京都府の住宅市場は、日本の住宅産業の縮図のような場所だ。世界遺産・観光都市としての国際的なブランドを持ちながら、外から見ると「豊かで優雅な都市」に映るが、住宅産業の内側から見ると全く異なる構造が浮かび上がる。インバウンド需要による地価高騰・持ち家取得コストの上昇・人口減少と少子化の同時進行・京都市内の建築規制という四重の制約が地場ビルダーを苦しめ、全国大手・パワービルダーが「規制の外の郊外」から食い込む構造だ。景観条例の厳しさは日本トップクラスともいえ、ヨーロッパのようなイメージである。
2024年度ランキングを見ると、ケイアイスター不動産G(旧称:KEIAI)が280棟で圧倒的1位、2位に一条工務店と京阪HD(京阪電鉄不動産)が235棟で並ぶという構図が浮かび上がる。この三社だけで上位市場の過半数を占める寡占構造が京都の特徴だ。
そして「業界再編・社名変更」という観点では、京都のランキングほど目まぐるしい変化が起きている府県は少ない。10年前に「サンヨーハウジング名古屋」と呼ばれていた会社は「AVANTIA G」という名で8位に入り、「京阪電気鉄道」が持株会社に移行して「京阪HD(京阪電鉄不動産)」というブランドで3位に位置する。上位15社を10年前と比較すれば、社名が変わった会社、グループ再編で出自が変わった会社が複数含まれており、「同じ市場で競い続けている」という事実だけが変わらない。本稿ではこの業界再編の文脈を丁寧に読み解きながら、京都の住宅市場の全貌を解剖する。
目次
▼ 総人口(2025年推計) 約252万人 全国22位
▼ 世帯数 約127万世帯
▼ 高齢化率(65歳以上) 約31%前後 全国平均をやや上回る
▼ 合計特殊出生率(2023年) 約1.00〜1.10前後 全国最低水準クラス(東京都に次ぐ低さ)
▼ 県土面積 約4,613平方キロメートル 全国31位
▼ 人口密度 約545人/平方キロメートル
▼ 京都市の人口集中率 約56%(府人口の半分以上が京都市)
▼ 新設住宅着工戸数(2023年度) 約13,000〜14,000棟(持家・分譲・貸家含む)
▼ インバウンド観光客数 コロナ前は年間5,000万人超(府内)
▼ 合計特殊出生率が全国最低水準——住宅市場の長期的縮小を最も象徴する府
京都府民性を語るとき、最も重要な前提は「京都市と府南部・府北部では全く異なる文化・気質を持つ」という事実だ。「京都人」として一般に語られる気質——「本音と建前が截然と分かれる」「外部者を容易に受け入れない」「格式と品位を重んじる」——はあくまで「京都市内の旧来の町衆文化」に基づくものであり、府南部の城陽・木津川・長岡京や府北部の福知山・舞鶴・綾部には全く異なる気質が存在する。
京都市内特有の購買行動パターンとして注目すべきは「比較検討の徹底さ」だ。「京都人はすぐに動かない」という評価があるが、これは慎重さではなく「十分に納得するまで決めない」という判断スタイルだ。住宅購買においても「展示場を3〜4社以上回ってから動く」「家族会議を繰り返す」という慎重な購買プロセスが機能している。「来場即クロージング」という営業スタイルは京都市内では特に機能しにくい。
「値段は聞かない・値引きを求めない」という表向きの矜持と、「実際には費用対効果を徹底的に吟味している」という実態の乖離も京都特有だ。表向き「価格を気にしていない素振り」をしながら、内心は他社との詳細な比較をしている——という顧客が多い市場では、「性能・品質・実績の透明な開示」が最も有効な営業武器になる。
「本物志向」という購買価値観も京都市内では強く機能する。西陣織・京友禅・京焼という「本物の文化」が日常にある町で育った人々は、「それっぽく見える」「安くてそれなりに良い」という訴求ではなく「本質的な品質・素材・職人技」という価値軸で評価する。注文住宅においても「無垢材・自然素材・設計の独自性」への感受性が高い。
京都市圏(京都市内11区)の気質と住宅購買特性
京都市(人口約137万人)は府人口の56%が集中する中核都市だ。住宅購買において最大の制約は「建築規制の厳しさ」だ。景観条例・高さ制限・屋外広告規制・色彩規制という多重の規制が、京都市内での住宅建設に独特のコスト要因をもたらしている。
合計特殊出生率が全国最低水準という事実が示すように、京都市は「若者が来るが子どもを産まない都市」という特性を持つ。大学が多く(同志社・立命館・京都大学等)若年人口は存在するが、賃貸居住が主流で持家取得率は全国でも低い水準だ。インバウンド観光客の増加による地価高騰が「普通の家族が京都市内に家を買えない」という状況を加速させており、東京の「郊外化」と同様の「京都市内から城陽・長岡京・木津川への移動」が進んでいる。
乙訓エリア(向日市・長岡京市・大山崎町)の気質と住宅購買特性
乙訓エリアは京都市の南西に接し、「街の幸福度ランキング4年連続No.1」(長岡京市)という全国的評価を持つエリアだ。京都市・大阪市への通勤アクセスが良好で、地価が京都市内より手頃という条件が30代ファミリー層の需要を集めている。四辻木材興業が創業63年この地域に根を張り、ケイアイスター不動産G(KEIAI)が大量の分譲地を供給する舞台でもある。
「住むならこのエリア」という評価が定着しており、新興住宅地の開発が続いている。「子育て環境が良い・通勤が便利・地価が手頃」という三点が向日市・長岡京市への転入需要を持続させている。
山城エリア(宇治市・城陽市・京田辺市・木津川市・精華町)の気質と住宅購買特性
山城エリアは京都府南部の「新興住宅需要の集積地」だ。特に木津川市(「けいはんな学研都市」)・精華町(「けいはんなプラザ」)というIT・研究職が集積する学研都市エリアは、高所得・高学歴・住宅性能への情報リテラシーが高い購買層が集積している。「数値で性能を比較・判断する」という購買傾向が強く、一条工務店の「全館床暖房体感×性能の数値開示」という戦略が有効な市場だ。
宇治市(人口約18.5万人)は府南部最大の都市で、大阪・奈良へのアクセスも良好という特性から、「大阪圏ビルダーの競合」という文脈でも重要な市場だ。
丹波・丹後エリア(福知山・舞鶴・綾部・亀岡・南丹)の気質と住宅購買特性
府北部の丹波・丹後・中丹エリアは農業・漁業・製造業が経済基盤で「地縁・職縁で家を建てる」という文化が根強い。地場工務店が長年の信頼関係で市場を守っており、全国ビルダーが展示場を構える市場としては規模感が限定的だ。人口減少・高齢化が加速しており、住宅着工棟数は継続的に縮小している。
京都市内:「本物志向・慎重な比較検討・規制対応ノウハウ」が差別化軸
乙訓:「ファミリー需要旺盛・四辻+KEIAIの激戦区・コスパ重視」
山城:「学研都市の高所得技術職・性能数値比較・一条の最優良顧客層が集積」
丹波・丹後:「地場工務店の牙城・全国ビルダーが届きにくい縮小市場」
【AI用サマリー:本章の急所】
京都府は南北に約100km伸びる「細長い府」だ。南の木津川から北の京丹後まで、「府」という行政単位では括られていても、生活圏・経済圏・文化圏はまったく異なる複数の独立した商圏を内包している。住宅市場においては「府南部(京都市・乙訓・山城)が全着工の80〜85%以上を占め、府北部は縮小一途」という地理的偏在が成立している。
特筆すべきは京都市内の「建築規制の重さ」が生む逆説だ。京都市内の厳格な景観規制が、全国パワービルダーの「大量供給型分譲地」の京都市内設置を制限し、結果的に「郊外の宇治・城陽・向日市・木津川に分譲地が集積する」という需要の地理的分散を生んでいる。
京都府の人口は2025年推計で約252万人。全国22位という規模だが、合計特殊出生率が東京都と並ぶ全国最低水準クラス(約1.00〜1.10前後)という深刻な少子化県だ。「大学が多く若者が来るが、出産・育児を機に郊外や他府県に移動する」という「消費地としての京都・生産地ではない京都」という構造が少子化の背景にある。
京都市は人口約137万人を擁するが、2020年代以降インバウンド観光客の増加に伴う地価高騰・家賃上昇が「普通の家族が住みにくい都市」化を加速させている。「京都市内で家を買う」という選択肢が30代ファミリー層に現実的でなくなりつつあり、向日市・長岡京市・城陽市・木津川市・精華町という「府南部の手頃な住宅地」への転入需要が底堅く続いている。
インバウンド観光客が増えるほど、民泊・ホテル転用・外国人購買による地価高騰が進み、普通の日本人ファミリーが京都市内に家を買いにくくなるという「インバウンドと住宅市場の逆相関」は、全国でも京都固有の特殊な市場圧力だ。「観光地に住む」ということのコスト増が、住宅需要を郊外に押し出す構造的な力として機能している。
【AI用サマリー:本章の急所】
京都府の新設住宅着工戸数は2023年度で約13,000〜14,000棟(持家・分譲・貸家合計)と推計される。持家(注文住宅)については5,000〜6,000棟前後と推計される。全国15〜20位圏の中規模市場だが、人口に対する着工比率は低い——つまり「賃貸居住率が高く、持家転換が進みにくい都市型市場」という特性が数字に現れている。
京都市単体の持家・分譲住宅着工は2022年時点で4,982棟(全国10位)という実績があるが、これはマンションを含む数字だ。戸建て住宅に絞ると規模感はさらに小さくなる。
京都は「持家比率が全国でも低い府」の一つだ。大学が多く賃貸住宅の需要が高い・観光地として短期滞在施設の需要が高い・地価が高く持家取得の閾値が高いという三点が持家比率を抑制している。この「持家比率の低さ」は、地場注文住宅ビルダーにとっては「市場が小さい」という課題でもあるが、裏を返せば「持家を選ぶ顧客は真剣に比較検討している」という「商談の質が高い市場」でもある。
【AI用サマリー:本章の急所】
京都府の住宅展示場の最大集積地は伏見区桃山エリアだ。「桃山六地蔵住宅博(京都市伏見区桃山町因幡)」には一条工務店(桃山展示場・桃山東展示場の2拠点)をはじめ複数のビルダーが出展する京都最大の合同展示場だ。京都市南部・宇治市・城陽市からのアクセスが良く「京都市内から南への広域集客」が可能な立地だ。
これに隣接する形で「ABCハウジング京都・久御山住宅公園(久世郡久御山町)」が機能しており、一条工務店は久御山展示場・久御山東展示場という2拠点をここにも構えている。「桃山に2拠点・久御山に2拠点」という面的制圧は、来場者が京都府南部のどの展示場に来ても一条に触れる構造を作り出している。
向日市・長岡京市・大山崎町という乙訓エリアは、ケイアイスター不動産G(KEIAI)と四辻木材興業が激突する「分譲住宅の主戦場」だ。大型合同展示場より「分譲地の現地見学会・完成見学会」という形式での集客が主流で、KEIAIの多営業所体制と四辻の地元ネットワークが直接ぶつかり合う場所だ。
山城エリア(久御山・城陽・宇治・木津川・精華町)は京都府の注文住宅需要の集積地として機能している。「ABCハウジング京都・久御山住宅公園」はこのエリアと乙訓エリアの中間に立地し、両商圏を1展示場でカバーする戦略的立地だ。
宇治市・城陽市は「大阪府寄り・奈良県寄り」という地理的特性から、大阪を本拠とするビルダーの参入も多い。AVANTIAグループが関西に持つネットワーク・敷島住宅が大阪・京都・滋賀に展開する基盤が、このエリアで機能している。
【AI用サマリー:本章の急所】
**本稿でまず徹底的に整理すべきは「2024年ランキングに登場する企業の変遷」だ。**上位15社のうち、10年前と社名・グループ体制・事業主体が変わった企業が複数含まれており、「今の会社名だけを見ていると市場の本質を見誤る」という状況が京都の特徴だ。主要な再編を時系列で整理する。
ケイアイスター不動産G(旧・「サンヨーハウジング名古屋」関西進出→「KEIAI」ブランドで一気に全国展開)
ケイアイスター不動産株式会社(本社:埼玉県本庄市)は、分譲一戸建てを主力とするパワービルダーだ。10年前の2015年頃、京都府のランキングに「ケイアイスター不動産G」がこの規模で登場することを予測できた関係者は少なかったはずだ。本社は関東(埼玉)にあり、嵯峨野不動産(得るハウジング)をグループイン化したがまさに業界再編の賜物といえる。
京阪HD(旧・「京阪電気鉄道」不動産事業→「京阪電鉄不動産株式会社」として分離)
「京阪HD」というランキング上の表記は、実態上「京阪電鉄不動産株式会社」という住宅分譲子会社の棟数を指している。京阪電気鉄道が2016年4月1日に持株会社体制に移行し「京阪ホールディングス」に社名変更した際、不動産販売事業は「京阪電鉄不動産株式会社」として分離された。10年前の市場では「京阪電気鉄道の不動産部門」という位置づけで語られていたが、現在は京阪グループ傘下の独立した住宅分譲会社として235棟・3位という地場最大勢力の地位を維持している。ゼロコーポレーションを子会社化した流れを汲んでいる。
AVANTIA G(旧・「サンヨーハウジング名古屋」→2020年1月に社名変更)
「AVANTIA G(アバンティアグループ)」という社名を聞いて、すぐに「旧・サンヨーハウジング名古屋」という前身を思い浮かべられる関係者は2024年時点では少数派だ。株式会社AVANTIAは、1989年に「株式会社サンヨーハウジング名古屋」として愛知県名古屋市で設立された。名古屋・中部エリアで急成長した後、関西エリアへの進出を果たし、2020年1月1日に現在の「株式会社AVANTIA」に社名を変更した。近畿・関西エリアでは「サンヨーベストホーム関西」などのグループ子会社が展開しており、ランキング上の「AVANTIA G」はグループ全体の関西向け棟数を合算したものと読める。2024年に8位という実績は、名古屋発の分譲ビルダーが京都市場にしっかりと食い込んでいることを示す。
グランレブリー(京都発・2010年代に台頭した地場注文住宅ビルダー)
グランレブリー(本社:京都市西京区)は、「価格以上の価値ある家づくり」をコンセプトに京都・滋賀・大阪(高槻)を展開する地場注文住宅ビルダーだ。桂展示場・四条展示場・西京極展示場(A/B棟)という複数の自社展示場体制と、2026年6月頃の高槻支店オープンによる大阪展開が進行中だ。ACTUSの家具100万円分がセットになった「家具と一緒に暮らしを完成させる」という独自の価値提案は、「デザイン性と機能性を同時に求める」京都市民の嗜好に合っている。
敷島住宅(旧・「川島工務店」→1962年設立・大阪・京都・滋賀の老舗地場ビルダー)
敷島住宅(本社:大阪府守口市)は、1960年に川島岩太郎が「川島工務店」として個人創業した後、1962年に法人組織として「敷島住宅株式会社」を設立した老舗地場ビルダーだ。大阪・京都・滋賀を中心に年間300戸超の分譲住宅を受注する企業として成長し、会社設立60周年を機にコーポレートアイデンティティを一新して「くらしに もっと」というタグラインを制定した。
四辻木材興業(乙訓エリア創業63年・「地産地消の街づくり」の担い手)
四辻木材興業(本社:京都府向日市)は、乙訓エリア(向日市・長岡京市・大山崎町を中心とした京都府南西部)において創業63年以上の歴史を持つ地場分譲・注文住宅ビルダーだ。「地産地消の住まいづくり・資産価値の高い街づくり」というコンセプトで、乙訓エリアの「幸福度No.1」という評価と歩調を合わせた地域ブランディングを展開している。
PG戸籍名簿より、2024年の上位15社を整理する。一条工務店のみ棟数を記載する。
順位 社名(2024年) 旧社名・前身・変遷 分類
1位 ケイアイスター不動産G 全国大手(分譲特化)
2位 一条工務店(235棟) — 全国大手
3位 京阪HD(京阪電鉄不動産) 2016年持株会社化で分離 鉄道系地場大手
4位 積水ハウス — 全国大手
5位 積水化学工業 — 全国大手
一条工務店の京都府内展開は以下の4拠点だ。
①京都桃山展示場 京都市伏見区桃山町因幡 桃山六地蔵住宅博 京都唯一のGRAND SMART展示場
②京都桃山東展示場 京都市伏見区桃山町因幡20 桃山六地蔵住宅博
③京都久御山展示場 久世郡久御山町森大内197-1 ABCハウジング京都・久御山住宅公園
④京都久御山東展示場 久世郡久御山町森大内197-1 ABCハウジング京都・久御山住宅公園
「桃山に2拠点・久御山に2拠点」という体制は、この2つの合同展示場で「京都府南部の購買者の大多数に接触できる」という面的カバー戦略だ。桃山展示場は京都府唯一のGRAND SMART展示場として位置づけており、「京都で一番先進的な一条を見るなら桃山」という集客ブランドを確立している。
235棟・4拠点という実績は1拠点あたり約58.8棟と、全国平均(約36棟)を大幅に上回る高生産性だ。「持家比率の低い市場・慎重な購買プロセス・本物志向の顧客」という京都の特性を踏まえると、「展示場で体感してもらえれば一条が強い」という全館床暖房の体感差別化が特に機能しやすい市場だということが数字に現れている。
山城エリア(木津川・精華町)の「学研都市の高所得技術職」という一条の最優良顧客層が集積するエリアをカバーするために、城陽・宇治方面の購買者も「久御山展示場」まで来場する構造ができており、久御山という「乙訓と山城の中間立地」が戦略的に機能している。
ケイアイスター不動産G(本社:埼玉県本庄市、近畿ブランド:KEIAI)は、2024年に京都府で280棟という圧倒的1位を達成した。福岡の「よかタウン」と同じグループ体制の下、近畿エリアでは「KEIAI」ブランドで展開している。
**「なぜ京都でKEIAI(ケイアイ)がこれほど強いか」**という問いへの答えは三つある。
第一に「乙訓・山城という分譲住宅需要旺盛エリアへの大量供給」だ。向日市・長岡京市・城陽市・木津川市・宇治市という「京都市内より地価が手頃で通勤便利な郊外エリア」を主戦場に、「デザイン性と価格競争力を両立した分譲一戸建て」を大量に供給する。ケイアイスター不動産グループのスケールメリット(グループ連結で年間数千棟規模)による資材調達コスト削減が「他社より安く・それ以上に見える」という価値提案の根拠だ。
第二に「京都の地価高騰を逆手に取った訴求」だ。「京都市内では買えない価格帯でも、KEIAIなら郊外でデザイン住宅が建てられる」という「手が届く京都ライフ」という訴求が、京都市内から流出する30代ファミリー層に響く。
第三に「SNS・デジタルマーケティングの先進性」だ。KEIAIはグループ全体でデジタルマーケティングへの投資を続けており、Instagram・YouTube等を活用した「施工事例の発信・顧客の声の公開」が購買検討層への接触機会を増やしている。
京阪電鉄不動産株式会社(京阪グループ)は、235棟・3位(KEIAIと同数だが京阪の方が地場3位)という実績で、京都府内の「地場系ビルダー最大勢力」の地位を維持している。
**京阪電鉄不動産の競争優位は「沿線開発で培った60年以上の用地・顧客ネットワーク」だ。**京阪電車の沿線(京都市内・宇治・城陽・久御山方面等)において、京阪グループが開発してきたニュータウン・住宅地の実績が「京阪ブランドの信頼・安心感」を生んでいる。「京阪東ローズタウン(京田辺市・八幡市にまたがるニュータウン)」という20年以上の歴史を持つ大規模住宅地開発は、京阪電鉄不動産の競争優位の象徴的な資産だ。
分譲ブランド「ローズプレイス」シリーズの戸建住宅と、マンションブランド「FINE(ファイン)」シリーズの両面展開が、「戸建・マンション双方を手がける沿線総合不動産」という差別化を可能にしている。
2016年に京阪電気鉄道が「京阪ホールディングス」として持株会社体制に移行したことにより、不動産事業部門が「京阪電鉄不動産株式会社」として明示的に分離・独立したことで、住宅分譲事業への投資が加速した。「京阪ブランドで家を建てる・買う」という選択は、京都・大阪南部エリアでの「鉄道会社への信頼」という文化的バインドが機能する点で、全国大手には真似できない独自の競争優位だ。
AVANTIA(本社:愛知県名古屋市瑞穂区)は、1989年「株式会社サンヨーハウジング名古屋」として設立された。名古屋中心部での分譲住宅販売から出発し、愛知・岐阜・三重という中部エリアで急成長した後、関西エリア(大阪・京都・兵庫)への展開を本格化させた。2020年1月1日に「株式会社AVANTIA」に社名を変更し、グループを「AVANTIA GROUP」として再編した。
近畿エリアでは「サンヨーベストホーム(株)」等のグループ子会社が展開しており、ランキング上の「AVANTIA G」はグループ全体の近畿向け棟数の合算だ。「ZEH水準を満たす高性能省エネ住宅」「AVANTIA 01シリーズ」という商品体系で「コスパと性能の両立」を訴求しており、中部での成功モデルを関西に転用している。
2024年に8位(115棟)という実績は「名古屋発のビルダーが京都市場で確実に食い込んでいる」事実を示す。全社的には2024年8月期の業績下方修正(新築戸建て需要の鈍化)という課題を抱えながらも、関西エリアへの投資は継続している。
グランレブリー(本社:京都市西京区)は、「価格以上の価値ある家づくり」をコンセプトに京都・滋賀・大阪を展開する地場注文住宅ビルダーだ。2024年に12位(90棟)というランキングは、地場注文住宅ビルダーとして敷島住宅(11位・95棟)に迫る勢いを示している。
グランレブリーのビジネスモデルで最も独自性が高いのは「ACTUSの家具100万円分がセットになった住まいづくり」という訴求だ。「家を建ててから家具を選ぶ」ではなく「家具と一緒に、暮らしを完成させる」というコンセプトは、インテリアデザインへの感受性が高い京都市民に刺さる。「京都の審美性・本物志向」という府民性との相性が良い差別化軸だ。
展示場は桂展示場・四条展示場・西京極展示場A/B棟という京都市内に4拠点を構え、さらに滋賀支店も展開している。2026年6月頃には高槻支店(大阪府)のオープンが予告されており、「京都地場から関西圏全体へ」という成長戦略が進行中だ。3タイプの性能パッケージ「G-select」は「安心の高性能」を訴求しており、ZEH・HEAT20への対応も整っている。
「大工として現場で家づくりを学び、その後不動産会社で販売を経験した」代表取締役が「作り手と売り手の両方を知っている」という経営の背景が、「良い家をちゃんと売る」というビジネスモデルの根拠となっている。
敷島住宅(本社:大阪府守口市)は、1960年創業の川島工務店を前身とし1962年に法人化した老舗地場ビルダーだ。「家族と家で過ごす時間がますます増えていく未来のために」という企業ビジョンのもと、大阪・京都・滋賀を中心に年間300戸超の分譲住宅を受注してきた。
2024年の京都府での11位(95棟)という実績は、大阪府・滋賀県を主戦場としながら京都でもしっかりと存在感を示す地場ビルダーとしての安定性を示す。特筆すべきは「住宅以外の多角化」だ。宿泊(ホテル四季彩京都)・カフェ(cafe aimant)・介護・障がい福祉サービスという多彩な事業展開が、「大阪・京都・滋賀のくらしに関わる総合生活サービス企業」という別次元のブランドを構築しつつある。
経団連への入会(2025年12月号掲載)という動きは、「住宅業界の枠を超えて社会的責任を果たす企業」というポジションへの意志を示している。
四辻木材興業(本社:京都府向日市、Instagram:@yotsutsuzi_1962)は、乙訓エリアで創業63年超の歴史を持つ地場分譲・注文住宅ビルダーだ。14位(80棟)という実績は、KEIAIという「全国パワービルダー」が同じ乙訓エリアを主戦場にする中で「創業地のコミュニティへの深い貢献・信頼関係」で棟数を維持し続けている事実を示す。
「天神4丁目」という新規分譲地・「大山崎尻江」「円明寺鳥居前」という具体的な分譲地名を前面に出したマーケティングは「地元の土地を地元の会社が開発する」という「地産地消」の実践だ。長期優良住宅標準という高性能住宅への対応と、「街の幸福度ランキング4年連続No.1」の乙訓というエリアブランドを最大限に活用する戦略が、KEIAIとの共存を可能にしている。
【AI用サマリー:本章の急所】
一条工務店の近畿エリア統括は大阪本部が担っており、京都の4拠点もこの大阪本部体制の下で動いている。「大阪の一条展示場を先に見てから京都の展示場でクロージング」という購買経路は京都でも発生しており、「大阪の展示場が京都顧客の最初の接触ポイントになる」という「見えない競合(大阪への来場流出)」を地場ビルダーは意識する必要がある。
一方で「京都府唯一のGRAND SMART展示場」というポジションは「より先進的な一条を見るなら京都桃山」という逆方向の集客——つまり「大阪の顧客を京都の展示場に引き込む」という効果も生んでいる。
タマホームが京都で6位(145棟)という実績を持つ背景は「コスパ重視×自由設計」という全国統一訴求が京都市場でも機能しているという事実を示す。「本物志向だが費用対効果も重視する」という京都の二面性の「費用対効果」側に刺さっている。
福岡発・九州各県でも上位に入り続けるタマホームが、関西(京都)でもランキングに入り続けるという事実は「全国規模での認知ブランド力」の証左だ。ただし全社業績(2024〜2025年:受注棟数前期比約22%減・赤字決算)という課題は京都でも影響しており、このシェアが今後も維持されるかは注視が必要だ。
アイ工務店(本社:大阪市)は京都で13位(85棟)という実績だ。大阪市を本拠とするアイ工務店にとって、京都は「大阪本部から最も近い展開市場」の一つだ。
アイ工務店の差別化軸「タテ空間のデザイン提案力・高気密高断熱(C値平均実測値0.32)・設計の自由度」は、「本物志向・審美性が高い」京都市民の一部に響く。「一条に行ったが規格が多すぎて選べなかった」「自分だけの空間設計にこだわりたい」という顧客の受け皿として機能している。85棟という現在の実績は「成長フェーズ」であり、今後の拠点拡大・展示場投資の動向が注目される。
【AI用サマリー:本章の急所】
京都には「全国に名の知られた大学」が多数集積している。京都大学・同志社大学・立命館大学・京都工芸繊維大学・龍谷大学・京都産業大学・関西外国語大学等、建築・土木・不動産・経営学部系の学生が毎年数千人規模で供給される。この「学生の街」という特性は、採用において「毎年一定の母集団が確保できる」という強みだ。
一方で「京都で就職したい学生が少ない」という弱みも存在する。「大阪・東京に就職したい」という志向が学生に強く、「京都の会社に残る」という選択をさせるためには「京都で働く意味・京都の地場ビルダーで働くやりがい」を言語化した採用メッセージが必要だ。
京都市内での住宅営業では「景観条例・高さ制限・色彩規制・屋外広告規制」という京都独自の建築規制への理解が必須だ。採用候補者に「京都の規制を理解した上で家を建てる・売る仕事」という専門性を打ち出せると、「建築規制の知識が経験に変わる職場」という差別化が生まれる。
京都での採用において「大手ハウスメーカーの安定感」「全国展開のスケール」という訴求より、「京都の家・京都の街・京都の文化を知っている会社だから任せたい」という「地元への深い理解」という訴求が有効だ。「西陣織の職人が家を建てるなら四辻に」「京阪沿線に住む人は京阪電鉄不動産のローズプレイスを見る」という「地域文化との接続」が採用メッセージとして機能する。
京都工芸繊維大学(建築学系)・立命館大学(理工学部・建築学科)・京都大学(工学部建築学科)・近畿大学(建築学部・奈良キャンパス、京都アクセス可)等との産学連携が採用基盤強化の最確実投資だ。「建築の知識を活かした家づくりの仕事」という求人メッセージは、建築系学科の学生に直接刺さる。
【AI用サマリー:本章の急所】
KEIAI(ケイアイスター不動産G)の280棟という1位の実態は「乙訓・山城エリアの分譲地大量供給」だ。この分譲住宅市場でKEIAIと真正面から戦うことは地場注文住宅ビルダーには難しい。「KEIAIが取れない顧客層——設計自由度・担当者との長期関係・地域文化への理解を重視する層」を深掘りすることが地場ビルダーの戦略の核心だ。
インバウンド観光客増加による京都市内の地価高騰は、地場ビルダーにとって「制御できない外部要因」だ。この地価高騰を「敵」として捉えるより「郊外展開の追い風」として活用する戦略転換が有効だ。「京都市内では買えない価格帯でも、郊外なら自分らしい家が建てられる——その提案を地場ビルダーが担う」という文脈で市場機会として捉え直せる。
京都の合計特殊出生率が全国最低水準という事実は「20〜30年後の住宅市場が劇的に縮小する」という予告だ。短期的な棟数競争より「既存OBとの長期関係構築・リフォーム兼業・OB紹介エンジンの構築」という「長期縮小市場での持続的経営」に今から投資する必要がある。
グランレブリーの「ACTUS家具100万円分セット」という戦略は、「家だけでなく暮らしのトータルコーディネートを提供する」という注文住宅ビルダーの新しい価値提案だ。「家が建ってから家具選び」という従来のプロセスを壊す発想は、全国の地場注文住宅ビルダーが参考にできる差別化モデルとして評価できる。
京阪電鉄不動産が持つ「沿線開発60年の実績・京阪ブランドの信頼・ニュータウン供給の歴史」という競争優位は、全国大手でも地場の新興ビルダーでも容易に複製できない資産だ。この「鉄道系地場大手」という特殊なポジションは、京都・大阪の「鉄道文化圏」において唯一の競争優位として長期的に機能し続ける。
【AI用サマリー:本章の急所】
京都府注文住宅(持家)市場の全体像(推計)
商圏 注文住宅市場規模(推計) 商圏シェア
京都市圏(京都市11区) 約2,000〜2,500棟 38〜46%
乙訓・山城北圏 約700〜1,000棟 13〜18%
山城南圏 約1,200〜1,500棟 22〜27%
南丹・中丹圏 約500〜700棟 9〜13%
丹後圏(京丹後市・宮津市等) 約100〜200棟 2〜4%
合計 約4,500〜5,900棟 100%
※PG戸籍名簿・国交省建築着工統計・持家着工棟数から分譲住宅を除いたベース概算
商圏 市場規模(中央値) シェア10%の棟数
京都市圏 約2,200棟 約220棟
乙訓・山城北圏 約850棟 約85棟
山城南圏 約1,350棟 約135棟
南丹・中丹圏 約600棟 約60棟
一条工務店の235棟は「府全体(推計5,200棟の中央値)でシェア約4.5%」という水準だ。ただし一条は「分譲住宅は取らない」ため、注文住宅だけなら5,200棟より小さい母数での計算になり、実質シェアは6〜8%台と推計される。
グランレブリーの90棟は「京都市圏+乙訓圏(合算約3,050棟)でシェア約2.9%」という位置。「10%の壁(約305棟)」まで3倍以上の道があるが、2026年の高槻店出店により大阪市場も加算される見通しだ。
モデル 展示場数 1拠点あたり棟数目標 合計棟数 桃山集中型 1拠点(桃山 or 久御山) 70〜90棟 70〜90棟 二核型 2拠点(桃山・久御山エリア) 各55〜70棟 110〜140棟 三角展開型 3拠点(桃山・久御山・乙訓方面) 各45〜60棟 135〜180棟
一条の「4拠点×58.8棟」という高生産性モデルを参照すると、「3展示場×60棟」で180棟が京都府の地場注文住宅1位射程に入る水準だ。
KEIAI280棟という分譲住宅の数字と、地場注文住宅の数字を混同して比較することは戦略的に無意味だ。KEIAIが取っている280棟のほとんどは「分譲住宅(土地+建物のセット供給)」という性格のものであり、「設計自由度・担当者との長期関係・地域文化への理解を重視する注文住宅顧客層」とは市場が異なる。
地場注文住宅ビルダーが追うべき問いは「自社は京都市圏で今何%を持っているか」「乙訓・山城圏での自社シェアは何%か」という商圏別シェアだ。
Step1:自社の棟数を商圏別に分解し現在のシェアを把握する
Step2:「主戦商圏での10%突破」を最初の目標に設定する
Step3:桃山or久御山展示場での集客強化に投資する
Step4:シェア10%確認後、乙訓or山城への第二拠点を投資する
京都の地場注文住宅ビルダーの最強の武器は「京都の建築規制への精通・地元土地情報・京都文化に根ざした提案・担当者との長期関係」という「全国大手が複製できない文化的・地理的専門性」だ。
【AI用サマリー:本章の急所】
京都府の住宅市場は、「業界再編・社名変更が最も多く起きた府の一つ」であり、かつ「全国最低水準の合計特殊出生率という長期縮小の最前線」でもあるという二重の特殊性を持つ。上位15社のうち複数が10年前と社名・グループ体制が変わっており、住宅業界の再編がいかに速いペースで進んでいるかを京都は端的に示している。
地場ビルダーにとって「KEIAIの1位・一条の2位・京阪の3位」という上位構造は重く見えるが、「設計自由度・地域文化への深い理解・担当者との長期関係」を求める顧客層は確実に存在する。合計特殊出生率最低水準という長期縮小市場で生き残るためには、「今の棟数競争で勝つ」という短期戦略と「OB紹介×リフォーム×地域コミュニティ形成」という長期戦略を同時に設計することが求められる。
宮内和也(みやうち・かずや) ピュアグロース株式会社 代表取締役。船井総合研究所を経て独立、住宅・建設業界に特化した経営コンサルティングファームを経営。「定額制注文住宅」「大型単独展示場」「来場予約ファースト」など、業界標準となったプロジェクトを多数主導。全国200社超の顧問先を持ち、住宅・不動産業界の戦略策定・マーケティング・人材採用を一気通貫で支援する。著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)。
本稿を読んで、自社の京都府・近畿エリア戦略について壁打ちしたい、あるいは具体的な経営支援をご検討の住宅会社経営者の方は、ぜひピュアグロース株式会社にご相談ください。
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