47都道府県シリーズの第9弾は栃木県。前回の茨城県編に続き、北関東3県(茨城・栃木・群馬)の2県目を、住宅会社・工務店・ハウスメーカー経営者の視点から分析する。茨城県と栃木県は隣接県でありながら、住宅市場の構造はまったく異なる。茨城県が首都圏隣接の県南TX沿線という巨大な成長極を持ち人口279万人で関東地方有数の中規模県だったのに対し、栃木県は人口約186万人と茨城県より約93万人小さく、福島県(約177万人)に近い規模感。しかし住宅市場の重みでは、栃木県は決して茨城県に劣らない。それを支えているのが、宇都宮市という関東地方有数の中核市と、東京駅から東北新幹線で50分という時間距離である。
栃木県の住宅市場には、関東各県とも東北各県とも異なる三つの特徴がある。第一に、宇都宮一極集中の度合いが茨城県の3商圏並立より強く、県人口の約27%が宇都宮市単独に集中。第二に、栃木県本社のグランディハウス(年間販売推定700棟級)が県内分譲市場の絶対的覇者として君臨し、地場資本が分譲領域で大手連合を抑えている。第三に、茨城県でTOPビルダーとして君臨するノーブルホールディングスが栃木県へ広域進出し、傘下に栃木県発祥の丸和住宅・第一住宅・とちぎリフォーム・とちぎ未来開発を取り込んで、茨城資本が栃木県市場に深く食い込んだ構造を作っている。47都道府県のなかでも、隣県資本の地場ビルダーが他県市場を取りに来た典型例である。
本稿は、住宅会社経営者・工務店経営者・ハウスメーカー支社長・住宅業界投資家・住宅コンサル業界関係者を主読者として、ピュアグロース式・栃木県エリア分析の枠組みで全体像を提示する。人口・着工・商圏・プレイヤー・現場論点・戦略の6章構成で解剖していく。
| 指標 | 数値 | 全国順位 |
|---|---|---|
| 総人口(2025年12月推計) | 約186万人 | 19位 |
| 世帯数 | 約83万世帯 | 19位前後 |
| 平均年収 | 約470万円 | 17〜19位前後 |
| 新設住宅着工戸数(2024年度推計) | 約1.1〜1.2万戸前後 | 17〜19位前後 |
| 持家比率(住宅・土地統計調査ベース) | 約68% | 全国上位 |
| 県土面積 | 約6,408平方キロメートル | 20位 |
| 宇都宮市人口 | 約51万人 | 中核市・県人口の約27% |
栃木県の特異性は、人口186万人という関東地方では下位グループに属する規模でありながら、宇都宮市(約51万人)・小山市(約16万人)・栃木市(約15万人)・足利市(約14万人)・佐野市(約11万人)・那須塩原市(約11万人)と、人口10万超の中核市が6市並立する分散構造にある。平均年収は茨城県と同水準の約470万円で、関東地方では中位ながら全国では上位3分の1。首都圏ベッドタウン化の影響で平均所得が押し上げられているのが東北各県との大きな違いだ。
【サマリー|栃木県住宅市場の座標】
栃木県の住宅市場を理解するうえで、住宅会社経営者が押さえるべき地理的条件は5つある。
目次
宇都宮駅から東京駅まで東北新幹線で最速48分、小山駅から東京駅は新幹線で40分・JR宇都宮線でも70分台、佐野市・足利市はJR両毛線・東武線経由で約90分。県南半分が完全な首都圏通勤可能圏にあり、首都圏勤務者のUターン需要・移住需要を継続的に吸収してきた。これが住宅市場の購買力を底上げしている。
栃木県は県北(宇都宮・那須塩原・大田原・矢板)・県南(小山・栃木・佐野・足利・下野)・県東(真岡・益子・茂木)の3地域に分かれる。県北は宇都宮を頂点とした行政・教育圏、県南は東京通勤圏としての性格が強く、両毛線沿線(足利・佐野)は群馬県東部との生活圏連続性を持つ。この3地域は購買力・購買行動が異なり、単一戦略で県全体を取りに行くことはできない。
県人口の約27%が宇都宮市単独に集中し、宇都宮都市圏まで広げると県人口の約4割が集中する。茨城県の県南TX沿線エリアより一極集中度が強い。住宅会社の戦略上、宇都宮市での競争力なくして県全体での持続的成長はあり得ない。
栃木県の主要都市はすべて関東平野の一部に位置し、平坦な土地が広く取れる。1住戸あたり敷地面積も全国上位で、戸建取得しやすい物理条件が整っている。一方で雷雨日数が日本一多い県という気象特性があり、蓄電池システム・耐雷設備への需要が他県より高い点が住宅会社の商品設計に影響する。
栃木県は4方向で隣県と接しており、足利市・佐野市は群馬県(太田・館林)と一体の生活圏、小山市は茨城県(古河・結城)と隣接、那須塩原市は福島県(白河)と連続する。県境エリアでは隣県プレイヤーとの直接競合が日常的に発生する。
【サマリー|栃木県の地理的要因】
栃木県の人口は2025年12月時点で約186万人。10年前の2015年(約197万人)から約11万人、率にして約5.6%減少している。減少ペースは茨城県(約4%減)よりやや速いが、東北各県(10〜15%減)と比べれば緩やか。社人研推計では2050年に約151万人前後まで縮小する見通しで、現在から約35万人、率にして19%の人口削減に相当する。
ただし、この県全体トレンドの裏には県内人口動態の二極化が隠れている。宇都宮市は2026年4月時点で約51万人を維持しており、過去20年でも比較的緩やかな減少にとどまっている。一方、足利市・佐野市・栃木市・那須塩原市・大田原市など県南・県北の中規模都市では、年率0.5〜1%超の減少が継続。
県内のもう一つの注目点が、宇都宮ライトレール(LRT)開業以降の沿線エリアの人口変動である。2023年8月開業のLRTは、宇都宮駅東口から芳賀町までを結ぶ次世代型路面電車で、開業以降、沿線エリアの不動産価格・住宅需要が押し上げられた。LRT沿線(清原工業団地周辺・ゆいの杜エリア等)は宇都宮市内でも数少ない人口・世帯増エリアとなっており、住宅会社の商圏戦略上の最重点エリアだ。
世帯数は約83万世帯。新築住宅市場のコア顧客となる「30〜40代の子育て世帯」は、過去10年で約12〜15%削減された。これは茨城県(約10〜12%削減)よりやや厳しい数字。ただし、首都圏勤務者のUターン・移住需要が一次取得層の薄さを部分的に補っている。宇都宮・小山・那須塩原・佐野・足利の各駅は新幹線または通勤特急が利用可能で、「東京通勤を続けながら栃木で家を建てる」という層が一定の厚みで存在する。首都圏Uターン需要への対応が栃木県固有の重要戦略テーマとなる。
栃木県の持家比率は約68%で全国上位。背景には、県全体として土地代が首都圏内では割安であること、1住戸あたり敷地面積のゆとり、車社会で郊外戸建が前提となっている生活スタイルがある。ただし、宇都宮市中心部・LRT沿線・小山市駅周辺では賃貸需要も一定の厚みを持つ。
一条工務店は栃木県においても高密度な出店網を構築。PG社の独自データと公開情報を総合すると、一条工務店の栃木県内展示場は約14拠点。各展示場の営業人員を5〜8名と想定すると、県内の一条工務店営業組織は推定80〜110名規模、年間販売棟数は推定400〜500棟前後と見られ県内で単独首位を維持している。
注目すべきは、一条工務店が県内で広範な自社分譲地販売を本格化している点。県内主要都市すべてに自社分譲地を展開し、注文住宅メーカーとしては異例のデベロッパー的展開を見せている。地場ビルダーにとって、「展示場密度×自社分譲地」の二段構えは来場機会獲得コストと土地つき販売の競合圧力を同時に押し上げる。
【サマリー|第1章 栃木県の人口動態の急所】
栃木県の新設住宅着工戸数は、2024年度推計で約1.1〜1.2万戸前後。これは全国総数(2024年・約79万戸)の約1.4〜1.5%にあたり、全国18位前後の市場規模。北関東3県のなかでは茨城(約1.7万戸)に次ぐ第2位。
利用関係別の構成比は、2024年度の概算で「持家42〜45%、貸家30〜33%、分譲(建売・マンション)22〜25%」前後と推計される。全国平均(持家27%・貸家43%・分譲29%)と比べると、持家比率は15ポイント以上高く、これは栃木県の住宅市場の重心が注文住宅・持家に置かれていることを示す。
理由は4点。第一に、首都圏隣接で県南エリアが首都圏の住宅取得需要を吸収。第二に、製造業集積で日産自動車・ホンダ・キヤノン・ブリヂストン・本田技研工業の主要工場が栃木県内に立地し、従業員層が住宅一次取得の安定基盤を形成。第三に、1住戸あたり敷地面積のゆとりで郊外戸建文化が県全域に成立。第四に、地場分譲大手のグランディハウスの大量供給が県内分譲市場を底上げ。
分譲市場については、栃木県本社のグランディハウスが圧倒的存在感を放つ。グランディハウスは栃木県内では分譲市場の絶対的覇者。これに加えて飯田グループ系(一建設・アーネストワン・東栄住宅・タクトホーム)、ケイアイスター不動産(栃木県発祥の上場分譲大手)等が県南・宇都宮圏で激しい競争を展開している。
貸家市場は宇都宮市内では空室率10〜14%と全国平均並みを維持しているが、足利市・佐野市・栃木市など県南西部では空室率18〜23%に達するエリアも出現しており、新規供給の採算が悪化している。地場ビルダーが貸家事業を展開する際は、宇都宮市・LRT沿線への絞り込みが経営判断として最も合理的になる。
【サマリー|第2章 栃木県の着工動向の急所】
栃木県の住宅商圏は、宇都宮一極集中と6つの中核市の並立構造を持つ「1強5並立」構造である。茨城県の5商圏並立とは異なる独自の構造だ。
人口約51万人。県庁所在地で、宇都宮駅は東京駅まで最速48分。住宅市場でのシェアは県全体の約30〜33%と推定。LRT開業以降、沿線の清原工業団地・ゆいの杜エリアでは住宅地の高騰が進み、地場ビルダーの土地仕入れ競争が激化している。年間2,500〜3,500戸の住宅供給が見込まれる。
人口約16万人。東京駅まで新幹線で40分、JR宇都宮線でも70分台。住宅市場でのシェアは県全体の約13〜15%と推定。首都圏勤務者のUターン需要・移住需要を最も吸収しているエリアで、地場ビルダーの新規進出も活発。
人口約15万人。住宅市場でのシェアは県全体の約8〜10%。
人口約14万人。隣接する群馬県東毛エリア(太田・館林・桐生)との生活圏連続性が極めて強い。住宅市場でのシェアは県全体の約7〜9%。群馬県側のローコストパワービルダーとの競合が県境で日常的に発生。
人口約11万人。佐野駅から東京駅まで約90分台。住宅市場でのシェアは県全体の約6〜8%。一条工務店はイオンモール佐野新都市内に「ICHIJO PLAZA佐野」というユニークな商業施設併設型展示場を展開。
人口約11万人。東京駅まで新幹線で約75分。住宅市場でのシェアは県全体の約6〜7%。那須リゾート・那須高原観光の波及効果を受けやすく、別荘・移住需要も一定の厚みで存在。
| 層 | 都市 | 住宅会社経営の特徴 |
|---|---|---|
| 中核都市・絶対中心 | 宇都宮 | 県内シェア約3割、激戦区、LRT沿線が新成長極 |
| 中核市・首都圏通勤圏 | 小山・栃木・佐野・足利・那須塩原 | 各エリアの中核、首都圏通勤需要を吸収、地場ビルダー優位 |
| 衛星都市・地方中核 | 下野・大田原・真岡・矢板・鹿沼・日光・さくら | 隣接商圏との結びつきが強く、独立性は限定的 |
【サマリー|第3章 栃木県商圏構造の急所】
PG社が保有する住宅・建設業界戸籍データから栃木県の事業者プロフィールを抽出すると、注文住宅を中心とする住宅事業者は県内に約280〜340社存在する。年間棟数で30棟以上を扱う「事業規模ビルダー」は約30〜35社、100棟超の「中堅・大手」は10社以上にのぼる。
最上位グループでは、一条工務店(年間県内販売推定400〜500棟)が県全体トップを独走し、グランディハウス(年間県内販売推定700棟超、ただし大半が分譲建売)が県内分譲市場の絶対的覇者として君臨する。注文住宅領域に限定すれば一条工務店が首位、分譲領域を含めればグランディハウスが棟数首位という二頭立て構造である。
第2グループにはタマホーム、積水化学工業(セキスイハイム)、大和ハウス、ミサワホーム、積水ハウス、住友林業、ヒノキヤグループ(桧家住宅)、アイ工務店、トヨタウッドユーホーム等の全国メーカーが続く。
第3グループは地場の中堅・地縁工務店群。丸和住宅(ノーブルHD傘下)、第一住宅(同)、カクニシビルダー、栃木建築社、むぎくら等、各商圏に根を張る年間20〜100棟級のビルダーが多数存在する。栃木県の特徴は、地場の中堅工務店層が極めて厚い点で、これは栃木県の保守的な県民性と地縁型購買行動を反映している。
栃木県の住宅市場で、この5年で起きた最も注目すべき構造変化は、茨城県本社のノーブルホールディングスが栃木県へ広域進出し、県内地場ビルダーを傘下に取り込みつつある動き。これは47都道府県シリーズのなかでも、隣県資本の地場本拠ビルダーが他県の地場資本を統合した最大級の事例である。
ノーブルホールディングスは茨城県水戸市本社の地場本拠ビルダーで、年間供給棟数約750棟、累計13,000棟超の実績を持つ。同社は2022年10月に栃木県本社の丸和住宅を統合、その後も第一住宅・とちぎリフォーム・とちぎ未来開発を傘下に組み込み、栃木県内に強固なグループ体制を構築した。
栃木県の地場ビルダーが選んだ「ノーブルHD傘下入り」という道は、独立を維持して地縁シェアを守るか、隣県資本のグループに入って広域連携の恩恵を受けるか──この選択は今後、関東地方各県の地場ビルダーで繰り返し迫られる経営判断となる。
| パターン | 代表事例 | 特徴 |
|---|---|---|
| ①上場×M&A拡大型 | 北海道・ロゴスホールディングス | 東証グロース上場、買収による広域展開、年間1,000棟超 |
| ②未上場×地域多角化型 | 茨城県・ノーブルホールディングス | 未上場、リフォーム・施工・廃棄物処理を垂直統合、地域多角化 |
| ③分譲特化×全国展開型 | 栃木県・グランディハウス/ケイアイスター不動産 | 分譲建売主軸、関東広域・首都圏全域に展開 |
栃木県は「分譲特化×全国展開型」を実現した県として、47都道府県シリーズのなかで特異な地位を占める。
栃木県でも2023〜2024年にかけて複数の地場工務店・小規模ビルダーの倒産・廃業が発生。建材高騰(ナフサショック)×職人不足×2024年問題(労働時間規制)の三重圧力が中小建設業を直撃し、全国的に建設業の倒産は2024年に1,890件超と過去10年で最多を記録。
ケイアイスター不動産が2024年時点で栃木県本社の上場分譲大手として首都圏全域に展開し、年間供給棟数で全国トップクラスに達している。栃木県発祥の地場資本が全国規模の分譲企業へと成長した稀有な事例だ。
【サマリー|第4章 栃木県プレイヤー布陣の急所】
ピュアグロースは栃木県内に直接の顧問先を多数抱えているわけではないが、茨城県のクライアント企業(ノーブルホーム様含む)の栃木県進出・広域展開に伴って、栃木県市場の動向を継続的に把握する立場にある。栃木県固有の構造として印象的なのは、地場資本の経営力の高さである。グランディハウス・ケイアイスター不動産という栃木県本社の上場・準上場分譲大手2社の存在は、地場資本が全国レベルの経営力に到達できることを示す実証例として特異な地位を占める。
栃木県の住宅会社経営者にとって最大の固有論点が、「分譲市場の覇者・グランディハウスが県内に君臨している前提でどう戦うか」である。地場ビルダーが取れる現実的な戦略は、「自社建売中心の小規模分譲(月3〜10区画)×注文顧客への土地提案」の組み合わせにとどまる。グランディハウスが大規模分譲地を抑え、地場ビルダーが「すきま分譲+注文」で生計を立てる構造が、栃木県の地場ビルダー経営の現実である。
ナフサ価格高騰を起点とした樹脂・断熱材・ビニールクロス・配管材の値上げは、栃木県の住宅会社にも直撃。仕入先見直し・施工効率改善・商品ラインナップ簡素化の3方向の手を同時に打つ必要がある。栃木県では雷雨による停電リスクから蓄電池システム需要が他県より高く、蓄電池+太陽光のセット販売による単価上乗せが価格転嫁の有効手段となっている。
InstagramとYouTubeを中心とするSNS集客は、栃木県、特に宇都宮市・LRT沿線・小山市で首都圏並みのスピードで浸透している。宇都宮圏では「Instagram→展示場予約→来場前の指名買い形成」という首都圏型の購買行動が定着。地場ビルダーのSNS発信は関東地方平均と比較するとやや遅れている水準にあり、先行投資型のSNS戦略を取れる地場ビルダーには2〜3年で大きなアドバンテージを取る機会がある。
栃木県の住宅会社の最大の経営課題の一つが人材。新幹線で首都圏勤務が可能なため、首都圏企業との直接競合は他県より厳しい。新卒採用は宇都宮大学・宇都宮共和大学・帝京大学宇都宮キャンパス・白鴎大学・足利大学・地元工業高校等からの採用に依存する。
栃木県民は保守的・地縁重視・実直で知られる県民性を持つ。住宅選びにおいても、地元に長く根を張った地場ビルダーへの信頼が厚い。ただし、宇都宮市・LRT沿線・小山市では「地縁信頼で1社を選ぶ」県北・県東型と「徹底比較で選ぶ」宇都宮・首都圏通勤圏型の二層構造となっている。
【サマリー|第5章 栃木県現場論点の急所】
栃木県で「TOPビルダー」と呼ぶに値する規模の目安は、年間販売棟数300〜500棟、売上高130〜220億円、従業員数170〜300名、宇都宮+主要中核市2〜3商圏に拠点を構える規模。注文住宅単独で考えるなら年間300〜400棟、分譲を含めれば年間500〜700棟が目安。
第1段階(年間100棟まで):宇都宮ドミナント。宇都宮市内に本社・常設展示場2〜3拠点を集約し、宇都宮市内でのNo.2〜No.3シェアを取る。「宇都宮市内特定エリアでの一番店」というポジションを取れない会社は、栃木県全体での持続的トップを狙えない。
第2段階(年間100→250棟):宇都宮都市圏全域+隣接中核市への展開。さくら市・上三川町・高根沢町・芳賀町等の宇都宮都市圏に加え、小山市または那須塩原市への進出を本格化。展示場4〜6拠点・常設モデルハウス3〜5棟・自社分譲地100〜300区画保有が目安。
第3段階(年間250→500棟超):県内主要4〜5商圏制覇+県外展開。宇都宮+小山+栃木+佐野+足利+那須塩原の6商圏のうち4〜5商圏に拠点を構え、県内シェア4〜5%超を目指す。
栃木県でTOPビルダーになるための最大の構造的課題が「土地仕入機能の構築」。グランディハウス・ケイアイスター不動産という地場分譲大手2社が県内の大規模分譲適地をほぼ抑えているため、地場ビルダーが同じスケールで分譲事業を展開するのは現実的ではない。
取るべき土地仕入戦略は「小規模分譲(月3〜10区画)と注文顧客への土地提案に特化する第三の道」。グランディハウスが手を出さない「3〜10区画の小規模・変形地・中古再建築」に特化することで競合を避けられる。
第1層|新卒採用:宇都宮大学・宇都宮共和大学・帝京大学宇都宮キャンパス・白鴎大学・足利大学・地元工業高校との関係性を「定期接続」化。年間新卒15〜25名を継続的に獲得する。
第2層|中途採用:BizReach・Wantedlyを使ったダイレクトリクルーティング。一条工務店・グランディハウス・ケイアイスター不動産・大手ハウスメーカー等の経験者を年間5〜15名獲得できれば、営業生産性を一段引き上げられる。
第3層|首都圏Uターン採用:栃木県固有の強み。新卒3年目で年収500〜600万円、5年目で650〜800万円、10年目で900〜1,100万円というキャリアパスを明示し、首都圏企業の給与水準に並ぶレベルを作ることが、Uターン採用の前提条件。
第4層|異業種・リファラル:金融機関・地元企業からの異業種転職者の受け入れ、現職社員からのリファラル紹介の制度化。
注意点として、土地仕入のキーマン採用は別枠で考える必要がある。地元不動産業界・足利銀行・栃木銀行等の金融機関出身の経験者を引き抜く必要があり、ここの採用がTOPビルダー化の最大の難関となる。
栃木県の住宅会社の3年定着率を50〜60%台から80%以上に引き上げる制度設計。完全週休2日制(土日休み・展示場は交代制)、年間休日120日以上、産休・育休100%取得、新人保証年収400万円は最低ラインとして整備する。
商品:3層ラインナップ(プレミアム・ミドル・規格)を整備。栃木県は雷雨が多い気象特性のため、蓄電池システム+太陽光発電のセット標準装備、UA値0.5以下を全棟標準化、断熱等級6以上を最低ライン。
ブランド:YouTube・Instagramの自社オウンドメディア化は必須インフラ。栃木県は「魅力度ランキング下位」というネガティブブランドが県全体を覆っているため、地場ビルダーは「栃木を誇れる地域づくり」というナラティブを自社ブランドに組み込みやすい。
財務:自己資本比率35%以上、流動比率150%以上、年間粗利率28%以上を3つの財務指標として死守。メインバンク(足利銀行・栃木銀行)との長期関係構築が県内ビルダーの財務戦略の根幹。土地仕入を本格化する場合は、自己資本比率45%以上を目安にしたい。
【サマリー|第6章 栃木県TOPビルダー戦略の急所】
栃木県の住宅市場は、首都圏隣接×宇都宮一極×6中核市並立×地場分譲大手の覇権×隣県資本(ノーブルHD)の進出という五つの構造的特徴を持つ。一条工務店が県内に約14の展示場を配置し全国メーカー王者として首位を維持する一方、栃木県本社のグランディハウス・ケイアイスター不動産という地場分譲大手2社が県内分譲市場を支配する。「地場資本主導×隣県資本進出×全国メーカー脇役」として、栃木県は茨城県とも福島県とも異なる構造を持つ。本州の地方県のなかでは、「地場資本が全国レベルの分譲大手を生み出した県」として、47都道府県シリーズのなかで特異な地位を占める。
47都道府県シリーズの第9弾として、栃木県を取り上げた。次回・第10弾は群馬県編として、北関東3県の最後の県を分析する。前橋・高崎・太田・伊勢崎・桐生・館林の6商圏並立構造と、製造業集積地としての群馬県の住宅市場の独自性、栃木県・茨城県との県境エリアの取り合い構造を立体的に浮かび上がらせる予定。
ピュアグロースは、工務店・ハウスメーカー特化の経営コンサルとして、200社以上の顧問先・会員企業の成長率平均114%向上、顧客満足度日本一(自社調べ・178社回答)を達成しています。本レポートは、日本最大級の支援実績を持つ弊社の知見に基づき作成されました。
ピュアグロースは、住宅業界・建設業界に特化した経営コンサルティングファームとして、全国の工務店・ハウスメーカー経営者・住宅会社経営層と日々向き合っています。本47都道府県シリーズは、PG社が独自に整備する住宅・建設業界戸籍データ(約6,365社)、全国のクライアント企業との経営対話、現場一次情報を組み合わせて、住宅会社経営者・工務店経営者・ハウスメーカー支社長・住宅業界投資家の意思決定に資する情報を提供することを目的としています。
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筆者 宮内和也(みやうち・かずや)|ピュアグロース株式会社 代表取締役。船井総合研究所を経て独立、住宅・建設業界に特化した経営コンサルティングファームを経営。著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)。