山梨県の住宅市場を読み解く鍵は、「県土の8割が山岳地帯」「県全体の空き家率21.29%で全国1位(4回連続)」「2024年4月に人口80万人割れ・全国初の人口減少危機突破宣言」「八ヶ岳南麓は標高1,000mのハイエンド別荘地」「首都圏に2時間で接続」という、ほかにない条件がすべて同居している点にある。御坂山地と大菩薩嶺を境に「国中(くになか)」と「郡内(ぐんない)」という2つの文化圏が1,000年単位で独立して発展し、郡内では関東のテレビ・ラジオが直接受信できるほど東京との距離感が近い。県の北西端には国蝶オオムラサキ生息数日本一・名水百選3か所・日照時間日本一を抱える八ヶ岳南麓が広がり、戦後70年以上にわたり首都圏富裕層の別荘地として機能してきた。年間出生数は4,884人、年間出生数3人以下の自治体が4つ存在する。一方で、昭和町・甲斐市・南アルプス市は移住流入で人口が増えている。本稿では人口・着工・商圏・プレイヤー・現場論点・戦略の6章構成で、山梨県の住宅市場の実相を解剖する。筆者の顧問先には国中地方の有力住宅会社が複数あり、現場で見えている肌感覚も併せて記す。山梨県にも複数の顧問先・会員先を抱え、筆者は山梨県の顧問先をもって5年ほど訪問していた経験もあるので、その内容も踏まえて執筆する。
目次
総人口(2025年4月推計) 約79.6万人
世帯数 約34.7万世帯
新設住宅着工戸数(令和6年度) 3,926戸
持家比率 約70%
一戸建て比率 約75%(全国平均49%)
空き家率(別荘含む) 21.29%(全国1位、1998年以降4回連続)
純粋空き家率(別荘除く) 全国6位
県土面積 約4,465km²
出生数 年間約4,884人
最大の特異性は、人口減少率は全国上位ではないのに、空き家率では4回連続全国1位という捻れにある。これは「居住者がいない住宅」が異常に多い県であることを示す。その内訳は①別荘・二次的住宅(北杜・富士北麓)、②相続放置の戸建て(峡南・峡東等の中山間地)、③兼業農家の母屋+離れ構造の3つに大別され、山梨県の住宅市場を語るには、新築着工の数字だけでは見えない「ストック市場の重さ」を理解することが必須となる。
御坂山地(標高1,500m級)と大菩薩嶺を境に、西側の国中地方(甲府市・甲斐市・南アルプス市・笛吹市・甲州市・北杜市・韮崎市・中央市・昭和町・峡南市町村)と、東側の郡内地方(富士吉田市・都留市・大月市・上野原市・富士河口湖町・山中湖村等)に分かれる。国中は甲府盆地という日本有数の盆地地形を中心に内陸性気候の城下町文化を育み、郡内は相模川水系・富士山麓の山間部で関東文化圏の延長として発展した。郡内では関東のテレビ・ラジオの放送局の電波が直接受信でき、これが両地域の文化的距離を象徴する。**「国中の住民が郡内のビルダーと付き合うことは稀」**という構造は、武田信玄の時代から続く県内分断の住宅ビジネス上の現れである。
甲府は夏季の日最高気温の月平均最高値33℃、冬季の日最低気温の月平均最低値-2.9℃と、全国屈指の寒暖差を持つ典型的盆地気候である。盆地特有の現象として、夏は熱気が逃げず連日猛暑日となり、冬は冷気が滞留して放射冷却で氷点下が続く。住宅性能では「夏の遮熱」と「冬の断熱」の両立が必須要件となり、全館空調・床暖房・高断熱サッシ・外張断熱・パッシブデザインが市場の高仕様志向を形成している。
甲府市から新宿までJR中央線特急あずさで約1時間30分、中央自動車道で約1時間40分。郡内地方の上野原市・大月市は新宿から1時間圏内で実質的に首都圏通勤圏である。北杜市の小淵沢駅は東京駅から特急で約2時間、富士河口湖駅は新宿から高速バス1本で約2時間。これは住宅市場における人口流出方向(若年層)と流入方向(移住・二拠点居住・別荘需要)を同時に決定する、山梨県固有の構造的要因である。
北杜市の八ヶ岳南麓は標高1,000〜1,300mの高原地帯で、清里・大泉・小淵沢・長坂・高根・須玉・武川・白州・明野の旧8町村が合併してできた山梨県最大面積の市である。標高1,000m級の冷涼な気候、日照時間日本一、名水百選3か所、国蝶オオムラサキ生息数日本一といった独自の自然資源が、戦後70年以上にわたり首都圏富裕層の別荘・移住先として機能してきた歴史を生んだ。富士河口湖町・山中湖村・富士吉田市は富士五湖を擁する観光地で、近年はコテージ・ヴィラ・グランピングといったインバウンド対応の特殊宿泊施設が爆発的に増加している。
リニア中央新幹線は度重なる開業延期に直面しているが、甲府駅構想エリア(甲府市大津町周辺)の不動産市況は将来の開業を織り込んだ動きを継続している。「いつかリニアが開通すれば品川まで25分」という期待が、甲府盆地南部の不動産価格を下支えしている点は、山梨県の住宅市場の特殊事情である。
山梨県の人口は2000年9月の約89.6万人をピークに、ほぼ一貫して減少局面にある。2025年4月1日時点の推計人口は79万6,661人で、ピークから約10万人(約11%)が失われた。2024年4月、県人口がついに80万人を割り込み、知事はこれを受けて全国で初めて「人口減少危機突破宣言」を発令した。社人研推計では2050年に約59万人前後、2060年には約47万人前後(高齢化率43.5%)まで縮小する見通しで、現時点から30年で約4割が消滅する計算となる。
自然減と社会減の両方が深く進行している。2022年の年間出生数はわずか4,884人にとどまり、これは県人口の約0.6%という極めて低い水準である。県内27市町村のうち、年間出生数3人以下の自治体が4つも存在する状況は、住宅会社のコア顧客である「子育て世帯」の絶対数が、もはや市場として成立する閾値を割り込みつつある自治体が複数あることを意味する。
社会減については、高校卒業後の若年層の県外流出が継続している。国中地方の若者は東京・神奈川へ進学・就職、郡内地方の若者はそもそも生活圏が首都圏なので大学進学時にそのまま首都圏に定着するパターンが顕著で、両地域とも県外流出方向は首都圏一極集中である。県内の製造業の雇用減少も社会減を加速している。
世帯数は約34.7万世帯(2025年)。県内27市町村のうち、ある時期で人口を増やしたのは全体の4分の1の7市町村にとどまる。人数が多い順に昭和町(年間+208人)、南アルプス市(+86人)、中央市(+60人)などとなっており、これらはいずれも甲府都市圏の郊外で、移住流入と甲府市内からの世帯流入が重なるエリアである。
逆に、甲府市は人口減少が進行し、老舗百貨店「岡島百貨店」が2024年2月に85年の歴史に幕を下ろし規模を7分の1に縮小して再出店、山交百貨店も2019年に閉店した。「県庁所在地の中心市街地が衰退し、郊外の中小自治体に人口とビジネスが流れる」ドーナツ化現象の典型例で、山梨県の住宅市場の主戦場が甲府市内中心部から、昭和町・甲斐市・南アルプス市・中央市の郊外住宅地へとシフトしていることを示している。
山梨県のもう一つの極めて重要な特徴は、首都圏からの移住・二拠点居住が継続的に流入していることである。山梨県は移住希望地ランキングの常連県で、北杜市・富士吉田市・甲斐市・南アルプス市・甲府市・富士河口湖町等が移住先として人気を集めてきた。コロナ禍以降のテレワーク普及で二拠点居住が一般化したことも流れを加速させた。
山梨県は2024年5月成立の改正法による二地域居住促進制度の対象県で、県・市町村ともに支援制度を厚く整備している。南アルプス市では新築・購入時の最大50万円助成、空き家リフォームへの最大100万円補助、山梨県全体としては東京圏からの移住者へ最大300万円の移住支援金が用意されている。「県内の若年層流出」と「首都圏からの移住流入」が同時並行で進行する、極めてダイナミックな市場こそ山梨県の本質である。
山梨県の空き家率は約21.29%(別荘含む)で全国1位、1998年の調査開始以来4回連続でトップを維持している。背景には3つの事情がある。
第一に、別荘・二次的住宅の多さ。北杜市の八ヶ岳南麓・富士河口湖町・山中湖村・富士吉田市等には首都圏富裕層の別荘が大量にストックされ、これが空き家率を押し上げている。別荘等を除いた純粋空き家率は全国6位で、依然高水準だが、1位の数字には別荘ストックの厚みという独自事情が含まれる。
第二に、兼業農家の母屋+離れ構造。山梨県は果樹(ぶどう・もも)を中心とした兼業農家が多く、農地付きの空き家・離れ・蔵が大量にストックされ、再利用が難しい性質の空き家として残存し続けている。
第三に、相続放置と取り壊し費用の壁。山梨県の空き家の所有理由の約70%が相続によるもので、所有者が県外(特に首都圏)に住んでいるケースが多い。**「実家を相続したが、解体費用が捻出できず、売却も難しいため放置」**という典型パターンが、空き家を増やし続けている。
この異常な空き家率は、住宅会社にとって脅威であると同時に巨大な事業機会である。脅威としては「新築よりも空き家リノベ・中古再販で済ませる需要層の増加」、機会としては空き家活用ビジネス・古民家リノベ・別荘再販といった新規セグメントの存在である。山梨県は2020年4月、全国で初めて「官民連携空き家活用ビジネス」制度をスタートし、認定事業者制度・物件マッチング・補助金制度を整備している。地場ビルダーがこの制度に参画することで、新築だけに頼らない収益基盤を構築できる点は、山梨独自の経営機会である。
山梨県の人口・世帯動態は、**「人口は急速に減るが、特定エリアでは移住流入で増える、しかし空き家ストックは積み上がり続ける」と要約できる。新築市場が縮小する一方で、移住者向け市場・空き家リノベ市場・別荘市場・二拠点居住市場という複数の独自需要層が並走する、複層的構造を持つ。「新築一本足経営では生き残れない、複合需要に応える総合住生活サービスへの転換が問われる市場」**こそが、山梨県の住宅会社経営の最大の特殊性である。
山梨県は人口減少県でありながら一条工務店が早期から強固な地位を築いた市場である。一条工務店は自社サイト等で**「山梨県下で着工棟数No.1(2017年度実績)の住宅メーカー」**と公表している。
展示場体制は、**国中地方の昭和住宅公園に「甲府昭和展示場」「甲府昭和南展示場」、甲府住宅公園に「甲府小瀬展示場」「甲府小瀬東展示場」の合計4展示場、加えて昭和町上河東に「昭和常永展示場」、郡内地方の富士吉田住宅公園に「富士吉田展示場」**を配置している。国中5、郡内1の合計6展示場体制で、80万人弱の人口規模から見れば極めて高密度な展示場展開である。
国中地方の昭和町・甲府市への徹底した集中こそ一条戦略の核心。県内最大の住宅公園が集まるエリアに4〜5展示場を集中配置することで、来場予約・契約の動線を一手に握る。**「県内最大商圏に圧倒的密度で展示場を投下し、県内首位を獲得した」**というのが、一条の山梨戦略の本質である。郡内地方は富士吉田住宅公園の1展示場のみで、これは郡内の住宅商圏が小さく関東勢の影響が強いエリアであることを反映した、極めて合理的な配置である。
令和6年度の山梨県の新設住宅着工戸数は3,926戸、前年度比0.3%減。ピークの1990年・13,780戸と比較すると、現在は約3割の水準まで縮小している。35年間で7割が消失した計算で、住宅市場の構造的縮小を端的に示す。
利用関係別の構成は「持家60%(2,369戸)、貸家28%(1,094戸)、分譲(建売・マンション)12%(459戸)、給与住宅0.2%(9戸)」。分譲マンションは令和6年度わずか12戸、令和5年度は19戸と、新築マンション市場はほぼ存在しない水準である。
第一に、土地取得難易度の低さ。甲府市内でも坪15〜20万円前後、郊外では坪10万円前後、北杜市の郊外では坪3〜5万円台の土地が普通に流通している。「山梨は車社会で複数台の駐車スペースが必要、土地が安い、農家である親の土地に家を建てれば土地代がかからない」という地方特有の住環境が、戸建て新築を後押ししている。また、当時から「敷地内同居」の多い県で、二世帯・三世帯などの持家ケースも多い。
第二に、一戸建て比率の高さ。山梨県の一戸建て比率は約75%(全国平均49%)と極めて高く、「家を持つ=戸建てを建てる」という文化が強固。マンションを選択肢として検討する層が薄いため、新築・中古ともに戸建て市場が住宅市場の中心となる。
第三に、移住者の戸建てニーズと別荘需要。首都圏から移住する世帯の多くは「広い土地に戸建てを建てる」ことが移住動機の一部であり、新築需要を底上げしている。北杜市・富士河口湖町等では首都圏富裕層の別荘・セカンドハウスとしての新築が安定的に発生している。
貸家市場は人口減少と高齢化により構造的縮小局面にあるが、山梨県固有の特殊賃貸需要が混在する。富士河口湖町・山中湖村・富士吉田市の観光地では、民泊・短期賃貸・コテージ・ヴィラといったインバウンド対応の特殊宿泊施設が爆発的に増加している。富士河口湖町の貸別荘・コテージ・グランピング施設の総数は2010年代後半から急増し、「地元世帯向けの長期賃貸」と「観光客向けの短期賃貸」が二重構造で並走する独特の貸家市場を形成している。
分譲市場は甲府市・甲斐市・昭和町の中核都市部に集中。甲府駅周辺ではリニア期待を背景に地上28階建ての複合再開発(ホテル・住宅・商業)が進められ、駅前マンション市場には限定的だが活気がある。郊外住宅地の分譲建売は、地場の中規模ビルダーが小ロットで併走させている。
寒暖差の激しい山梨県では、断熱性が高い住まいが好まれ、**「涼温な家」「全館空調」「ZEH」「外張断熱」「パッシブデザイン」**が地場ビルダーの主力訴求軸として定着している。甲府市の某地場有力ビルダーは「小屋裏に設置した14畳用のエアコン1台で家中を快適にする」という独自コンセプトで坪単価85〜120万円の価格帯で安定受注を維持している。
また、山梨県は「平屋」需要が極めて強い。広い土地が安く取得できる地方県の特性に加え、首都圏移住者が「セカンドライフ向けの平屋」を求めるケースが多いためで、平屋・コートハウス・庭との一体設計が地場ビルダーの差別化軸として機能する。**北杜市の八ヶ岳南麓では「ログハウス・ティンバーフレーム・薪ストーブ・自然素材」**の別荘地仕様の住宅が、地場の建築工房(八ヶ岳建築工房等)によって提供されている。
山梨県を特徴づけるもう一つの要素が、空き家リノベ・古民家再生市場の厚みである。**山梨県は「やまなし空き古民家・レトロ建築バンク」**を運営し、築50年以上の建築物を別途登録する制度を整備している。古民家リノベは、**移住者・二拠点居住者・観光地(民泊・カフェ・ゲストハウス)**等の多様な需要層から引き合いがあり、地場ビルダー・建築設計事務所・空き家活用専門事業者が混在して市場を形成。新築事業を主軸としつつ、リノベ事業を二本目の柱として育てることが、山梨県の中堅地場ビルダーの定石となりつつある。
山梨県の住宅市場は、「縮小局面の新築市場の傍らで、首都圏移住・二拠点居住・別荘・空き家リノベ・観光地特殊賃貸という複数の独自需要が並走する」極めて複層的な構造である。**「新築一本足経営からの脱却が最も切実に求められる地方県の一つ」**こそが、山梨県の住宅会社経営の本質的論点である。
山梨県の住宅商圏は、国中地方9市町と郡内地方6市町村の2層構造に加え、北杜市の別荘・移住特化市場という第3の独立商圏を持つ。県内最大の甲府市・甲斐市・昭和町を中心とした「甲府都市圏」が県全体の住宅市場の大半を占める。
人口約18万人。県人口の約23%が集中する県庁所在地で、住宅市場シェアは**県全体の約23〜27%**と推定される。甲府駅・山梨大学・武田神社・行政機関・甲府城跡を擁する国中の中核。武田信玄の居城跡である武田神社、ジュエリーの街として知られる甲府の独自文化が凝縮されている。
衰退傾向が顕著で、岡島百貨店が2024年2月に規模を7分の1に縮小して再出店、山交百貨店も2019年に閉店。住宅市場としても、甲府市内中心部の建替え需要は薄く、むしろ甲府市郊外から、隣接する甲斐市・昭和町・中央市・南アルプス市への世帯流出が継続している。ただし、甲府駅前ではリニア期待を背景に高さ約120m・地上28階建ての複合再開発が進むなど、駅前不動産には限定的だが活気がある。
人口約7.6万人で、甲府市に次ぐ県内第2位の都市。JR中央本線「竜王駅」「塩崎駅」、中央自動車道「双葉スマートインターチェンジ」を擁し、生活利便性と交通利便性を兼ね備える。赤坂台総合公園(ドラゴンパーク)、甲州ワインビーフ、赤坂トマトといった地域ブランドも育っており、近年の山梨県内住宅市場で最も活況を呈する商圏の一つ。住宅市場シェアは**県全体の約13〜15%**と推定される。甲府市内からの世帯流入と、首都圏からの移住流入の両方を取り込んでいる点が成長の核心。
人口約2.2万人と小規模ながら、「昭和住宅公園」を擁する県内最大の展示場集積地で、住宅市場シェアは**県全体の約8〜10%**と推定される。県内27市町村のうち、ここ最近で最も多く人口を増やした自治体(年間+208人前後)で、中央道・中部横断道・JR身延線の結節点に位置し、甲府市・甲斐市への通勤至便性に加え、生活インフラ・行政サービスの効率性が極めて高い。昭和イオンモール、各種商業施設の集積、子育て支援制度の充実といった要素が組み合わさり、「住みたい街No.1」として山梨県内で機能している町である。
人口約6.6万人。国中西部の中核で、JRが通っていないにもかかわらず、移住人気が非常に高い。釜無川左岸の扇状地に広がる果樹園地帯(さくらんぼ・もも・ぶどう)、南アルプスの山々、温暖な盆地気候が魅力。新築・購入時の最大50万円助成、空き家リフォーム最大100万円補助、東京圏からの移住者へ最大300万円の移住支援金など、移住促進制度が極めて手厚い。住宅市場シェアは**県全体の約8〜10%**と推定される。市川工務店・米山住研等の地場ビルダーが拠点を持つ。リニア中央新幹線で品川駅まで約25分とされ、将来的にさらに人気になることが予想される。
中央市は人口約3万人、笛吹市は約6.4万人、甲州市は約2.8万人、韮崎市は約2.6万人。中央市は移住流入で人口を維持。笛吹市は石和温泉・桃源郷・ぶどう郷を擁する観光・農業の中核都市。甲州市は勝沼ワイン・枯露柿の産地として「峡東」のフルーツ農業中心地。韮崎市はJR中央本線の特急停車駅で、駅前ターミナル整備が進み、京都・大阪方面行き高速バスの停留所もあり、交通結節点として機能。中央市以外は人口減少が継続している。
人口約4.5万人。清里・大泉・小淵沢・須玉・武川・白州・明野・高根・長坂等の旧8町村が合併してできた、山梨県最大面積の市。標高1,000〜1,300mの八ヶ岳南麓は、首都圏富裕層の別荘・移住先として全国屈指のブランド力を持ち、国蝶オオムラサキ生息数日本一・名水百選3か所・日照時間日本一の独自自然資源を抱える。
住宅市場シェアは戸数ベースで**県全体の約7〜9%**と推定されるが、坪単価100万円超のハイエンド住宅・別荘・ペンション・コートハウス・ログハウス・ティンバーフレーム住宅といった特殊需要が集中するため、金額ベースのシェアはさらに大きい。地場ビルダー(八ヶ岳建築工房・長田工務店等)、別荘専門業者(セカンドベース・カントリーライフ・八ヶ岳中央地所・デュアルライフ等)、建築家アトリエ、首都圏拠点の別荘特化メーカーが入り乱れる、山梨県内で最も競争密度の高いエリアである。新築・中古別荘・空き家リノベ・土地分譲が一体的に動き、「リゾート不動産専業の業者」と「定住向け住宅会社」の境界が曖昧な点が、北杜市場の最大の特殊性である。
富士吉田市は人口約4.5万人、富士河口湖町は約2.6万人、山中湖村は約5,000人。郡内地方の中核で、富士山麓の観光地・別荘地として機能。富士吉田市は「富士山駅」を擁する郡内の中心都市で、富士山五合目までのバス登山口、織物産業(郡内織物・ハタオリ)、御師の町としての歴史を持つ。住宅市場シェアは**県全体の約10〜12%**と推定される。一条工務店富士吉田展示場が郡内唯一の住宅公園展示場として機能。
特筆すべきはインバウンド観光地化に伴うグランピング・コテージ・ヴィラの爆発的増加である。富士河口湖町・山中湖村・鳴沢村・忍野村にまたがるエリアでは、1棟貸しヴィラ・プライベートサウナ付きコテージ・愛犬同伴グランピングといった、坪単価ベースで通常住宅の数倍の収益性を持つ宿泊施設が、2018年頃から急速に建設されている。地場ビルダーがこの市場に参入することで、住宅会社とリゾート建築業の境界を越えた新規事業が可能となっている。
大月市は人口約2.2万人、上野原市は約2.2万人、都留市は約2.7万人。郡内東部で、首都圏(東京・神奈川)への通勤圏。JR中央本線で新宿まで1〜1.5時間圏内のため、**実質的に「首都圏ベッドタウンとしての山梨県側」**として機能している。朝の通勤時間帯の上り列車は混雑し、住民の目線は東京方面に向いている。住宅市場では小規模だが、首都圏通勤者向けの戸建て需要、首都圏の高地価から逃れて山梨側に住む層、テレワーク移住層が一定の市場を形成する。
国中地方南部の峡南地域(市川三郷町・身延町・南部町・富士川町・早川町)は、富士川河谷沿いに広がる中山間地域である。**「河内(かわうち)」**と呼んで国中本流と区別されることもあり、文化的に独立した小商圏を形成する。住宅市場としては極めて小規模で、地縁の濃いローカル工務店が固有の市場を維持している。人口減少が県内で最も深刻なエリアでもある。
山梨県の商圏構造は、国中の甲府都市圏(甲府・甲斐・昭和・中央・南アルプス・笛吹)が県内住宅市場の60%以上を占め、郡内(富士吉田・富士河口湖・大月・上野原・都留)が独立商圏として20%程度、北杜市の別荘・移住市場が金額ベースで10〜15%を占める、三極構造となる。「国中中核都市集中×郡内独立×北杜別荘特化」という三軸の戦略判断が、山梨県でTOPビルダーになる本質的な戦いである。
PG社が保有する住宅・建設業界戸籍名簿より山梨県の事業者プロフィールを抽出すると、注文住宅を中心とする住宅事業者は県内に約100〜130社存在する。年間棟数で30棟以上を扱う「事業規模ビルダー」は約12社、100棟超の「中堅・大手」は数社にとどまる。県全体としては中小・零細事業者が多数派を占める。
最上位グループは**一条工務店(県内首位グループ、6展示場体制)**である。
山梨県本拠の地場有力ビルダーは以下に整理できる。
全国メーカー上位グループには、セキスイハイム(昭和住宅公園・甲府住宅公園に拠点)、大和ハウス、ミサワホーム甲信、積水ハウス、アイ工務店、桧家住宅、ヤマダホームズ、住友林業、トヨタホーム、タマホーム、パパまるハウス、エースホーム等が続く。特にセキスイハイムは山梨県の高仕様志向を捉え、長年強いポジションを維持している。アイ工務店も近年では積極的に成長しており、近年は新昭和やヤマト住建などの県外有力ビルダーも積極的に進出を果たしている。
山梨県の分譲住宅市場は薄い。飯田グループ系の山梨進出は限定的で、地場の中規模ビルダーが小ロットの分譲を併走させているケースが目立つ。昭和町・甲斐市・中央市の郊外住宅地で、地場ビルダーの分譲建売がじわじわと存在感を増しているのが近年の特徴である。
山梨県固有のプレイヤー群として、空き家活用・別荘専門業者を押さえておく必要がある。北杜市・富士河口湖町・富士吉田市等には、「リゾート不動産仲介」「別荘建築・リフォーム」「空き家リノベ」「移住相談・土地探し・運営代行」を統合的に提供する事業者が独自の生態系を形成している。北杜市のセカンドベース、カントリーライフ、八ヶ岳中央地所、デュアルライフ、ふるさと情報館八ヶ岳事務所等がその代表例で、**これらは住宅会社というより「リゾートライフプラットフォーマー」**として機能している。
地場ビルダーがこれらの事業者と連携または競合することで、新築単独事業から「移住・別荘・空き家・リノベ」までを束ねる総合住生活サービス事業者へ転換する道筋が拓ける。山梨県官民連携空き家活用ビジネスの認定事業者になることで、県・市町村との連携体制が強化される。
倒産動向については、山梨県でも2023〜2024年にかけて複数の地場工務店・小規模ビルダーの倒産・廃業が発生。資材高騰・人件費上昇・人口減少の3重苦が効いている。急成長ローカルビルダーについては、山梨県内では移住者向けデザイン住宅・北杜の別荘建築・富士山麓の観光地住宅・甲府盆地の高性能住宅等、特定セグメントに特化したビルダーが棟数を着実に積み上げている。大手によるM&A動向については、山梨県を直接ターゲットとした大型M&A案件は近年表面化していないが、西甲府住宅のノーブルHDへのグループインなどの動向は県内ビルダーも当然知っている。
経営者の高齢化・後継者不在は山梨県でも進んでおり、事業承継型M&Aは今後加速すると見られる。
山梨県の住宅市場の構造は、国中地方の甲府都市圏を一条工務店が圧倒的密度の展示場展開で押さえ、地場ビルダーが国中地方で一条と棲み分けつつシェアを取り、郡内・北杜の別荘・観光地市場は地縁の濃いローカルビルダーと建築家アトリエ、リゾート系プラットフォーマーが分け合う形である。地場ビルダーは「国中の高性能住宅」「北杜の別荘・移住住宅」「郡内の地縁住宅」のいずれかに特化することで生存圏を確保しており、一条と直接競合する正面戦闘を避ける棲み分け構造が成立している。
頻出する論点が「国中で勝つか、郡内も取りに行くか、北杜の別荘市場に手を出すか」である。国中の甲府都市圏に集中すれば人口60万人規模の市場を効率的に取れるが、郡内と北杜は捨てることになる。郡内に進出すれば関東地方ハウスメーカーとの競合に晒される。北杜に進出すれば、全国の建築家アトリエ・別荘専門ビルダーとの競合となり、坪単価100万円超のハイエンド市場で勝負する経営力が必要になる。
ここには山梨県の県民性も深く関わる。武田信玄ゆかりの土地柄もあり、保守的で地縁・血縁を重視する文化を持つ。国中地方は「甲州弁」、郡内地方は「郡内弁」と方言も明確に異なり、富士河口湖の住民が甲府の地場ビルダーと付き合うことは稀である。「信頼関係を一度築いた地場ビルダーから離れない」というロイヤリティと、「新規進出してきた事業者を簡単には受け入れない」という参入障壁が、同時に作用するのが山梨県の特徴である。
山梨県の住宅会社にとって、首都圏からの移住者・二拠点居住者をどう取り込むかは最も重要な論点。地元若年世帯の絶対数が急減するなか、移住者は唯一の「成長セグメント」となっている。移住者向けの営業設計は地元世帯向けとは全く異なる。県外(首都圏)に拠点を持たない地場ビルダーが、首都圏在住の移住検討層に直接リーチする仕組み作りが必要となる。具体的には、①Instagram・YouTubeでの「山梨暮らし発信」コンテンツ、②移住メディアへの露出、③首都圏で開催される移住イベントへの出展、④オンライン土地探し・リモート打合せ対応、⑤移住支援金・補助金の活用提案、⑥お試し移住住宅の貸出といったインフラの整備である。
空き家率全国1位という構造を「脅威」ではなく「事業機会」として捉え直すことが、これからの経営の核心となる。新築需要が縮小する一方で、空き家リノベ・古民家再生・別荘リノベ・空き家活用ビジネスは、山梨県では他県以上に厚い市場として存在する。山梨県官民連携空き家活用促進事業の認定事業者になることで、県・市町村から空き家情報の提供を受け、補助金・助成金を組み合わせた事業展開が可能となる。「新築×リノベ×空き家活用×別荘再販」を一気通貫で提供する地場ビルダーこそが、山梨県の次世代TOPプレイヤー像である。
ナフサ価格高騰を起点とした樹脂・断熱材・ビニールクロス・配管材の値上げは直撃している。特に「全館空調×ZEH×外張断熱」を売りにしてきた地場ビルダーほど影響が大きい。仕入先見直し・施工効率改善・商品ラインナップ簡素化の3方向の手を同時に打つ必要がある。ただし山梨県では、移住者・別荘需要層は価格より性能・デザインを重視するセグメントが多いため、価格転嫁の許容余地は他のマーケットより広い。北杜市の別荘市場では坪単価120万円超でも受注可能で、価格転嫁とむしろ高単価化を同時に進められるセグメントが存在する。
SNS集客は山梨県でも明確に浸透している。特に山梨県の場合、SNS集客の主戦場は「首都圏の移住検討層」となる。InstagramでのVlog型コンテンツ、YouTubeでの「山梨移住生活」「八ヶ岳暮らし」「リモートワーク×戸建て」をテーマにした発信、移住情報メディアへの露出といった、「県外から県内に集客する」マーケティングが、山梨県の地場ビルダーにとって決定的な競争優位となる。地元向けでは昭和住宅公園・甲府住宅公園・富士吉田住宅公園での来場予約獲得が依然として重要だが、「住宅公園に行く前にInstagramで地場ビルダーを比較する」という購買行動の変化が進行中。「Web×SNS×住宅公園」の三層集客モデルを整える必要がある。
最大の経営課題は人材である。新卒採用は山梨大学・山梨県立大学・地元高校からの採用に依存するが、首都圏が車・電車で2時間以内であるため、若年層が首都圏企業に流れるパターンが恒常化している。給与水準・福利厚生で首都圏企業と並ぶ水準を作れるかが採用の分水嶺となる。ただし**「子育てのために山梨に戻りたい」「自然のなかで暮らしたい」と感じている首都圏在住者は多く**、Uターン・Iターン採用の余地は他県より大きい。「移住採用(首都圏キャリア人材を山梨に呼び戻す)」も住宅会社の成長軸となる。
リニア中央新幹線は「未確定の大きな追い風」として常に意識されている。リニア開業で甲府〜品川が約25分となれば、甲府盆地南部(甲府市大津町周辺)の不動産価値は劇的に変化する可能性がある。一方で、リニアは度重なる開業延期に直面しており、「いつ開通するか分からない期待」が住宅会社の事業計画に組み込みづらい側面もある。「リニアを織り込んだ大胆な投資」と「リニアを織り込まない堅実な経営」のバランスが、山梨県の住宅会社経営者の難しい判断となる。
山梨県のクライアント企業については、本稿では具体名を伏せるが、国中地方の中堅地場ビルダー数社をご支援している。共通する課題は前述の通り「東西展開の戦略判断」「全館空調×ZEH×平屋商品のブラッシュアップ」「Uターン採用の強化」などが上げられる。
最大論点は、「県内地元市場の急速縮小という逆風に対し、移住者・空き家活用・別荘・観光地特殊賃貸・リニアという五つの追い風に乗り、新築一本足経営から総合住生活サービス事業者へ転換できるか」である。「地元密着のままでは縮む、しかし首都圏需要に振りすぎると地元から浮く」というジレンマを、各社がどう解くかが問われる時代になっている。
山梨県でTOPビルダーと呼ぶに値する規模の目安は、年間販売棟数120〜200棟、売上高50〜80億円、従業員数50〜100名、国中地方の主要展示場集積地に旗艦展示場を構え、北杜市にも別荘・移住者向け拠点を持つ規模である。これは2024年時点で県内首位グループが達成している規模感で、**県内シェア5〜8%**を取るために必要な事業規模に相当する。
ただし山梨県の場合、「新築棟数の多さ」だけでは真のTOPビルダーとは言えない。新築120〜200棟に加え、空き家リノベ・古民家再生・別荘建築・移住者向け土地分譲・観光地特殊宿泊施設の建築といった派生事業を統合した「総合住生活サービス事業者」として、総売上80〜120億円・粗利率28〜32%を確保できる経営体制こそが、山梨県の次世代TOPビルダー像である。ある意味地域で圧倒的なシェアを上げるビルダーが北陸や九州ほど存在しないところが分断の中でも有力ビルダーが進出するキッカケにもなっている。寡占化に向けてシェア10%を狙うことが理論上可能な市場ともいえる。
第1段階(年間60棟まで):国中地方の甲府都市圏で完全制覇を狙う。昭和住宅公園または甲府住宅公園に旗艦展示場を構え、甲府市・甲斐市・昭和町・中央市・南アルプス市の5市町でNo.1のシェアを取る。まずこのエリアで10〜15%のシェアを取ることが、ブランド・採用・財務の基盤となる。
第2段階(年間60→120棟):北杜市・笛吹市への進出。北杜市の小淵沢・大泉・長坂エリアに「別荘・移住特化のサテライト拠点」を構え、首都圏富裕層のハイエンド市場を取りに行く。北杜市拠点は単なる展示場ではなく、「移住相談・土地探し・別荘リノベ・運営代行」までを統合したリゾートライフプラットフォーマーとして設計することが肝要である。
第3段階(年間120→200棟超):郡内地方への選択的進出。富士吉田市・富士河口湖町に観光地・別荘特化型の展示場を構え、郡内市場とインバウンド観光地特殊宿泊施設市場を取りに行く。郡内に進出する場合は、「コテージ・ヴィラ・グランピング施設の建築」という観光地特殊需要を主軸に据えることが、関東勢との差別化軸になる。
第1層は新卒採用。山梨大学・山梨県立大学・地元高校をターゲットに、年間2〜8名を継続採用。首都圏企業の初任給と並ぶ水準(22〜24万円)の確保が前提条件。
第2層は中途採用。首都圏Uターン層を最重要ターゲットとする。「子育てのために山梨に戻りたい」「自然のなかで暮らしたい」と感じている首都圏在住者に、地元銀行の人材紹介・OB会ネットワーク・移住イベント・SNSでのUターン情報発信を活用してリーチする。**「首都圏で建築営業・設計・施工管理の経験を積んだ30〜40代を、山梨で家族と暮らしながら働く」**というキャリアパスを設計する。
第3層はリファラル採用と異業種転職。建築・住宅業界外(自動車ディーラー・保険・銀行・通信)からの未経験中途を、半年〜1年で戦力化する仕組みを構築する。
3年定着率を業界平均の50%台から80%以上に引き上げる制度設計が必要。給与水準だけで首都圏企業と勝負するのは難しいため、**「自然の中で暮らせる」「通勤が楽」「子育て環境が良い」「ワーケーション・ハイブリッド勤務可能」「果樹・ワイン・登山・温泉といった県内アクティビティが豊富」**といった、山梨ならではの暮らしの魅力を最大化する制度設計が定着率向上の鍵となる。新卒3年目で年収450〜500万円、5年目で550〜600万円、10年目で700〜800万円というキャリアパスを明示する。
商品については、山梨県の気候要件と移住者・別荘ニーズに最適化した「全館空調×ZEH×平屋・コートハウス×自由設計」を主力とする。坪単価75〜120万円のミドル〜ハイレンジで、一条工務店・セキスイハイムと差別化する。**①坪単価75万円台のスタンダード商品(地元世帯向け)、②坪単価90万円台の主力商品(共働き・移住世帯向け、全館空調×ZEH標準)、③坪単価110万円超のフラッグシップ商品(北杜別荘・首都圏移住者向け)**の3層構造が、山梨県の市場構造とフィットしやすい。アイ工務店がこの市場で急伸しているということは、地場ビルダーもポジション次第によっては狙ってもいい市場である。
ブランドについては、**「山梨で家を建てるなら、まずこの会社に相談する」**という第一想起を取りに行く。山梨県民の保守性を踏まえれば、長期的な地域貢献活動・OB施主との継続的関係構築のほうが効果的。同時に、**首都圏移住者向けには「山梨暮らしのリアルを発信するメディア型コンテンツ」**を整備する。
財務については、自己資本比率40%以上、流動比率150%以上、年間粗利率28%以上を3指標として死守する。山梨県は移住者・別荘需要から坪単価の上振れ余地があり、粗利率30%超を狙える。北杜市の別荘市場では粗利率35%超も可能で、財務体質の強化に直結する。さらに、空き家活用ビジネス・観光地特殊宿泊施設建築の派生事業を加えることで、新築の景気循環リスクを分散できる。
山梨県でTOPビルダーになるとは、国中の甲府都市圏で地元世帯のシェアを着実に積み上げつつ、北杜市の別荘・移住者市場でブランドを確立し、首都圏Uターン採用と移住者ビジネス・空き家活用ビジネス・観光地特殊宿泊施設のインフラを整え、新築一本足経営から「総合住生活サービス事業者」へと転換する経営力を持つことである。「狭い県土で東西分断、空き家率全国1位、首都圏需要が継続注入、リニア期待も視野に入る」という山梨独自の複合構造で勝つことは、地方住宅市場経営の最高難度のチャレンジといえる。しかし同時に、これだけ多様な需要層が一つの県に同居する市場は他にない。山梨県の住宅会社経営は、地方住宅市場経営の最先端実験場である。
山梨県の住宅市場は、国中・郡内の東西分断・狭い県土×薄い人口・首都圏との高速接続・空き家率全国1位(4回連続)・北杜八ヶ岳南麓の別荘市場・富士北麓のインバウンド観光地化・リニア中央新幹線という未確定の追い風という七つの構造的特徴を持つ。一条工務店が国中6展示場体制で県内首位の座を確実なものにし、グローバルハウス・オプトホーム・西甲府住宅等の地場ビルダーが、セキスイハイム・タマホーム等の大手ハウスメーカー群とシェア争いをしながらアイ工務店は急伸中。。「狭い市場で、地元縮小と首都圏需要が同時並行する複合構造に対応する経営力」が問われる、地方住宅市場の中で最も読み解きが難しい県の一つである。
次回・第8弾は長野県編。山梨県と並ぶ「移住人気県」の代表格である長野県は、北信・東信・中信・南信の4地方並立構造を持ち、軽井沢・白馬・松本・諏訪等の独立商圏が並ぶ。北陸新幹線開業から10年を経た長野市の構造変化、リニア中央新幹線の飯田駅構想、八ヶ岳西麓の別荘市場と、長野県の住宅市場の現在地を解剖する。
ピュアグロースは、工務店・ハウスメーカー特化の経営コンサルとして、200社以上の顧問先・会員企業の成長率平均114%向上、顧客満足度日本一(自社調べ・178社回答)を達成しています。
山梨県・甲信越エリアでの経営戦略・出店戦略・商品設計・採用支援・移住者ビジネスのインフラ構築・空き家活用ビジネスの立ち上げについてのご相談は、以下よりお問い合わせください。
宮内和也(みやうち・かずや) ピュアグロース株式会社 代表取締役。船井総合研究所を経て独立、住宅・建設業界に特化した経営コンサルティングファームを経営。「定額制注文住宅」「大型単独展示場」「来場予約ファースト」など、業界標準となったプロジェクトを多数主導。著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)。