「分譲は値引きしないと売れない」
「結局は物件次第で、営業が差をつける余地は少ない」
分譲住宅の販売に携わる方なら、一度はそう感じたことがあるのではないでしょうか。
本記事では、北海道のカワムラホームで分譲住宅の販売店長を務めるトップ営業を取り上げます。元トラック運転手で、未経験から不動産仲介、分譲販売へと進み、値引きをほぼせずに年間粗利1億7,000万円(全国2位)を達成。当社の支援先が集まる表彰で、個人総合・分譲棟数・粗利の3部門を受賞しました。その「本音営業」と0次接客の極意を、新築営業やマネジメント職の方にも役立つ形で解説します。
このトップ営業は、値引きをほとんどしません。理由は明確です。

同社は仕入れチームと販売チームを分社化しており、販売チームは「売ること」に集中できる体制です。そのうえで、値引きに頼らず価値を伝え切ることが販売の役割だと考えています。
特別なスキルがあるわけではない、と本人は言います。差がつくのは、お客様と向き合う姿勢です。
初めて会ったお客様には、最初にこう伝えます。「これから人生の大きなお話をします。僕がゴリゴリ営業しても、いいと思わなければ買わないですよね。だから、何を求めているかを本気で知りたいし、それに対して本気で提案したい。本音で話さないと、いいものは生まれないし買えません。お互い本音で話しましょう」。
家を買うのは、結婚や出産など人生の幸せなタイミングであることがほとんどです。「その幸せのピースの一つになりたい」と率直に伝えると、笑う人はおらず、多くの方がまっすぐ向き合ってくれるといいます。
このトップ営業が最も得意とするのが、お客様が求めているものを明確にして言葉で返し、そこに最短距離で提案することです。その起点になるのが、来場前の電話による0次接客です。

電話は長くても10分、短ければ5分で終わります。0次接客でヒアリング項目のリストを順に埋めていく営業は多いですが、それでは尋問のように会話が途切れてしまいます。
まず「どうしてお問い合わせいただいたんですか?」と、きっかけから入ります。「来年、子どもが小学校に上がるので」と返ってきたら、「うちも子どもがいるので同じです。今の友達と同じ学区のままがいいですよね」と共通の話題でつなげる。その流れでエリアを確認し、「ネットで見ていてどうですか?今、高いですよね」と予算の話へ。会話のキャッチボールをしながら必要な情報を聞き取り、「条件はばっちりですね。一度見ていただければ全部分かります」と来場につなげます。
電話の相手が奥様なら、「ご主人様、怖くないですか」と少し冗談を交えて協力関係をつくる。来場したときには、ご主人様とも初対面とは思えない雰囲気でアイスブレイクが済んでいる。これが大きな武器になっています。
必ず押さえるのは、購入のきっかけ、お客様の理想、そして現実の3つです。そのうえで「この人はここさえ納得すればクロージングまで行ける」というポイントを決め、そこから逆算して商談を組み立てます。きっかけを聞くだけで終わる営業は多いですが、お客様自身が「なぜ家が欲しいのか」に気づいていないことも少なくありません。その理由を形にしてあげることで、お客様の熱量も上がり、買う理由が明確になります。
注文住宅であれば、お客様の要望に合わせて間取りや設備を変えられます。しかし分譲住宅では、要望を建物に合わせてもらう必要があります。そこで重要になるのが優先順位の整理です。

自分の棟数のために合わないものを売ることはしません。「自分なら合わないものは買わない」からです。社長が掲げる「住まいの相談窓口になる」という方針を体現した考え方です。
分譲は注文住宅に比べて商談回数が少なく、営業が価値を出す余地は少ないと思われがちです。しかし、注文でも分譲でも、信用できない人からは買いたくないのは同じです。
このトップ営業の初回商談は2〜2.5時間で、7〜8割のお客様がその場で購入を決めます。面談からの契約率は5割を超えています。物件の説明はぎゅっと凝縮し、その前後の時間は「この人に任せてもいい」「この人から買えば幸せになれそう」と思ってもらうための信頼のターンに充てています。
鉄板は、最初の自己開示です。実年齢より上に見られることが多いため、アンケートに書いてもらった年齢を見て「驚くと思いますが、僕の方が年下なんです」と笑いを取る。前職がトラック運転手で各地を回っていたこと、自分もトラック運転手時代にお客様と同じタイミングで家を買ったことを話し、「気持ちは同じです。そのうえで今はこの仕事をしているので、プラスアルファでお伝えできます」と伝えます。誰に対しても使える話題なので、滑っても気にせず続けているそうです。
もともと負けず嫌いではなかったといいます。転機は不動産仲介時代。お客様の要望に応えられなかったとき、成長しない自分に気づいたとき、初めて「悔しい」と思いました。以前なら逃げていたところを、「納得できるまでやろう」と決めたのです。
高齢のお客様と接することが多い仲介の仕事では、適当なことを言えば厳しく叱られます。その経験を重ねるなかで、上司や社長だけでなくお客様にも育ててもらったと振り返ります。
店長になってからは、名簿はなるべく部下に振り、自身は売却が絡む案件や介護の事情がある案件など、難しい案件を中心に担当しています。部下に伝えているのは、自分が実践していることと同じです。
社長も、このトップ営業が売れる理由を「行動力がしっかり担保できていて、お客様目線での提案ができるところ」と評価しています。
A. 適正な価格で仕入れ・販売していれば、値引きに頼る必要はありません。「値引きすれば買う」というお客様は、物件の価値を理解しきれていない状態です。価値を伝え切ること、合わない方には別の選択肢を勧めることが、結果的に高い粗利と契約率につながります。
A. 長くても10分、5分で終わることもあります。急な電話で長く話されるのはお客様の負担です。ヒアリングリストを順に聞くのではなく、問い合わせのきっかけから会話を広げ、エリアや予算は会話の流れの中で確認しましょう。
A. 夫婦で「これだけは譲れない」ものを1位と2位だけ出してもらいます。きっかけの会話で学区や通勤、予算感の話をしておくと、自然と「場所」と「価格」が上位になります。デザインや建物が最優先の方には、注文住宅など別の選択肢を勧めるのがお客様のためです。
ピュアグロースでは、注文住宅・分譲住宅の営業手法から、0次接客や案件会議の仕組みづくり、店長・マネージャーの育成まで、実務家コンサルタントが伴走します。