【47都道府県マーケットレポート㉑】岐阜県の住宅市場分析|人口動態・着工構造・主要プレイヤーから読み解く2026年の経営戦略・工務店経営を読み解く|

2026.05.11 2026.05.11

岐阜県の住宅市場を読み解く核心は、「岐阜県の南半分は実質的に名古屋経済圏である」という構造的事実にある。県庁所在地の岐阜市から名古屋駅までJR東海道本線で約20分、各務原・羽島・大垣・多治見・可児・美濃加茂のいずれもが名古屋通勤圏に組み込まれ、住民の購買行動・通勤行動・生活インフラ依存先のすべてが愛知県(特に名古屋市)に向いている。東濃地方(多治見・土岐・瑞浪・恵那・中津川)に至っては、車でも電車でも岐阜市へ行くより名古屋市へ行く方が早く、自動車の継続車検すら岐阜運輸支局より愛知運輸支局小牧自動車検査登録事務所に行った方が距離が短いという、行政区分と生活実態の乖離が日常的に成立している。県人口は約190万人(2025年5月時点)で減少局面にあるが、岐阜市・関市・岐南町等の名古屋寄りエリアは底堅く推移している。
住宅業界の市場では一条工務店が県内首位の独占的ポジション
を確立し、東海4県No.1ビルダーのクラシスホーム(年間1,300棟級)が名古屋本社から岐阜店を介して急成長中岐阜地場最大手の大丸開発(岐阜地区着工件数16年連続NO.1)と並ぶ規模で愛知系と岐阜地場の正面競合が成立している。本稿では人口・着工・商圏・プレイヤー・現場論点・戦略の6章構成で、岐阜県の住宅市場の実相を解剖する。筆者の顧問先には岐阜・西濃・東濃地域の有力住宅会社が複数あり、現場で見えている肌感覚も併せて記す。岐阜県でも複数の顧問先・会員先があるので岐阜県市場は愛知県との関係性が重要ではあるし、愛知からの県外進出としても多いので、それも含めて執筆する。


目次

■ 岐阜県の位置づけ|マーケット指標

総人口:約190万人(2025年5月推計)
世帯数:約80万世帯
県土面積:約10,621km²で全国7位、市町村数は42。
新設住宅着工戸数:令和6年度で約9,500戸前後
持家比率は約65%
平均世帯人員は2.37人
**県内総生産・第2次産業比率は約32%**で、全国平均の25.6%を大きく上回る製造業県である。

最大の特異性は、**「人口190万人の地方県でありながら、その大半が中京圏(名古屋経済圏)に組み込まれている」点にある。岐阜・西濃・中濃・東濃の4地方のうち、飛騨地方を除く全域が名古屋通勤圏・名古屋商圏に属し、住宅市場でも住民の選好・営業導線・展示場集客がすべて名古屋を意識して設計される必要がある。「岐阜県の住宅市場を語ることは、中京圏住宅市場の北半分を語ることと同義」**という認識が、岐阜県の住宅会社経営の出発点となる。


■ 岐阜県の地理的要因|住宅市場を規定する物理的条件

5圏域構造(岐阜・西濃・中濃・東濃・飛騨)

岐阜県は行政上、岐阜地区(岐阜市・羽島市・各務原市・山県市・本巣市・瑞穂市・羽島郡・本巣郡)、西濃地区(大垣市・海津市・安八郡・揖斐郡・不破郡・養老郡)、中濃地区(美濃加茂市・関市・美濃市・可児市・可児郡・加茂郡・郡上市)、東濃地区(多治見市・土岐市・瑞浪市・恵那市・中津川市)、飛騨地区(高山市・飛騨市・下呂市・大野郡)の5圏域に分かれる。県土面積約10,621km²は全国7位の広さで、特に飛騨地方は県土の約半分を占めるが人口集積は限定的。県人口の約9割が美濃地方(岐阜・西濃・中濃・東濃)に集中しており、住宅市場の主戦場もこの美濃4地区にある。岐阜地区で展開している会社が飛騨地区への展開を考えるというのはなく、
愛知を見て展開するのがセオリーだともいえる。一方、飛騨地区の一番店については岐阜エリアを見て展開するのは必定である。

「名古屋までの距離」が決定する住宅市場構造

岐阜県の住宅市場を理解する最大の鍵は、「各エリアから名古屋までの距離」が事実上の市場価値を決定しているという構造である。

岐阜地区(岐阜市・羽島市・各務原市・瑞穂市・岐南町等)は、JR東海道本線で岐阜駅〜名古屋駅が約20分、新幹線で岐阜羽島駅〜名古屋駅が約10分。岐阜羽島駅は東海道新幹線の停車駅であり、首都圏・関西圏への中継基地としても機能する。岐阜地区は事実上の名古屋ベッドタウンとして、20代〜40代の子育て世代の住宅需要が継続的に発生する。

西濃地区(大垣市・養老郡・揖斐郡等)は、JR東海道本線・東海道新幹線(岐阜羽島)・名神高速道路で名古屋まで30〜40分。大垣市は西美濃の中核として独立した経済圏を持ちつつも、名古屋への通勤・買い物導線は強固。

中濃地区(美濃加茂市・関市・可児市等)は、東海環状自動車道で名古屋まで約1時間、JR高山本線・太多線でも1時間圏内。美濃加茂市の移住定住情報サイトは「名古屋からほんの一時間。都会のすぐ隣まちの美濃加茂市」と自らを定義しており、名古屋通勤圏としてのアイデンティティを明確に打ち出している。

東濃地区(多治見市・土岐市・瑞浪市・恵那市・中津川市)は、国道19号・中央自動車道・JR中央本線が名古屋と長野県を直結する幹線として走る東濃地方の幹線交通路はいずれも岐阜市ではなく名古屋市と直結しており、岐阜市へ行くより名古屋市へ行く方が早い。多治見市は1980年代から名古屋市のベッドタウンとして発展してきた歴史を持ち、住民の通勤・買い物・娯楽の中心は完全に名古屋市側にある。**「東濃地方は岐阜県でありながら、文化的・経済的にはほぼ愛知県」**と言っても過言ではない。

飛騨地区(高山市・飛騨市・下呂市等)は独立経済圏。**観光立県・伝統工芸(飛騨春慶・飛騨の家具)・林業(東濃ひのき)・温泉観光(下呂温泉・奥飛騨温泉郷)**を産業基盤とし、インバウンド観光地化に伴う宿泊施設・ペンション・古民家リノベ需要が新たな成長軸として浮上している。

「東濃ひのき」と林業県としての顔

岐阜県は全国2位のひのき資源量を持ち、**「東濃ひのき」**は岐阜県のブランドひのきとして全国に知られる。県土の約8割が森林であり、林業・木材加工業が伝統産業として根付いている。住宅会社の商品設計においても、県産材・東濃ひのきを使った自然素材住宅、無垢床、伝統工法といった訴求軸が、地場ビルダーの差別化要素として機能する。

寒暖差・豪雪・盆地気候

美濃地方の盆地気候は、夏季の最高気温が全国上位の高温となる典型的な盆地気候で、多治見市は2007年に国内最高気温40.9℃(当時)を記録した。一方、冬季は氷点下まで下がり、夏は猛暑・冬は寒冷という極端な寒暖差が住宅性能に対する高い要求水準を生んでいる。飛騨地方は豪雪地帯で、雪国仕様の屋根構造・基礎・断熱が必須要件となる。「夏の遮熱×冬の断熱×豪雪対応」という3つの気候要件が、岐阜県の住宅会社の商品設計を規定している。

リニア中央新幹線・岐阜県駅構想

リニア中央新幹線の中間駅の一つが岐阜県中津川市に建設中で、開業すれば中津川から品川まで約45分・名古屋まで約8分という劇的なアクセス改善が見込まれる。東濃地方は現状でも名古屋通勤圏だが、リニア開業後はさらに首都圏直結の二拠点居住エリアとして地域構造が変化する可能性がある。


■ 第1章|岐阜県の人口・世帯動態

1-1|2025年5月時点で約190万人、減少局面の中の局所的成長

岐阜県の推計人口は令和7年5月1日現在で約190万人、世帯数は約80万世帯、平均世帯人員は2.37人。前年同月差で約1.6万人の減少となっており、人口減少は構造的・継続的なトレンドである。一方で世帯数は前月比1,658世帯増加と継続増加しており、核家族化・単独世帯化の進行を示している。

ただし市町村別の動向を見ると、人口減少県の中の局所的成長エリアが明確に存在する。令和7年4月中の人口動態では、岐阜市・関市・岐南町等の14市町村で人口が増加した。県庁所在地が増加する一方で、中津川市・多治見市・大垣市といった広域中核都市が減少するという、独特の人口動態パターンが進行している。

1-2|「名古屋接続力」が人口推移を決定する

岐阜県内の市町村別人口動態を分析すると、「名古屋までの所要時間」が人口推移の最大の決定要因であることが分かる。岐阜市・岐南町・関市・各務原市といった名古屋から30〜40分圏のエリアは底堅く、多治見市・中津川市・大垣市といった名古屋から1時間前後のエリアは減少局面にある。**「名古屋に近いほど人口が維持され、名古屋から遠いほど減少が加速する」**という、中京圏の重力構造が岐阜県の人口動態を規定している。

これは住宅市場にとって決定的な意味を持つ。地場ビルダーは「名古屋通勤圏としての岐阜県」を主戦場とし、名古屋からの距離を最重要マーケティング指標として捉え、地元客と名古屋通勤客の両方を取りに行く設計が求められる。愛知県側からの参入ビルダー(名古屋本社・愛知地盤)も、岐阜県の名古屋通勤圏を「県外」とは捉えず、自社の営業エリアとして組み込んでいるのが現実である。

1-3|製造業県としての顔と転勤族需要

岐阜県の県内総生産に占める第2次産業比率は約32%で、全国平均の25.6%を大きく上回る。美濃地方には自動車部品(東海理化・中央発条等の名古屋メーカー系列工場)、精密機械、陶磁器(美濃焼・東濃地区)、刃物(関市の刃物産業は世界的ブランド)、製紙、化学といった製造業が集積している。東濃西部の多治見市・土岐市は美濃焼の世界的産地、関市は世界三大刃物産地として「岐阜の世界ブランド」を支えてきた。

これら製造業集積は、地方転勤者・拠点工場の管理職層・若年技術者といった住宅市場の安定需要層を生み出している。特にトヨタ自動車関連のサプライチェーンが岐阜県南部・西濃地方に広く展開しており、トヨタ系列の転勤者・OB層が住宅顧客として継続的に発生する点は、岐阜県の住宅会社経営の隠れた強みである。

1-4|飛騨地方の人口減少と移住流入

飛騨地方は人口減少が県内で最も深刻なエリアであるが、インバウンド観光地化と古民家移住の流入が並行して発生している。高山市は外国人観光客が押し寄せる国際観光地として、宿泊施設・古民家リノベ・別荘需要が継続的に発生している。**白川郷(合掌造り集落・世界遺産)**を擁する大野郡白川村も観光集客力が極めて高く、地場ビルダーがこの市場で観光地特殊宿泊施設・古民家リノベを手掛ける事業機会が広がっている。

考察|「名古屋経済圏としての岐阜県」という基礎認識

岐阜県の人口・世帯動態を一言で要約すれば、**「人口減少局面にあるが、名古屋通勤圏のエリア(岐阜市・各務原・羽島・関・美濃加茂・多治見等)は底堅く推移し、それ以外のエリア(西濃・東濃東部・飛騨)は減少が加速する二重構造」**である。県全体を一律の市場と捉えるのではなく、「名古屋接続度」を主軸にエリアを分類する視点が、岐阜県の住宅会社経営の出発点となる。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 岐阜県人口は2025年5月時点で約190万人、前年同月差約1.6万人マイナスで減少継続。
  • 岐阜市・岐南町・関市は人口増、多治見市・中津川市・大垣市は減少という二重構造。
  • 「名古屋までの距離」が人口推移と住宅市場価値を決定する最大の構造変数。
  • 第2次産業比率32%、自動車・美濃焼・関の刃物・製紙・化学等の製造業集積が住宅需要の安定基盤。
  • 飛騨地方は人口減少深刻だが、インバウンド観光地化と古民家移住で派生需要が浮上。

■ 第2章|着工動向と住宅会社別ランキング構造

2-1|岐阜県の新設住宅着工──年間9,500戸前後の中規模市場

岐阜県の新設住宅着工戸数は令和6年度で約9,500戸前後と推定される。利用関係別では持家が約65%、貸家・分譲が残り35%という構成。全国で15年ぶりの80万戸割れとなった2024年でも、岐阜県は前年比微減程度で踏みとどまったのが特徴で、これは名古屋経済圏の住宅需要の底堅さと、製造業集積による安定雇用が地元若年層減少を一定程度カバーしているためと考えられる。

2-2|住宅会社別ランキング上位10社──全国メーカー・東海ビルダー・岐阜地場が三つ巴

岐阜県の住宅会社別ランキングは、全国メーカー・東海地盤ビルダー・岐阜地場ビルダーが三つ巴で競合する極めて層の厚い競争構造を持つ。24年度ランキング(PG戸籍名簿より)の上位10社を概観すると以下のとおり。

【1位】一条工務店:直近3年間では毎年積み上げを継続し、県内独占的1位ポジションを確立。2位以下とおよそ2倍近い差を付けている。

【2位】一建設:飯田グループとして全国分譲シェアの中でも非常に高い。全エリアで積極的に展開をしている。

【3位タイ】積水化学工業(セキスイハイム):工場生産による高品質・高断熱・太陽光標準搭載を訴求軸に、岐阜県内の主要展示場で安定したシェアを維持。セキスイハイム中部はSUUMOカウンターでの受注が非常に好調である。

【3位タイ】大丸開発:岐阜地場最大手。戸建ほぼ全量が分譲建売という特異な構造。岐阜地区着工件数16年連続NO.1を維持する岐阜の住宅会社経営の歴史を象徴する企業。以前の圧倒的な強さは影を潜め、大手ハウスメーカーに県内シェアを奪われつつある。

【5位タイ】グランハウス一級建築士事務所:「設計士と作る家」のビジネスモデルとしてはショールーム形態でありながら圧倒的な成長率を誇る全国でも稀有な規模。SNS集客×設計士直接対応×多店舗面的展開という独自モデル。

【5位タイ】住友林業:木造軸組ハイエンド帯で順調にシェアを拡大。

【7位】タマホーム:ローコスト帯で岐阜県内に強いポジション。大型展示場を構えながら、単独型の展示場で埋めている。全国区でありながら、中部エリアは常に強かったエリアとされているが、一方で全国区のビルダーに大量に遺跡があったとされており、人員不足。

【8位】アーネストワン:飯田グループ系のパワービルダーとして分譲建売中心で岐阜県内に展開。

【9位】ヤマカ木材:160棟級(岐阜地場の自然素材住宅トップ)。創業73年の老舗、自然素材住宅「ナチュリエ」が主力商品で、岐阜・愛知・三重に10ヶ所のモデルハウスを展開する地場有力ビルダー。

【10位タイ】大和ハウス工業/クラシスホーム/大東建託:いずれも130棟級。特に注目すべきは東海4県No.1ビルダーのクラシスホームで、23年度75棟級→24年度130棟級(前年比約73%増)と急成長。愛知本社からの岐阜店進出が本格化している。

2-3|ランキングから読み取れる5つの構造的特徴

第一に、一条工務店の独占的1位。毎年積み上げを続け、2位以下と2倍近い差を保っている。岐阜県は一条工務店の事実上の独占市場である。

第二に、岐阜地場最大手・大丸開発の特異な構造。のうちほぼ全量が分譲建売であり、岐阜地場の最大手が分譲建売を主力にしている点は、岐阜県の住宅市場の構造的特徴を象徴する。

第三に、グランハウスの驚異的な成長。100棟級175棟級という前年比約75%増は、地方住宅市場では極めて稀な急成長である。設計士事務所形態でありながら全国稀有な規模で、岐阜地場のデザイン特化ミドル市場を完全に取り込んでいる。

第四に、東海4県No.1ビルダー・クラシスホームの本格進出。23年度75棟級→24年度130棟級と、愛知本社の名古屋系ビルダーが岐阜店進出から急速に岐阜県シェアを拡大している。

第五に、ヤマカ木材の自然素材住宅ポジション。160棟級で地場自然素材住宅の代表として安定ポジションを維持。全国メーカー・東海ビルダー・岐阜地場ビルダーが三つ巴で激しく競合する、地方県では極めて稀有な層の厚い競争市場である。

2-4|「名古屋通勤圏」と「地縁市場」の二重構造

岐阜県の住宅市場の最大の特徴は、「名古屋通勤圏としての商品需要」と「地縁市場としての商品需要」が県内で並走している点にある。

名古屋通勤圏需要層(岐阜市・各務原・羽島・大垣・多治見・可児・美濃加茂等)は、夫婦共働き・子育て世帯・名古屋勤務・年収500〜800万円という標準的な都市圏ファミリー層が主体。商品ニーズは全館空調・ZEH・耐震等級3・対応坪単価65〜80万円というミドルレンジが中心で、一条工務店・セキスイハイム・大和ハウス・クラシスホーム・ヘーベルハウス等の全国・東海メーカーと、グランハウス・ヤマカ木材・大丸開発等の地場ビルダーが激しく競合する

地縁市場需要層(西濃中山間地・中濃北部・東濃東部・飛騨地方)は、地元世帯・農家・三世代同居・地域コミュニティ重視という伝統的な地方需要が主体。商品ニーズは県産材・東濃ひのき・伝統工法・自然素材・坪単価75〜100万円といった高仕様志向で、地縁の濃いローカル工務店が固有の市場を維持している。

2-5|貸家市場と分譲市場の構造

貸家市場では大東建託・大和ハウス系・が一定のシェアを握る。岐阜市・大垣市・多治見市・可児市の中核都市部では分譲マンション市場も存在し、特に岐阜駅周辺はリニア期待を背景に駅前再開発が進行中飛騨地方の高山市・下呂市では、インバウンド向けの民泊・古民家ゲストハウス・温泉宿泊施設といった特殊賃貸需要が爆発的に増加している。

考察|「名古屋通勤圏×地縁市場×製造業集積×観光地特殊需要の四重構造」

岐阜県の住宅市場は、「名古屋通勤圏としての中京圏ベッドタウン需要、地縁市場としての伝統的地方需要、製造業集積による転勤族・若年技術者需要、飛騨地方を中心とした観光地特殊宿泊施設需要」という4つの異なる需要層が同時並行で存在する複層構造である。地場ビルダーはこの4つのうちどこを主戦場に選び、どこを取りに行くかという戦略判断が問われる。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 一条工務店が県内独占的1位、2位以下と2倍近い差を持つ独占市場。
  • 全国大手の飯田グループ、岐阜県最大手の大丸開発は、ほぼ全量分譲建売という構造。
  • グランハウスが175棟級・前年比75%増、設計士事務所として全国稀有な規模。
  • 東海4県No.1ビルダーのクラシスホームが130棟級・前年比73%増で岐阜県シェアを急拡大。
  • ヤマカ木材160棟級が地場自然素材住宅&分譲の代表ポジション、三つ巴の競争市場。

■ 第3章|上位ビルダーの動向──一条工務店・クラシスホーム・地場ビルダー詳説

3-1|一条工務店|東海地盤メーカーの圧倒的シェア戦略

一条工務店は静岡県浜松市本社の住宅メーカーで、東海3県(愛知・岐阜・三重)では極めて強いポジションを誇る。岐阜県内での24年度実績は380棟級と、毎年地道に積み上げを継続している。2位以下と2倍近い差を保ち、岐阜県の住宅市場を独占的に押さえている

一条工務店の岐阜県戦略の本質

一条工務店の岐阜県戦略は、**「岐阜・西濃・中濃・東濃の4地区すべてに展示場を投下し、各地区で来場予約・契約の動線を一手に握る圧倒的密度展開」**にある。岐阜県内の展示場体制は次の通り。

岐阜中日ハウジングセンター(岐阜市)、岐阜南中日ハウジングセンター(岐南町)、大垣中日ハウジングセンター(大垣市)、可児中日ハウジングセンター(可児市)、多治見住宅展示場、各務原住宅展示場、関住宅展示場。

県内全7〜8展示場体制で、各地区で常時2〜4展示場が稼働している。これは岐阜県の人口規模(約190万人)から見れば、極めて高密度な展示場展開である。

一条が岐阜県で勝ち続ける4つの構造的理由

第一に、「東海地盤」という本拠地アドバンテージ。一条工務店は浜松本社・静岡県地盤の住宅メーカーで、東海3県は本拠地中核エリア。愛知・岐阜・三重への営業資源・展示場投資・人材投資が他地方とは桁違いで、それが380棟級という結果に表れている。

第二に、「全館床暖房」が岐阜県の気候要件と完全マッチ。岐阜県は夏の猛暑(多治見40.9℃の歴史)と冬の寒冷(盆地気候の冷え込み)の極端な寒暖差を持つため、全館空調・全館床暖房の標準装備が圧倒的な訴求力を持つ。一条の主力商品**「i-smart」「グラン・スマート」「アイ・キューブ」**はいずれも床暖房・全館空調が標準装備で、岐阜県の住宅市場の中心需要層(名古屋通勤の30〜40代子育て世帯)に完璧にフィットする。地方版としてのハグミー集客・県庁前展示場などでの呼び込みも非常に強化している。

第三に、「業界最高峰の性能を、名古屋通勤圏ファミリーの手の届く価格で」というポジショニング。一条の坪単価70〜85万円・総額3,500〜4,500万円という価格帯は、岐阜県の住宅市場の中心需要層(年収500〜800万円のファミリー)にぴったり合致する。**「全国メーカーのブランド×業界最高性能×手の届く価格」**という三拍子は、地場ビルダーが正面から対抗するのが極めて難しい組み合わせである。

第四に、「来場予約獲得の徹底システム化」。一条は中日ハウジングセンターのGoogle Ads・SUUMO・メーカー公式サイトでの来場予約獲得を徹底システム化しており、岐阜県の住宅検討者の来場予約の相当割合を一条が一次取得する仕組みを確立している。地場ビルダーは「一条にまず行ったお客さん」を後追いで取り込む形になりがちで、構造的に不利な競争環境に置かれている。

一条戦略の弱点と地場の付け入る余地

ただし一条にも明確な弱点がある。それは**「規格化された商品設計のため、土地形状や顧客の特殊要望への対応力が低い」**点。変形地・狭小地・三世代同居・自然素材志向・デザイン重視の顧客層は、一条の規格商品ではフィットしないため、これらのセグメントは地場ビルダーが取りに行ける余地となる。グランハウスやヤマカ木材が独自圏を確保できているのは、まさにこの「一条が拾わない顧客層」を狙った差別化戦略の結果である。

3-2|クラシスホーム|東海4県No.1ビルダー、岐阜店進出の急成長

クラシスホームは愛知県名古屋市緑区桶狭間に本社を置く、東海4県(愛知・静岡・三重・岐阜)に本社を置くビルダーの中で2016年〜2024年度の9年連続注文住宅着工棟数No.1(住宅産業研究所調べ)の地場最大手ビルダーである。年間1,300棟以上の実績を誇る、東海エリアにおける圧倒的なトッププレイヤー。

クラシスホームの全社展開と岐阜進出

クラシスホームは東海・関西に全12拠点を展開している。緑店(名古屋市緑区・本社)、長久手店(愛知県長久手市)、春日井店(愛知県春日井市)、津島店(愛知県津島市)、一宮店(愛知県一宮市・岐阜県境)、豊田店(愛知県豊田市)、岡崎店(愛知県岡崎市)、半田店(愛知県半田市)、豊橋店(愛知県豊橋市)、岐阜店(岐阜県)、四日市店(三重県四日市市)、大阪茨木店(大阪府茨木市)の12拠点。

岐阜県への進出は岐阜店の開設によって本格化し、**24年度130棟級(前年比約+73%)**という急成長を達成した。**愛知一宮店からの岐阜南部・西濃カバー、岐阜店からの岐阜中央・中濃カバーという「2拠点での岐阜県攻略」**が成功している。

クラシスホームの戦略の本質

クラシスホームの戦略の核心は3つに整理できる。

第一に、「デザイン・性能・コストの三位一体バランス」全棟に耐震検証を実施(ウォールスタットによる構造解析)、HEAT20 G2・GX志向型住宅基準の高断熱、最長60年の長期保証といった性能面と、完全自由設計・トータルコーディネート・インテリアショップ・ボタニカルショップの併設といったデザイン面、そしてスケールメリットによる仕入れコストダウンと自社設計・自社施工による中間マージンカットで実現する価格面を同時に成立させている。**「ハウスメーカーと工務店の両方の良さを併せ持つ」**というポジショニングが、東海4県の幅広い顧客層を取り込む基盤になっている。

第二に、「年間1,300棟のスケールメリット×完全自由設計」という稀有な組み合わせ。年間1,000棟超の住宅を完全自由設計(フルオーダー)で提供するビルダーは全国でも数えるほどしかない。月間着工棟数に上限を設けて平準化を図り、資材の生産・仕入れのムラと無駄を排除することで、スケールメリットと品質の両立を実現している。

第三に、「設計士チーム制」と「年間来場体験の最大化」。設計士・コーディネーター・現場監督がチームを組んで顧客対応にあたり、初来場から設計士が直接対応する体制を採用。月間着工棟数の平準化により、施工品質と顧客体験を安定させている。

岐阜県市場における意味

クラシスホームの岐阜県進出は、**「東海4県No.1ビルダーが、東海地盤メーカー一条工務店の独占市場である岐阜県に、明確な対抗ポジションを確立しに来た」**ことを意味する。130棟級は岐阜県内10位タイだが、年率73%の伸びを継続すれば3〜4年で岐阜地場上位(200〜300棟級)に到達する勢いである。岐阜地場ビルダーは、一条工務店だけでなくクラシスホームという東海4県No.1ビルダーとも対峙する二正面戦争に突入したと認識すべき状況にある。

3-3|大丸開発|岐阜地場最大手、岐阜地区着工件数16年連続NO.1

大丸開発株式会社は本社を岐阜県羽島郡岐南町に置く、創業40年以上・累計引渡し棟数3,800棟以上の岐阜地場最大手ビルダーである。「岐阜地区での着工棟数16〜18年連続NO.1」(住宅産業研究所調べ・岐阜県資本企業内)という、岐阜県の住宅会社経営の歴史を象徴する企業。24年度棟数は180棟級で岐阜県内3位タイにランクインしている。

大丸開発の戦略の本質

大丸開発の戦略の核心は**「分譲建売主軸×不動産ネットワーク岐阜県No.1×注文住宅併走」**という独自モデルにある。

第一に、分譲建売主軸。24年度の戸建棟数のうち持家(注文住宅)はごく一部で、残り大半は分譲建売住宅である。**「家賃並みの返済で実現する5LDK+広い庭」を売りに、年間300棟ほど(分譲+注文)を販売してきた歴史を持つ。「お客様に価値を感じてもらえる家」「家賃で買える家」**というメッセージが、岐阜県の20代〜30代の若年世帯から強く支持されている。

第二に、不動産ネットワーク岐阜県No.1大丸グループは不動産事業・温泉事業(関観光ホテル・みの観光ホテル・武芸川温泉)等の多角経営を展開しており、岐阜県内の土地情報の集積量は岐阜県最大級「家をつくる工務店×土地のプロ不動産」のワンパッケージスタイルで、土地探しから建築までを一気通貫で提供する。地縁の濃い岐阜県では、土地仲介力こそが住宅事業の優位性に直結するため、これが大丸開発の最大の競争優位の源泉となっている。

第三に、剛性の高い面パネル構造躯体2×4工法を採用大型バルコニー・食洗機付きキッチン・外構工事一式・地盤調査・地盤補強を含んだ価格設定により、**「物件のお値段にすべてが含まれる」**わかりやすい価格訴求を実現している。10年保証&専属アフターメンテナンスで購入後の安心感も提供。

第四に、岐阜・西濃・中濃・東濃・愛知への面的展開。本社の岐南町に加え、関市(大丸開発せきスタジオ)、各務原市、土岐市等に店舗展開を進めている。施工エリアは岐阜市・各務原市・瑞穂市・大垣市・羽島市・関市・美濃加茂市・愛知県一宮市・稲沢市・江南市等にわたり、愛知県北西部にも県境を越えて展開している。

3-4|グランハウス一級建築士事務所|設計士事務所として全国稀有の175棟

グランハウス一級建築士事務所は岐阜県岐阜市茜部新所に本社を置く、2017年5月設立の比較的新しい一級建築士事務所形態の住宅会社である。24年度棟数175棟級(前年比+75%)という、設計士事務所形態でありながら全国でも稀有な規模を達成している。前年比+75%という急成長は、岐阜県の住宅市場で起こっている地殻変動を象徴する。

グランハウスの戦略の本質

グランハウスの戦略の核心は**「設計士直接対応×3人チーム設計×SNS集客」**にある。

第一に、「営業マンゼロ・設計士直接対応」。グランハウスには営業マンが存在せず、初来場から設計士・現場監督が直接顧客対応にあたる。営業の人件費・紹介料等の余分な経費をカットすることで、坪単価55〜80万円のミドルレンジで「ちょっとカッコイイ」家を実現している。設計士1人につき担当物件は月1棟までという制約を設け、施工品質と顧客対応の質を担保している。

第二に、「3人チーム設計」1組の顧客に対して3人以上の設計士がチームを組んで対応。3者の違う視点で多様なアイデアを盛り込み、「グランハウスっぽさ」のない、十人十色の家を実現する。これは大手ハウスメーカーの規格化された商品設計とも、地場工務店の経営者主導の設計とも異なる、「設計士チーム制」という独自モデルである。

第三に、Instagram113Kフォロワーの圧倒的SNS集客力。グランハウスのInstagram公式アカウント(@granhouse_official)はフォロワー11.3万人、岐阜地場ビルダーとしては圧倒的なSNS集客力を持つ。**「SNS×設計士×完全自由設計」**という組み合わせで、SNSで施工事例を見て直接来場予約するという新しい顧客導線を確立している。**ハッシュタグでの戦略的露出(#ガレージ #シンプルモダン #ジャパンディ #平屋 #北欧 #和モダン等 )**によって、デザイン重視の若年層を継続的に取り込んでいる。

第四に、岐阜・愛知・三重・大阪13スタジオの面的展開。グランハウスは岐阜県内(茜部・長良・可児・各務原・大垣の5スタジオ)、愛知県内(一宮・春日井・名古屋・豊田・安城の5スタジオ)、三重県内(津・四日市の2スタジオ)、大阪府(箕面の1スタジオ)と、東海4県+関西1府にまたがる13スタジオ展開を実現。愛知県北西部・三重県北部への越境進出を積極的に推進しており、設計事務所形態でありながら全国規模のビルダーへの成長軌道を描いている。

3-5|ヤマカ木材|創業73年の自然素材住宅トップ、岐阜地場No.1の歴史

ヤマカ木材は岐阜県岐阜市に本社を置く、昭和26年(1951年)創業・創業73年以上の老舗住宅会社である。代表は山田重貴氏(3代目)。創業時は材木屋として山田数雄氏が始め、先代の山田数重氏が建設業として住宅建設に取り組み、現代表の代から住宅請負・販売をエンドユーザー向けに絞った住宅事業を展開してきた。24年度棟数160棟級という安定した実績で、岐阜県の住宅会社としてトップビルダーの地位を長年維持している

ヤマカ木材の戦略の本質

ヤマカ木材の戦略の核心は**「自然素材住宅×明瞭価格×60年保証×中部3県10ヶ所モデルハウス」**にある。

第一に、自然素材住宅「ナチュリエ」を主力商品化全室に無垢の床、家族が集まるLDKの壁・天井に漆喰を標準仕様とすることで、木の温かみ・調湿効果・脱臭効果・アレルギー対策を訴求。「家族の健康」を最優先に考えた、体にやさしい家づくりというメッセージは、子育て世帯から強い支持を集めている。

第二に、「セミオーダー21坪1,540万円〜」の明瞭価格坪数ごとに価格が決まっている明瞭価格システムで、建物本体・設計・諸経費・外部給排水工事・照明・オール電化・エコキュート・造作家具・オール自然素材を含むコミコミ価格を実現している。**フルオーダー型の「ファミリエ」**も併設し、価格・グレードの幅を確保している。

第三に、岐阜・愛知・三重に10ヶ所のモデルハウス岐阜ハウジングギャラリー県庁前等を中核に、岐阜・愛知・三重の3県にまたがって10ヶ所のモデルハウスを展開。**「中部3県の自然素材住宅トップ」**という独自ポジションを確立している。愛知県北西部・三重県北部への越境進出も既に実現済みで、岐阜地場ビルダーが東海3県へ展開する成功モデルとして機能している。

第四に、最長60年の長期保証初期保証20年に加え、有償メンテナンスにより最長60年までの保証を提供。24時間365日受付のコールセンター、定期点検(入居前・3ヶ月・6ヶ月・1年・以降年1回)、新築住宅瑕疵担保責任保険といった、創業73年の老舗ならではの手厚いサポート体制を構築している。

**第五に、「注文系ビルダーランキング2年連続全国No.1」(2019〜2020年度・住宅産業研究所調べ・成長性/売上高伸率)**という客観評価。岐阜地場ビルダーが全国規模で評価される稀有な事例となっている。

3-6|セキスイハイム・住友林業・大和ハウス・パナソニックホームズ|全国メーカー上位群

セキスイハイム中部(180棟級)は工場生産による高品質・高断熱・太陽光標準搭載を訴求軸に、岐阜県内の主要展示場で安定したシェアを維持している。住友林業(175棟級・前年比増加)は木造軸組ハイエンド帯で順調にシェアを拡大。大和ハウス工業(130棟級)は注文住宅・分譲住宅の総合展開で岐阜県内に広く拠点を持つ。パナソニックホームズ(125棟級)は鉄骨系・テクノストラクチャー工法で中ハイ価格帯を確保。タマホーム(170棟級)はローコスト帯で岐阜県内に強いポジションを保つ。アーネストワン(165棟級)は飯田グループ系のパワービルダーとして分譲建売中心で岐阜県内に展開している。

3-7|シンプル工務店|岐阜・愛知の県境越えローコスト×高性能ビルダー

シンプル工務店は岐阜・愛知を中心に注文住宅を展開する地場ビルダーで、**「シンプルでいい家をより安く」をコンセプトに30坪1485万円〜・29坪1000万円台〜という価格設定で大きな支持を獲得している。国土交通大臣許可(般-6)第29380号を取得しており、岐阜・愛知の県境を越えた営業エリアを正式に保有する。全国一括仕入れによるコストダウン(年間1,000棟レベルの建材一括発注)が最大の差別化要因。坪単価45〜55万円のローコスト帯でありながら、無垢床・吹付け断熱・高性能ハイブリッド樹脂サッシを標準仕様とし、耐震等級3相当・断熱等級5相当という国内最高基準を確保している。モデルハウスを持たず、岐阜市のスタジオでの相談スタイルを採用することで、人件費・維持費をカット。「岐阜・愛知の名古屋通勤圏ファミリーが、車・趣味・子育てを犠牲にせずに注文住宅を建てる」**というメッセージは、岐阜県の住宅市場の中心需要層の心理に深く刺さっている。

3-8|業界再編動向

事業承継型M&Aについては、岐阜県でも経営者の高齢化・後継者不在の進行が顕著で、地場中小工務店の事業承継案件は加速している。急成長セグメントとしては、**ローコスト×高性能ビルダー(シンプル工務店等)、デザイン特化ミドル(グランハウス等)、東海4県No.1ビルダーの岐阜進出(クラシスホーム)、観光地特殊宿泊施設(飛騨地方)**が4つの成長軸となっている。倒産動向については、岐阜県でも資材高騰・人件費上昇・地元若年層減少の3重苦により、地場零細工務店の倒産・廃業が継続している。

考察|「一条独走+クラシスホーム急進撃+岐阜地場4社の独自圏」

岐阜県の住宅市場の構造は、「一条工務店が東海地盤メーカーとして県内独占的1位を確実に押さえ、東海4県No.1ビルダーのクラシスホームが愛知本社から岐阜店進出で年率+73%の急成長を見せ、岐阜地場4社(大丸開発・グランハウス・ヤマカ木材・シンプル工務店)がそれぞれの差別化軸(分譲建売×不動産ネットワーク/設計士チーム×SNS/自然素材×明瞭価格/ローコスト×高性能)で独自圏を確保する、極めて層の厚い競争市場である。愛知系ビルダー(クラシスホーム・他)の岐阜越境進出と、岐阜地場ビルダー(大丸開発・グランハウス・ヤマカ木材)の愛知北西部越境進出が、県境を越えて双方向で進行している点が、岐阜県市場の構造的特徴である。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 一条工務店が県内独占的1位、4地区7〜8展示場の圧倒的密度展開で東海地盤を活かす。
  • クラシスホーム1300棟級は東海4県No.1ビルダー(年間1,300棟・全12拠点)の岐阜進出、前年比+73%の急成長。
  • 大丸開発岐阜地区16年連続着工NO.1、分譲建売主軸×不動産ネットワーク岐阜県No.1。
  • グランハウスは2017年設立の設計士事務所、3人チーム設計×Instagram11.3万フォロワー×13スタジオ展開。
  • ヤマカ木材は創業73年の自然素材住宅トップ、岐阜・愛知・三重10ヶ所モデルハウス。

■ 第4章|商圏構造の特殊性──主要都市別の特徴と愛知県との関係性

岐阜県の住宅商圏は、「名古屋接続度の高いエリア」「地縁市場のエリア」「観光地特殊需要のエリア」の三軸で読み解くと整理しやすい。県内最大の岐阜市・大垣市・多治見市を中心とした名古屋通勤圏が県全体の住宅市場の大半を占める。

4-1|岐阜市|県庁所在地、名古屋まで20分の中核ベッドタウン

人口約40万人。県人口の約21%が集中する県庁所在地で、住宅市場シェアは**県全体の約18〜22%**と推定される。岐阜駅・JR東海道本線・名鉄岐阜駅・岐阜公園・金華山・長良川を擁する岐阜地区の中核。JR東海道本線で岐阜駅〜名古屋駅が約20分という極めて強力な名古屋接続力を持つ。

岐阜市の最大の特徴は、県内で唯一明確な人口増加トレンドを示している中核都市である点。これは①名古屋通勤圏の利便性、②岐阜市内の商業・教育・医療インフラの充実、③県内最大級の住宅展示場(岐阜中日ハウジングセンター・岐阜南中日ハウジングセンター)の集客力、④グランハウス・ヤマカ木材・シンプル工務店等の有力地場ビルダーの本拠地、といった複合要因による。ヤマカ木材の本社・岐阜ハウジングギャラリー県庁前展示場、グランハウス本社・茜部オープンスタジオ・長良スタジオといった地場ビルダーの拠点が集中している、岐阜県の住宅市場の主戦場である。

4-2|各務原市・羽島市・岐南町|名古屋通勤の最前線

各務原市は人口約14万人、羽島市は約6.5万人、岐南町は約2.6万人。JR東海道本線・名鉄各務原線・東海道新幹線(岐阜羽島駅)・名神高速道路・東海北陸自動車道といった主要交通網が密集する、岐阜地区の名古屋通勤の最前線エリア。各務原市は航空自衛隊岐阜基地・川崎重工航空宇宙カンパニーを擁する航空産業の集積地でもある。岐南町は人口増加を継続している小規模自治体大丸開発の本社が岐南町にあり、グランハウスの各務原スタジオ・ヤマカ木材の各務原モデルハウスも配置される、岐阜地場ビルダーの主要展開エリアである。住宅市場シェアは合計で**県全体の約12〜15%**と推定される。

4-3|大垣市|西美濃の中核、東海道新幹線岐阜羽島駅エリア

人口約15.6万人。西濃地区の中核で、住宅市場シェアは**県全体の約8〜10%**と推定される。JR東海道本線・養老鉄道・名神高速道路を擁し、名古屋まで30〜40分のアクセスを持つ。水都として知られる大垣市は、地下水豊富な平野部・飲料水産業(カゴメ・キリンビバレッジ等の工場集積)を産業基盤とする。大垣中日ハウジングセンターには一条工務店・セキスイハイム等の主要メーカーが揃う。グランハウスの大垣スタジオも展開されており、住宅市場としても地縁の濃い地場ビルダーと、名古屋系・岐阜系の参入ビルダーが競合する独立商圏として機能している。

4-4|多治見市・土岐市・瑞浪市|東濃西部、名古屋ベッドタウン

多治見市は人口約10.5万人、土岐市は約5.5万人、瑞浪市は約3.5万人。東濃地方西部の3市で、住宅市場シェアは合計で**県全体の約10〜12%と推定される。多治見市は名古屋市のベッドタウンとして発展してきた歴史を持つ岐阜県内有数のベッドタウン都市で、JR中央本線・国道19号・中央自動車道で名古屋まで約40分。多治見市の住民の通勤・買い物・娯楽の中心は完全に名古屋市側にあり、「岐阜県でありながら名古屋経済圏の北端」**として機能している。

土岐市は美濃焼の世界的産地として伝統陶磁器産業を支え、土岐プレミアム・アウトレット(中央アルプスを望む大型アウトレット)が広域集客を担う。東濃西部の住宅展示場(多治見住宅展示場・可児中日ハウジングセンター)には愛知系ビルダーのモデルハウスが多数並ぶのがエリアの特徴で、クラシスホーム一宮店・春日井店・長久手店からの営業エリアにも入るヤマカ木材は多治見・可児・土岐市にも商圏を広げており、東濃西部は岐阜地場と愛知系の境界線となっている。

4-5|恵那市・中津川市|東濃東部、リニア期待エリア

恵那市は人口約4.7万人、中津川市は約7.6万人。東濃地方東部の2市で、住宅市場シェアは合計で県全体の約5〜7%と推定される。中津川市はリニア中央新幹線・岐阜県駅(中間駅)の建設地で、リニア開業による地域構造変化への期待が住宅市場に静かに織り込まれている。両市とも長野県(木曽地域・南信州地域)との結び付きが深く、文化的にも長野南部との共通性を持つ。住宅市場としては地縁の濃い地場工務店が中心。

4-6|美濃加茂市・関市・可児市|中濃地区、名古屋通勤と地元需要の両立

美濃加茂市は人口約5.6万人、関市は約8.8万人、可児市は約10万人。中濃地区の中核3市で、住宅市場シェアは合計で**県全体の約14〜17%**と推定される。**美濃加茂市は移住定住情報サイトで「名古屋からほんの一時間。都会のすぐ隣まちの美濃加茂市」**と自らを定義しており、名古屋通勤圏の北端としての地理的アイデンティティを明確に打ち出している。関市は世界三大刃物産地として刃物産業の世界ブランドを支え、**ふるさと納税の人気返礼品(関の刃物)**でも全国に知られる。可児市は名古屋通勤圏として独立した中核都市で、**可児中日ハウジングセンター(県内最大級の住宅展示場の一つ)**が立地する。令和7年4月の人口動態では関市が県内2位の人口増加を記録しており、中濃地区は岐阜県内の住宅市場成長セグメントとして注目される。大丸開発のせきスタジオ、グランハウスの可児スタジオ、ヤマカ木材の可児・関商圏といった、岐阜地場ビルダーが集中するエリア。

4-7|美濃市・郡上市・加茂郡・可児郡|中濃地区周辺

美濃市は人口約1.9万人、郡上市は約3.8万人、加茂郡(八百津町・川辺町・東白川村等)は人口約4万人、可児郡(御嵩町等)は約1.7万人。中濃地区周辺の中山間自治体で、住宅市場シェアは合計で**県全体の約4〜6%**と推定される。郡上市は郡上八幡(重要伝統的建造物群保存地区)・郡上踊りといった観光・文化資源を持つ独立商圏。

4-8|飛騨地方(高山市・飛騨市・下呂市・大野郡白川村)|独立観光商圏

高山市は人口約8.1万人(県土第1位の市町村面積)、飛騨市は約2.1万人、下呂市は約2.9万人、白川村は約1,400人。飛騨地区の4市村で、住宅市場シェアは合計で**県全体の約6〜8%**と推定される。高山市は外国人観光客が押し寄せる国際観光地として、インバウンド対応の宿泊施設・古民家リノベ・ペンションといった派生需要が爆発的に増加している。**下呂温泉・奥飛騨温泉郷・白川郷(合掌造り集落・世界遺産)**といった観光資源を擁する。住宅市場としては地縁の濃いローカル工務店が中心だが、観光地特殊宿泊施設の建築・リノベ事業が新たな成長セグメントとして浮上している。

4-9|西濃郡部・羽島郡・本巣市等|衛星エリア

海津市は人口約3.1万人、本巣市は約3.2万人、瑞穂市は約5.6万人、山県市は約2.4万人、安八郡・揖斐郡・不破郡・養老郡は合計で人口約12万人前後。岐阜地区・西濃地区の衛星都市・郡部で、住宅市場シェアは合計で**県全体の約14〜17%**と推定される。瑞穂市はアエラホーム岐阜瑞穂店の拠点で、岐阜地区南部の中核ベッドタウンとして機能している。

考察|「名古屋接続度×地縁度×観光度の三軸エリア分類」

岐阜県の商圏構造は、「名古屋接続度の高いエリア(岐阜市・各務原・羽島・岐南・大垣・多治見・可児・美濃加茂等)×地縁度の高いエリア(西濃郡部・東濃東部・中濃北部・郡上等)×観光度の高いエリア(飛騨地方・郡上八幡・東濃東部の中山道宿場町等)の三軸分類で読み解くと整理しやすい。名古屋接続度の高いエリアは中京圏ベッドタウン需要の主戦場、地縁度の高いエリアは伝統的地方住宅需要の主戦場、観光度の高いエリアは観光地特殊宿泊施設・古民家リノベの主戦場となる。地場ビルダーはこの三軸分類のうちどれを主戦場に選ぶかで戦略が決まる。岐阜高山エリアでは圧倒的1番店である望みホールディングスはマルチブランド展開を含めて新築・リノベも含めた全面展開をされており、メインブランドであるNOZOMIHOMEは岐阜エリアでも積極的に出展・展開をしている。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 岐阜県の住宅市場の60%以上は岐阜地区+名古屋通勤圏(岐阜市・各務原・大垣・多治見・可児・美濃加茂等)に集中。
  • 岐阜市は県内唯一の人口増加中核都市、岐南町・関市も増加。
  • 東濃西部(多治見・土岐・瑞浪)は名古屋ベッドタウンとして独立商圏化、愛知系ビルダーの主戦場。
  • 飛騨地方はインバウンド観光地化で古民家リノベ・観光地特殊宿泊施設市場が成長。
  • 岐阜地場ビルダー(大丸開発・グランハウス・ヤマカ木材)の主要拠点は岐阜市・岐南町・各務原・関市に集中。

■ 第5章|現場で見えている論点

5-1|論点①|「名古屋経済圏としての岐阜県」をどう取り込むか

岐阜県の住宅会社経営者と話していて頻出する論点が「名古屋経済圏のベッドタウン需要をどう取り込むか、愛知系ビルダーとどう競合するか」である。岐阜県の地場ビルダーは、名古屋通勤圏ファミリー層の住宅選好(坪単価65〜80万円・全館空調・ZEH・耐震等級3)に商品設計を最適化する必要がある。同時に、クラシスホーム・他の名古屋系ビルダーが県境を越えて参入する直接競合を覚悟しなければならない。逆に岐阜県の地場ビルダーが愛知県北西部(一宮・春日井・小牧・尾張旭・瀬戸・犬山等)に進出する戦略も成立する。シンプル工務店(岐阜・愛知の県境越え営業)、グランハウス(愛知5スタジオ・三重2スタジオ展開)、大丸開発(一宮・稲沢・江南施工)、ヤマカ木材(愛知・三重10モデルハウス)は、いずれも県境を越えた東海3〜4県展開を実現している先行事例である。

5-2|論点②|一条工務店とクラシスホームとの「価格帯×顧客層」差別化

岐阜県の地場ビルダーが直面する最大の論点は、一条工務店380棟級との競合戦略、そしてクラシスホーム130棟級(前年比+73%)の急成長への対応である。一条工務店は東海地盤メーカーとして岐阜県内で圧倒的シェアを持ち、クラシスホームは東海4県No.1ビルダーとして急速に岐阜県シェアを拡大しつつある。地場ビルダーがこの2社と正面競合するのは難しく、**「価格帯の上下で差別化」「顧客層の細分化で差別化」**が現実的な戦略となる。

ローコスト方向での差別化は、**シンプル工務店の「30坪1485万円〜・耐震等級3相当・断熱等級5相当」が成功事例。ハイエンド方向ではグランハウスの「3人以上の設計士・デザイン重視・SNS集客×ハッシュタグ戦略」が成功事例。自然素材方向ではヤマカ木材の「ナチュリエ×明瞭価格×60年保証」が成功事例。分譲建売方向では大丸開発の「不動産ネットワーク×家賃並み返済の5LDK」が成功事例。「一条・クラシスが拾わない顧客層を取りに行く」**という戦略思考が、岐阜県の地場ビルダー経営の核心である。

5-3|論点③|「ローコスト×高性能」「設計士チーム制」「自然素材」「分譲建売」の4軸セグメント

岐阜県の住宅市場では、地場ビルダーの差別化軸が4つの主要セグメントに分化している。

第一に「ローコスト×高性能」セグメント。シンプル工務店が代表例で、全国一括仕入れ・モデルハウスなし・営業設計兼任といった業務最適化により、坪単価45〜55万円のローコスト帯で耐震等級3相当・断熱等級5相当という業界最高基準を実現する。

第二に「設計士チーム制×SNS集客」セグメント。グランハウスが代表例で、設計士1人月1棟まで・3人チーム設計・Instagram11.3万フォロワー・13スタジオ展開といった独自モデルで、坪単価55〜80万円のミドルレンジでデザイン重視層を取り込む。

第三に「自然素材×明瞭価格×長期保証」セグメント。ヤマカ木材が代表例で、全室無垢床・LDK漆喰標準・坪数別明瞭価格・最長60年保証で、子育て世帯・健康志向層を取り込む。

第四に「分譲建売×不動産ネットワーク」セグメント。大丸開発が代表例で、家賃並み返済の5LDK・広い庭・土地仲介一気通貫で、20代〜30代若年世帯を取り込む。

4セグメントそれぞれで岐阜地場ビルダーが独自圏を確保している点が、岐阜県市場の健全な競争構造の証である。

5-4|論点④|飛騨地方の観光地特殊需要をどう取り込むか

飛騨地方(高山市・下呂市・白川村等)の住宅会社経営者にとって、インバウンド観光地化に伴う宿泊施設・古民家リノベ・ペンション・観光地特殊宿泊施設の建築需要は、新築事業の枠を越えた事業機会である。白川郷(世界遺産)・高山市・下呂温泉・奥飛騨温泉郷といった国際的な観光資源を持つ飛騨地方では、海外投資家・首都圏富裕層からの建築受注も発生している。地場ビルダーがこの市場に参入することで、住宅会社とリゾート建築業の境界を越えた新規事業が可能となっている。

5-5|論点⑤|建材高騰(ナフサショック)と価格転嫁

ナフサ価格高騰を起点とした樹脂・断熱材・ビニールクロス・配管材の値上げは、岐阜県の住宅会社にも直撃している。特に「全館空調×ZEH×ローコスト」を売りにしてきた地場ビルダーほど影響が大きい仕入先見直し・施工効率改善・商品ラインナップ簡素化の3方向の手を同時に打つ必要がある。シンプル工務店の全国一括仕入れモデル、クラシスホームのスケールメリット、グランハウスの全国規模設計事務所協力仕入れモデルは、いずれもナフサショックの影響を相対的に小さく抑える効果を持つ。**「仕入れスケールを持つビルダーが構造的に有利」**という業界トレンドが、岐阜県でも明確に進行している。

5-6|論点⑥|SNS集客と「名古屋市場向けマーケティング」

InstagramとYouTubeを中心とするSNS集客は、岐阜県でも明確に浸透している。特に岐阜県の場合、SNS集客の主戦場は「名古屋通勤圏ファミリー層」となる。InstagramでのVlog型コンテンツ、YouTubeでの「岐阜の家づくり」「名古屋通勤圏での暮らし」をテーマにした発信、TikTokでの建築・インテリア情報配信といった、「名古屋通勤圏ファミリー層に届ける」マーケティングが、岐阜県の地場ビルダーにとって決定的な競争優位となる。グランハウスのInstagram11.3万フォロワーは岐阜地場ビルダーとして全国でも稀有なSNS集客力で、これが24年度の棟数大幅増加(前年比約75%増)を支えた根幹要因である。地元向けでは岐阜中日ハウジングセンター・可児中日ハウジングセンター・大垣中日ハウジングセンター・多治見住宅展示場での来場予約獲得が依然として重要だが、**「住宅公園に行く前にInstagramで地場ビルダーを比較する」**という購買行動の変化が進行中である。

5-7|論点⑦|採用市場の特殊性──名古屋への人材流出

岐阜県の住宅会社の最大の経営課題は人材である。新卒採用は岐阜大学・岐阜聖徳学園大学・中部学院大学・地元高校からの採用に依存するが、名古屋までJRで20分というアクセスの良さは、若年層の名古屋企業への流出を促進する面もある。給与水準・福利厚生で名古屋企業と並ぶ水準を作れるかが採用の分水嶺となる。ただし、岐阜県は「名古屋に近い・自然が豊か・住居コストが安い」という3要素を併せ持ち、首都圏・関西圏からのU・Iターン採用の余地は他県より大きい。**「名古屋通勤圏で暮らしながら、岐阜の住宅会社で働く」**というキャリアパスは、家族形成期の30〜40代に強くアピールする。グランハウスがエリア拡大に伴い設計士・現場監督を積極採用しているのは、岐阜地場ビルダーの採用力強化の一例である。

5-8|顧問先言及枠

岐阜県のクライアント企業については、本稿では具体名を伏せるが、岐阜・西濃・東濃地域・飛騨地区のビルダー数社をご支援している。共通する課題は「名古屋経済圏の取り込み戦略」「一条工務店・クラシスホームとの差別化軸の確立」「ローコスト×高性能ビルダーへの対抗策」「SNS集客のインフラ整備」「愛知県北西部への越境進出戦略」の6点である。

考察|「名古屋経済圏×一条独走×クラシス急進撃×岐阜地場4軸の四重奏」

岐阜県の住宅会社経営の最大論点は、**「名古屋経済圏の住宅需要を取り込みながら、一条工務店380棟級の独占的シェアと、クラシスホーム130棟級の急進撃に挟まれた中で、岐阜地場ビルダーがどの差別化軸(ローコスト×高性能/設計士チーム×SNS/自然素材×明瞭価格/分譲建売×不動産ネットワーク)で生存圏を確保するか」である。「名古屋通勤圏ファミリー」「地縁市場」「製造業転勤族」「観光地特殊需要」**という4つの異なる需要層のうち、自社が最も強みを発揮できるセグメントを特定し、そこに経営資源を集中することが、岐阜県の住宅会社経営の成否を分ける。

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 名古屋経済圏としての岐阜県の取り込みと、愛知系ビルダー(クラシスホーム他)との直接競合が経営者の最重要論点。
  • 一条工務店・クラシスホームの二大勢力との「価格帯×顧客層」差別化が地場ビルダーの生存戦略。
  • 岐阜地場ビルダーの4軸セグメント(ローコスト×高性能/設計士チーム×SNS/自然素材/分譲建売)が独自圏を確保。
  • 飛騨地方の観光地特殊需要・古民家リノベ・観光地特殊宿泊施設が新たな成長軸。
  • グランハウスのInstagram11.3万フォロワーは岐阜地場ビルダーの先進事例、SNS×住宅公園の三層集客モデルが重要。

■ 第6章|県内TOPビルダーを目指す具体戦略

6-1|県内TOPビルダーの実像

岐阜県でTOPビルダーと呼ぶに値する規模の目安は、年間販売棟数400棟、売上高130億円、従業員数160-200名、岐阜・西濃・中濃・東濃の4地区すべてに営業拠点を持つ規模である。これは一条工務店が達成しているレベルで、拠点数・営業人員をしっかり確保すれば達成できるが、一条工務店に近づく規模で展開したい気概のあるビルダーを見たい。岐阜のシェアを上げることより県外展開、また県外ビルダーも岐阜1位を取る気がある会社は少ないからである。

ただし岐阜県の場合、「新築棟数の多さ」だけでは真のTOPビルダーとは言えない。新築200〜400棟に加え、ローコスト×高性能商品、デザイン特化ミドル商品、自然素材・伝統工法商品、分譲建売、観光地特殊宿泊施設、古民家リノベ、土地仲介といった派生事業を統合した「総合住生活サービス事業者」として、総売上130〜200億円・粗利率28〜32%を確保できる経営体制こそが、岐阜県の次世代TOPビルダー像である。

6-2|戦略①|出店戦略|名古屋経済圏面的展開+愛知北西部越境進出

岐阜県でTOPビルダーを目指す出店戦略は、名古屋経済圏(岐阜地区・東濃西部・中濃南部)への面的展開を主軸とし、愛知県北西部への越境進出を次の成長軸に組み込む。

第1段階(年間80棟まで)岐阜地区の主要住宅展示場(岐阜中日ハウジングセンター・岐阜南中日ハウジングセンター)に旗艦展示場を構え、岐阜市・各務原市・羽島市・岐南町でNo.1のシェアを取る。まずこのエリアで5〜10%のシェアを取ることが、ブランド・採用・財務の基盤となる。

第2段階(年間80→200棟)東濃西部(多治見・可児)と中濃(美濃加茂・関)への進出。可児中日ハウジングセンター・多治見住宅展示場に拠点を構え、名古屋通勤圏の主要エリアを面的にカバーする。この段階で愛知県北西部(一宮・春日井・小牧・尾張旭・瀬戸・犬山等)への進出も視野に入れることが、岐阜県の地場ビルダーの成長戦略の特徴である。ヤマカ木材・グランハウス・大丸開発が既に愛知北西部で先行展開しているのは、まさにこの戦略の体現。

第3段階(年間200棟超)西濃地区(大垣)と東濃東部(中津川・恵那)への進出、飛騨地方への観光地特殊需要対応拠点設置。リニア期待の中津川市、観光地特殊需要の高山市・下呂市に拠点を構え、4地区すべてでシェア5〜10%を取る面的支配を完成させる愛知県内の進出も10店舗規模に拡大できれば、東海3〜4県200〜400棟級の地場有力ビルダーへの道筋が拓ける。

6-3|戦略②|採用戦略|3層採用設計+名古屋通勤圏在住者特化

第1層は新卒採用。岐阜大学・岐阜聖徳学園大学・中部学院大学・地元高校をターゲットに、年間3〜8名を継続採用。名古屋企業の初任給と並ぶ水準(22〜25万円)の確保が前提条件。

第2層は中途採用+名古屋通勤圏在住者特化「名古屋に近い岐阜で家族と暮らしながら働く」というライフスタイルに価値を感じる30〜40代キャリア人材を最重要ターゲットとする。「岐阜県は名古屋に近い・自然が豊か・住居コストが安い」という3要素を全面的に訴求し、名古屋通勤圏在住者のUターン・Iターンを取り込む。

第3層はリファラル採用と異業種転職。建築・住宅業界外(自動車ディーラー・保険・銀行・通信)からの未経験中途を、半年〜1年で戦力化する仕組みを構築する。

6-4|戦略③|定着率|「岐阜ならではの暮らしの魅力」の最大化

3年定着率を業界平均の50%台から80%以上に引き上げる制度設計が必要。給与水準だけで名古屋企業と勝負するのは難しいため、**「自然の中で暮らせる」「通勤が楽」「子育て環境が良い」「住居コストが安い」「美濃焼・関の刃物・郡上踊り・飛騨の温泉といった県内文化・観光が豊富」**といった、岐阜ならではの暮らしの魅力を最大化する制度設計が定着率向上の鍵となる。新卒3年目で年収450〜500万円、5年目で550〜650万円、10年目で700〜1000万円というキャリアパスを明示する。

6-5|戦略④|商品×ブランド×財務の3位一体

商品については、岐阜県の気候要件と名古屋通勤圏ファミリーニーズに最適化した「全館空調×ZEH×自由設計×自然素材(東濃ひのき・県産材活用)」を主力とする。**①坪単価50万円台のローコスト×高性能商品(名古屋通勤圏ファミリー向け、シンプル工務店対抗)、②坪単価65〜80万円の主力商品(共働き・子育て世帯向け、全館空調×ZEH標準、一条・クラシス対抗)、③坪単価80万円超のフラッグシップ商品(デザイン重視層・ハイエンド層・古民家リノベ・別荘建築向け、グランハウス対抗)**の3層構造が、岐阜県の市場構造とフィットしやすい。さらに、観光地特殊宿泊施設・古民家リノベ・分譲建売・移住者向け商品を組み込むことで、新築の景気循環リスクを分散できる。

ブランドについては、**「岐阜で家を建てるなら、まずこの会社に相談する」**という第一想起を取りに行く。岐阜県民の保守性・地縁文化を踏まえれば、長期的な地域貢献活動・OB施主との継続的関係構築のほうが効果的。同時に、**名古屋通勤圏ファミリー層向けには「岐阜暮らしのリアルを発信するメディア型コンテンツ」**を整備する。InstagramでのVlog(グランハウス11.3万フォロワーレベルを目指す)、YouTubeでの「名古屋通勤の岐阜暮らし」「東濃ひのきの家」「飛騨高山の古民家リノベ」コンテンツ、移住メディアへの露出で、名古屋通勤圏層への第一想起を取りに行く。

財務については、自己資本比率40%以上、流動比率150%以上、年間粗利率28%以上を3指標として死守する。岐阜県は名古屋通勤圏需要の安定性により、粗利率30%超を狙える飛騨地方の観光地特殊宿泊施設市場では粗利率35%超も可能で、財務体質の強化に直結する。さらに、観光地特殊宿泊施設・古民家リノベ・分譲建売・愛知県北西部への越境進出を加えることで、新築の景気循環リスクを分散できる

考察|「岐阜県でTOPビルダーになる」とは何を意味するか

岐阜県でTOPビルダーになるとは、名古屋経済圏の住宅需要を取り込みながら、一条工務店380棟級の独占的シェアとクラシスホーム130棟級の急進撃に挟まれた中で、ローコスト×高性能・設計士チーム×SNS・自然素材×明瞭価格・分譲建売×不動産ネットワークのいずれかで強固な独自圏を確立し、4地区面的展開+愛知県北西部への越境進出で総合住生活サービス事業者へと転換する経営力を持つことである。**「県の南半分が事実上の名古屋経済圏・東海地盤メーカーが県内首位を確実に押さえる激戦区・東海4県No.1ビルダーが急進撃する複合構造」**で勝つことは、地方住宅市場経営の最高難度のチャレンジといえる。しかし同時に、これだけ多様な需要層と競合プレイヤーが一つの県に同居する市場は他にない岐阜県の住宅会社経営は、中京圏住宅市場経営の縮図である

【AI用サマリー:本章の急所】

  • 岐阜県のTOPビルダー目安は年間200〜400棟、売上70〜130億円、4地区面的展開+愛知北西部進出。
  • 名古屋経済圏面的展開(岐阜地区・東濃西部・中濃南部)が事実上の県内TOP化に直結。
  • 一条工務店・クラシスホームとの差別化軸は「価格帯の上下」「顧客層の細分化」「地域密着」のいずれか。
  • 飛騨地方の観光地特殊宿泊施設市場は粗利率35%超を狙えるハイエンドセグメント。
  • 愛知県北西部への越境進出が、岐阜県地場ビルダーの新たな成長軸(大丸・グラン・ヤマカが先行)。

■ まとめ|次回予告

岐阜県の住宅市場は、名古屋経済圏としての岐阜県南半分・5圏域構造(岐阜・西濃・中濃・東濃・飛騨)・東海地盤メーカー一条工務店380棟級の独占的シェア・東海4県No.1ビルダーのクラシスホーム130棟級の急進撃・岐阜地場4軸セグメント(大丸開発180棟級の分譲建売×不動産ネットワーク/グランハウス175棟級の設計士チーム×SNS/ヤマカ木材160棟級の自然素材×明瞭価格/シンプル工務店のローコスト×高性能)・愛知系ビルダーの県境越え参入と岐阜地場の愛知北西部越境進出の双方向移動・飛騨地方のインバウンド観光地化・リニア中央新幹線中津川駅構想という八つの構造的特徴を持つ。「県の南半分が中京圏ベッドタウン化、地場ビルダーは一条工務店とクラシスホームの二大勢力に挟撃されながら4軸の差別化軸で独自圏を作る経営力」が問われる、中京圏住宅市場の縮図こそが、岐阜県の住宅市場の本質である。

次回・第10弾は愛知県編。岐阜県の住宅市場と一体化する中京圏の中核として、名古屋市・尾張・三河を擁する人口750万人の巨大市場を解剖する。トヨタ自動車の城下町・豊田市の住宅市場、名古屋市内の高級住宅地・千種区/名東区/東区の市場構造、尾張・西三河・東三河それぞれの独立商圏、クラシスホームの本拠地としての愛知県戦略、そして地場最大手・有力ビルダーの動向と、愛知県の住宅市場の現在地を読み解く。


出典・参考データ

  • 国土交通省「住宅着工統計」(令和6年度速報値)
  • 総務省「住民基本台帳人口移動報告」「人口推計」
  • 岐阜県「岐阜県人口動態統計調査」「岐阜県の人口・世帯数月報」「岐阜県の将来人口推計」
  • 国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」(令和5年推計)
  • 岐阜県「東濃圏域の概要」「岐阜県の5圏域構造」関連資料
  • ピュアグロース株式会社「PG戸籍名簿」(2024年度版)
  • PGクライアント経営対話(岐阜・西濃・東濃地域中堅地場ビルダー数社からの実務的知見)
  • 帝国データバンク・東京商工リサーチ「住宅業界倒産動向」

■ 最後に|ピュアグロースへのご相談・お問い合わせ

ピュアグロースは、工務店・ハウスメーカー特化の経営コンサルとして、200社以上の顧問先・会員企業の成長率平均114%向上、顧客満足度日本一(自社調べ・178社回答)を達成しています。

岐阜県・東海エリアでの経営戦略・出店戦略・商品設計・採用支援・名古屋経済圏の取り込み戦略・愛知県北西部への越境進出・観光地特殊需要の事業立ち上げについてのご相談は、以下よりお問い合わせください。

お問い合わせフォーム:https://pure-growth.co.jp/contact/

YouTube『ハウスメーカー・工務店コンサルTV』:https://www.youtube.com/@pure-growth

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著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月):書店・Amazon等にて発売中


筆者

宮内和也(みやうち・かずや) ピュアグロース株式会社 代表取締役。船井総合研究所を経て独立、住宅・建設業界に特化した経営コンサルティングファームを経営。「定額制注文住宅」「大型単独展示場」「来場予約ファースト」など、業界標準となったプロジェクトを多数主導。著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)。

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