「地元ではシェアを取れたが、大きな商圏への出店に踏み出せない」
「新エリアで戦えるだけの人材がいない」
地方で実績を積み上げてきた住宅会社ほど、次の成長をどこで描くかに悩みます。北海道・旭川で長年トップを走ってきた創業100年超のカワムラホーム様は、競合がひしめく札幌に進出し、出店初年度で約180棟という結果を出しました。当社代表がコンサルティングで見てきた中でも、新エリア立ち上げ初年度の実績としては過去最高です。
本記事では、同社社長が経営者向けに語った講演の内容をもとに、札幌進出の意思決定、初年度から勝てた理由、そして社長が仕事の半分を採用と育成に充てる経営について解説します。
カワムラホーム様は、創業100年を超え、旭川で長くトップを守ってきた会社です。現社長は外壁材メーカーの営業を経て入社し、リフォーム事業の部長からキャリアをスタート。新築や不動産事業の立ち上げを経て社長に就任して以降、毎期連続で過去最高の売上・利益を更新しています。
※動画内の講演に基づく数字です。
経営理念にあたるミッション・ビジョン・バリューに、行動指針(クレド)を加えた「MVV+C」を経営の軸に置いているのも特徴です。毎週月曜には全拠点をオンラインでつないだ朝礼を行い、社員がクレドについて発表する場を設けています。旭川である程度の認知とシェアを確立できたからこそ、より大きな市場である札幌への進出を決めました。
札幌進出のきっかけは、総合展示場の運営会社から「区画に空きが出た。1〜2か月で決めてほしい」と声がかかったことでした。立地は展示場の端。「端だから来場が少ないのでは」と、出ない理由ばかりを探して迷っていたといいます。
最後の一歩を後押ししたのは、当社代表との壁打ちでした。新エリア進出のような大きな判断では、経営者自身が「やらない言い訳」をつくっていないかを、外の視点で確かめることが大切です。
札幌エリアでは、2025年1〜12月の1年間で注文住宅と分譲を合わせて約180棟を販売しました。旭川の年間棟数(約155棟)を、出店初年度で上回ったことになります。社長自身も「ずっと苦しみながら積み上げてきた旭川が1年で抜かれた。うれしい反面、少し悲しい」と振り返っています。
社長は、初年度から結果を出せた理由を「人材力(採用力)」と「商品力」の2つだと語っています。本記事では、特に経営者の姿勢が問われる人材力について掘り下げます。
同社はそれまで、新卒と未経験者の採用で成長してきました。経験者として採用したのは、ごく一部の幹部だけ。そのやり方で旭川トップまで来たため、それが正解だと信じていたといいます。
しかし札幌は競合が多く、市場を知らない新卒・未経験者だけで立ち上げるのは現実的ではありません。当社からは「札幌の市場を知る経験者を採らなければ絶対に無理」と伝えました。経験者が社風を壊すのではという不安は根強くありましたが、実際に採用してみると、理念に共感して入社した人材は会社を成長させる力になりました。新卒か経験者かで線を引くのではなく、会社のミッションやビジョンに共感してくれる人を採る。これが結論です。

住宅は労働集約型の産業です。業績を伸ばし、自社のミッションを実現するには、本来なら自社に来てくれないような優秀な人材を採る必要があります。だからこそ社長は「経営者こそ採用に最も熱量を注ぐべき」と考え、それを「時間・お金・思いをどれだけ採用にかけられるか」と言語化しています。
社長は、自身の業務の約半分を採用と育成に、残りの半分を事業に充てることを意識しています。札幌立ち上げ時のある1週間のスケジュールを見ると、経験者の面接、新卒の面接、会社説明会、採用ミーティングなどで、およそ半分が埋まっていました。新入社員研修でも、各セクションの冒頭は必ず社長自身が話します。出張先では1か月前から「この日程に面接を入れてほしい」と依頼し、枠が埋まらなければ候補者不足のサインとして手を打ちます。
ヘッドハンティング会社やダイレクトリクルーティングも活用し、採用には相応の費用をかけています。優秀な人材を集められなければ、会社は存続も成長もできないという考えからです。
面接では毎回、同じ思いを語り続けます。さらに採用向けのYouTubeチャンネルで、社長の密着や全社員ミーティング、社員対談、新拠点の様子などを発信しています。動画きっかけでの応募はまだないものの、スカウトの文面に候補者に関連する動画を添えると、返信率が約1.5倍になったといいます。面接に来る候補者の多くは事前に動画を見ており、入社意欲が高い状態で会えるのも効果です。

同社は今後、札幌を旭川のような盤石な体制にするため、成長企業向けの大型補助金の採択を受けて札幌市内に土地を取得し、拠点と総合展示場の整備を進めています。グループとしては5年で550億円、新築事業は2030年までに北海道で棟数No.1を掲げます。
寒冷地という特殊な環境でありながら、北海道の首位は全国展開のハウスメーカーです。「地域のビルダーこそが1位であるべき」という思いから、北海道No.1、さらにその先には暮らしや住まいを社会インフラとして支える企業を目指しています。
聞いて知っていることと、やり続けることはまったく違います。まずは今日から、自社の思いを1つ発信するところから始めてみてください。
A. その市場を知る人材の確保です。カワムラホーム様も、新卒・未経験者中心の採用から、札幌を知る経験者の採用へ踏み出したことが初年度の成果につながりました。人材力と商品力の両方をそろえることが前提です。
A. 会社の状況によりますが、カワムラホーム様の社長は業務の約半分を採用と育成に充てています。面接枠を先に確保し、埋まらなければ候補者不足と判断して手を打つなど、時間の使い方を仕組みにしておくのがポイントです。
A. 応募の入り口としてより、スカウトや面接の質を高める効果が期待できます。候補者に関連する動画をスカウトに添えると返信率が上がり、事前に動画を見た候補者は入社意欲が高い状態で面接に来てくれます。
ピュアグロースでは、新エリアへの出店戦略から、経験者採用・社長の採用力強化まで、住宅会社の成長を実務で支援しています。成長意欲の高い経営者が集まる勉強会も開催しています。