会社にとってこれは「1社で全道をカバーすることは物理的に不可能」という絶対条件を意味する。
第2の要因:寒冷地気候と積雪量の多さ。年間最低気温は内陸部で-30℃を下回り、積雪量は世界の都市別ランキングでも上位常連。これが住宅の高断熱・高気密化を必須化し、本州の建材・工法・設備をそのまま持ち込めない参入障壁となっている。寒冷地仕様の標準化が「全棟断熱等級6以上」という業界水準を作り、結果として技術力のないビルダーが淘汰される構造が生まれた。
第3の要因:4ブロックに完全分断された地形。中央に位置する大雪山系・日高山脈などの山岳地帯が道内を物理的に分断し、道央(札幌圏)・道南(函館圏)・道東(帯広・釧路・北見圏)・道北(旭川圏)の4ブロックがそれぞれ独立した経済圏を形成している。札幌から旭川まで高速道路で約2時間、釧路までは下道で約6時間、稚内までは約7時間。商圏は物理的に切れている。
第4の要因:太平洋側と日本海側の気候差。同じ北海道でも、日本海側(札幌・旭川など)は積雪量が多く、太平洋側西部(函館・苫小牧など)は比較的温暖で積雪が少ない。オホーツク海側(北見・網走など)は日照時間が長く降水量が少ない。これにより、ブロックごとに最適な住宅仕様が微妙に異なり、「寒冷地仕様」を一括りにできない。
第5の要因:道外大手の参入コスト。本州の住宅会社が北海道に展開する際、寒冷地仕様の商品開発・建材調達・施工協力会社の確保・展示場の運営すべてに多大な初期投資が必要となる。これが地場ビルダーにとっての参入障壁として機能し続け、地場が一定のシェアを死守できる構造を作っている。
これら5つの地理的要因が複合した結果、北海道は「広いが、ブロック単位でしか戦えない。寒いが、それが地場の参入障壁にもなっている」という、本州とは根本的に異なる市場構造を持つに至った。
北海道の総人口は約500万人規模で、2020年から2025年にかけて顕著な減少が続いている。住民基本台帳ベースで2025年1月1日時点の総人口は5,044,825人、5年前の522.5万人から約18万人減った計算になる。減少率にして約3.5%、これは秋田・青森・岩手と並ぶ全国上位の減少ペースである。さらに国立社会保障・人口問題研究所の最新推計では、2050年までに約27%減少して382万人台まで縮むとされており、いまの北海道は「縮む未来」がはっきり数字で見えている市場だ。
ただし、住宅会社にとって本当に見るべき指標は人口ではなく世帯数である。世帯数は約247万世帯(2025年)で、人口減少局面でも単独世帯化の進行により減少ペースは人口より緩やかだ。一次取得層となる20〜39歳の若年層は道内で約46万人、総人口の9.2%にとどまり、全国平均の10.3%を1ポイント以上下回る。つまり「市場のパイが縮んでいるうえに、新築需要の主役がさらに薄い」というのが北海道の与件である。
そして人口動態のもう一つの本質は、減っているのは道内全体ではなく、札幌以外ということだ。札幌市単体の人口は約195万人、道内人口に占めるシェアは約39%で、20年前の30%前半から一貫して上昇している。札幌中央区にいたっては2050年まで人口増加が見込まれており、道内のあらゆる場所から札幌へ、札幌のなかでも中央区方向へ、人と世帯が吸い寄せられている構造が止まらない。
47都道府県シリーズを通じて定点観測する重要指標として、各県における一条工務店の動向を追っていく。同社は全国の住宅市場でランキング上位を取り続けており、その出店戦略・拠点規模・販売棟数の推移を見ることで、各県の市場ポテンシャルが立体的に把握できるためである。
北海道における一条工務店は、2024年時点で年間販売棟数約880棟、地場のロゴスホールディングス(約850棟)と並ぶ道内トップグループに位置する。 2014年時点では年間販売棟数315棟・道内4位だったため、10年で約2.8倍の規模に拡大し、ランキングも1位グループまで駆け上がった計算だ。これは北海道の住宅市場で起きた最大級の構造変化のひとつである。
その背景にあるのが、徹底した出店密度と展示場ごとの営業人員の厚みだ。当社が把握している範囲では、一条工務店は北海道内に約30の展示場を展開している(札幌圏で約15、旭川圏で2〜3、函館圏で2、釧路・帯広・苫小牧・室蘭・小樽・千歳・滝川・名寄・中標津・北見など各ブロック中核都市に1〜2ずつ)。1展示場あたり営業人員は推定4〜10名で、道内全体では推定150〜200名規模の営業組織を保有している。これは北海道の地場大手ビルダーの営業人数を上回る規模であり、「面的な出店密度×拠点ごとの営業数の厚み」を組み合わせて、商圏ごとに来場機会を圧倒的に独占する戦い方を確立している。
注目すべきは、寒冷地でも全国共通仕様(i-smart・グランセゾン等)で押し切っている点だ。北海道は本来、地域専用の高断熱仕様が必要とされてきた市場だが、一条工務店は標準仕様の断熱性能(UA値0.25前後)が既に道内でも通用するレベルに達しており、商品ローカライズのコストを最小化したまま規模を取れている。これが他県でも繰り返される一条のパターン──「全国一律商品×地域別の徹底出店」──の典型的な成功事例である。
地場ビルダーにとって、一条工務店の出店密度の高い商圏では「来場機会の獲得コスト」が構造的に上がっている。札幌圏での集客競争はその典型で、SNS集客・体感型イベント・差別化商品といった「来場前の指名買い形成」の精度がそのまま受注数に直結するフェーズに入っている。
【考察】縮む市場でも、住宅会社の経営は伸ばせる
世帯減少局面で住宅会社が取るべき戦略は、シェア奪取とLTV最大化の二択しかない。一条工務店が10年で2.8倍に伸びた事実は、「縮む市場でもシェア奪取側に立てば伸びる」ことの証明だ。新築一辺倒のビジネスモデルでは事業継続が難しくなる地場ビルダーにとっては、リフォーム・リノベ・不動産仲介・OB資産活用までを束ねる「世帯あたりLTV最大化型」の経営が、もうひとつの生存戦略になる。
道内の新設住宅着工戸数は3年連続で3万戸を割り込んだ。これは1980年代以降では極めて稀な水準で、ピーク時の半分以下に縮んでいる。利用関係別の構成は全国とは大きく異なり、ここを誤読すると戦略を誤る。
直近の道内着工は、概ね持家4割・貸家4割・分譲2割前後の構成比で推移している。全国平均(持家27%・貸家43%・分譲29%)と比べると、北海道は持家比率が10ポイント以上高く、分譲比率は10ポイント低い。「持家市場の重心が大きい県」というのが構造的特徴であり、これは寒冷地仕様への要求の高さ、土地の取得しやすさ、都市と地方の所得格差が小さいといった複合要因による。
そして札幌市の着工動向は、道全体とまた別の顔を持つ。2024年の札幌市内新設住宅着工戸数は約1.5万戸で、過去10年で最少を記録した。注文住宅と分譲住宅がともに低迷し、貸家がそれを部分的に下支えする形だ。さらに分譲マンション着工は前年比約58%減で900戸を割り込み、統計が遡れる1988年以降で初めて1,000戸を下回った。マンション適地不足と建設コスト高騰が複合した結果である。
つまり、いま北海道で起きているのは「戸建注文の地盤沈下と、貸家・既存住宅活用へのシフト」だ。住宅会社の経営にとって、この構成比変化は着工総数の減少よりも遥かに重い意味を持つ。
注文・分譲住宅市場が縮小するなか、貸家市場は道内住宅市場の約4割を占める重要セグメントとして位置づけが高まっている。その構造を整理する。
全国規模で進む貸家市場の寡占化──47都道府県共通の構造変化
北海道を含む47都道府県すべてで共通して進んでいる構造変化が、貸家市場の急速な寡占化である。住宅市場全体の縮小局面のなかで、土地オーナーへの提案力・施工網・賃貸管理サービスの三位一体を持つ大手プレイヤーへの集中が加速し、中小ビルダーの独立した貸家事業からの撤退・統廃合がここ数年で顕著になっている。
このトレンドを動かしている主役は、大きく3グループに分かれる。
第1グループ|貸家専業大手(大東建託・東建コーポレーション・レオパレス21等) 土地オーナーへの飛び込み営業力・直販体制・自社管理網を最大の武器とする。大東建託は専属の賃貸住宅営業マンを3,000名超抱え、再受注(リピート)比率が7割に達するなど、「土地オーナーとの長期リレーション」自体が経営資産になっている。一方で、この10年で全国的に着工棟数を絞り、量から質へのシフトが進んでいる。北海道においても、大東建託は2014年の道内ランキング上位常連から2024年には上位10社圏外まで順位を落としており、専業大手の戦略的な絞り込みが各県で同時並行的に起きていることがわかる。
第2グループ|大手ハウスメーカー(積水ハウス・大和ハウス・旭化成ホームズ・パナソニックホームズ等) 注文住宅で蓄積したブランド力と、ZEH対応・3〜4階建中高層・賃貸併用住宅といった高付加価値商品で、土地オーナーの相続対策・資産活用ニーズを取り込む。積水ハウス(シャーメゾン)はホテルライク仕様を全棟の7割超で標準化、1棟あたり平均床面積も大手最大級の規模を維持しており、**「高単価×大型化」**で市場縮小を吸収する戦略を取っている。旭化成ホームズ(ヘーベルメゾン)は賃貸併用住宅シェアの高さが特徴で、住宅取得層と土地オーナー層の両方を取り込む構造を作っている。北海道では札幌圏を中心に、これら大手ハウスメーカー系の貸家ブランドが地場の上位を切り崩しに来ている。
第3グループ|飯田グループホールディングス・地場ビルダーの貸家参入 ここ数年で目立っているのが、飯田グループ(一建設・アーネストワン・東栄住宅等)の貸家領域への参入だ。戸建分譲で築いた土地仕入れ力を活かし、戸建賃貸・小規模アパートでオーナー提案を本格化している。さらに、注文住宅や分譲を主業としてきた地場ビルダーが貸家事業を立ち上げる動きも全国的に広がっている。新築需要の縮小を補完するため、土地オーナーへの戸建賃貸提案・小規模アパート提案を組み合わせる事例が増えている。ただし、この第3グループは経営基盤が相対的に脆弱で、市場縮小局面では統廃合・撤退の波に最も曝されやすい層でもある。
北海道の貸家市場における3グループの勢力図
北海道の貸家市場では、寒冷地仕様の参入障壁が地場プレイヤーの存続条件となってきた歴史がある。冬期の暖房負荷を踏まえた設計が必須で、本州の工法をそのまま持ち込めない構造が、地場の地縁ネットワークと結びついて市場の地場割合を保ってきた。しかし、足元では札幌圏を中心に、第2グループの大手ハウスメーカー系(積水ハウス・大和ハウス等)が寒冷地仕様への商品ローカライズを進め、シェアを拡大している。第1グループの貸家専業大手は道内拠点の絞り込みフェーズに入り、第3グループの飯田グループは札幌圏での戸建分譲シェアを軸に貸家領域への滲み出しを始めている。この3グループの勢力交代が、今後の北海道貸家市場の方向性を決める。
寡占化のなかで上位ビルダーのシェアは確実に上がっている。47都道府県のいずれにおいても、直近2〜3年で道内・県内の上位5社シェアは押し上がる方向にあり、特に札幌圏ではその傾向が顕著だ。地場の中堅層(年間貸家供給20〜50棟級)が事業継続を判断するフェーズに入っており、撤退・統合・大手系列入りの選択を迫られる経営者が増えている。
貸家市場の需給バランスにおいては、札幌圏の需要は引き続き堅調である。2024年の札幌市内新設着工で貸家が注文・分譲の落ち込みを部分的に下支えしたことが、その需要強さを示している。建設コスト高騰により注文住宅・分譲マンションの取得を諦めた層が、賃貸住宅市場に流れ込んでいる構図だ。一方、道東・道北の地方都市では人口減少を反映して空室率の上昇が目立ち始めており、新規供給の採算性が悪化している。同じ北海道でも、札幌圏と地方圏で貸家事業の経営条件は逆方向に動いている。
【補足考察】貸家市場の参入余地は札幌圏に集中、しかし寡占化は不可逆
北海道の貸家市場で住宅会社が新規シェアを取りに行くなら、戦場は実質的に札幌圏に絞られる。注文住宅専業のビルダーが貸家領域に踏み出す場合は、「土地オーナーリレーション」「賃貸経営アドバイザリー」「相続対策提案」の3点セットが揃った提案体制が必須で、建てて終わりのビジネスモデルでは大手専業に勝てない。地場ビルダーが貸家事業を立ち上げる際は、税理士・銀行・不動産仲介とのパートナーシップ設計から組み立てるのが定石になる。ただし留意すべきは、寡占化の方向性は不可逆であるということだ。中堅・中小が単独で生き残るには、特定エリア・特定ニッチ(戸建賃貸・賃貸併用・サービス付き高齢者住宅等)への絞り込みが必須になる。
【考察】着工総数より「自社のシェアと構成比の変化」を見る
着工が減ったから単純に売上が減るわけではない。むしろ「市場が縮む局面で、誰のシェアが落ちて、誰のシェアが伸びているか」のほうが経営インパクトが大きい。北海道の場合、一条工務店・ロゴスホールディングス・ジョンソンホームズといったシェアトップ層の地位は2014年から2024年で大きく入れ替わっている。価格競争で大手が引いた領域に、性能と出店密度を武器にした会社が滑り込んでいる構図だ。
北海道は地理的に巨大で、道内は大きく道央(札幌圏)・道南(函館圏)・道東(帯広・釧路・北見圏)・道北(旭川圏)の4ブロックに分かれる。実務的に言えば、北海道では「全道展開」が成立しにくい。札幌に展示場を構えても函館や帯広の客は来ない。逆に旭川の有力ビルダーが札幌で集客を狙っても、ブランドが浸透していない。物理距離だけでなく、地元紙・地元ラジオ・地元イベントといったメディア接触面も完全に分断されている。
道内人口の約7割が主要10都市に集中しており、住宅会社の商圏戦略はこの偏在を前提に組み立てる必要がある。以下、人口規模が大きく住宅市場としても重要な主要都市の特徴を整理する。
道内唯一の政令指定都市にして、海に面さない市町村としては日本最大の人口を持つ。中央区は2050年まで人口増加が見込まれる稀有な地域で、道内のあらゆる場所からの転入が続く。住宅市場としては道内着工の半数近くが札幌圏に集中し、地場ビルダーから道外大手まで全プレイヤーが激しく競合する北海道最大の戦場だ。一条工務店の道内30展示場のうち約15が札幌圏に集中し、土屋ホーム・ジョンソンホームズ・豊栄建設・武部建設といった地場有力ビルダーも本拠を構える。土地代の高騰、建設コスト上昇、マンション供給急減が複合して、注文住宅は過去10年で最少水準まで落ち込んでいる。
道北の中核市で、北東北3県(青森・秋田・盛岡)の県庁所在地より大きい。北海道第2の都市規模を持つが、札幌の6分の1の人口にとどまる。寒冷地仕様の中堅・地場工務店が集積し、地域ビルダー(ホーム創建・雅建築企画・藤井光雄工務店等)の独自ブランドが息づいている。一条工務店も旭川展示場・旭川南展示場の2拠点を運営し、道北全域をカバーする中核拠点として機能している。
中核市にして、道南の経済中心。観光経済への依存度が高く、人口減少が深刻(2050年までに16万人台まで縮小予測)。住宅市場としては縮小局面が続いているが、ブロック内での競合が札幌圏ほど激しくないため、地場ビルダーの利益率は札幌より高くなる傾向がある。一条工務店は函館展示場・函館東展示場の2拠点を運営。
工業都市で、新千歳空港を擁する千歳市と連動した産業集積を持つ。札幌圏の延長として住宅需要が安定的に推移し、貸家・分譲の比率が他のブロック中核市より高い。一条工務店は苫小牧展示場を運営。
十勝地方の中心都市。農業経済が堅調で、人口減少のペースが道内では最も緩やか(2050年までに15万人弱までしか減らない)。注文住宅市場としても道東で最も活発で、中堅・地場ビルダーが安定的に営業している。一条工務店は帯広展示場・帯広東展示場の2拠点を運営。
漁業・観光都市。1990年まで漁獲量日本一を13年連続で記録した港町だが、その後の急減で人口減少が深刻化(2050年に11万人台まで縮小予測)。住宅市場は新築単独での事業成立が難しくなりつつあり、リフォーム・既存住宅活用の比重が高まる典型的な地方衛星都市。一条工務店は釧路展示場・釧路昭和展示場の2拠点を運営している。
札幌のベッドタウン。札幌の通勤圏として住宅需要が支えられているが、若年層の札幌市内回帰の影響で世帯数の伸びは鈍化傾向。
オホーツク圏の拠点都市。広大な商圏(網走・遠軽含む)を1市でカバーする構造で、地場ビルダー(アートホーム・アーバンハウス等)が地域シェアを握る。一条工務店は北見展示場1拠点で道東北部全域をカバーする。
観光都市として知名度が高いが、人口減少が進行中。札幌圏の周縁として住宅需要が縮小しつつある。
新千歳空港・自衛隊基地を擁し、道内で数少ない人口微増都市。札幌圏の延長として住宅需要が継続的に存在し、地場ビルダー(アーキビジョン二十一等)が活発に展開する。
これら主要10都市で道内人口の約7割を占める。住宅会社の商圏戦略上、この主要10都市を3層に分けて攻め分けることが原則になる。
第1層は「札幌圏(札幌・江別・小樽・千歳・恵庭・北広島・石狩)」。ここは人口が転入超過で集積が続き、土地仕入れ競争・分譲競合・展示場集客のすべてが本州都市圏に近い競争原理で動く。年間着工の約半数がこの圏域で生まれる、北海道最大の戦場だ。
第2層は「ブロック中核市(旭川・函館・帯広・北見)」。人口は減少傾向だが、ブロック内ではほぼ唯一の住宅展示場集積地となり、地場ビルダーが地域シェアを取り切れる。札幌と異なり道外大手の競合密度が低いため、地場の利益率は札幌より高くなる傾向がある。
第3層は「地方衛星都市(苫小牧・釧路・小樽・室蘭・岩見沢)」。人口・着工ともに縮小局面にあり、新築単独では事業成立が難しい。OB顧客のリフォーム・リノベ、不動産仲介、貸家管理など、住生活総合サービスへの転換が事業継続の条件になる。
【考察】「主要10都市のシェア奪取」が北海道経営の根幹になる
道内人口の約7割が主要10都市に集中している事実は、住宅会社の経営戦略を大きく規定する。残り30%の地方を捨てるという意味ではなく、主要10都市のいずれかでブロック内No.1シェアを取れていない会社に、残りの地方を取りに行く資格はないということだ。札幌で勝てない会社が札幌郊外で勝つのは難しく、旭川で勝てない会社が道北の小都市で勝つのも難しい。「自社の本拠地都市で何位なのか」を冷徹に把握し、そこから商圏拡大シナリオを設計するのが王道になる。
ここからは、当社が独自に整備する住宅会社データベースから見えてくる、北海道の住宅会社の構造を整理する。プレイヤー数・規模分布・業態構成のすべてが、本州とは異なる風景を見せる。
道内には木造建築工事を主業とする住宅会社が約2,400社存在する。全国の社数比でいえば北海道のシェアは約5%で、人口シェア(約4%)に対してわずかに過剰供給気味、という捉え方ができる。
社数を従業員規模で切ると分布は極端に偏っており、従業員10名未満の零細層が約7割、従業員50名以上の中堅以上が5%未満となる。この社数構造は本州のどの県とも近い形だが、北海道で特徴的なのは中堅以上の層が「高断熱・高気密の技術力で淘汰を勝ち抜いてきた会社」に絞られている点だ。寒冷地仕様という参入障壁が、技術力のないビルダーを早期に振るい落としてきた歴史がある。
業態別に見ていこう。
注文住宅領域では、地場の有力ビルダーと道外大手が競合する。地場側ではジョンソンホームズ、ロゴスホールディングス、土屋ホーム、豊栄建設といった年間100〜800棟級の会社が札幌圏を中心に強い。道外大手では一条工務店、積水ハウス、ミサワホーム、アイ工務店が道内に展示場を構えてシェアを取りにきている。坪単価帯は地場ビルダーが60〜80万円、道外大手が70〜100万円というレンジに収まる。
ただし、足元の道央市場は業界再編の局面に入っている。2014年時点で道内ランキング上位常連だった札証物産の倒産は、地場ビルダー全体に対する金融機関の与信姿勢を一段引き締めるトリガーとなり、現在は道内地場企業に対する事業性評価が予断を許さないフェーズに入っている。全国的に見ても建設業の倒産件数は2024年に1,890件超と過去10年で最多を記録しており、この大波が北海道にもじわじわと押し寄せている格好だ。
一方で、勢いを増している地場プレイヤーも明確に存在する。旭川に本社を構えるカワムラホームは札幌圏での出店を加速し、道内ランキング上位に急伸している。同社は道北発の地場ビルダーが道央へ商圏を拡大して結果を出している事例として、業界内で注目されている。札幌圏の有力ビルダーのひとつジョンソンホームズも継続的に道内上位を維持し、ロゴスホールディングス・土屋ホームと並ぶ札幌圏の中核として勢力を保っている。さらに2024年〜2025年にかけてはアーキテックプランニング社がセキスイハイム(積水化学工業)の傘下に入るなど、地場の有力ビルダーが大手資本のもとで再編される動きも顕在化してきた。地場プレイヤーの地図は、ここ2〜3年で大きく書き換わりつつある。
分譲・建売領域は札幌圏に集中する。札幌市内の分譲は、地場の中堅と道外参入組が混在し、土地仕入れ力で勝負が決まる構造だ。マンション分譲は供給絶対数が前述の通り急減しており、ここの撤退・縮小は中長期で見ると大きな構造変化になる。
貸家・賃貸アパート領域は道内特有の事情がある。冬期の暖房負荷を踏まえた設計が必須で、本州の建設会社が安易に参入しても勝てない。地元ビルダーや地場ゼネコンが手堅くシェアを握っている領域だ。
そしてもうひとつ重要なのは、FC・VCで勢力を伸ばしている地場ビルダーの存在である。アイフルホーム、クレバリーホーム、レオハウスといった全国FCが地場の加盟企業を通じて道内に一定のシェアを持ち、特にミドル価格帯(坪単価55〜70万円)で地場の有力工務店と競合している。
道内ランキングは2014年と2024年の比較で大きな入れ替えが起きている。2014年の上位3社が積水化学工業・ミサワホーム・土屋ホームグループだったのに対し、2024年では一条工務店・ロゴスホールディングス・ジョンソンホームズへと顔ぶれが大きく変わった。10年でこれだけ上位が動くのは47都道府県でも珍しく、北海道市場の流動性の高さを示している。さらに、上記の札証物産の倒産・カワムラホームの台頭・アーキテックプランニングの大手傘下入りといった動きは、この10年単位の入れ替わりが今後さらに加速する局面に入っていることを示している。地場資本の再編・統合・大手資本の取り込みが同時並行で進む、そんな数年が続く可能性が高い。
【考察】北海道で勝ち残る会社の共通項は「断熱性能 × 商品設計 × 商圏戦略」の三位一体
数字で見える勝ち組ビルダーには、共通項が3つある。第1にUA値0.4以下の断熱性能を全棟標準化していること、第2に価格帯×商品ラインナップを2〜3層に分けて顧客層を取り切る商品戦略を持っていること、第3に特定ブロック内で複数展示場を持ち、想起率を独占している商圏支配力を持っていることだ。北海道では、このうち1つでも欠けると100棟超の壁は突破できない。
北海道の経営現場で、いま起きている論点を4つに絞って整理する。
第1の論点は、断熱性能の「軍拡競争」である。北海道は元々断熱性能で全国をリードしてきたが、近年はUA値0.3以下、HEAT20 G2以上を「最低ライン」とする会社が増え、競合各社が等級7(UA値0.26以下)まで踏み込み始めた。性能だけで勝負する時代から、性能を前提に「どう商品化し、どう伝えるか」のフェーズに完全に移った。性能スペック競争に飲まれて利益率を落とす会社と、性能を商品ストーリーに変換して付加価値を取れる会社との分岐が、ここ2〜3年で急速に進んでいる。
第2の論点は、建材価格高騰(ナフサショック)の影響度だ。樹脂建材を多用する寒冷地仕様の住宅は、本州よりも建材価格高騰の打撃を受けやすい。サッシ・断熱材・配管樹脂・外装樹脂部材まで、いずれも値上げ圧力にさらされている。北海道の住宅会社は、全国平均よりも1ランク厳しい原価管理を求められている、というのが直近の現場感覚だ。
第3の論点は、SNS集客と来場予約ファーストの浸透度である。札幌圏ではすでにInstagramを起点にした来場予約導線が定着しているが、道東・道北のブロックではまだ折込チラシ・新聞広告のウェイトが高い。本州の都市圏で起きた「集客チャネルのデジタルシフト」が、北海道では札幌から地方ブロックへタイムラグを伴いながら波及している局面だ。先行する札幌の事例を、道内他ブロックへどう移植するかが各社の差別化要因になる。
第4の論点は、採用市場の特殊性である。札幌一極集中は人材市場でも顕著で、地場ビルダーの若手獲得競争は札幌圏で激化している。道東・道北のビルダーは「札幌に流出させない仕組み」「地元出身者を呼び戻す仕組み」を別建てで設計する必要があり、本州の地方都市と同じ採用戦略では通用しない。
なお、当社では北海道内の有力ビルダー数社に対してマーケティング・組織人事領域での経営支援を継続している。具体名は支援先のご了承をいただいた範囲でのみ言及することとしているが、道央・道東それぞれで年間100棟超を扱う複数のクライアントとの伴走を通じて、これらの論点は単なる業界トレンドではなく経営の意思決定スピードを左右する実務課題として日々向き合っている。
【考察】北海道特有の競争軸は「性能を当たり前にしたうえで、何で差別化するか」
本州では「断熱性能の高さ」自体が差別化要因になり得るが、北海道ではそれは入場料に過ぎない。性能を前提にしたうえで、デザイン・商品ラインナップ・アフター・コミュニティ・ブランドストーリーといった「性能の上に乗る価値」をどう設計するかが、収益力を分けている。
ここまでの分析を踏まえ、北海道の住宅会社経営者が県内TOPビルダー(年間着工500棟超、ブロック別シェア5%以上)を本気で目指すための具体策を、4つの軸で提言する。抽象論ではなく、実装可能な行動レベルまで落とし込んでいく。
参考になるのが、北海道帯広発のロゴスホールディングスの軌跡だ。創業から7年で年間着工100棟を突破し、その後は北海道で15店舗超に拠点を拡大、グループ全体で年間1,000棟超に到達。2024年6月には東証グロース市場に上場した。グループ会社(豊栄建設・GALLERY HOUSE等)を子会社化するスキームで道外展開も進めており、「地場発のTOPビルダーが全国ブランドへ昇格する典型例」として業界の参照基準となっている。
ロゴスHDの軌跡から取り出せる成功要因は4つだ。第1に「DX起点の集客効率化」でアナログ集客から早期に脱却したこと、第2に「拠点数の段階的拡大」で道央以外のブロックにも面で展開したこと、第3に「子会社化M&A」で他県進出を加速したこと、第4に「東証上場」で資金調達と人材吸引力を一段引き上げたこと。これらは特殊な才能や運ではなく、意思決定として再現可能な経営アクションである。
県内TOPビルダーになるための出店戦略は、3段階で考える。
第1段階(年間着工100棟未満→200棟):本拠ブロックでの拠点集積 まず自社の本拠ブロック内で、展示場4〜6拠点・営業30〜50名規模の体制を作る。一条工務店が札幌圏に約15展示場を集積させていることが基準値で、地場ビルダーとしてはその3〜4割の密度を目標にする。札幌圏で勝負するなら、札幌中央区・札幌北区・札幌豊平区・札幌東区・江別・千歳など、商圏ごとに1拠点ずつ配置するのが標準形だ。1拠点あたり営業6〜8名・年間30棟前後の生産性を確保できれば、ブロック内で年間200棟が見えてくる。
第2段階(200棟→500棟):隣接ブロックへの飛び地展開 本拠ブロックでシェアを取り切ったら、隣接ブロック(道央なら道南・道北)に1〜2拠点ずつの飛び地展開を始める。注意点は2つ。第1に「まずブロック中核市(旭川・函館・帯広)の駅前・幹線沿い」に絞ること。中核市以外の中小都市から始めると採算が立たない。第2に「ブランド浸透のためのPR投資を本拠ブロックの2倍以上」確保すること。地縁のないブロックでは認知ゼロからの戦いになる。
第3段階(500棟→1,000棟超):M&A・FCによる全道カバー 500棟を超えてからの飛躍は、自社単独の出店では難しい。地場の中堅ビルダー(年間50〜100棟級)の子会社化、またはFC加盟による拠点増が現実的な選択肢になる。ロゴスHDが豊栄建設を子会社化したスキームがこのモデルで、買収後も既存ブランドを残したまま運営する方式が定石だ。
出店戦略の大原則は「順序」である。本拠ブロックでNo.1を取り切る前に他ブロックに手を出すと、ブランドも商品も間延びする。北海道で過去に経営破綻したビルダーの多くが、この順序を誤った企業だった。
500棟を超えるには年間着工1棟あたり営業0.6〜0.8人が必要で、500棟なら営業300〜400名規模になる。離職率を年20%と仮定すれば、年間採用は60〜80名規模が必要。100棟級のビルダーから500棟級になるためには、年間採用30〜50名を3〜5年継続できる採用力が前提条件となる。これを実現するための3層の採用設計が、北海道のTOPビルダーになる経営者には必須だ。
第1層|新卒採用:道内大学・専門学校との関係性を「定期接続」に 道内の住宅・建築系学科を持つ大学(北海道大学・北海学園大学・札幌大学・北海道科学大学等)と専門学校(北海道工業技術専門学校・北海道理容美容専門学校建築科等)に対して、就職課訪問を年4回以上、OB社員派遣を年2回以上を社長指示として固定化する。年間新卒10〜15名を継続的に獲得するには、これくらいの頻度が標準値になる。さらに、地方ブロック(旭川・帯広・函館等)の高校・専門学校との関係性も別建てで構築し、Uターン採用ルートを制度化する。
第2層|中途採用:BizReach・Wantedlyを使った「ダイレクトリクルーティング」 住宅業界の中途採用市場は、地場ビルダーにとって最大の武器になり得る。道外大手の経験者(積水ハウス・住友林業・一条工務店等)を年間5〜10名獲得できれば、営業生産性を一段引き上げられる。BizReachのスカウト送信を月100〜200通、面談月10件を経営管理の指標として設定する。経験者の年収はベース500〜700万円+歩合という相場になるため、ハイパフォーマー向けのインセンティブ制度もセットで設計する。
第3層|リファラル採用と業界横断採用:自社社員からの紹介と異業種人材 社員紹介制度(リファラル)を全社制度化し、紹介成功時の報奨金を30〜50万円に設定する。これは年間採用の20〜30%を占める安定供給ルートになる。さらに、異業種からの転職者(自動車ディーラー・保険営業・百貨店等)の積極採用も視野に入れる。住宅未経験でも顧客対応力のある人材を採用し、3ヶ月の集中研修プログラムで住宅営業に転換するパスを用意する。北海道のTOPビルダーの多くが、この異業種採用の比率を年々高めている。
採用は応募の量だけではなく、入社後の定着が経営インパクトを決める。離職率を業界平均の25〜30%から15%以下に下げられれば、採用コストは半減する。そのために必要な制度設計は3つだ。
第1に「働き方の改善」。完全週休2日制(土日休み・展示場は交代制)の導入、年間休日120日以上の確保、産休・育休の100%取得を、最低ラインとして整備する。これは20代〜30代の住宅営業職の応募を集めるための入場料になっている。
第2に「報酬制度の透明化」。営業の歩合給を「契約棟数×単価×歩合率」の単純な計算式で全社員に公開し、月次の営業ランキングを社内公表する。トップ営業が年収1,200〜1,500万円に届く仕組みを作れば、ハイパフォーマーが集まる。同時に、新人営業の最低保証年収(350〜400万円)を設定して、入社直後の不安を取り除く。
第3に「キャリアパスの明示」。営業→主任→マネージャー→支店長→事業部長→役員という昇格パスを、年次別の到達目安(3年で主任、6年でマネージャー、10年で支店長等)で明示する。さらに、設計職・施工管理職・経営企画職への横断異動も制度化し、住宅営業以外のキャリアも選べる組織にする。これがあると優秀人材の中長期定着率が大きく変わる。
最後に、出店と採用以外で県内TOPビルダーになるために不可欠な3要素を簡潔に整理する。
商品:3層ラインナップ(プレミアム・ミドル・規格)を整備し、年間着工の40%をミドル層、30%をプレミアム、30%を規格層に振り分けるのが標準形だ。性能はUA値0.4以下を全棟標準化、断熱等級6以上を最低ラインに据える。
ブランド:YouTube・Instagramの自社オウンドメディア化は必須インフラだ。年間動画投稿100本以上、Instagramフォロワー1万人以上を3年で達成する目標が現実的なライン。広告依存から脱却し、自社で集客できるブランド化が、出店密度競争を勝ち抜く前提条件となる。
財務:自己資本比率30%以上を維持しつつ、運転資金として年間着工の3ヶ月分相当を手元に確保する。500棟級では運転資金30〜50億円規模になるため、メインバンクとの長期関係構築と、必要に応じてはファンド資本の導入(ロゴスHDのエンデバー・ユナイテッド型スキーム)も視野に入れる。最終的に**東証上場(グロース市場)**を狙うなら、IPO 3年前から監査法人・主幹事証券との関係構築を始める必要がある。
【考察】北海道の住宅市場は「縮む市場で勝つ経営」の実験場である
全国の住宅会社は、5年から10年遅れで北海道と同じ局面を迎える。だからこそ、北海道で先行している経営判断(業態転換・ブロック深掘り・性能の上の価値創造・一条工務店の出店密度に対抗する集客設計・ロゴスHD型の段階的拡大とM&A)は、本州の地方都市の住宅会社にとっても貴重な参照材料になる。北海道は「縮む未来を先に体験している市場」であり、そこで勝ち残る会社の経営手法こそ、これからの日本の住宅業界のスタンダードになる。県内TOPビルダーを目指すか、特定エリア・特定ニッチに絞り込むか──この2択を冷徹に意思決定することが、2026年以降の経営者の最重要アジェンダになる。
北海道の住宅市場を、47都道府県のなかでの位置づけ・地理的要因・人口動態・着工構造(持家/分譲/貸家)・主要都市別商圏特性・主要プレイヤー(一条工務店の動向、倒産・急成長・大手傘下入りを含む業界再編動向)・現場論点の7層から読み解いてきた。要点を凝縮すれば、この市場は「規模はあるが所得は低く、それでも持家需要が分厚い。札幌一極集中が進み、4ブロック分断のなかで一条工務店の出店密度に対抗する地場の戦いが続き、業界再編が加速している市場」と整理できる。本州の住宅会社経営者にとっても、自社が5年後に直面する課題のプレビューとして読める内容になっているはずだ。
47都道府県シリーズの第1弾として、北海道を取り上げた。次回は青森県編として、津軽・南部・下北の3ブロック構造と、東北最北の住宅市場の独自性を分析する。
なお、本記事で参照した「北海道内の主要ビルダー約2,400社の規模分布・業態構成」は、当社が独自に整備する住宅会社データベース(PG戸籍謄本)に基づくものである。自社が立地する商圏の競合構造・シェア機会を定量的に分析したい経営者の方は、個別相談を承っている。
本稿で参照したデータは、国土交通省「住宅着工統計」、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」、および当社独自の住宅会社データベースに基づく。展示場数・営業人員数は当社推計値を含む。文中の業界動向に関する考察はすべて筆者個人の見解である。
筆者:宮内和也(ピュアグロース株式会社 代表取締役)