47都道府県シリーズの第8弾の茨城県編、第9弾の栃木県編に続く第10弾は、群馬県を取り上げる。北関東3県シリーズの最終回。茨城県(279万人)・栃木県(186万人)と並ぶ約190万人規模の県でありながら、両県のいずれとも異なる構造を持つのが群馬県である。茨城県が「県北・県央・県南・県西・鹿行」の5商圏分散であり、栃木県が「宇都宮一極集中」であったのに対し、群馬県は高崎(36.5万人)と前橋(32.8万人)の「双子都市並立」、太田・伊勢崎の「SUBARU・スバル関連工場集積による製造業城下町」、そして大泉町(外国人比率約20%)に象徴される「外国人住民集住エリア」という、北関東3県のなかで最も独自構造を持つ県である。本稿では、住宅会社経営者・工務店経営者・ハウスメーカー支社長・住宅業界投資家の意思決定に資するべく、住宅コンサルとしての視点から、人口動態・着工動向・商圏構造・主要プレイヤー布陣・現場論点・TOPビルダー戦略の6章構成で、群馬県の住宅市場と工務店経営の急所を立体的に解きほぐしていく。北関東3県の最終ピースとして、茨城・栃木と比較しながら読み解いていただきたい。
目次
まず、群馬県の住宅市場が全国のどこに位置するかを、5指標で確認する。
指標 群馬県の値 全国順位 総人口 約190万人(2025年4月時点) 19位 世帯数 約89.2万世帯(2025年4月時点) 19位 1世帯あたり人員 約2.13人 全国平均並み 新設住宅着工戸数(2024年度) 10,524戸(前年度比+5.9%) 中位 持家比率(2018年住宅・土地統計) 約71% 全国上位グループ
総人口・世帯数ともに全国19位前後で、北関東3県のなかでは栃木県(約186万人)に近く、茨城県(約279万人)よりは2/3程度の規模である。新設住宅着工戸数は2023年度の9,935戸から2024年度は10,524戸へと回復し、前年度比+5.9%で全国平均(+2.0%)を上回った。持家比率は約71%と全国上位グループに属し、戸建文化が極めて強い県である。世帯あたり人員も全国平均並みで、二世帯同居・近居志向が一定程度残る。
群馬県の住宅市場の特徴は、「人口規模は中位だが、戸建持家文化の強さでは全国上位」という構造にある。県土面積約6,362平方キロメートル(全国21位)に対して人口密度は約299人/km²で、北関東3県のなかでは茨城県(約450人/km²)より低く、栃木県(約290人/km²)と同水準である。山間部(北部の利根・吾妻地域)と平野部(南部の前橋・高崎・太田・伊勢崎・館林)の人口偏在が顕著で、平野部に約8割が集中している。
群馬県の住宅市場と工務店経営は、以下の5つの地理的条件によって規定されている。
第1条件:高崎・前橋の「双子都市」並立——直線距離わずか10kmで、人口36.5万人の高崎市と32.8万人の前橋市が並び立つ。これは全国でも稀な構造で、両市あわせて69万人超、県人口の約36%を占める。両市は「商業の街・高崎」と「行政の街・前橋」の機能分担関係にあり、住宅会社の出店戦略・展示場戦略はこの2大商圏をどう取りに行くかが最大論点となる。弊社も顧問先が高崎・前橋双方にあるが、商圏の特異性は幹部会議でも議題に上がる。
第2条件:県南東部の製造業集積(太田・伊勢崎・大泉)——SUBARU群馬製作所(本工場・矢島工場・大泉工場・矢島南工場)を中核に、関連サプライヤーが太田・伊勢崎・大泉に集積する。太田市は人口22.3万人、伊勢崎市は21.2万人で、両市あわせて約43万人、県人口の約23%。製造業就業者比率が極めて高く、安定的な持家需要を形成する一方、為替・自動車市況に左右されやすいという両刃の剣でもある。
第3条件:外国人住民の集住——大泉町に象徴される「日本のブラジル」現象——大泉町は人口約4.1万人のうち外国人が約9,090人(2025年6月末時点、約22%)。ブラジル人を中心に、ペルー人・ベトナム人・フィリピン人など多国籍が共生する。県全体でも外国人人口比率は東京都・愛知県に次ぐ全国3位で、住宅会社にとっては「外国人住民向け賃貸市場」という独自セグメントが存在する。
第4条件:首都圏との時間距離——「近いけど通わない」県——高崎駅から東京駅まで上越新幹線・北陸新幹線で約50分。関越自動車道で東京練馬ICまで約1時間半。物理的距離は茨城・栃木と同等以下だが、首都圏通勤者比率は両県より低く、県内雇用依存度が高い。これは群馬県の住宅需要が「首都圏スプロールではなく県内自立型」であることを意味する。
第5条件:県境エリアの取り合い——4方向の隣県との生活圏融合——太田・館林は栃木県(足利・佐野)と一体生活圏、邑楽郡は埼玉県北部(熊谷・行田)と隣接、沼田・みなかみは新潟県・福島県境。とくに館林・大泉・千代田・邑楽の県南東部は、栃木・埼玉の隣県資本住宅会社と直接競合する激戦区である。
これら5条件が、後述する商圏構造・プレイヤー布陣・現場論点・TOPビルダー戦略のすべてに影響している。
群馬県の総人口は、2025年4月時点で約190万人。2024年10月1日時点では188万9,425人で、前年同期比1万1,415人(0.60%)減である。2020年国勢調査以降、54か月連続で自然減が続いている。2035年には170万人台、2050年には150万人を下回る可能性が高い。
このスピード感は、北関東3県のなかでは茨城県(約279万人→2050年予測240万人前後)より速く、栃木県(約186万人→2050年予測160万人前後)と同水準である。住宅市場の前提として、「2030年代半ばに190万人を割る」「2050年には150万人台」という人口動態を、住宅会社経営者・工務店経営者は組み込んでおく必要がある。
群馬県の世帯数は2025年4月時点で約89.2万世帯。1世帯あたり人員は約2.13人で、全国平均(2.20人前後)と同水準である。世帯数は2025年前後でピークを迎え、以降は減少局面に入る。これは住宅着工市場の中期的な天井が見えてきたことを意味する。
ただし、群馬県の特徴は「単身世帯の増加スピードが大都市圏より緩やかで、二世帯・近居の志向がまだ残る」点にある。これはピュアグロース式・群馬県二世帯近居モデルとして、住宅会社が訴求できる商品設計の余地を生む。「親世帯のすぐ近くに子世帯が家を建てる」「土地は親が出し、建物は子が建てる」というパターンが、首都圏や大都市部以上に成立しやすい。
人口戦略会議が2024年に発表した「消滅可能性自治体」リストでは、群馬県内35市町村のうち約6割が該当する。とくに上野村・神流町・南牧村・嬬恋村などの山間部自治体は、20〜39歳女性人口の50年間減少率が極めて高い。一方、高崎市・前橋市・伊勢崎市は消滅可能性自治体から外れており、住宅会社の長期出店戦略における「持続可能商圏」と「縮退商圏」の二極化が明確である。
群馬県の住宅市場は、2030年代に「人口減少局面に本格突入」しつつ「世帯数ピークアウト」「単身世帯増加」が同時進行する10年を迎える。住宅会社経営者・工務店経営者にとって、これまでの「分譲地に大型注文住宅を建てて売る」というモデルだけでは中期的に持続困難である。平屋商品・コンパクト住宅・二世帯近居・賃貸併用住宅・収益不動産など、商品ポートフォリオの多角化が不可避となる。
群馬県の住宅市場で、注文住宅着工棟数において他社を寄せ付けない圧倒的な存在感を放つのが一条工務店群馬である。同社は伊勢崎に本部テクニカルセンターを置き、前橋・高崎・高崎南・伊勢崎・太田・太田東・館林・吉岡・ローズタウンの9営業所を展開、従業員数は関連会社含め195名(2025年5月時点)に達する。展示場は高崎・高崎南・前橋南・吉岡・伊勢崎・伊勢崎宮子町・太田・太田東・館林(アゼリアモール内)など県内主要都市を網羅し、2025年8月には太田市にリアルサイズ展示場、伊勢崎市宮子町にも新展示場をオープン、2026年1月には太田市新田木崎にもリアルサイズ展示場が開業した。直営店とは一線を画するグループカンパニー制度として展開をしているが、独自での採用戦略などを見ていても直営店に勝るとも劣らない経営をしているカタチが見て取れる。むしろ採用サイトなどを見ていると独自性がプラスに寄与しているのではないかとも見える。
群馬県の注文住宅市場における一条工務店の年間着工棟数は、年間500〜600棟前後と推計され、県全体の持家着工4,842戸(2024年度)の1割超を1社で占めている。「i-smart」「グランセゾン」「グランスマート」を主力に、全館床暖房・高気密高断熱・全館空調「さらぽか」など標準仕様の充実度で、群馬県のような寒冷地(とくに冬期の北部)に強い訴求力を持つ。県内の地場ビルダー・工務店にとって、最大の標準ベンチマークかつ最大の競合となっている。
群馬県の新設住宅着工戸数は、2024年度(令和6年度)で10,524戸、前年度比+5.9%。直前のピークは2018年度の12,859戸で、2019年度11,608戸→2020年度9,988戸(コロナショックで大幅減)→2021年度10,837戸→2022年度11,325戸→2023年度9,935戸(金利上昇・建材高騰で再減)→2024年度10,524戸(省エネ改正前駆け込み等で持ち直し)と推移してきた。長期トレンドとしては、2010年代後半の12,000〜14,000戸水準から、2020年代に入って10,000戸前後に縮小している。
2024年度の群馬県着工の内訳は以下の通り。
利用関係 戸数 前年度比 持家 4,842戸 ▲1.9% 貸家 3,082戸 +35.0% 給与住宅 161戸 +209.6% 分譲住宅(一戸建て) 2,048戸 ▲12.1% 分譲住宅(マンション) 391戸 +17.4% 合計 10,524戸 +5.9%
最大の特徴は「貸家+35.0%」「給与住宅+209.6%」というアパート・社宅市場の急回復である。これは①SUBARU・関連サプライヤー・運送業の人手不足対策としての社宅整備、②外国人住民・技能実習生向け賃貸需要、③相続税・節税目的のアパート建築、の3要因が重なった結果と見られる。一方で持家は4,842戸(▲1.9%)と微減、分譲一戸建ては2,048戸(▲12.1%)と大幅減で、戸建市場全体は縮小トレンドにある。
ピュアグロース式・群馬県着工分解で見ると、「持家・分譲戸建市場の縮小(▲4〜12%)を、貸家・給与住宅市場の急拡大(+35〜210%)が補う」という構造がはっきり浮かび上がる。住宅会社経営者・工務店経営者にとって、「注文住宅一本足打法」では2024年度のような市況回復局面でも増収増益が困難で、賃貸併用・収益不動産・社宅請負などの周辺事業との組み合わせがますます重要になる。
2025年度(令和7年度)は4月から12月までの累計で8,403戸(前年同期比▲20.2%)と、大幅な落ち込みを見せている。持家4,108戸(▲15.2%)、貸家2,284戸(▲25.9%)、分譲住宅1,956戸(▲4.5%)と、全カテゴリで前年割れ。とくに貸家の▲25.9%は、2024年度の急増の反動と、金利上昇・建設費高騰・賃貸投資マインド悪化の3点セットによるものである。
これはピュアグロース式・群馬県市場サイクル分析の典型パターンで、「省エネ改正駆け込み(2024年度)→反動減(2025年度)」という政策影響が大きい。住宅会社経営者・工務店経営者は、2025年度後半〜2026年度の受注計画について、過去2年の平均水準(おおよそ年間9,500〜10,500戸の県全体着工)をベースに置き、自社シェアを再計算しておくべき局面である。
群馬県の住宅市場における中期的な3つの経営課題は、①持家市場4,800戸前後をどう取りに行くか(一条工務店・大手・地場有力の三つ巴)、②貸家市場3,000戸前後の不安定な振れに対してどう資本投下を分散させるか、③分譲一戸建て市場2,000戸前後の縮小に対する原価・在庫戦略をどう立てるか——の3点に集約される。
群馬県の貸家市場は、2024年度に3,082戸(+35.0%)と急増した。これは茨城県・栃木県と比較しても突出した伸び率である。背景には3つの構造要因がある。
第1要因:SUBARU城下町としての社宅・寮需要——太田・伊勢崎を中心に、SUBARUおよび関連サプライヤーの正社員・期間工・派遣社員向け住宅需要が継続的に発生する。とくに2024年度はSUBARU群馬製作所の生産回復・新車種立ち上げに伴う採用拡大で、社宅整備案件が相次いだ。
第2要因:外国人住民・技能実習生向け賃貸需要——大泉・太田・伊勢崎・館林を中心に、外国人住民向け賃貸市場が独自の厚みを持つ。家主側は「日本人より退去率が高いが、家賃滞納リスクは保証会社・派遣会社経由で抑えられる」という認識のもと、外国人受け入れ可能物件への投資が活発である。
第3要因:相続税対策・節税目的のアパート建築——群馬県は1世帯あたり所有不動産が多く、地主層の相続税対策ニーズが厚い。とくに高崎・前橋・太田の地主層は、平成期から積水ハウス・大東建託・大和ハウス工業・東建コーポレーションなど大手アパートメーカーの主要顧客層を形成してきた。
ピュアグロース式・群馬県貸家3層モデルとして、「製造業社宅層×外国人賃貸層×地主節税層」の3層が同時に厚く存在することが、群馬県貸家市場の最大の特徴である。住宅会社経営者・工務店経営者がこの3層のいずれかにアクセスできれば、貸家事業は持家事業の景気変動を補完する重要な収益源になる。
群馬県の住宅市場は、明確な商圏構造を持つ。北関東3県のなかで、茨城県(5商圏分散)・栃木県(宇都宮一極集中)とは異なる「双子都市並立+製造業集積+外国人集住」の3層モデルが、群馬県の独自性を形成している。
高崎市は人口約36.4万人で群馬県最大の都市。新幹線・在来線・高速道路が交差する交通の要衝で、「商業の街」として商圏規模は前橋を上回る。ヤマダホールディングス(高崎市栄町)、ヤマダホームズ本社、群馬銀行本店、高崎オーパ、高崎タカシマヤなどが集積する。住宅市場としては、高崎駅周辺・高崎西部(井野・倉賀野方面)・吉井・新町・榛名のエリアごとに需要層が異なり、高崎駅徒歩圏は分譲マンション市場、郊外部は注文住宅市場が中心である。
前橋市は人口約32.8万人、県庁所在地。「行政の街」として県庁・市役所・群馬大学医学部附属病院が集積し、公務員・医療従事者の比率が高い安定需要層を形成する。住宅市場は前橋駅・新前橋駅周辺、前橋南インター周辺の郊外分譲、富士見・大胡・宮城方面の山麓部に分散する。前橋富士見地区は新興住宅地として近年人気が高い。
太田市は人口約22.3万人で県第3の都市。SUBARU群馬製作所本工場(従業員約4,500人)を擁し、関連サプライヤー含めると太田市内で数万人がSUBARU関連雇用に従事する。世帯所得は全国平均を上回り、製造業従事者の安定的な持家需要が継続的に発生する。住宅市場は太田駅周辺・太田南部(北関東道太田桐生IC周辺)・尾島・新田木崎方面に分散し、近年は新田木崎エリアの分譲開発が活発である。
伊勢崎市は人口約21.2万人で県第4の都市。東邦亜鉛・SUBARU関連サプライヤーなどが集積する製造業の街。前橋・高崎・太田の中間に位置する地理的優位性から、子育て世代の流入が相対的に多い。住宅市場は伊勢崎駅周辺・宮子町方面・境地区に分散し、宮子町は2025年7月に一条工務店の新展示場がオープンするなど、近年伸びているエリアである。
桐生市(人口10.0万人)・太田市(22.3万人)・館林市(7.3万人)は、両毛線・東武伊勢崎線沿線に並ぶ。桐生は織物産業の歴史都市で人口減少が続くが、太田は工業都市として安定。館林は東武伊勢崎線で東京方面とつながり、首都圏通勤者比率が県内では相対的に高い。
大泉町(人口4.1万人、外国人比率約22%)、千代田町(約1.1万人)、邑楽町(約2.5万人)の邑楽郡3町は、外国人住民の集中エリアである。大泉町ではブラジル人約4,500人を中心に、ペルー人・ベトナム人・フィリピン人・ボリビア人が共生する。
このエリアの住宅市場は、日本人向け市場と外国人住民向け市場が並列して存在する独自構造を持つ。外国人住民向け賃貸市場の規模は、大泉町だけで賃貸戸数の約3〜4割を占めるとされ、家賃水準は日本人向けより1〜2割低いが、入居率・回転率は高い。家主層から見ると「外国人OKフラグを立てるだけで稼働率が上がる」という独自のサブマーケットが成立している。
ピュアグロース式・外国人住民賃貸事業3要件として、住宅会社・賃貸事業者がこの市場に参入する場合は、①ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語対応の入居審査・契約書類、②外国人受入実績のある保証会社(オリコフォレントインシュア、日本セーフティー、ジェイリースなど)との提携、③現地で評判の良い不動産仲介会社(大泉町内には外国人住民向け仲介会社が複数ある)との連携、の3点を整える必要がある。
注文住宅市場では、外国人住民が永住権を取得して住宅ローンを組み、注文住宅を建てるケースも増えており、ブラジル人・ペルー人の世帯が主流。住宅会社のなかには、ポルトガル語対応の営業担当を配置する事例も出始めている。
沼田市(人口4.3万人)、渋川市(7.2万人)、吾妻郡(草津・嬬恋等)、利根郡(みなかみ・片品等)は、人口減少が顕著な山間部商圏である。住宅市場としては地場工務店の建替・リフォーム需要が中心で、新設住宅着工は県全体の数%にとどまる。住宅会社の出店戦略上、優先度は低い。
層 該当都市 人口規模 住宅会社の出店優先度 商圏の特徴 第1層(双子都市核商圏) 高崎・前橋 69万人 最重点(必須) 商業×行政、安定需要、競合激戦区 第2層(製造業集積商圏) 太田・伊勢崎・桐生 53万人 重点(推奨) SUBARU城下町、世帯所得高め、外国人多 第3層(県境エリア商圏) 館林・大泉・千代田・邑楽・玉村・板倉 25万人 中(選択的) 隣県資本との激戦、外国人住民集住 第4層(北部山間部商圏) 沼田・渋川・吾妻・利根 15万人 低(リフォーム特化) 人口減少、地場工務店の地盤
群馬県でTOPビルダーを目指すなら、第1層(高崎・前橋)に必ず展示場を構える必要がある。第2層(太田・伊勢崎)は製造業需要の取り込みで重点エリア。第3層(県境エリア)は外国人住民向けの独自戦略を組むかどうかで選択。第4層は撤退または特化型サービス(リフォーム・建替)に絞り込む——というのがピュアグロース式・群馬県エリア出店戦略の基本骨格である。
PG戸籍名簿によると、群馬県内に本社を置く住宅・建設関連企業は約200社超。うち年間着工10棟以上の住宅会社は約60社、30棟以上の中堅ビルダーは約20社、100棟以上の地場有力ビルダーは10社未満と推計される。北関東3県のなかでは栃木県(同規模)と同水準で、茨城県(より分散)よりは集中度がやや高い。
群馬県本社の上場系最大手は、ヤマダホールディングス(高崎市栄町)の住建セグメントの中核会社、ヤマダホームズ(高崎市栄町)である。ヤマダホールディングスは2025年3月期で住建事業全体の売上高3,168億円(前期比+13.3%)、営業利益109億円(同+93.6%)と大きく回復、ヤマダホームズ単体でも売上高1,051億円(同+30.7%)の大幅増収を達成し、営業・経常利益が黒字転換した。
ヤマダホームズは2024年8月に注文住宅新商品「RASIO(ラシオ)」を発売、2024年11月にはセミオーダー型規格住宅「Y Limited(ワイリミテッド)」を販売開始するなど、商品ラインナップを刷新した。さらにヤマダデンキの大型店「ライフセレクト」内に「住まいの相談カウンター」を設置し、宅地建物取引士を配置、敷地内に「YAMADAスマートハウス」のモデルハウスを建てる戦略を打ち出している。これは家電量販店という顧客接点を住宅販売の入口に変換する、独自の集客モデルである。大手ハウスメーカーの中でもミドル単価の中では近年受注も堅調に推移している、
群馬県内におけるヤマダホームズの位置づけは、「家電量販ネットワークを活用した非展示場型集客」という独自モデルを持つ唯一の県内本社上場系住宅会社である。県内シェアの観点では、注文住宅は一条工務店ほどの圧倒的シェアを持たないものの、リフォーム・中古再販・分譲を含めたトータルでは県内有数の規模を誇る。
群馬県本社の地場ビルダー群は、商品コンセプト・価格帯・エリアで多様に分化している。
ローコスト・規格系:群馬県内には複数のローコスト系ビルダーが存在し、800万円台〜1,200万円台のセミオーダー注文住宅で若年層・第二次取得層の需要を取り込んでいる。
自然素材・デザイン系:高崎・前橋エリアを中心に、自然素材を使った注文住宅やデザイン住宅を手がける中堅ビルダーが活動している。1,000棟以上の施工実績を持つ会社、3,500棟以上の累計実績を持つ会社などがあり、価格帯は2,000万円〜3,500万円が中心。
伝統系・SE構法系:高崎の関工務所は創業128年、SE構法による大空間ガレージハウス・パッシブデザインで業界トップクラスの性能を訴求する。
製造業エリア地盤系:太田・伊勢崎・館林エリアには製造業従事者向けに価格訴求する地場ビルダーが厚く分布する。
北部・山間部地盤系:渋川・沼田・吾妻エリアには、自然素材・国産木材を使った地場工務店が複数。年間建築棟数は数棟〜数十棟規模。
注目すべきは、栃木県本社の上場系分譲会社2社の群馬県への展開である。グランディハウス(栃木県宇都宮市本社)とケイアイスター不動産(栃木県本庄市本社)は、群馬県内(とくに伊勢崎・前橋・高崎・太田)で分譲一戸建て住宅を積極展開している。両社は栃木県編で詳述したように、土地仕入力・建売モデル・パワービルダー的回転で、群馬県の地場分譲ビルダーとは異なる競争軸を持つ。
帝国データバンク群馬支店のまとめによると、2024年の群馬県内企業の倒産件数は136件で、前年から2件減ったが2年連続で130件超と高水準。負債総額は175億5,100万円で前年比13.4%減。業種別では製造業35件が最多で、建設業29件、サービス業28件、小売業22件と続く。
注目すべきは、2024年12月時点で「1年以内に倒産するリスクが高い」と判断された群馬県内企業が2,445社(前年2,344社)と3年ぶりに増加し、業種別では建設業が453社(前年比+104社、増加率30%)と最大の増加率を記録した点である。建設業の倒産・休廃業の波は、2025年〜2026年にかけて群馬県でさらに加速する可能性が高い。これはピュアグロース式・群馬県業界再編加速期分析として、地場ビルダー間のM&A・事業譲渡・後継者問題による事業承継案件の増加を意味する。
群馬県の住宅会社プレイヤー布陣は、今後10年で「①一条工務店群馬の独走、②ヤマダホームズの独自モデル深化、③地場有力ビルダーの淘汰と上位集中、④隣県資本(栃木・茨城・埼玉)の進出加速、⑤北部山間部の地場工務店の事業承継問題」の5動向で再編が進む。住宅会社経営者・工務店経営者は、自社がこの5動向のなかでどのポジションを取るかを、明確に決める必要がある。
ピュアグロースは、群馬県内の住宅会社経営者・地場ビルダーとは複数経路で継続的に把握しており、現場で見えている論点を以下にまとめる。なお具体的なクライアント情報・関与状況の詳細は本稿では伏せる。
群馬県の住宅会社経営者と接していて感じるのは、「実直で職人気質、決断は早いが慎重」という上州気質の経営スタイルである。茨城県や栃木県の経営者と比較しても、「数字に対するシビアさ」「コスト意識の強さ」「製造業文化の影響」が顕著で、住宅会社経営においても「設計品質×施工管理×原価管理」の3点で他県より厳格な水準を求める傾向がある。
高崎・前橋両市にどう展示場を配置するかは、群馬県の住宅会社経営における最大の戦略課題である。一条工務店群馬は両市を含む9営業所体制で全エリアをカバーしているが、地場ビルダー・中堅ハウスメーカーにとっては「両方に展示場を持つコストを賄えるか」「片方に絞って深掘りするか」が常に問われる。とくに高崎ハウジングステージ・前橋住宅展示場・伊勢崎住宅公園・太田ハウジングステージなどの総合展示場の出展コスト(年間数千万円規模)は、年間50棟未満のビルダーには重荷となる。
2024年〜2025年にかけて顕在化したナフサショック(建材調達停止・価格高騰30〜50%)の影響は、群馬県の住宅会社にも直撃している。群馬県は北関東のなかでも木造住宅比率が高く、輸入木材・合板・サッシ・断熱材の価格高騰が原価率を押し上げる。とくに地場中堅ビルダー(年間30〜100棟規模)は、価格転嫁が遅れて粗利率が圧縮されるケースが多い。
これに対し、ヤマダホームズや一条工務店群馬のような大手・準大手は、グループ調達網・自社工場・標準仕様の徹底でコスト競争力を維持しやすい。地場ビルダー間の格差が急速に広がりつつあるのが、2025年〜2026年の群馬県住宅市場の最大論点である。
群馬県の住宅会社経営者は、製造業文化の影響もあって「実直な施工品質」を強みとする会社が多い反面、SNS集客・Web集客への投資が首都圏・関西圏より遅れている傾向にある。InstagramやYouTubeを活用したルームツアー・施工事例発信は、若手の住宅会社経営者・第二創業世代から始まりつつあるが、地場の創業40年超のビルダーではほとんど未着手というケースも珍しくない。
ピュアグロース式・群馬県SNS集客モデルとして、Instagram投稿+YouTube施工事例+LINE公式の3点セットは、年間50棟以上を目指す住宅会社では2026年以降に標準装備となる。
群馬県の住宅会社が直面する採用市場の最大論点は、「SUBARUおよび関連サプライヤーとの人材競合」である。とくに太田・伊勢崎・大泉エリアでは、製造業の高賃金・福利厚生・安定性に対し、住宅会社の営業職・大工・現場監督の処遇が見劣りするケースが多い。新卒採用・中途採用ともに、製造業に流れる人材をどう住宅業界に振り向けるかが、群馬県固有の課題である。
ピュアグロース式・群馬県採用差別化として、住宅会社が訴求すべきは「製造業にはない裁量・成果報酬・経営参画機会・地域への貢献実感」の4点である。これは茨城・栃木の住宅会社でも共通の論点だが、群馬県ではSUBARU城下町の特殊性から、より明確な差別化メッセージが必要となる。
群馬県は古くから「かかあ天下とからっ風」と言われ、女性が家計・住まいの意思決定権を握るケースが多い。これは住宅会社の営業現場で日常的に観察される事実で、最終決裁者は妻、夫は同意する役割という家族構成が他県より顕著である。
これは住宅会社のマーケティング・営業設計に直接影響する。展示場接客では「奥様が見ているもの・気にしていること」を最優先で押さえる必要があり、収納・キッチン・洗面・パントリー・ファミリークローゼットなどの家事動線・収納提案が、男性向けスペック訴求(耐震・断熱性能等級・構造)より受注に効くケースが多い。一条工務店群馬の「i-smart・グランスマート」が群馬県で強いのは、標準仕様の充実度(とくに収納・キッチン・洗面)が群馬県の主婦層に刺さっていることが大きい。
群馬県の住宅会社経営者・工務店経営者が2026年〜2027年に向けて整理すべき論点は、①双子都市の展示場戦略の最適化、②ナフサショック対応の調達網再構築、③SNS集客の本格立ち上げ、④製造業との採用競合への差別化メッセージ、⑤主婦層に刺さる商品設計と接客の見直し——の5点に集約される。
ここからは、群馬県内に本社を置く住宅会社・工務店が、年間100棟超→200棟超→県内TOPビルダーへとステップアップしていくための、ピュアグロース式・群馬県内TOPビルダー化戦略を5本柱で示す。
群馬県の住宅市場で「県内TOPビルダー」と呼べる水準は、注文住宅単体で年間200〜300棟、賃貸・分譲含めたトータルで年間400〜500棟、売上高100億円以上である。ヤマダホームズは群馬県本社だが全国展開のため別格として、地場有力ビルダーがこの水準に到達するには、第1層(高崎・前橋)の確実な押さえと、第2層(太田・伊勢崎)の中位ポジション確保、第3層(県境エリア)の選択的展開が必要となる。
群馬県でTOPビルダーを目指す住宅会社の出店ロードマップは以下の通り。
ステージ1(年間50〜100棟):本拠地(高崎または前橋)に本社・展示場を1〜2拠点。第1層核商圏の片方を確実に押さえる。年間着工は本拠地商圏の集中シェアで稼ぐ。
ステージ2(年間100〜200棟):高崎・前橋の双方に展示場を配置。第2層(太田・伊勢崎)への展示場進出を開始。営業所は4〜6拠点体制。
ステージ3(年間200〜400棟):第1層・第2層を全域カバー。第3層(館林・大泉・桐生)への選択的進出。営業所は7〜10拠点体制。
ステージ4(年間400棟超・県内TOPビルダー):県内全域+隣県(埼玉北部・栃木南部・新潟魚沼)への一部進出。営業所は10拠点超。
一条工務店群馬の9営業所・従業員195名体制は、ステージ4の到達点として参考になる構造である。
群馬県の土地仕入は、北関東3県のなかで最も難易度が高い。理由は3つ。
第1に、双子都市(高崎・前橋)の市街地土地は需要が安定する一方で価格が高止まりしており、坪単価30万円超のエリアが拡大している。第2に、太田・伊勢崎・大泉のSUBARU・関連サプライヤー周辺の土地は、製造業従事者の安定需要で底堅く推移し、まとまった分譲地仕入が困難。第3に、館林・大泉などの県南東部は、栃木県本社のグランディハウス・ケイアイスター不動産が積極的に仕入を進めており、地場の仕入力が試される。
ピュアグロース式・群馬県土地仕入3戦略として、①地元金融機関(群馬銀行・東和銀行・しののめ信用金庫等)からの相続・空き家情報の優先入手、②地場不動産業者との長期パートナーシップ、③相続税対策アパート建築から土地仕入につなげる地主層との関係構築——の3点が重要である。
群馬県の住宅会社の採用は、新卒・中途ともにSUBARUおよび関連サプライヤーとの人材競合に正面から向き合う必要がある。住宅会社が訴求すべき差別化軸はピュアグロース式・群馬県3層採用設計として以下のように整理される。
第1層(経営幹部候補・営業マネージャー層):「経営参画・成果報酬・上場準備」の3点。SUBARUのような大組織では得られない、経営の意思決定への近さと、成果に応じた報酬体系を訴求。
第2層(営業職・現場監督・設計士):「裁量・地域貢献・顧客との直接接点」の3点。製造業の分業構造では味わえない、顧客の人生に関わる仕事の充実感を訴求。
第3層(大工・職人層):「技能の独立性・若手育成キャリア・現場の自律性」の3点。製造業のライン作業に対する、職人としてのアイデンティティを訴求。
これにピュアグロース式・住宅会社採用ブランディング3手法(Wantedly等のスタートアップ的採用媒体活用、自社YouTubeチャンネル・Instagramによる社風発信、社員の独立支援制度)を組み合わせる。
採用しても定着しなければ意味がない。群馬県の住宅会社で定着率を上げるには、以下の3点設計が必要である。
働き方:完全週休2日制(少なくとも隔週土日休)、年間休日120日以上、残業時間月45時間以内の遵守。これは製造業大手と同水準の労働条件として、群馬県の若年層には必須要件となりつつある。
報酬:基本給は群馬県の同業平均より10〜15%高め、成果報酬(インセンティブ)の上限を設けない(営業職)、退職金制度の整備。とくに30代の中堅営業層が「年収800万円以上を狙える」設計が、定着率向上の決定要因である。
キャリア:入社3年目までのジョブローテーション(営業→現場→設計)、店長・支店長への昇格パス、独立支援制度、経営幹部育成プログラム。住宅会社にとっての中長期的な投資となる。
最後に、群馬県内TOPビルダーを目指す住宅会社が必ず備えるべき3位一体戦略を示す。
商品戦略:注文住宅2〜3商品(ハイグレード・ミドル・ローコスト)、規格住宅1商品、賃貸併用住宅1商品、平屋特化商品1商品の計5〜6商品ラインナップ。一条工務店群馬の「i-smart・グランセゾン・グランスマート・i-smile・HUGme」のような明確な商品階層を持つことが、複数の顧客層を取り込む前提となる。
ブランド戦略:「群馬県の住宅会社」ではなく、「○○な住宅会社」として明確なポジショニングを取る。たとえば「群馬県でいちばん高性能な家を建てる会社」「群馬県でいちばん自然素材にこだわる会社」「群馬県でいちばん子育てしやすい家を建てる会社」など。SNS・YouTube・展示場・営業トーク・ホームページ全てで一貫したメッセージを発信する。
財務戦略:自己資本比率30%以上、現預金月商3か月分以上、有利子負債は売上高の50%以下を維持。地場銀行(群馬銀行・東和銀行・しののめ信用金庫)との長期取引関係を構築し、土地仕入のための短期資金調達枠を確保。中期的には事業承継・M&A・上場準備のための監査法人対応も視野に入れる。
群馬県で年間200棟以上の県内TOPビルダーを目指すなら、最短ルートは「①第1層(高崎or前橋)で年間100棟まで集中シェア確保→②商品ラインナップ拡充と展示場2拠点化→③第2層(太田or伊勢崎)への進出と営業所5拠点化→④財務基盤の整備と人材投資の本格化→⑤第3層・隣県への選択的進出」の5段階である。各段階の所要期間は3〜5年で、トータル15〜25年の長期視点が必要となる。
本稿では、47都道府県住宅市場分析シリーズ第10弾として、北関東3県完結編の群馬県を取り上げた。茨城県(5商圏分散)・栃木県(宇都宮一極集中)と異なり、群馬県は「双子都市並立(高崎・前橋)×SUBARU城下町(太田・伊勢崎)×外国人住民集住(大泉)」という3層構造を持つ独自市場であることを示した。一条工務店群馬の県内圧倒的シェア、ヤマダホームズの家電量販ネットワーク活用モデル、栃木県本社の分譲系2社の北上、地場有力ビルダーの淘汰加速など、住宅会社経営者・工務店経営者が押さえるべき論点を立体的に整理した。
次回・第11弾は北関東3県を離れ、いよいよ南関東・首都圏の入口となる埼玉県編を予定している。人口735万人の県を持つ埼玉県は、群馬県とは桁違いの規模を持ちながら、県内のエリア分散・首都圏通勤者比率・分譲市場の厚み・パワービルダー競合などで、群馬県とはまったく異なる住宅市場を形成している。引き続きご期待いただきたい。
ピュアグロースは、工務店・ハウスメーカー特化の経営コンサルとして、200社以上の顧問先・会員企業の成長率平均114%向上、顧客満足度日本一(自社調べ・178社回答)を達成しています。本レポートは、日本最大級の支援実績を持つ弊社の知見に基づき作成されました。
ピュアグロースは、住宅業界・建設業界に特化した経営コンサルティングファームとして、全国の工務店・ハウスメーカー経営者・住宅会社経営層と日々向き合っています。本47都道府県シリーズは、PG社が独自に整備する住宅・建設業界戸籍データ(約6,365社)、全国のクライアント企業との経営対話、現場一次情報を組み合わせて、住宅会社経営者・工務店経営者・ハウスメーカー支社長・住宅業界投資家の意思決定に資する情報を提供することを目的としています。
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「群馬県内でNo.1ビルダーを目指したい」「双子都市の展示場戦略を見直したい」「SUBARUとの採用競合に勝つ仕組みを作りたい」「ナフサショックのなかでも粗利を確保したい」「外国人住民向け賃貸事業に参入したい」「次の10年のビジョンを一緒に描いてほしい」──どんな経営課題でも、まずはお気軽にご相談ください。
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宮内和也(みやうち・かずや) ピュアグロース株式会社 代表取締役。船井総合研究所を経て独立、住宅・建設業界に特化した経営コンサルティングファームを経営。「定額制注文住宅」「大型単独展示場」「来場予約ファースト」など、業界標準となったプロジェクトを多数主導。著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)。