「衣・食・住」という言葉があります。生活をしていく基礎や暮らしを立てていくことを意味しますが、この本来の意味に加えてライフサイクルという視点においては、住宅業界よりも一歩進んでいるのは飲食業界で、二歩進んでいるのは衣料業界と捉えることもできます。また、住宅業界よりもライフサイクルが早いのが飲食業界で、飲食業界よりもライフサイクルが早いのが衣料業界という見方もできます。さらに詳しく見ていくと、衣料業界の中でも最もライフサイクルが早いのはアパレルです。そのあとにコスメやヘアー、アクセサリーと続いていきます。
住宅業界の今後のトレンドを予測するには、こうしたライフサイクルが早い業界の動向を注視していると見えてくるものがあります。住宅業界の中でトレンドが最もわかりやすいのは住宅商品です。以前は子育て4人家族だと35~40坪の広さの家が一般的でしたが、今は30坪前後まで小さくなっています。間取りに関しても、バルコニーより、パントリーやシューズクローク、ランドリールームといった要望が多くなっています。さらには子供部屋がない間取りというのも珍しくありません。このようにトレンドは変化しています。これからどのようなモデルハウスを建てたらいいのか?このセオリーもこれまでとは変化しています。今回は住宅商品のトレンドの変化を読み解いていきます。
衣料業界に話を戻します。アパレルには、カジュアルとエレガンスという二大トレンドがあり、それは6年ごとの周期で変化すると言われています。2002年から2007年の6年間はエレガンス。2008年から2013年はカジュアル。2014年から2019年はエレガンス。2020年から2025年はカジュアル。確かにこの直近6年間は、ビジネスマンのファッションがカジュアル化されました。セットアップに革靴が当たり前だったのが、ビジカジと呼ばれるジャケパンに革靴と変化し、今はジャケットのインナーはTシャツになり、スニーカーでリュックスタイルというのも変ではなくなった感があります。
この周期で捉えるなら、今年と来年はカジュアルトレンドの最終周期になり、再来年2026年からはエレガンスに変わります。つまり今は移行期にあるということです。移行期だからこそ様々な変化が現れます。これから新しいモデルハウスを建てるとなると、どんなに最短でも来年1月です。そうしたトレンドの変化を踏まえ今からモデルハウス計画を立てなければなりません。ビジネスマンのスタイルもカジュアルからエレガンスに変わるのです。
アパレルから家に置き換えて考えてみることにしましょう。その前に、商品には集客商品と収益商品の2系統あります。言葉のとおり、集客商品とは集めることに特化した商品で、小売業であれば集客商品はそれだけ売っていては利益が取れない目玉商品のことで、目玉商品で集めていかに収益商品である定番商品を買ってもらうかが利益に直結します。集客商品では利益が取れませんが集客は取れます。反対に収益商品は利益が取れますが集客は取れません。
特に工務店やビルダーからすると、カジュアルの周期においては集客商品と収益商品をそれほど意識する必要性はありませんでした。なぜなら収益商品が集客商品の要素も兼ねていたからです。しかし2026年からはエレガンスの周期に変わります。つまり、しっかりとした集客商品を作らないとこれまでのような収益商品では集客が難しくなります。
家も今はクセ(特徴)のないカジュアルな家が売れていますが、これからは少しクセのあるエレガンスな家が売れるようになるでしょう。 その兆候はすでに出始めており、 以前の集客からの売却目的の移動式展示場は「この(モデルハウスの)まま欲しい」と言われる収益商品で建てるのがセオリーでしたが、そうしたモデルハウスでは集客が伸び悩み始めています。このように収益商品としてのモデルハウスから、集客商品としてのモデルハウスを変えないといけないのです。
内装もくつろぎを感じさせるカジュアルから、非日常を感じさせるエレガンスへ変わるでしょう。 住宅営業マンも、白シャツにチノパンスタイルの全盛から、商品のトレンドの変化とともにスーツスタイルに戻るかも知れませんし、また昔流行った先が尖がった革靴が流行るかも知れません。さらに売れている営業マンは光沢のあるワイシャツにカフスとかを付けるかも知れません。そして今は性能訴求をした家でないとお客様の初期の選択肢にすら入らなくなっていますが、これからは性能の高い家だからこそのデザインが差別化となり集客要素になります。 まずはこれから建てるモデルハウスの商品戦略を変えていく必要性がありそうです。