「注文住宅の受注が年々減っている。このまま注文一本でいいのか」
「大手が分譲に力を入れ始めたが、地域の工務店はどう動くべきか」
金利上昇や物価高が続くなか、こうした悩みを持つ住宅会社・工務店の経営者様は増えています。そのヒントになるのが、大手ローコストビルダーの最新決算です。
本記事では、タマホーム株式会社が発表した2027年5月期 第1四半期の決算を、住宅会社のコンサルティングを行う立場から読み解きます。決算資料の数字に加え、現場で集まる見積もりや採用の動向も踏まえて、地域の注文住宅ビルダーが取るべき戦略を整理しました。
※数値は動画内の解説に基づくもので、正確な値はタマホーム株式会社の公表資料をご確認ください。
| 項目 | 第1四半期の実績 |
|---|---|
| 売上高 | 約276億円 (減収) |
| 営業利益 | 約45.6億円の赤字 |
| 受注棟数 | 注文:分譲= 約3:1 |
| 引き渡し棟数 | 注文 487棟 戸建分譲 325棟 |
| 引き渡し金額 | 注文 約117億円 戸建分譲 約107億円 |
引き渡し金額で見ると、注文住宅と戸建分譲がほぼ1対1になっています。注文住宅の売上規模はこの5年で約3分の1に縮小しており、IR資料にも「不動産事業が全社を支える構造への変化」が明記されています。会社自身が分譲へのシフトをはっきり打ち出している状態です。

注文住宅の平均販売価格は約2,500万円とほぼ据え置かれています。資材価格の高騰が続くなかで価格を上げていないため、粗利率は削られていると考えられます。
実際、当社に寄せられる見積もりを見ると、直近でも350万円以上の値引きがある物件があり、5月の決算キャンペーン期には600万円近い値引きの見積もりもありました。施工坪あたり7万〜10万円の値引きが決算期の「標準」になっていた印象です。こうした受注の粗利が今期の数字に乗ってくるため、受注棟数の割に営業利益が伸びにくい構造が予想されます。
ロードサイド型店舗やパーク型展示場の拠点数はこの2年ほぼ横ばいですが、総合住宅展示場への出展は60か所から51か所に減っています。1拠点あたりの営業人員も10名超から9名程度に減り、1拠点あたりの受注棟数も緩やかに下がっています。
有価証券報告書では、営業1人あたりの年間売上高を約1.45億円から、2031年に約1.94億円へ引き上げる目標が示されています。営業人員を大きく増やさず、土地付きの分譲比率を高めて売上を伸ばす方針と読み取れます。
現場の採用動向からは、一部の営業所で注文営業と分譲営業を分ける動きも見えます。注文と分譲を兼任すると「売りやすい分譲ばかり売り、在庫がなくなると売るものがない」「展示場に来た注文検討のお客様に分譲を勧めてしまい、注文が売れなくなる」という現象が起きやすいためです。
前期は来場特典の見直しで広告宣伝費を約4.76億円削減しましたが、現在の公式サイトのフェアでも、予約なし5,000円、事前予約2万円、事前審査の申し込みで最大4万円の特典が続いています。集客を削ったことが受注にどう影響するかは、第2四半期以降の数字で見極める必要があります。
借入を増やし、販売用不動産と仕掛中の不動産は前年同期比で約2倍に膨らんでいます。在庫回転は年1回転程度とみられるため、今仕入れている物件を今期中にどれだけ値引きせずに売り切れるかが、注文住宅の落ち込みをどこまで支えられるかの分かれ目になります。配当を維持しながら借入を増やしている点も、金利負担として今後の利益を押し下げる要因になり得ます。
東北・中四国・九州など営業拠点が多いエリアでは、50〜100坪前後の土地を積極的に仕入れています。自社の土地仕入れでタマホームと競合していないか、まず確認しておきましょう。複数区画をまとめて「街並み」として販売するケースも多く見られます。
タマホームの分譲住宅は30〜35坪程度で、一般的なパワービルダーの建売より少し大きく、性能や仕様も高めです。広めの駐車場や1階の和室など、注文住宅を検討する人も満足できる建物にしていることが売れている理由の一つです。「金利が上がる中で、1年かけて注文住宅を建てるより、今買える分譲のほうがいい」と考えるお客様を取り込んでいます。
この戦略は、地域の注文住宅ビルダーにも十分に応用できます。

土地の仕入れがあるため、売上高は維持もしくは微増が見込まれます。一方で、在庫の原価上昇と販売時の値引きにより、1棟あたりの粗利は減っているはずです。展示場の数をそれほど減らさないまま固定費が残れば、利益面は厳しくなると考えられます。展示場を閉めるより、営業人員の採用を強化する方向に動くでしょう。
全国に販路を広げて年間1万棟規模まで成長した会社が、市場縮小の中で苦戦するフェーズに入っている。これは全国展開のハウスメーカーにも、新興の急成長ビルダーにも起こり得ることです。注文と分譲をうまく売り分ける戦略を、自社の中期計画に組み込んでいくことをおすすめします。また、第2四半期に向けて受注の山場をつくってくるはずなので、タマホームを検討しているお客様をしっかり集客することも意識したいところです。
A. 受注を伸ばしたいなら、始めることをおすすめします。物価と金利の上昇で、注文住宅を諦めて建売や中古リノベを選ぶ層が増えています。インフレ局面では在庫を持つことが金利負担を上回るプラスになる場面も多く、土地で勝てる会社になることは有効な戦略です。
A. 安さで真っ向勝負するのではなく、少し価格が高くてもより良い建物で、良いお客様を取り込むのが基本です。移動式展示場と建売の役割を曖昧にせず、見せる物件と売る物件にメリハリをつけましょう。
A. 注文と分譲の受注・引き渡し棟数の比率、平均販売価格、展示場数と営業人員の推移、販売用不動産の在庫、広告宣伝費などが参考になります。現場で集まる見積もりの値引き額と合わせて見ると、実態がより見えてきます。
ピュアグロースでは、大手ハウスメーカー出身の実務家コンサルタントが、競合分析から商品・分譲戦略、営業体制づくりまで伴走します。タマホームの最新動向や、成長を支えてきた現場の仕組みをまとめたレポートもご用意しています。