【47都道府県マーケットレポート㉜】広島県の住宅市場分析|人口動態・着工構造・主要プレイヤーから読み解く2026年の経営戦略・工務店経営を読み解く

2026.05.16 2026.05.16

広島県の住宅市場は、中国地方の盟主として独自の構造を持つ「大手王国と地場精鋭の並立市場」だ。

全国でも数少ない「全国大手ハウスメーカーがトップに君臨し続ける市場」として知られる広島県は、大和ハウス工業を筆頭に積水ハウス・積水化学工業(セキスイハイム)・一条工務店という全国大手が上位を占め続けてきた。人口約270万人・世帯数約126万世帯という中国地方最大の市場規模と、政令指定都市・広島市(人口約121万人)を擁する都市集積が、展示場集客力と組織力を持つ全国大手に有利な競争環境を生み出してきた。

しかし2020年代に入り、その構造が静かに変わりつつある。アイ工務店が広島エリアに8拠点10展示場体制を整え「近畿圏の勢い」をそのままぶつけてきている。ライフデザイン・カバヤが岡山から連続的に展示場を増設し、隣県最大手の物量で広島市場を侵食し始めている。一方、地場からはトータテハウジング・アイデザインホーム・山根木材ホームといった精鋭ビルダーが「性能×デザイン×地域密着」という独自のポジションを磨き続けている。

本稿は、住宅会社・工務店・ハウスメーカーの経営者・幹部・マーケターを対象に、広島県市場の構造を徹底的に解剖する。基礎データ、着工構造の特性、エリア別特性、ランキングの変動、大和ハウス工業の広島市場での戦略、トータテ社・アイデザインホーム・アイ工務店の動向詳細、そして地場ビルダーが勝ちきるための7つの提言まで、約20,000字で網羅する。


目次

第1章|広島県の基礎データ|住宅会社・工務店・ハウスメーカーが押さえるべき市場規模と人口動態

広島県の人口・世帯・着工:「中国地方最大市場」の現在地

広島県の人口は約270.4万人(2025年)、総世帯数は約125.8万世帯。中国地方の中で岡山県(約183万人)を大きく引き離す最大規模の市場であり、四国・山陰を含む中四国圏全体でも突出した存在だ。

人口動態は緩やかな減少傾向で推移している。広島市では2019年以降、転出超過が続いており、製造業の集積する西部・南部から、東広島市など近郊の住宅地へのシフトが続く。広島市(政令指定都市・人口約121万人)と福山市(人口約46万人)の二大都市が全県人口の約62%を占める構造は、今後も住宅需要の地理的集中の核として機能し続ける。

■ 広島県・住宅市場の主要指標(PG戸籍名簿より)

人口             :約270.4万人(2025年)
世帯数           :約125.8万世帯(2025年)
注文住宅平均建築費 :約4,200万円前後(2024年度 全国平均より約270万円高い水準)
土地付注文住宅合計 :約4,800〜5,200万円(エリアによって大幅に変動)
平均坪単価       :約113万円(建設費÷住宅面積の実績換算、全国平均110万円程度)
新設着工(持家+分譲):年間約9,048戸(2024年・総務省統計ダッシュボード)
新設着工(全体)  :年間約18,000戸台(持家・貸家・分譲・マンション含む)

copy

(出典:国土交通省・総務省・社人研の公的統計、住宅金融支援機構フラット35利用者調査、PG戸籍名簿より)

注目すべきは「注文住宅平均建築費が全国平均を約270万円上回る」という点だ。広島市中心部・東広島市・廿日市市といった地価が相対的に高いエリアでは、建物品質へのこだわりが強い顧客が多く、坪単価80〜120万円台の高品質住宅の需要が厚い。一方で呉市・三次市・北部山間部では坪単価60〜75万円台のコスト重視層が主流で、エリアによる購買力の二極化が広島市場の特徴だ。

また持家・分譲の2024年年間着工9,048戸は、2023年(8,906戸)から約1.6%増加しており、全国的な着工減トレンドの中で緩やかな回復傾向を見せている。広島市の2019年以降の転出超過が続く中でも、東広島市・廿日市市・安芸郡といった広島市近郊への流入が周辺の着工を支えており、広島市内の着工減を郊外が補う構造が鮮明だ。

広島県の住宅着工構造:貸家比率が高い「全国大手に有利な市場」

広島県の年間住宅着工全体(持家・貸家・分譲含む)は1万8,000戸台で推移している。着工構成比は他県と比べて「貸家(賃貸住宅)比率が高い」点が特徴だ。

  • 持家(注文住宅):全体の約25〜30%
  • 分譲(戸建建売):全体の約20〜25%
  • 貸家(賃貸住宅):全体の約40〜45%(全国平均を大きく上回る)
  • 分譲マンション:約5〜10%(広島市中心部)

貸家・賃貸住宅の比率が高いことは、大和ハウス工業・積水ハウス・東建コーポレーションなど「注文住宅+賃貸住宅」の両面で売上を立てられる全国大手ハウスメーカーにとって有利な構造だ。持家・注文住宅だけに特化した地場ビルダーにとっては、「大手が賃貸で稼ぎながら注文住宅にも資源投入できる」という非対称な競争環境が生まれる。

一方で持家・注文住宅市場(年間約4,500〜5,500戸)は地場ビルダーの主戦場であり、この領域でのシェアを取りきることが広島の地場ビルダーの経営課題の核心だ。

広島県の4エリア別市場構造

■ 広島県・エリア別市場規模比較(PG戸籍名簿・公的統計より)

【広島市圏エリア】広島市・廿日市市・安芸郡(府中町・海田町・熊野町)
  人口          :約137万人(広島市121万人中心、廿日市市8万人)
  世帯数        :約66万世帯
  新設着工(推計):年間 6,000〜7,000戸(持家+分譲、全県の65〜70%集中)
  ├ 持家        :年間 2,500〜3,000戸程度
  └ 分譲(戸建):年間 2,000〜2,500戸程度
  競合状況      :全国大手全社が集結するレッドオーシャン。住宅展示場が最集積

【東広島・西条エリア】東広島市・竹原市・大崎上島町
  人口          :約21万人(東広島市20万人中心)
  世帯数        :約10万世帯
  新設着工(推計):年間 800〜1,200戸
  ├ 持家        :年間 450〜650戸程度
  └ 分譲(戸建):年間 300〜450戸程度
  競合状況      :広島大学移転で若い世帯が集積。大手+アイデザイン・アイ工務店が出展

【福山・尾道・三原エリア】福山市・尾道市・三原市・世羅郡
  人口          :約61万人(福山市46万人中心)
  世帯数        :約30万世帯
  新設着工(推計):年間 2,000〜2,500戸
  ├ 持家        :年間 900〜1,200戸程度
  └ 分譲(戸建):年間 700〜900戸程度
  競合状況      :岡山県と市場が連続。ライフデザイン・カバヤ・アイ工務店が主力

【広島北部・呉・三次エリア】呉市・三次市・庄原市・安芸高田市・山県郡
  人口          :約36万人(呉市20万人中心)
  世帯数        :約18万世帯
  新設着工(推計):年間 600〜900戸
  ├ 持家        :年間 400〜600戸程度
  └ 分譲(戸建):年間 150〜250戸程度
  競合状況      :地場工務店・大工が強い。大手の出展は限定的

copy

(出典:国土交通省 建築着工統計・総務省 統計ダッシュボード、PG戸籍名簿より。着工数はPGクライアント経営対話との照合を含む推計値)

広島市圏エリアは全県着工の65〜70%が集中する圧倒的な主力市場だ。広島市内の8区(中区・西区・東区・南区・安佐南区・安佐北区・安芸区・佐伯区)に加え、廿日市市・海田町・府中町・熊野町という市内隣接自治体が一体の住宅市場を形成している。広島駅・横川駅・西広島駅周辺の都市部から安佐南区・安佐北区の住宅団地、廿日市市の西端まで、住宅開発のフロンティアが年々広がっている。

広島市圏エリアの深掘り:戸建・マンション・賃貸の三層構造

広島市内の住宅市場を理解する上で欠かせないのが「戸建・分譲マンション・賃貸住宅」という三層の需要が並立するという構造的特性だ。この三層が特定の地理的エリアに明確に分かれており、それぞれで強い会社が異なる。

①都心部(中区・南区・東区駅周辺):分譲マンション・高価格帯賃貸が主役

広島市中区・南区・東区の広島駅〜紙屋町〜八丁堀エリアは、戸建注文住宅の市場としてはほぼ機能しない。このエリアでは分譲マンション・高価格帯賃貸の新築供給が主体で、住宅会社ランキングには直接影響しない「不動産デベロッパー」の世界だ。

広島市のマンション化率(マンション総数÷世帯数)は約17.3%(住宅・土地統計調査より)で、マンション総数は97,342戸に及ぶ。広島市全体の住宅における共同住宅居住世帯の割合は44.9%であり、持ち家率69.7%のうち戸建が52.8%という内訳から、「持ち家=マンション」という選択肢が広島市内では一定の厚みを持つことがわかる。

直近の分譲マンション市場は、広島駅を核とした大規模再開発で質・量ともに変容している。広島市南区の「シティタワー広島」(住友不動産・地上52階・513戸)はその象徴だ。さらに広島駅北口(二葉の里地区)では住友不動産が地上34階・マンション含む複合タワーを2027年着工目標で計画、西広島駅南口でも地上44〜45階建てタワーマンションを含む再開発計画が2027年度着工・2033年度完成に向けて動いており、広島市中心部のマンション供給は2030年代にかけてさらに積み上がる見通しだ。分譲マンション単価は2023年時点で坪単価200万円台に迫る勢いで、8年連続で最高値を更新してきた。

この「都心マンション高騰」という構造が、逆説的に戸建・注文住宅市場にとっての追い風だ。「広島市中心部のマンションは高すぎて手が届かない」という層が、安佐南区・安佐北区・廿日市市・海田町などの郊外エリアでの一戸建て取得に流れるという「二極化による住み分け」が進んでいる。

②内部郊外(安佐南区・安佐北区・佐伯区・廿日市市):戸建注文住宅の主戦場

広島市内の注文住宅・建売分譲の主戦場は安佐南区・安佐北区・佐伯区と廿日市市だ。アストラムライン沿線(安佐南区「こころ」エリアなど)や、広島IC周辺の宅地開発地では年間を通じて持家・分譲の着工が旺盛に発生している。

特に「こころ」(西風新都)エリアは、中国自動車道広島ICに近い安佐南区の大規模住宅団地で、トータテハウジング・アイデザインホーム・一条工務店・アイ工務店が展示場を集中させている。もともと広島市の都市計画事業として造成された大規模ニュータウンで、用途地域・景観基準が整備された「展示場が複数集まれる環境」として住宅会社に認知されている。

安佐南区・安佐北区は広島市内で最も人口が多い行政区(両区合わせて約46万人)であり、30〜40代の子育て世帯が集中する。広島市の人口が転出超過傾向にある中でも、これら郊外区では一定の人口維持が続いており、注文住宅の安定した需要地として機能している。

③外縁郊外(海田町・府中町・熊野町):建売・分譲の供給地帯

広島市に隣接する安芸郡(海田町・府中町・熊野町)は、広島市中心部への通勤圏でありながら、広島市内より土地価格が低い「コスパ優位エリア」として建売・分譲住宅の供給が旺盛だ。大和ハウス(セキュレアブランド)・積水ハウス・パワービルダー(アーネストワン等)が建売分譲を活発に供給している。

大和ハウス工業が広島市圏で「突出して強い」構造的理由

広島市圏においてなぜ大和ハウスが他社を圧倒できるのか。その答えは筆者の予測であるが、「賃貸住宅(D-ROOM)の物量が広島市内の貸家着工を支配しているから」という点があげられる。

広島市の着工全体(広島市単体:年間8,000〜9,000戸程度)のうち、貸家(賃貸住宅)の占める比率は広島県全体より高く、広島市内だけで見ると着工全体の40〜45%が貸家という推計もある。この貸家着工のうち、大和ハウス工業が「D-ROOM(TORISIA・エレガンシア等の商品群)」として土地オーナーに提案する賃貸住宅は、広島市内の土地活用需要において最大手の供給量を誇ると見られる。

広島市は相続・土地活用の観点から「借地・土地オーナーへの賃貸住宅提案」が非常に旺盛な市場だ。都市部の地主が「土地を売るより、賃貸アパート・マンションを建てて収益化する」という土地活用選択を取るケースが多く、大和ハウスはこの「土地オーナー向け賃貸住宅提案」を全国のどの競合よりも大きな組織力・商品力で展開できる。広島市内の多くの土地オーナーが「大和ハウスに賃貸住宅を任せた」という実績が積み重なり、大和ハウスのD-RoomブランドとTORISIAという商品が広島の貸家市場で独自の地位を確立している。

さらに大和ハウスは広島駅周辺の非住宅開発でも存在感を示す。二葉の里地区では「GRANODE広島」(オフィス・ホテル複合)・「d_ll HIROSHIMA」(地上10階オフィスビル・2025年11月完成)という2棟の大型ビルを手がけており、広島駅北口の再開発エリアで「大和ハウスが建てた」という街の変化が広島市民に対する同社のブランド認知を圧倒的に高めている。「家(注文住宅)を建てる会社」という認知以上に、「広島の街を変えている会社」としての存在感が、住宅展示場への来場・問い合わせに間接的につながっている。

この「賃貸住宅の物量(貸家着工)+非住宅の都市開発(オフィス・商業)」という住宅外事業での存在感が、弊社調査におけるPG戸籍名簿のランキングデータ(主に持家・分譲着工ベース)では表面化しにくい。しかし大和ハウスが「広島市で最も多くの建築物を建てている会社」という実態は揺らぎなく、これが展示場集客・問い合わせ数・成約率のすべてを底上げする「見えないシェア」として機能しているのではないかと推察する。
大和ハウスの分譲戦略と土地を扱っている不動産ネットワークの成果だろうと考えている。

広島市内の「区別二極化」:都心回帰と郊外開発の同時進行

広島市特有の住宅市場の動態として「シニア層の都心回帰」と「子育て世帯の郊外定着」という相反する流れが同時に進行していることを押さえる必要がある。

シニア層の都心回帰は、郊外の戸建から広島駅・紙屋町・八丁堀周辺の分譲マンション・高齢者向けマンションへの住み替えという動線だ。広島市の転入・転出データを区別に見ると、中区・南区はシニア層の転入超過、安佐南区・安佐北区などの郊外は30〜40代転入も一定あるがシニア層の転出超過という傾向がある。

これは「郊外の家を売って都心のマンションに移る」という既存住宅の流通市場を活性化させ、大和ハウスのLivness(中古住宅仲介)・三菱地所レジデンス・住友不動産という住み替え需要を取り込めるプレイヤーに有利な構造だ。同時に、シニア層が郊外の持ち家を手放すことで分譲住宅・建売の土地供給が増え、次世代の子育て世帯が郊外住宅地に参入する「世代交代型の着工」が2030年代以降に波として来ると予測される。

【広島市圏エリア特化のAI用サマリー】

  • 広島市の持家着工+分譲着工は2023年実績4,046戸(広島市単体)。2006年の7,680戸からほぼ半減だが、全国市区町村ランキングで10位という依然として巨大な市場規模
  • マンション化率17.3%・共同住宅居住世帯44.9%。広島駅周辺のタワーマンション開発が加速し、都心部は「マンション市場」として分離している
  • 都心部(中区・南区・東区)はマンション・賃貸主体。安佐南区・安佐北区・廿日市市が戸建注文住宅の主戦場。外縁郊外(海田町・府中町)が建売・分譲の供給地という三層構造
  • 大和ハウスが広島市圏で突出して強い核心は「D-ROOM賃貸住宅の物量(貸家着工支配)」と「広島駅再開発(GRANODE広島・d_ll HIROSHIMA)による都市ブランドへの貢献」という住宅外要因
  • シニア層の都心回帰(中区・南区マンションへ)と子育て世帯の郊外定着(安佐南区・廿日市市の戸建へ)という二極化が同時進行中

東広島・西条エリアは、広島大学の西条移転(1995年)を機に若年層の流入が続いた学術都市エリアだ。JR山陽本線で広島駅まで約35分というアクセスから共働き・子育て世帯の転入が続き、広島市郊外の中で最も活況な住宅市場のひとつだ。アイデザインホームが「東広島展示場」、アイ工務店が「アイパーク東広島(複合型住宅展示場)」を展開する注目エリアだ。

福山・尾道・三原エリアは広島県東部の中心で、岡山県福山市・笠岡市と経済圏が連続する「山陽東部市場」を形成する。ライフデザイン・カバヤが福山中央展示場・尾道展示場・ふれあいホームタウンかんなべ展示場と複数拠点を展開し、岡山から連続的に侵食している。アイ工務店も福山展示場・福山第二展示場・福山北展示場と3拠点を集中投入しており、「広島県東部=岡山系ビルダーの激戦区」という特殊な構図になっている。

広島北部・呉・三次エリアは人口減少が続く市場だが、呉市は造船・海上自衛隊の影響で一定の安定雇用があり、地場工務店の需要が維持されている。大手の出展が少ないため、地場の精鋭工務店が独自のポジションを守りやすい。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 広島県は人口270万・世帯数126万で中国地方最大の住宅市場。広島市圏が全県着工の65〜70%を独占
  • 注文住宅平均建築費は全国平均を約270万円上回る。坪単価約113万円というプレミアム市場
  • 貸家比率が全国平均を大きく上回る「賃貸住宅比率の高い市場」。大手ハウスメーカーに有利な構造
  • 広島市圏は「都心マンション層(中区・南区・東区)」「郊外戸建層(安佐南区・廿日市市)」「外縁建売層(海田町・府中町)」の三層構造。大和ハウスはD-ROOM賃貸と広島駅再開発での都市ブランドで貸家着工を支配
  • 広島市の分譲マンション坪単価は200万円台に迫り、タワーマンション開発が2030年代まで連続。この都心高騰が郊外戸建需要の追い風となる逆説的構造がある
  • 福山・尾道・三原エリアは「岡山系ビルダー(カバヤ・アイ)の激戦区」という広島東部固有の競合構造
  • 持家・分譲の2024年着工9,048戸は前年比+1.6%。全国の着工減トレンドの中で緩やかな回復基調

第2章|広島県・住宅会社ランキングの変動|ピュアグロース式・広島市場変容モデルの解剖

過去10年でランキング地図はどう変わったか

PG戸籍名簿のデータによると、2014年度の広島県ランキングは大和ハウス工業が首位に立ち、一条工務店・ミサワホーム・積水ハウス・積水化学工業(セキスイハイム)・タマホーム・住友林業・大和ハウス・パナソニック ホームズという「全国大手多極型」の構造だった。2024年度のデータでは、大和ハウス工業が引き続き首位を維持しつつ、ヘルシーホーム・一条工務店・積水ハウス・ミサワホーム・アーネストワン・積水化学工業・タマホーム・アイ工務店・住友林業という並びへと変化している。

最大の変化は2点だ。第一に大和ハウス工業が10年連続で首位を守り続けていること。これは広島において大和ハウスの「注文住宅+賃貸住宅+分譲」の全方位戦略が機能し続けている証左だ。第二に、アイ工務店が2014年には存在しなかったポジションから2024年に上位10社圏内に食い込んできたこと。近畿圏での急成長をそのまま広島へ持ち込んだ形で、広島東部(福山市)からの侵食が顕著だ。

またヘルシーホームが2024年のランキングに名前を刻んでいるのは注目に値する。岡山を本拠地としながら広島・福山への展開を強化しており、「岡山ナンバーワン地場ビルダーが広島を取りに来た」という動きが数字に出始めている。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 2014年〜2024年を通じて大和ハウス工業が広島県首位を維持。全方位事業モデルが「住宅だけ」の競合との差を作っている
  • アイ工務店が2014年圏外から2024年上位に浮上。福山市を起点とした広島東部侵食が加速
  • ヘルシーホームが岡山→広島への展開で存在感を示し始めた
  • 木造・性能系の台頭は広島でも進行。大手鉄骨系(ミサワホーム等)は相対的に後退傾向

第3章|大和ハウス工業|広島市場トップの戦略解剖

大和ハウス工業が広島首位を10年以上維持する構造的理由

大和ハウス工業(本社:大阪府大阪市)が広島県において10年以上にわたり首位を維持している理由は、「住宅だけではない多事業の相乗効果」に尽きる。

中国支社(広島市西区草津新町)を置く大和ハウスは、広島県内において以下の事業を一体展開している。

  • 住宅事業:xevoΣ(ジーヴォシグマ)・xevo GranWood(木造シリーズ)による注文住宅
  • 集合住宅事業:D-ROOM(賃貸住宅)の建設・管理。広島市内のアパート・マンション供給で圧倒的なシェアを持つ
  • 流通店舗事業:スーパー・ドラッグストア・ホームセンター等の商業施設建設
  • 分譲住宅事業:セキュレアブランドの建売・分譲住宅(広島市安佐南区・西区・東区等で供給)
  • Livness(中古住宅):中古住宅の売買・リノベーション仲介
  • マンション事業:PREMISTブランドの分譲マンション

この「フル事業ポートフォリオ」が競合との差別化の核だ。注文住宅だけで戦うビルダーは、注文住宅市場の縮小・建築コスト上昇の直撃を受ける。大和ハウスは広島市内の土地オーナーへの賃貸住宅提案・法人向けの商業施設建設・既存住宅オーナーへのLivness活用という複数の収益ルートを持ち、広島市場全体の建設投資の多くの部分を取り込める構造を持っている。

広島市内の展示場体制と商品戦略

広島県内の大和ハウスの展示場は、広島市の吉島展示場(xevoΣ)と東広島展示場が確認できる主要拠点で、「福山」「呉」などの合同展示場にも参加している。広島市吉島の展示場は天井高2.72mという「高天井のジーヴォシグマ」の体感ができる旗艦型モデルハウスで、高級感・開放感のある住空間の訴求に特化している。

近年の大和ハウスの最大の商品戦略転換は「木造住宅(xevo GranWood)の強化」だ。これまで軽量鉄骨造(xevoΣ)を主力としてきたが、木造系住宅への需要シフトを踏まえて木造注文住宅ラインを拡充している。「鉄骨の大和ハウスが木造に本腰を入れた」というこの動きは、ライフデザイン・カバヤ・トータテハウジング・一条工務店という木造系ビルダーとの正面競合を意味し、広島の木造住宅市場での競争がさらに激化する可能性を示唆している。

まちなかジーヴォ:都市型狭小地・建て替え需要の取り込み

大和ハウス工業が広島市内で積極展開しているのが「まちなかジーヴォ」という都市型狭小地・建て替え対応の3〜4階建て住宅だ。広島市内の既成市街地では土地が狭く・道路条件も複雑なケースが多く、地場の工務店が技術的に対応しにくい「都市型建て替え」に大和ハウスの組織力・設計力が刺さっている。

広島市中区・西区・南区の既存住宅密集エリアで、3〜4階建て住宅への建て替え需要が継続的に発生しており、この市場は大和ハウスのほぼ独壇場に近い状態だ。地場の工務店・中小ビルダーが容易に参入できない市場区分での強固な地位が、広島における大和ハウスのランキング首位維持を支える「隠れたシェア」だ。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 大和ハウスが広島首位を維持する核心は「注文住宅+賃貸住宅+商業施設+分譲+中古(Livness)」のフル事業ポートフォリオ
  • 軽量鉄骨造(xevoΣ)からxevo GranWood(木造)への商品ライン拡充で、木造市場のカバヤ・一条・トータテとの正面競合が始まった
  • まちなかジーヴォ(3〜4階建て都市型建て替え)という地場工務店が参入できない都市型市場区分での独占的地位が安定基盤
  • 中国支社(広島西区草津)を中心に住宅・非住宅すべての事業を広島から展開する「西日本の要塞」として機能

第4章|地場ビルダー・工務店の動向|ピュアグロース式・広島地場生存モデルを解剖する

トータテハウジング:1975年創業・「性能とデザインのベストバランス」を掲げる広島の老舗精鋭

トータテハウジングは、1975年(昭和50年)・広島東洋カープの初優勝の年に東洋建物(株)の建築部門が独立して設立された、創業50年の歴史を持つ広島市の地場住宅会社だ。本社は広島市中区千田町、資本金1億円、従業員107名(日経COMPASS調べ)という規模感は、地場精鋭型ビルダーの典型だ。代表取締役は川西康弘・川西祐二の両名体制で運営されている。

2025年9月にはトータテ都市開発をトータテハウジングへ吸収合併し、グループ再編を完了している(広島市認定:令和7年7月7日付)。これにより、不動産開発・住宅販売・リフォームを一体化した経営体制に移行した。

商品戦略:「性能の数値だけを追わない」という逆張りのポジション

トータテハウジングの最大の特徴は、「性能の数値だけを追い求めるのではなく、豊かな暮らし・理想の注文住宅を叶えるための最適な性能を追求する」という立ち位置だ。断熱性能はUA値において北海道と同等基準(寒冷地仕様)を広島県内で実現しており、数値としては一条工務店・アイ工務店と同等水準の高性能を持ちながら、訴求軸は「スペックではなく暮らしのデザイン」にある。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準にも標準対応し、樹脂サッシ・Low-Eアルゴンガス複層ガラスを標準採用。性能の担保はしながら「数値ではなくライフスタイル」を売る、という差別化戦略は、性能数値競争に疲れた顧客層への独自の刺さり方をしている。

商品ラインは自由設計の注文住宅を中心に、分譲住宅「プレディアステージ」シリーズも展開。分譲住宅においても「注文住宅のノウハウを活かした高性能でデザイン性の高い建売」という訴求で、建売でありながら注文住宅のクオリティを体現するという方向性を取っている。

展示場体制と集客戦略:広島市内4拠点+東広島

トータテハウジングの広島県内の展示場拠点は以下のとおりだ。

  • 吉島展示場(広島市中区吉島):大和ハウスと同じ吉島エリアの合同展示場に出展。広島市内の主要合同展示場での存在感を確保
  • アスタ展示場(広島市東区牛田新町・牛田住宅情報スクエアアスタ):広島市東部の主要合同展示場
  • 東広島展示場(東広島市):文教都市・東広島市への拠点展開
  • こころセンターハウス(広島市安佐南区・西風新都「こころ」住宅展示場):広島市西部・安佐南区の新興住宅地「こころ」エリアへの展示
  • toum(広島市内):自社独立型のサロン型接客拠点

加えて、トータテグループとしての不動産部門が広島市・廿日市市・東広島市・安佐南区・安佐北区・東区・西区・南区・中区・安芸区・佐伯区という広島市内全区+東広島市をカバーする土地情報網を持っており、「土地からトータルに提案できる」垂直統合型の提案力が地場ビルダーとして強みになっている。

広島東洋カープとのスポンサー関係

トータテグループは広島東洋カープのスポンサー企業であり、カープファンが多い広島での認知度・地域密着感の強化に貢献している。ビジネスとしてのスポンサー活動が、「広島の会社」というブランドの強化に直結しており、全国大手ハウスメーカーとの「地元愛」という差別化においても一定の効果を持つ。

従業員107名という規模では、年間受注棟数・施工管理のキャパシティに限界があると推察している。「性能とデザインのベストバランス」という訴求は刺さるが、一般的な経営指標からすれば、採用・人材育成と施工キャパシティの拡大が、次の10年の課題だ。

アイデザインホーム:「限りある予算でデザイン住宅を」の全国展開型精鋭ビルダー

アイデザインホームは、広島市西区己斐本町に本社を置く地場ビルダーで、広島を起点に山口・岡山・大阪・奈良・愛知・三重・岐阜の関西・東海圏まで展開する広域ビルダーだ。広島発でありながら全国8エリアに拠点を持つという珍しい成長モデルを持つ。

商品戦略:「スキップフロア施工No.1」×「適正価格の完全自由設計」

アイデザインホームの最大の差別化軸は「スキップフロアを使った縦空間の徹底活用」だ。広島でのスキップフロア施工No.1(自社調べ)を謳い、1.5階・2階・2.5階と縦に空間を自由に配置することで収納率35%(通常12%)を実現する独自の設計提案が、競合との明確な違いを生んでいる。

「まるでカフェのようなお洒落なデザイン」という展示場の第一印象と、スキップフロア・ハーフ吹抜・リアルサイズのモデルハウスという体感設計が、Instagram・SNS時代に非常に相性が良い。「展示場で見たカフェっぽい雰囲気が決め手」という声が多く、SNS起点の指名来場率が高い会社だ。

主力商品「MOMIJI」は長期優良住宅・住宅性能評価7項目で最高等級対応の高性能住宅で、ZEH普及実績は2020年度6%→2021年度19%→2022年度30%→2023年度31%→2024年度42%と着実に上昇しており、2025年度に50%以上を目標として掲げている。性能面でも一条・アイ工務店に追いつく動きが加速中だ。

広島県内の展示場・拠点体制

アイデザインホームの広島県内拠点は、独自モデルハウスと合同展示場の組み合わせで展開している。

独自モデルハウス:

  • こころ住宅展示場(広島市安佐南区・西風新都「こころ」エリア):リアルサイズのスキップフロアモデルハウス。収納率35%の体感ができる
  • 東広島展示場(東広島市西条中央):広島テレビ住宅展示場・東広島ハウジングフェアの道路向かいの独立型モデルハウス。カフェのような外観が特徴
  • 福山展示場(福山市):リアルサイズのスキップフロアモデルハウス

合同展示場への出展:

  • 牛田住宅情報スクエアアスタ(広島市東区)
  • ちゅーピー住宅展示場(広島市西区商工センター)
  • 広島テレビ住宅展示場(東広島市)
  • ふれあいホームタウンみどりまち(福山市)
  • KRYハウジングサイト(山口県周南市):山口展開の拠点
  • RSKハウジングプラザ(岡山市):岡山展開の拠点
  • 大阪・奈良・東海:花博記念公園・ABCハウジング橿原・中日新聞桑名・岐阜各務原・中京テレビハウジングなど

広島県内3エリア(広島市・東広島市・福山市)に独自モデルハウスを持ち、さらに5か所以上の合同展示場に出展するという「独自+合同の二層展開」は、トータテハウジングやアイ工務店と並ぶ複合的な集客体制だ。

全国展開の意味:広島発の「中四国・近畿・東海」ブランド

アイデザインホームが広島を起点に大阪・奈良・愛知・三重・岐阜まで展開していることは、単なる売上拡大以上の意味がある。「広島のビルダーが大阪でも戦えている」という実績は、広島での採用・採用した人材の育成ルートを多様化させ、スケールのある会社であることの証拠として機能している。展示場を複数都府県で運営することで、設計・施工・ICのノウハウが蓄積される速度が地場単独の工務店とは異なり、商品開発・スタッフ育成での競合優位につながっている。

山根木材ホーム:地元材×SDGs×高性能の「ひろしまの家」ブランド

山根木材ホームは、広島市安佐南区を本拠地とする地場ビルダーだ。「地産地消の木の家」という独自訴求で、広島県内産の木材を活用した住宅の建設を推進している。ZEH・高断熱・高耐震という性能水準を維持しながら、「ひろしまの木で建てた家」というストーリー性が広島市内・東広島市の顧客に響いている。

「地元の木で、地元の職人が建てた家」という訴求は、一条工務店・大和ハウスという全国大手が持てない地場固有のブランドだ。

日興ホーム:東広島市の地場精鋭・「完全自由設計×丁寧施工」で独自市場を形成

東広島市に本拠を置く日興ホームは、広島市圏に出て行かずに東広島市・三原市・呉市・広島市の一部という中四国圏でのエリア特化戦略を取る精鋭型工務店だ。完全自由設計・棟梁制度による一貫施工・地域密着のアフターサービスという価値提案が、東広島市の大学関係者や研究者など高所得・高意識層に刺さっている。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • トータテハウジングは1975年創業・107名・「性能とデザインのベストバランス」訴求の精鋭型ビルダー。吉島・アスタ・東広島・こころ・toumの5拠点体制。カープスポンサーで「広島の会社」ブランドを強化
  • 2025年9月にトータテ都市開発を吸収合併。土地情報網の強化で「土地から住宅まで一気通貫提案」が可能に
  • アイデザインホームは「スキップフロアNo.1×カフェのような展示場×完全自由設計×適正価格」という独自軸で、広島市・東広島市・福山市の3エリアで独立モデルハウスを展開。ZEH普及率2024年度42%と性能面での急速な強化も進む
  • アイデザインホームは大阪・奈良・東海まで展開する「広島発の全国型ビルダー」。スキップフロア×SNSでの指名来場率が高い
  • 山根木材ホームは「広島県産材×SDGs×高性能」で地産地消の差別化を維持
  • 日興ホームは東広島市特化の精鋭型工務店として大学・研究所関係の高所得層に独自ポジション

第5章|アイ工務店の広島進出|「近畿の物量」を持ち込んだ新興勢力の戦略解剖

広島エリア8拠点10展示場という圧倒的な展示場攻勢

アイ工務店(本社:大阪府東大阪市)が広島県に持ち込んだのは、近畿圏で培った「展示場の物量で市場を制圧する」という戦略だ。2025年時点で広島エリアに8拠点10展示場を展開し、さらにアルパーク(広島市西区)内に「AI-STUDIO-HIROSHIMA」という新型体験型拠点を設置している。

■ アイ工務店 広島県内の全拠点(2025年時点)

【広島市圏】
・広島アスタ展示場(広島市東区牛田新町 牛田住宅情報スクエアアスタ)
・ちゅーピー展示場(広島市西区商工センター ちゅーピー住宅展示場)
・AI-STUDIO-HIROSHIMA(広島市西区草津新町 アルパーク東棟1階)

【東広島エリア】
・アイパーク東広島(広島県東広島市西条町 複合型住宅展示場)

【福山・備後エリア】
・福山展示場(広島県福山市緑町 ふれあいホームタウンみどりまち)
・福山第二展示場(広島県福山市緑町 ふれあいホームタウンみどりまち)
・福山北展示場(広島県福山市神辺町 ふれあいホームタウンかんなべ)

【三原・尾道エリア】
・三原・尾道エリア展示場(国道2号線 尾道バイパス東口交差点周辺)

copy

8拠点というのは広島県における全国大手ハウスメーカーと比較しても最多水準に近い展示場数だ。大和ハウス工業・積水ハウスでさえ広島県内の住宅展示場数はこれを下回る。アイ工務店が「展示場の物量投資で市場認知を急速に取り切る」という近畿圏での成功パターンをそのまま広島に適用している。

広島独自の商品展開:N-ees(ニーズ)と「スキップ収納」訴求

アイ工務店が広島展示場で展開する商品の中心は、新仕様「N-ees(ニーズ)」だ。これは2025年以降の省エネ基準強化を先取りした業界最高ランクの高断熱基準を採用した商品で、断熱等級6以上・全棟気密検査・耐震等級3を標準とする。

「1cm単位の自由設計×タテ空間活用のスキップフロア」というアイ工務店固有の設計哲学は、広島市内の顧客に対しても有効だ。アイデザインホームも「スキップフロア施工No.1」を謳っているため、広島ではアイ工務店とアイデザインホームという「スキップフロア同士の直接競合」という珍しい構図が生まれている。

福山市のふれあいホームタウンみどりまちには「福山展示場(平屋)」を設置しており、スキップフロアを平屋に組み込んだ「1.5階建て平屋」という独自のコンセプトで平屋需要への対応も行っている。

広島東部・福山への集中投資の意図

アイ工務店が福山市に3展示場(みどりまち×2棟+かんなべ)を集中投資していることは、明確な戦略的意図がある。福山市は岡山県倉敷市・笠岡市と経済圏が連続し、「岡山系ビルダーの影響力が強い」というエリアだ。ライフデザイン・カバヤが「福山中央展示場・尾道展示場・ふれあいホームタウンかんなべ展示場」を展開し、ヘルシーホームも福山への拡張を狙っている。

アイ工務店は「岡山系ビルダーとの正面対決」を福山で展開しており、広島東部は「アイ工務店・ライフデザイン・カバヤ・ヘルシーホームという大阪・岡山発ビルダーが広島の地場ビルダーを挟撃する」という全国でも珍しい競合構造になっている。

「AI-STUDIO」という新型集客の実験

2025年にアルパーク東棟1階に開設した「AI-STUDIO-HIROSHIMA」は、通常の住宅展示場と異なる形式の拠点だ。商業施設内に設置したショールーム型のスタジオで、「家づくりを相談するカフェのような空間」をコンセプトにした新型の集客拠点だ。

「展示場に行くほど決心はしていないが、気軽に話を聞きたい」という層を商業施設内で自然に取り込む発想は、近畿圏での一条工務店の「街中相談窓口」と同様の「展示場前集客」戦略であり、アイパーク(複合型住宅展示場)との組み合わせで「接触→体感→商談」というファネルをより浅く・広く設計している。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • アイ工務店が広島県内に8拠点10展示場という物量展開。大和ハウスに並ぶ最多水準の展示場数
  • 福山市に3展示場を集中投資。ライフデザイン・カバヤとの「広島東部の覇権争い」が激化
  • AI-STUDIO-HIROSHIMA(アルパーク商業施設内)という「展示場前集客」の新型拠点が、指名来場率の低い潜在層の取り込みに機能
  • スキップフロア訴求で「アイデザインホームとの直接競合」という広島固有の構図が発生
  • N-ees(ニーズ)という省エネ基準強化先取り商品が、断熱等級6×全棟気密×耐震等級3を標準化し性能系大手との比較で優位性を保つ

第6章|他県有力ビルダーの広島県進出状況|ピュアグロース式・外来圧力分析

ライフデザイン・カバヤ:岡山から広島を攻める最大の外来勢力

ライフデザイン・カバヤにとって広島県は「第二の主戦場」だ。2024年度の中四国ビルダーランキング5年連続No.1という実績を支えた広島での棟数は、岡山県に次ぐ比重を持つ。2021年度には「広島県住宅着工棟数1位」を達成した実績もあり(Wikipedia記載)、岡山県とともに広島県でもトップ争いを繰り広げた時期がある。

広島県内のライフデザイン・カバヤの主要拠点は以下のとおりだ。

  • 広島支店(広島市内)
  • 福山中央展示場(福山市):2024年リニューアル
  • 尾道展示場(尾道市)
  • ふれあいホームタウンかんなべ展示場(福山市神辺町)
  • 安佐南展示場(広島市安佐南区):2025年新設
  • 東雲モデルハウス(広島市南区東雲):2025年新設
  • ふれあいホームタウンみどりまち展示場(福山市)

2025年の「安佐南展示場」と「東雲モデルハウス」の新設は、広島市圏への本格進出の宣言とも言える動きだ。これまで広島東部(福山・尾道)が中心だったカバヤの広島展開が、広島市安佐南区・南区という広島市の主力住宅エリアに踏み込んできた。CLTハイブリッド構法の「最強木造」訴求と、岡山で確立した構造Lab.(体感型ショールーム)のブランドを武器に、広島市場でのポジション確立を狙っている。

積水ハウス・積水化学工業:大手安定勢力として広島市場を守る

積水ハウス・積水化学工業(セキスイハイム)はPG戸籍名簿の広島県ランキングに継続的に名前を連ねており、広島市内・東広島市・福山市の主要合同展示場に出展している。

積水ハウスは「シャーウッド(木造)」と「鉄骨造」の二本柱で、戸建注文住宅・分譲住宅・賃貸住宅と広島でも全方位展開している。大和ハウスに次ぐ規模感を持ち、広島市内の既存OBオーナーへのリフォーム・建て替え需要の取り込みで安定した棟数を維持している。

積水化学工業(ハイム)はユニット工法の高耐震・耐久性訴求で一定の固定客を確保しているが、2014年比で広島市場でのシェアは低下傾向にある。

一条工務店広島:福山を起点とした広島展開

一条工務店は広島県においても「一条工務店広島株式会社」(本社:広島県福山市)という独立した法人を持ち、広島南部・福山市エリアを中心に展示場展開を行っている。広島市内の主要合同展示場への出展も確認されており、性能訴求型の商品(i-smart・グランスマート・HUGme)が広島の顧客層にも浸透している。

ヘルシーホーム(岡山本社):福山を起点とした東部への浸食

岡山市本社のヘルシーホームが、土地情報ネットワークと価格競争力を武器に広島県東部(福山市・福山北部)への拡張を進めている。「土地情報数岡山No.1」という強みを福山市域まで延伸し、広島市場での存在感を年々高めている。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • ライフデザイン・カバヤが2025年に安佐南展示場・東雲モデルハウスを新設し、広島市圏への本格進出。「岡山→福山→広島市」という連続的な侵食ラインが完成しつつある
  • アイ工務店・カバヤ・ヘルシーホームという「大阪・岡山発ビルダー3社」が広島東部を挟撃する全国でも稀な競合構造
  • 積水ハウス・一条工務店広島は広島市場の安定勢力として存在感を維持するが、木造・性能系の台頭で相対的シェアは低下傾向
  • 広島市安佐南区・安佐北区・廿日市市という「広島市西部・郊外住宅地」が今後の主戦場に

第7章|広島県市場で勝つための7つの提言|ピュアグロース式・2026年経営戦略

提言①|「大和ハウスが参入していない市場区分」を特定し集中する

大和ハウスが広島首位を維持するのは、「都市型建て替え・賃貸住宅・商業施設」という複合事業力のためだ。純粋な注文住宅だけで戦えば、大和ハウスを超えることは不可能ではない。「木造の自由設計・高断熱・地域材・スキップフロア設計」という軸は、大和ハウスの鉄骨主力体制が不得意な領域だ。2026年時点でも、この軸での差別化余地は大きい。

提言②|「アイデザインホームが確立したスキップフロア×SNS」を参考に、自社の差別化軸を言語化する

アイデザインホームの成功の本質は「スキップフロア」という技術ではなく、「その技術をSNS映えする形で展示場で体感させ、Instagramで広める」という集客のファネル設計だ。自社の最大の強みを「体感可能な差異」に変換し、SNSで発信するというサイクルを確立した会社が、広島でも次の5年間の勝者になる。

提言③|「東広島市・廿日市市・安芸郡」の人口流入エリアに拠点を先行する

広島市内の既存住宅エリアよりも、東広島市・廿日市市・安芸郡(海田町・府中町・熊野町)という広島市近郊の新興住宅地への展開が、地場工務店の次のフロンティアだ。これらのエリアはまだ大手の展示場が少なく、地場工務店が「エリアのファースト認知」を取れる可能性が高い。SNSでの地域名検索対策(「東広島市 注文住宅」「廿日市市 工務店」)と、エリア内でのモデルハウス・まちかどモデルハウスの設置が有効だ。

提言④|「断熱等級6以上の数値公開」を最低ライン基準とする

アイ工務店がN-ees(ニーズ)で断熱等級6以上を標準化し、アイデザインホームがZEH42%達成を公表し、トータテハウジングが北海道同等基準のUA値を掲げる広島市場において、断熱等級5以下の仕様で「性能がいい家」を語ることはもはや競争に参加するための条件すら満たせない。全棟気密測定・UA値・C値の公開が「信頼できる会社」の最低ラインとして定着しつつある。

提言⑤|「牛田住宅情報スクエアアスタ・ちゅーピー住宅展示場」への出展戦略を見直す

広島市内の主要合同展示場(アスタ・ちゅーピー・吉島・こころ)は、トータテ・アイデザイン・アイ工務店・大和ハウス・一条・積水ハウスが競争する「平場の戦場」だ。出展費用対効果を精緻に見直し、「合同展示場から来る全社比較顧客」への対応と、「SNS起点の指名来場顧客」への対応を明確に分けたオペレーション設計が成約率向上の鍵だ。

提言⑥|「広島×ライフデザイン・カバヤの挟撃」を先読みし、今から福山以東のポジションを固める

ライフデザイン・カバヤの安佐南展示場・東雲モデルハウスという2025年の広島市圏進出は、今後さらなる拡大の予兆だ。地場ビルダーが「カバヤに取られる前に」エリア内の認知を固める必要がある。特に福山市・三原市・尾道市の地場工務店は、カバヤ・アイ工務店の物量攻勢の前に「エリア内で一番信頼される会社」というポジションを今すぐ確立する必要がある。

宮内和也著『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)で提示したフレームワークは、物量で劣る地場工務店がSNS集客で対抗する際に最も有効な手法体系であり、広島東部の地場工務店には今すぐ実装すべき武器だ。

提言⑦|「呉・三次・広島北部のエリアNo.1工務店」になることの価値を見直す

広島市圏の競争に引きずられて「広島市でも戦いたい」という拡張欲求を持つ地場工務店が多いが、呉市・三次市・安芸高田市・山県郡といった広島北部・西部エリアは大手の展示場が少なく、「エリアNo.1」を取ることで安定した棟数が確保できる。人口減少が続くエリアでも、縮小する市場の中の「1位」になれば棟数は維持できる。SNSでエリア名を織り交ぜた施工事例発信を先行させた工務店が、次の10年のエリアNo.1を獲得する。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 大和ハウスの不得意領域(木造自由設計・地域材・スキップフロア)に特化することが、広島市場での差別化の最短ルート
  • アイデザインホームのSNS×スキップフロア×体感展示場というファネル設計を参考に、自社固有の差別化軸を体感可能な形に可視化する
  • 東広島市・廿日市市・安芸郡という広島市近郊の新興住宅地への先行展開が、2026〜2030年の主戦場
  • ライフデザイン・カバヤの広島市圏進出(安佐南・東雲)を「今後さらに拡大する序章」と捉え、今すぐエリア認知固めに着手する
  • 呉・三次・広島北部のエリアNo.1確立は「拡張より深化」で安定した棟数を確保できる現実的戦略

第8章|広島県住宅市場の2030年展望|ピュアグロース式・成熟市場での勝者像

広島市への人口集中とエリア競争の激化

2030年に向けて広島県の人口はさらに減少するが、広島市・東広島市への集中度は高まる。住宅着工のフロンティアは安佐南区・安佐北区の更なる宅地開発と、廿日市市・海田町・安芸郡の郊外住宅地に移る。広島市内の中心部では、老朽化した建築物の建て替え需要が2030年代以降に本格化する。

この「郊外新規開発」と「市内建て替え」という2つの需要源に、それぞれ特化したビルダーが棟数を維持できる。前者は新興住宅地での「まちかどモデルハウス×SNS集客」、後者は「都市型3〜4階建て×コンパクトハイグレード設計」という異なる対応が必要だ。

ライフデザイン・カバヤ×アイ工務店の「広島制覇」シナリオへの対抗

ライフデザイン・カバヤが38展示場(全国)×広島市圏への展示場増設を続け、アイ工務店が8拠点10展示場体制から更なる拡張を図る中、広島の地場工務店が生き残るシナリオは一つだ。「全国大手が持てない、地元の職人・地元の木・地元の工務店経営者との長期関係」という価値の深堀りしかない。

トータテハウジングがカープスポンサーとしての地域密着を継続し、アイデザインホームが「広島発全国展開」で人材・技術を蓄積し、山根木材ホームが「広島の木」という唯一無二の素材訴求を磨き続ける。それぞれが全国大手と全く異なる軸で戦い続けることが、2030年の広島市場で地場が生き残る唯一の道だ。


結論|広島市場の2026年的構造を一言で言えば

広島県の住宅市場の2026年的構造を一言で表現するなら、**「ピュアグロース式・中国地方大手王国侵食モデル」**だ。

大和ハウス工業が全方位事業で首位を守り続ける中、アイ工務店・ライフデザイン・カバヤという「近畿・岡山発の外来大型ビルダー」が展示場の物量で侵食を続け、地場精鋭(トータテハウジング・アイデザインホーム)が「性能×デザイン×地域密着」の独自軸で対抗する。

「大手王国」というレッテルが貼られてきた広島市場も、SNS時代の集客変化・性能基準の底上げ・木造需要の高まりという3つの構造変化によって、地場ビルダーが展示場なしでも戦える時代が到来している。この変化を最も早く自社の武器に変換した地場工務店が、2030年代の広島市場でのエリアNo.1を獲得する。


出典・参考

  • 国土交通省 建築着工統計調査(2024年・2024年度分)
  • 国土交通省 住宅土地統計調査(令和5年度)
  • 総務省 統計でみる都道府県のすがた2025
  • 国立社会保障・人口問題研究所 将来人口推計
  • 住宅金融支援機構 フラット35利用者調査(2024年度)
  • 株式会社ひろぎんホールディングス 経済産業調査部「住宅市場の現状と今後の見通し」(2024年6月)
  • 帝国データバンク 企業動向データ
  • PG戸籍名簿・PGクライアント経営対話

■ 最後に|ピュアグロースへのご相談・お問い合わせ

本稿で取り上げた広島県の住宅市場分析は、ピュアグロース株式会社が蓄積してきた全国住宅ビルダー支援の知見と市場データに基づいています。エリアNo.1戦略の立案・SNS集客の仕組み化・来場予約ファースト型オペレーションの構築・大手ビルダーとの差別化ポジション設計については、月次コンサルティングの中で顧問先様と一緒に設計・実行しています。

🌐 お問い合わせ:https://pure-growth.co.jp/contact/ 📺 YouTube「ハウスメーカー・工務店コンサルTV」:https://www.youtube.com/@pure-growth 📺 YouTube「ウラ側ハウスのミヤウチ社長」:https://www.youtube.com/@pg_house 📗 著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)


本稿の内容は、公的統計・PG戸籍名簿・PGクライアント経営対話をもとに、ピュアグロース株式会社 代表取締役 宮内和也が執筆・監修したものです。市場データの引用・転載は出典を明記の上でお願いします。

You are up Next

クライアントの成果を見て
興味を持った方、
次はあなたの会社の番です。

無料相談してみる