「営業がプランを描けず、設計の手が回らない」
「担当者は好評なのに、『プランがちょっと…』で他社に負けてしまう」
住宅会社・工務店で、こうした悩みを耳にすることは少なくありません。プランニングは感覚で身につけてきた人が多く、部下に教えようとしても言語化できない、という声もよく聞きます。
本記事では、大手ハウスメーカーでトップクラスの設計営業として活躍してきた当社コンサルタントが行う「プラン研修」の内容をもとに、今のお客様に選ばれるプランの条件と、プランを描ける人材を育てるポイントを解説します。今回の研修は個人単位で申し込める初の企画で、地域のローコストビルダーから上場企業の大手ハウスメーカーまで、約10社の営業・設計担当者が自ら手を挙げて参加しました。
研修の冒頭で最初に問いかけるのは、プランの描き方ではなく「自社の強みは何か」です。コスパの良さで勝負するのか、デザインで勝負するのか。自社のコンセプトが分かっていなければ、研修で学んだことを持ち帰っても判断の軸がありません。これがないと今後の競争では戦えなくなります。
今の20〜30代は、100円ショップの文具や大衆車でさえデザインと機能が両立している時代に育ってきました。そのため、「かっこいいから買う」というより「ダサいのは論外、使いにくいのは論外」という価値観の方が多くいます。
プランでいえば、特別にデザインが尖っている必要はありません。ただ、外観がダサい、動線が悪い、収納がないといった欠点があれば、それだけで成約率に響きます。「担当者はいいけど、プランがちょっと…」で失注するのは非常にもったいないことです。
そのうえで、求められるスキルは立場によって2つに分かれます。
プラン指導で大切にしているのは、次の3つです。

研修では最初に、南道路・LDK+水回り+1階に1室・2階に3室・33〜35坪というシンプルな条件で、10分間のレベルチェックを行います。すると、建物を道路側に寄せて、使い道のない余白が敷地の奥に残ってしまうプランが多く見られます。
駐車場を縦に2台、大型の倉庫を置きたいといった要望があれば問題ありません。しかし理由もなく土地が余っているなら、お客様は庭がある方が嬉しいはずです。他社のプランと比べられたときに「うちのプランには庭がない」と感じさせてしまう。これが敷地に対する違和感です。庭を広く取るなら、庭とつながるリビングまたはダイニングの位置はその時点でほぼ決まります。
住宅会社のお客様は、「かっこよければ動線や収納は犠牲にしてもいい」という設計事務所の作品を求める方ではありません。かっこよく作ることは必要ですが、最低限の動線計画が確保されていることは必須です。
外観で1枚、内観で1枚、どこか見せ場になるポイントがあるか。今の時代、競合他社と渡り合うにはこの3つが欠かせません。
意外と見落とされがちなのが、自社の標準設備と家具の寸法です。研修の場でも、標準キッチンの幅は会社によって2,400・2,550・2,700mmとばらばらでした。これを知らないまま描き始めても、正しいプランにはなりません。新人には必ずここから教える必要があります。
| 項目 | 寸法の目安 |
|---|---|
| 標準キッチン (幅) | 2,400/2,550/ 2,700mm (会社により異なる) |
| 洗面台 (幅) | 750/900mm 最近は1,200mmも |
| 4人掛け ダイニングテーブル | 1,200〜1,600mm が多い |
| 6人掛け ダイニングテーブル | 1,800〜2,200mm |
| テレビボード | 1,800mmあれば 3人掛けソファと バランスが取れる |
同じ6人掛けでも40cmほど幅があるのは、椅子に肘掛けがあるかどうかで必要な寸法が変わるためです。今のお客様には暮らしのイメージを伝える必要があるため、間取りを描けるのは当然として、家具の知識も最低限持っていなければ戦いにくい時代です。
また、ドアの位置の関係でソファとテレビボードの位置がずれてしまうときは、ずれた分をカウチソファにすると、平面図上の違和感がなくなります。こうした表現上の小さな工夫も、第一印象を大きく左右します。
2日目に行うのが、プランの「千本ノック」です。プランを描いたら5分で説明し、お互いに講評し合うロープレをとにかく繰り返します。

プランを描けないメンバーはもちろん、描けるメンバーからも「うまく伝えられない」という悩みが多く聞かれます。口に出して言語化する練習を重ねることが、一番の近道です。参加者からも「他の人のプレゼンを聞いて、こういう言い回しや伝え方があるのかと客観的に学べた」という声がありました。
なお、最初の提案は手描きでも構いません。壁だけ太線で描いた手描きのプランでも、ヒアリングから1週間後のファーストプレゼンであれば、むしろお客様に喜ばれます。時間をかけて作り込んでから外すより、早く当てて修正する方が効率的です。また、時間があるとその分だけかけてしまうため、普段から「5分で方向性を出す」など時間を区切る習慣をつけることも大切です。
LDKを描いたこともなかった参加者は、最初の10分間ほとんど手が動きませんでした。それが2日間で、敷地の使い方や光の入り方、窓のラインの揃え方まで考えながらゾーニングできるようになりました。独学でプランを学んできた設計担当者からは、「感覚でやっていた部分を言語化してもらえたことで、部下への伝え方が分かった」という声も寄せられています。
2日間である程度描けるようになれば、お客様との商談はできます。ただし、そのレベルでプラン勝負をかけると必ず負けます。しばらくはLDKを長方形にしてL型も極力使わないなど、シンプルに考える癖をつけ、コスパよく作ることから始めましょう。変形のLDKなどの応用は、基本が身についてからで十分です。
文系出身の新卒営業に、いきなりプランを教えてほしいと言われたらどうするか。構造の話から一つずつステップを踏まなければ、何も分からないままお客様にプランを出すことになり、会社として非常に危険です。目先の商談も大切ですが、育成をどうするかは会社の未来に直結します。
会社のデザインの体制や風土は、いきなり上がるものではありません。完成物件を題材にしたフィードバック会などを半年、1年と続けていくと、幹部の手を離れても若手が自然と育つ状態になります。スペックが当たり前になった今、プラスアルファのデザインがなければ勝てない時代です。今から取り組んでおくことをおすすめします。
A. はい。普通のプランは営業担当とAIツールで描ける時代になりつつあります。営業は最低限の品質のプランを描けるようになり、設計はデザイン力が求められる案件に集中する、という役割分担が理想です。
A. 「敷地に対して違和感がないか(配置・窓)」「動線計画に違和感がないか」「外観と内観に1つずつ見せ場があるか」の3つで確認しましょう。どれかが欠けると、競合と比較されたときに不利になります。
A. 今回の研修では、LDKを描いたこともなかった参加者が2日間でゾーニングや窓の配置まで考えられるようになりました。ただし、プランで勝負できるレベルには継続的な練習が必要です。まずはシンプルでコスパの良いプランから始めましょう。
ピュアグロースでは、企業単位のプラン研修に加え、個人で参加できるプラン研修も開催しています。営業担当のプラン力の底上げから、設計幹部の育成方法まで、実務家コンサルタントが直接指導します。