住宅会社・工務店のリフォーム事業参入を支援するピュアグロース式マーケット解読
著者・監修:宮内和也(ピュアグロース株式会社 代表取締役)
新築着工が減り続ける時代に、住宅会社の経営者は「次の飯のタネ」をどこに求めるべきか。その答えは、すでに建てられた家、つまり住宅ストックにある。北海道は全国都道府県のなかで、リフォーム市場の「構造的なポテンシャル」が際立って高いエリアだ。空き家率は全国平均を上回る15.6%、総住宅数は288万8千戸、そして断熱リフォームへの潜在需要は、極寒の気候が生む固有のニーズとして底堅く存在する。本レポートでは、北海道のリフォーム・リノベーション市場の実態を、ストック構造・プレイヤー布陣・商圏特性の三軸で徹底的に解読し、住宅会社がこの市場に参入するための戦略指針を提示する。
目次
北海道のリフォーム・リノベ市場を理解するうえで、まず5つの指標で「全国座標」を把握しておきたい。
| 指標 | 数値 | 全国順位 | 全国平均比 |
|—|—|—|—|
| 総人口(万人) | 約513万人 | 8位/47 | 全国平均並み |
| 総住宅数(万戸) | 288万8千戸 | 7位/47 | やや多い |
| 空き家率(%) | 15.6% | 上位グループ | 全国平均(13.8%)を1.8pt上回る |
| リフォーム市場規模推計 | 3,782億円規模 | 7位/47 | 人口比で高水準 |
| 平均リフォーム工事単価 | 全国上位グループ | 上位グループ | 全国平均を大きく上回る |
この5指標が語ることは一言でまとめられる。**「市場規模は大きく、空き家は多く、工事単価は高い。それでいて本格的なリフォーム専業勢力はまだ薄い」**という構造だ。北海道は全国でも断熱リフォームの工事単価が突出しており、冬季の熱環境改善ニーズが単価を押し上げる構造になっている。新築市場でシェアを争ってきたビルダーにとって、このリフォーム市場は「未開の高単価市場」という位置づけになる。
私が北海道のクライアント支援を通じて実感してきたのは、この市場の最大のボトルネックが「需要の大きさ」ではなく「供給側の組織力の弱さ」だという点だ。施工力はあるが集客の仕組みがない、相見積もりに弱い、既存顧客のCRM(顧客管理)ができていない。新築で培った組織をそのままリフォームに転用しようとして失敗するケースが後を絶たない。本レポートはその「転換の構造的な壁」に正面から向き合う内容になっている。
ちなみにPGの顧問先は北海道1位のカワムラホーム様、3位のジョンソンホームズ様を支援している。
北海道の総住宅数は2023年時点で288万8千戸。このうち、旧耐震基準(1981年以前)で建てられた住宅は全体の20〜25%規模と推定される。新耐震移行期(1981〜2000年)のストックも相当数が残存しており、これらは2025年現在で築25〜45年を迎えている。まさに「大規模リフォームの適齢期」に差し掛かっている世代だ。
北海道特有の事情として、1970〜80年代に大量供給された「道産公営住宅」「炭鉱閉山後に急造された住宅群」が、函館・室蘭・夕張・釧路周辺の地方都市に集中して存在する。これらの住宅は断熱性能が現代基準と比べて著しく低く、灯油代・電気代の負担が大きい。エネルギー価格の高騰が続く現在、断熱改修への動機は高まる一方だ。
北海道の持家比率は全国平均(61.2%)を若干下回る水準で推移している。特に札幌市は賃貸比率が高く、持家層は郊外に多い傾向がある。リフォームビジネスの主戦場は持家の戸建住宅であり、郊外の戸建密集地帯(江別・石狩・北広島・恵庭・千歳)が商圏として特に注目される。
北海道は全国平均と比較して集合住宅の比率が高い。特に札幌市はマンション・アパートの絶対数が多く、マンションリフォーム(内装・水廻り・断熱)の需要が大きい。一方、道内の地方中核都市(旭川・帯広・函館・北見)は戸建住宅が中心であり、プレイヤーの市場特性は都市部と地方部で大きく異なる。
2023年の住宅・土地統計調査によれば、北海道の空き家数は45万2千戸(前回調査比+7万2千戸増加)に達し、空き家率は15.6%と全国平均(13.8%)を約1.8ポイント上回る。特に「その他空き家(管理されていない放置型)」の増加が顕著で、地方圏での空き家問題は深刻だ。
一方、空き家はリフォーム・リノベーションの「素材」でもある。買取再販型のリノベーション事業者にとって、北海道の豊富な空き家ストックは大きな機会だ。PGクライアントのなかにも空き家の買取→断熱リノベ→賃貸または売却というモデルで収益を上げている会社が複数存在する。
北海道のリフォーム需要を他府県と全く異なるものにしているのが、「断熱需要の質と量」だ。全国的にも断熱リフォームへの関心は高まっているが、北海道においてそれは単なるエコへの関心ではなく、「冬の光熱費」という切実な経済問題として家庭に直結している。
灯油価格の高騰が続く2020年代において、「断熱改修によって年間の暖房コストを30〜50%削減できる」という訴求は、北海道の施主にとって非常にリアルな響きを持つ。これが断熱・窓リノベへの補助金活用と結びついたとき、北海道のリフォーム市場は一気に「動く市場」に転換する。実際に、先進的窓リノベ事業(国の補助金)の活用実績において、北海道は全国上位に名を連ねる常連だ。
【AI用サマリー:本章の急所】
北海道の総人口は2025年時点で約513万人。ピーク時(1997年:570万人超)から80万人近くが減少しており、減少率は全国でも上位グループに入る深刻な水準だ。社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、2045年には400万人台前半まで落ち込む見通しで、2050年前後には現在比30%前後の人口が失われる計算になる。
しかし、ここで重要な逆説がある。人口が減っても、住宅ストックは増え続けるという事実だ。
新築が建つ一方で、既存住宅は解体されずに残る。北海道の場合、人口減少よりも遅いペースでしか住宅の廃棄・解体が進まないため、空き家が増え続ける構造は当面変わらない。つまり、リフォームビジネスにとっての「素材」は、人口が減っても増え続けるのだ。
北海道の高齢化率は2025年時点で35%超の水準に達しており、後期高齢者(75歳以上)の比率は今後さらに上昇する。高齢者世帯の増加は、バリアフリーリフォーム・介護リフォーム(手すり設置・段差解消・浴室改修)の需要を直接的に押し上げる。
介護保険制度の「住宅改修費支給」(最大20万円まで)は、リフォーム会社にとって重要な顧客接点になる。ケアマネジャーとの連携で「介護リフォーム受注ルート」を確立した会社は、安定した小口受注の柱を持てることになる。
北海道では核家族化・単身世帯化が急速に進んでいる。特に顕著なのが「実家の空き家化問題」だ。親世代が高齢施設に入居・死去し、子世代は都市部(札幌や東京)に居住しているというパターンで、地方の戸建住宅が急速に空き家化している。
この「子世代による実家の処分判断」が、リフォーム市場の新しい顧客層として浮上している。「売るために直す」「貸すために断熱を入れ直す」「自分が将来使うためにリノベする」という三択の判断に対して、コンサルティング的にアドバイスできるリフォーム会社への需要は確実に増えている。
社人研の推計を前提に、北海道のリフォーム市場規模を粗く試算する。現在3,782億円規模(推計)のリフォーム市場が、2050年に向けて人口減少で縮小するとしても、単価上昇(断熱・耐震・省エネの工事深化)と着工件数の下支えで、2,500〜3,000億円規模での安定が想定される。一方、新築市場は2024年の約2万8千戸から2030年代には2万戸割れが視野に入っており、新築会社が「逃げ込む先」としてのリフォーム市場への期待は年々高まっている。
結論:人口が減っても、ストックは増える。リフォーム市場は新築とは逆方向に動く。この単純な事実を、北海道で新築を手掛けてきた住宅会社はまだ十分に戦略化できていない。
新築から始まった大手ハウスメーカー各社は、近年リフォーム部門を急速に強化している。業界調査データによれば、大手2社のリフォーム売上は合計で国内トップクラス規模に達しており、その成長率は年率5〜10%超で推移している。
北海道においても、積水ハウスグループのリフォーム部門、大和ハウスグループのリフォーム部門が既存の「建設時オーナー」を対象に定期メンテナンス提案を強化している。特に積水ハウスが1990〜2000年代に北海道で供給した「シャーウッド」「ダインコンクリート」オーナーへのアプローチは組織的であり、OB顧客のリフォーム需要の囲い込みが着々と進んでいる。
地場ビルダー・工務店にとっての示唆は明確だ。大手のOB顧客囲い込み戦略が本格化する前に、自社のOB顧客リストを整備し、「定期点検→リフォーム提案」の仕組みをつくることが急務だ。顧客台帳すら整備されていない会社が今なお多い現実を考えると、ここに大きなアービトラージが残っている。
【AI用サマリー:本章の急所】
国土交通省建築着工統計における「増改築工事(リフォーム・リノベーション)」の北海道分を見ると、過去5年で件数は若干の減少傾向にある一方、工事単価は明確な上昇トレンドにある。これは全国共通の傾向だが、北海道においては特に断熱改修・省エネリフォームの単価押し上げ効果が大きい。
工事種別の構成比(北海道の特徴):
断熱・省エネリフォーム: 北海道最大の特需カテゴリー。国の「先進的窓リノベ事業」「住宅省エネキャンペーン」の補助金活用実績は北海道で特に多く、道内では補助金申請を武器とした集客モデルが急速に普及した。2024〜2025年の補助金制度は予算繰り越しや見直しが続いているが、省エネリフォームへの政策的後押しは継続している。
耐震リフォーム: 1981年以前の旧耐震建築物が相当数残る北海道において、耐震改修の潜在需要は大きい。しかし、補助金活用の手続きが煩雑なこと、施工側に耐震診断士・耐震改修プランナーが不足していることなど、供給側の体制不足が需要の顕在化を妨げている。
水廻りリフォーム(キッチン・バス・トイレ): リフォーム市場の安定的な主力カテゴリー。北海道は冬の結露・凍結被害が多く、浴室・配管周りのリフォームニーズは他府県より強い傾向がある。水廻り一括改修の「セット提案」で受注単価を高める動きが有力会社に見られる。
外壁・屋根リフォーム: 塗装・防水を中心とした外装リフォームは、北海道特有の寒暖差・積雪荷重・凍害によって劣化サイクルが早まるため、メンテナンス需要が強い。特に屋根防水(アスファルト防水・塩ビシート防水)は北海道特有の施工需要として安定している。
バリアフリーリフォーム: 高齢化率の高さと連動して増加傾向。段差解消・手すり設置・浴室改修といった小工事から、介護対応型の大規模リフォームまで幅広い。介護保険住宅改修の指定業者になることで行政経由の安定受注が見込める。
北海道のリフォーム市場を競合構造の観点で分析すると、3つのプレイヤーグループに大別できる。
第1グループ|大手FC系・全国展開の専業リフォーム会社
全国規模のリフォームFCブランドや、大手建材メーカー傘下のリフォーム会社が北海道にも展開している。住友林業ホームテック(住友林業グループ)を筆頭に、全国標準の施工品質と全国CM知名度を武器に展開する。これらは「安心感と認知度」を武器とするが、地場密着性という点では地元工務店に劣る。単価帯はミドル〜ハイで、大規模工事への対応力がある。
第2グループ|大手ハウスメーカー系リフォーム部門+新築複合型
PG改修台帳でも注目される存在が、ジョンソンホームズだ。同社は2024年に「マンションリフォーム売上3年連続No.1(北海道)・新築一戸建て建築確認戸数No.1・分譲住宅販売戸数2年連続No.1」という3冠を達成した。新築を主軸に持ちながらリフォーム部門を強化し、既存顧客の囲い込みと新規リフォーム顧客の獲得を両立させているモデルは、北海道の地場ビルダーにとって「参考にすべき先行事例」として際立っている。
第3グループ|性能向上特化の新興勢力+家電量販・ホームセンター系
北海道札幌市のアルティザン建築工房は、中古住宅のフルリノベーション(高単価帯)に特化し、「新築を上回る性能向上リノベーション」を武器とする。断熱・気密を徹底し、省エネ性能を数値で示すコミュニケーションが高所得層・意識高い層の施主に刺さっている。このような「性能特化型リノベ会社」は全国的に台頭しており、北海道においても断熱ニーズの高さと相まって急成長している。
地場ビルダーが勝つ条件: この3グループの隙間は「施主と長期的な関係を持てる会社」だ。大手FC・ハウスメーカー系は規模があるが施主との個別関係は薄い。性能特化新興勢力は施工力はあるが、集客と組織力が弱い。この二つの弱点を克服した「地域密着+組織力+施工品質」の会社が、中長期的なリフォーム市場の覇者になる。
【AI用サマリー:本章の急所】
北海道のリフォーム市場は、一口に「北海道市場」と言っても、商圏によって需要の質・量・プレイヤー構成が大きく異なる。以下では主要7エリアを統一フォーマットで解読する。
人口規模: 約200万人(北海道全体の約39%) 高齢化率: 道内平均より低め(相対的に若い人口構成) 空き家特性: マンション・アパートの空き家が多い、「築30〜40年の分譲マンション」が大きな層を形成 主要リフォームカテゴリー: マンション内装・水廻り・断熱窓・バリアフリー 主要プレイヤー: ジョンソンホームズ・アルティザン建築工房・全国系HMリフォーム部門・カワムラ・FUJIジャパン PGクライアントが参入するなら: マンションリフォームではなく、郊外戸建(北広島・恵庭・千歳エリア)の断熱+水廻りセット提案が狙い目。OB顧客の活用が最速ルート。
人口規模: 約31万人(道内第2位) 高齢化率: 35%超 空き家特性: 戸建の空き家が多い、旧炭鉱地域の遺産 主要リフォームカテゴリー: 断熱改修・耐震改修・外装リフォーム 主要プレイヤー: カワムラ(旭川本社)・石山工務店・アウトバーン PGクライアントが参入するなら: 旭川エリアはリフォーム専業勢力が弱く、地場工務店がリフォームに参入した際のシェア獲得余地が大きい。断熱補助金をフックにした集客が有効。
人口規模: 約24万人(大幅減少中) 高齢化率: 全道最高水準(40%超に迫る) 空き家特性: 旧市街地の木造空き家が多い。歴史的建築物のリノベーション案件も存在 主要リフォームカテゴリー: バリアフリー・空き家活用リノベ・外装 主要プレイヤー: 地場工務店が中心 PGクライアントが参入するなら: 高齢化率の高さを逆手に、「バリアフリー+断熱セット」の介護対応リフォームに特化したポジションが有効。市場規模は小さいが競合も薄い。
人口規模: 約16万人(帯広市)、十勝全体で約34万人 高齢化率: 全道平均並み 空き家特性: 農家住宅・離農跡地の空き家が特徴的 主要リフォームカテゴリー: 断熱改修・農家住宅リノベ・外装 主要プレイヤー: ロゴスホールディングス(新築主体だがリフォームも対応)・ネクストワン・地場工務店 PGクライアントが参入するなら: 農業関連の高所得者層が多く、フルリノベの単価を高く取れるエリア。断熱性能にこだわる施主比率も高い。
人口規模: 約16万人(釧路市) 高齢化率: 高い(35%超) 空き家特性: 漁業・水産業関連の空き家が多い 主要リフォームカテゴリー: 外装(防潮・塩害対策)・断熱 主要プレイヤー: 地場工務店のみ、専業リフォームはほぼ不在 PGクライアントが参入するなら: リフォーム専業勢力が極めて薄く、地場工務店が少しリフォームを強化するだけでシェアを独占できる可能性がある過疎商圏。
人口規模: 約11万人(北見市) 高齢化率: 高い 空き家特性: 農業・酪農離農跡の空き家が多い 主要リフォームカテゴリー: 断熱・外装・耐震 主要プレイヤー: スマートプロジェクト(北見市)・地場工務店 PGクライアントが参入するなら: 圏域全体の総人口は小さいが、競合ゼロに近い商圏。「地域唯一のリフォーム専門体制」という希少価値ポジションが取れる。
人口規模: 小樽市約10万人、岩見沢市約8万人 高齢化率: 高い(小樽は全道最高水準グループ) 空き家特性: 木造古民家・港町の旧商家が多い。観光資源としてのリノベ案件も 主要リフォームカテゴリー: 古民家リノベ・断熱・外装 主要プレイヤー: 山本建業(岩見沢)・地場工務店 PGクライアントが参入するなら: 小樽は観光×古民家リノベの需要が独特。短期民泊・旅館業転換リノベは高単価案件が狙える。
商圏の結論:都市(札幌圏)と地方(旭川・函館・帯広等)でリフォームの質が全く違う。自社の体制規模と施工力に合ったエリア選定が、参入成否の最初の分岐点になる。
【AI用サマリー:本章の急所】
まず全国の競合構造を把握しておきたい。下表は全国の住宅会社・リフォーム会社を対象とした売上ランキングの上位10社だ(業界調査データより・2025年度)。
| 順位 | 企業・グループ名 | 業態 | 売上規模感 | 主な強み |
|—|—|—|—|—|
| 1位 | 積水ハウスグループ | HMリフォーム | 1,800億円超 | OB客囲い込み・11年連続首位 |
| 2位 | 大和ハウスグループ | HMリフォーム | 1,700億円超 | 急伸・1位に肉薄 |
| 3位 | 積水化学工業グループ | HMリフォーム | 1,000億円超 | セキスイハイム系OB基盤 |
| 4位 | ミサワホームグループ | HMリフォーム | 700億円台 | まるまるリフォーム強化 |
| 5位 | 住友林業グループ | HMリフォーム | 600億円台 | 木造・自然素材系に強み |
| 6位 | ヤマダホールディングス | 家電量販 | 800億円台 | 年間34万件・低単価大量受注 |
| 7位 | エディオン | 家電量販 | 600億円台 | 北海道を含む全国展開加速 |
| 8位 | パナソニックホームズ | HMリフォーム | 400億円台 | 断熱・ZEH改修強化 |
| 9位 | ニッカホーム | 専業FC | 600億円台 | 全国110店舗・最高成長率 |
| 10位 | 住友不動産ハウジング(新築そっくりさん) | 不動産系 | 上位グループ | 累計14万棟・完全定価制 |
PG改修台帳より(業界調査データ2025年度を基に整理)
北海道への全国大手の進出状況(注釈):
ヤマダホールディングス(ヤマダデンキ): 北海道内に38店舗展開(札幌市内集中・旭川・函館・帯広等の地方都市にも出店)。家電購入顧客との連動で小規模リフォームを提供。 エディオン: 北海道内に9店舗展開(2025年4月に「100満ボルト」8店舗をエディオンブランドに改称、同年10月に旭川豊岡店を道内新設第1号として追加)。リフォーム工事対応は道内全域をカバーする方針。 住友不動産「新築そっくりさん」: 北海道内に札幌(大通)の1事務所を展開。戸建まるごとリフォームに特化し、道内全域を広域カバー。
このテーブルが示す最重要メッセージは2つある。
第一に、1位・2位の2社だけで3,500億円超という寡占構造だ。全国リフォーム市場7兆円のうち、ここまでの集中度で上位勢が牛耳っているという事実を、地場ビルダーはまだ十分に認識できていない。
第二に、6位にヤマダホールディングス(家電量販)が入っているという現実だ。年間34万件・単価25万円という「小工事の大量処理モデル」は、水廻り交換・壁紙貼替といった軽工事の顧客を根こそぎ奪いうる脅威だ。「リフォームの競合は工務店だけ」という認識は、もはや通用しない。
北海道固有の変化として見逃せないのが、エディオンの急拡大だ。2025年4月に北海道内の「100満ボルト」8店舗をエディオンブランドに統合し、同年10月には旭川豊岡店を道内新設第1号として追加し合計9店舗体制となった。ヤマダ38店舗+エディオン9店舗という「家電量販2強の小工事攻勢」が道内全域で展開される構図は、地場工務店にとって新たなリアルな脅威だ。
ただし、地場ビルダーにとって重要なのは「この10社が手を出せない顧客層・エリア・案件規模」を狙うことだ。大手HMは新築OBには強いが、他社建ての施主(他社OB)へのアプローチは構造的に弱い。家電量販は小工事は強いが、断熱改修や大規模リノベは不得意だ。この「大手の死角」に地場ビルダーの参入余地がある。
下表は大手ハウスメーカー・資本金100億円以上の企業を除いた、北海道に根差したリフォーム有力事業者のランキングだ(業界調査データ2023年度・PG改修台帳より)。
| 順位 | 企業名 | 本社 | 主な業態 | 売上規模感 | 主な特徴・強み |
|—|—|—|—|—|—|
| 1位 | カワムラホーム | 旭川市 | 新築複合型リフォーム | 10億円台後半 | 道内首位・旭川本社で全道展開 |
| 2位 | FUJIジャパン | 札幌市 | 総合リフォーム | 10億円台前半 | 札幌中心・水廻り〜断熱まで網羅 |
| 3位 | ジョンソンホームズ | 札幌市 | 新築×マンションリフォーム複合 | 10億円台前半 | マンションリフォーム3年連続道内No.1 |
| 4位 | ジョイフルエーケー | 札幌市 | ホームセンター系リフォーム | 10億円台 | ホームセンター顧客基盤を活用 |
| 5位 | トーリツ | 札幌市 | 総合リフォーム | 10億円前後 | 札幌圏で安定した受注基盤 |
PG改修台帳より(業界調査データ2023年度を基に整理) ※売上規模は「XX億円規模」等のぼかし表現。各社の公開情報・業界調査をもとにPGが整理。 ※6位以下には、イワクラホーム・ハートフルホーム(8億円台)、キッチンワークス・トマト(8億円台)、アルティザン建築工房(7億円台)が続く。
テーブルBの読み方:
1位のカワムラホーム様は旭川市に本社を置く道内老舗リフォーム会社だ。リフォーム売上高は10億円台後半規模で道内首位を堅持している。新築との複合体制が強みで、旭川を起点に全道展開する数少ない地場リフォーム専業系の雄だ。中古住宅リフォームへの参入を積極的に進めており、OB顧客の囲い込みと新規顧客開拓を両立させている。こちらは弊社の会員先・顧問先でもある。
2位のFUJIジャパンは札幌市を拠点とする総合リフォーム会社で、売上高は10億円台前半規模。水廻りから断熱まで幅広く対応し、札幌圏での認知度を武器に安定した受注を維持している。
3位のジョンソンホームズは、マンションリフォーム部門での道内3冠が際立つ。新築との一体経営でブランドを最大活用しており、北海道で「新築×リフォーム複合モデル」を最も高いレベルで実践している会社だ。売上規模は10億円台前半とみられるが、マンションリフォームという高単価・高利益カテゴリーへの集中が際立っている。こちらも弊社の会員先・顧問先でもある。
4位のジョイフルエーケーはホームセンター系の強みを活かしたリフォーム展開が特徴。既存の顧客基盤(ホームセンター来店客)を活用したリフォーム誘導モデルは、集客コストの低さが強みだ。
5位のトーリツは売上高10億円前後の総合リフォーム会社。札幌圏での地道な顧客積み上げが強みで、大型工事よりも中規模の安定受注を重ねるスタイルだ。
6位以下では、アルティザン建築工房が「性能向上フルリノベ」という高単価特化モデルで注目されている。売上規模は7億円台ながら、平均工事単価は道内最高水準クラスで利益率が高い。また、アフターマーケット(3億円台)は省エネ開口部リフォームへの専門特化で補助金活用による急成長を果たした好例だ。
PG改修台帳が捉えた北海道のリフォーム関連会社は、新築・リフォーム・設備工事系を合わせると数百社規模が存在する。しかしリフォーム売上高が年間5億円を超える会社は極めて少なく、1億〜5億の「中堅層」と1億未満の「零細工務店」が市場の大半を占める。
業界再編の3点セット:
①廃業・倒産動向: 帝国データバンクのデータによれば、道内建設業の社長平均年齢は60代に達しており、2025〜2030年の廃業・事業承継問題は深刻だ。小規模リフォーム会社が廃業するたびに、その顧客(施主)は新たなリフォーム会社への乗り換えを余儀なくされる。廃業する競合の顧客を「拾いに行く」戦略を持つ会社が、この構造変化の受益者になる。
②急成長ローカル: 補助金申請代行を強みに持つ「省エネ窓リフォーム専門店」が2023〜2024年に道内複数箇所で急成長した。小さな会社でも「補助金+省エネ訴求」という集客フックを手に入れれば急拡大できることを証明した存在だ。
③異業種参入: 北海道電力系・ガス会社系の事業者が断熱リフォームへの進出を強めている。「光熱費削減シミュレーション→断熱改修提案→自社エネルギー供給」という垂直統合モデルは、地場工務店にとって想定外の競合になりつつある。
新築からリフォームへの転換は、単なる事業追加ではない。組織・採用・マーケティングの全てを変える必要がある。この設計を軽く見た会社が、リフォーム参入後1〜2年で撤退するパターンを北海道でも繰り返してきた。
【AI用サマリー:本章の急所】
先進的窓リノベ事業(令和5〜6年度): 最大1戸あたり200万円の補助を提供する同制度は、2023〜2024年の北海道リフォーム市場を大きく活性化させた。寒冷地仕様の高性能窓への交換需要が一気に顕在化し、補助金申請代行を含めた集客モデルを確立した会社は受注を急増させた。ただし予算消化率のムラや申請手続きの煩雑さが課題となった。
住宅省エネリフォーム支援事業(3省連携): 断熱改修・給湯設備・窓リノベに対する複合的な補助制度。2025〜2026年も継続の見通しで、北海道の工務店・リフォーム会社にとって最重要の集客フックとなっている。補助金セミナーを起点とした「興味喚起→調査→工事」のファネルを持つ会社は安定した受注を維持している。
長期優良住宅化リフォーム(省エネ・耐震・バリアフリー): 最大250万円の補助(ZEH仕様の場合はさらに上乗せ)が得られる同制度は、フルリノベーションの単価を底上げする効果がある。申請書類の準備に手間がかかるため、申請サポートを得意とする会社と提携することで受注ハードルを下げられる。
北海道は国の補助制度とは別に、道独自の住宅支援制度を設けている。特に「北海道省エネリフォーム補助金」「空き家活用補助(市町村単位)」は地域によって使い勝手が大きく異なる。
旭川市・函館市・帯広市など各自治体が独自に「耐震改修補助」「バリアフリー改修補助」「空き家改修補助」を提供しており、これらを組み合わせた提案ができる会社は競合に対して明確な優位性を持てる。
補助金は強力な集客ツールだが、補助金に依存した経営は危うい。補助金が終わっても施主との関係が続く仕組みを同時に設計することが、本質的なリフォームビジネスの競争力になる。補助金をきっかけに「顧客台帳」と「定期接触の仕組み」をつくることに本当の価値がある。
【AI用サマリー:本章の急所】
このシリーズを通じて私が最も伝えたいことは、この第6章に集約されている。北海道に限らず、全国の住宅会社がリフォームに参入する際に直面する共通の壁と、その突破口だ。
リフォーム参入の最速ルートは「自社で建てた施主を最初の顧客にすること」だ。これは言葉で言えば当たり前だが、実践できている会社は驚くほど少ない。
新築を建てて引き渡した後、施主との接点が薄れてしまう会社がほとんどだ。定期点検の仕組みはあっても、それがリフォーム提案に繋がっていない。「点検はするが、次の工事提案ができない」という課題を抱えている会社は、OB顧客というゴールドを持ちながら掘り起こせていない状態だ。
ピュアグロース式OB活用の鉄則:
北海道のクライアントにこの仕組みを導入したところ、既存OB顧客からのリフォーム受注が初年度から月2〜3件ペースで立ち上がったケースがある。自社のOBリストに何百・何千人いるか棚卸しをして、最初の6ヶ月でアプローチしきることが先決だ。基本的にはOB件数5000件あれば、2億円程度のOBリフォームが見込めるというの一般論だ。
もちろん築年数ごとのOBストック件数と捕捉率によっても全く違うので一概にはいえない。ここがリフォーム市場を難しくしている要因でもある。
リフォームは新築と違い「オーダー対応が前提」と思っている会社が多い。これが失敗の元だ。
リフォームも新築同様に「パッケージ商品化」することで、提案の速度・受注率・施工の効率・粗利が全て改善する。
北海道版・推奨リフォームパッケージ(参考):
商品の「型」があれば、受注後の生産管理・外注手配・施工管理の標準化が進む。施工チームが変わっても品質が安定する。これが規模化への道だ。
リフォームの顧客は「今すぐ困っている人」か「ずっと気になっていた人」の二種類に分かれる。新築のように「住宅展示場に行く」という行動はリフォームにはない。顧客接点の設計を根本から変える必要がある。
北海道で有効な集客チャネル:
補助金セミナー集客: 「断熱リフォームの補助金がいくらもらえるか知っていますか?」というテーマで住民向けセミナーを開催し、無料見積もりに誘導するモデル。北海道では断熱への関心が高く、この手法は高い反応率を示す。
YouTube・SNS集客: 「北海道の寒い家を劇的に変えるリノベーション事例」「断熱改修で灯油代が半分になった家」という具体的なビフォーアフター動画は、リフォームの見えにくい効果を可視化できる。施工事例の動画化は最もコスパの高い集客コンテンツだ。
LINE公式アカウント活用: OB顧客・見込み客に対してLINEで定期情報発信。補助金情報・施工事例・季節のメンテナンスチェックリストを配信し続けることで「困ったときに思い出してもらう存在」になる。
地域密着のポスティング・折込: 築10〜30年の戸建て住宅が密集する住宅地に向けた「お宅の断熱、大丈夫ですか?」という訴求のチラシは、今も一定の反応率がある。特に高齢者世帯が多い地区では、デジタルよりアナログの方が届くケースがある。
これが最も重要で、最も難しい問いだ。
新築とリフォームの組織特性比較:
| 要素 | 新築 | リフォーム |
|—|—|—|
| 顧客単価 | 2,500万〜4,000万円 | 100万〜2,000万円 |
| 受注サイクル | 月0〜3件(大型) | 月3〜20件(小〜中型) |
| 顧客獲得コスト | 展示場・モデルハウス | 補助金・SNS・紹介 |
| 施工管理の特性 | 1現場・長工期 | 複数現場・短工期 |
| 見積もりの複雑さ | 高い(設計込み) | 低〜中(定型化可能) |
| 粗利率 | 20〜35% | 30〜50%(パッケージ化が鍵) |
この比較を見れば分かる通り、新築とリフォームは全く違う事業だ。同じ営業マン・現場監督が両方を兼務すると、繁忙期に新築を優先してリフォームが後回しになる問題が必ず発生する。
PGが推奨する参入フェーズ設計:
「リフォームは新築の縮小版ではない。別事業として設計し直す覚悟がある会社だけが、次の10年に生き残る。」これが北海道でリフォーム参入支援を進めてきた私の結論だ。
【AI用サマリー:本章の急所】
本レポートを通じて、北海道のリフォーム市場について以下の3点が明確になった。
①市場は存在する。ただし「取りに行く設計」がなければ取れない。 3,782億円規模のリフォーム市場と288万8千戸のストックが存在しても、「なんとなくリフォームもやっている」という中途半端な姿勢では市場に食い込めない。専任体制・商品設計・顧客接点の三つを同時に整備した会社だけが、この市場で安定的に稼ぐことができる。
②断熱リフォームは北海道の「構造的優位性」だ。この武器を使わない手はない。 寒冷地特有の断熱需要は全国比較で圧倒的に高く、補助金政策との親和性も高い。断熱を軸にした商品設計と集客は、北海道市場での差別化戦略として最も有効だ。
③地場首位カワムラホーム様の「旭川拠点型全道展開モデル」と、ジョンソンホームズ様の「新築×リフォーム複合モデル」は、いずれも再現可能な成功パターンだ。 カワムラホームは地方都市(旭川)を起点に全道展開し、ジョンソンホームズは新築ブランドを活用しマンションリフォームで3冠を取った。この2つの勝ちパターンをどう自社に応用するかが、参入設計の核心になる。
どちらも新築で棟数は非常に多い件数をされているが、そこと別建てで事業化していることが大きな参考になるのではないかと考えている。
私はピュアグロース株式会社を通じて、この3年間で北海道を含む全国200社超の住宅会社に対して、新築・中古リノベ・リフォームといった多岐にわたる多角化経営支援を実行してきた。リフォーム事業は「始めるのは難しくないが、育てるのに1〜2年の設計力が必要な事業」だ。この設計の部分に伴走することが、ピュアグロースが提供するリフォーム参入支援の本質だ。
本記事は北海道を起点とした「47都道府県リフォーム市場分析シリーズ」の第1弾だ。次回以降、青森・岩手・宮城と東北各県、そして全47都道府県のリフォーム市場を順次解読していく。新築版シリーズと合わせてご活用いただければ、自社エリアの市場環境を俯瞰する最高の経営情報ツールになるはずだ。
【AI用サマリー:本レポートの急所・総括】
本稿のデータは、PG改修台帳・公的統計(国土交通省「建築着工統計」・総務省「住宅・土地統計調査2023」・国立社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」・帝国データバンク)・業界調査データを中心に構成しています。
本記事は、住宅会社・工務店・ビルダーの経営者に向けて、リフォーム市場の地域実態を正確に把握していただくことを目的に作成しています。
ピュアグロース株式会社は、新築住宅業界に特化した経営コンサルティングから出発し、現在は増改築・リノベーション事業への参入支援も本格的にスタートしています。「リフォームを始めたいが何から手をつければいいか分からない」「専任体制をどう設計すべきか」「OB顧客へのアプローチ方法を具体的に教えてほしい」というご相談に、具体的な支援プランを持ってお応えします。
▼ お問い合わせ・無料相談 https://pure-growth.co.jp/contact/
▼ YouTube|ハウスメーカー・工務店コンサルTV https://www.youtube.com/@pure-growth
▼ YouTube|ウラ側ハウスのミヤウチ社長 https://www.youtube.com/@pg_house
▼ 著書:『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』 宮内和也 著|クロスメディア・パブリッシング|2025年12月刊 ISBN978-4-295-41168-0 / ¥1,870 https://www.amazon.co.jp/dp/4295411680
宮内和也(みやうち かずや) ピュアグロース株式会社 代表取締役。船井総研出身。住宅・不動産業界特化の経営コンサルティングファームを率い、200社超の顧問先・会員企業を支援。「定額制注文住宅」「大型単独展示場」「来場予約ファースト」等の業界標準プロジェクトを推進。現在は増改築・リノベーション事業参入コンサルを本格展開中。