「あと200万円安ければ契約できたのに」
「お客様の予算と提案金額が合わず、最後は値引きで決めてしまう」
注文住宅の営業現場では、こうした悩みが後を絶ちません。しかし、3,500万〜5,000万円クラスの高価格帯の注文住宅を、値引きをせずに年間30棟前後販売している営業がいます。福井県のノークホームズで専務取締役を務める方で、ピュアグロースの支援先を対象にした表彰では、個人の粗利額で全国1位となりました。
粗利額が1位ということは、お客様に最も大きな付加価値を提供した営業だということです。本記事では、一条工務店で13年間営業・店長を経験し、現在は地域ビルダーで高価格帯の注文住宅を売る同氏へのインタビューから、値引きをせずに高単価の家が選ばれ続ける営業のルールを解説します。
粗利は営業だけで生まれるものではなく、設計や施工のメンバーの力があってこそです。そのうえで、値引きをしないことは営業の仕事だと考えています。値引きをすれば粗利が下がるからです。
大切にしているのは、お客様と営業は対等な立場であるというスタンスです。お客様があってこその仕事ですが、営業がへりくだる関係ではありません。お客様は貴重な休みの時間を使って来場し、営業はその時間で提供すべきことをきちんと提供する。だからこそ、正当な対価をいただく。この姿勢を、商談の最初からお客様に感じてもらえるようにしています。

予算や提案のギャップは、生まれてから埋めるのではなく、生まれる前にお客様の情報をできるだけ集めておくことで対処します。家族構成、ご兄弟、ご両親の仕事、実家の場所など、家系図が描けるくらいの情報を雑談のなかで押さえ、独自のシートにまとめています。お客様の状況を理解していれば、ギャップが出たときに「ご家族の状況を考えると、僕はこう思います」と根拠を持って伝えられます。
雑談が尋問のようにならないコツは、聞いたことに必ず自己開示で返すことです。「ご実家はどちらですか」と聞いて答えてもらったら、自分の実家の話もする。地味ですが、これを忘れると一方的に聞き出す商談になってしまいます。
アンケートに書かれた予算や建築時期は、初回ではあまり気にしません。それよりも「どんな人なのか」「今日なぜ来てくださったのか」に集中し、ヒアリングを終えた時点でお客様の人物像がイメージできていればゴールと考えています。
「まだ時期ではない」と言われても、「そうなんですね」と受け止めて淡々と進めます。物価や金利の上昇を持ち出して急がせることはしません。興味がなければ展示場には来ないはずで、来場したということは何かしらの関心があるからです。
たとえば土地からのお客様なら、候補エリアや相場、土地と建物の総額の資金計画に興味があるかを尋ね、知りたいと言われれば提供します。候補地が出てくれば「仮に建物を入れてみましょうか」と進め、総額まで示す。時期が先のお客様にも、ほかのお客様と同じ流れで「今建てるならこうなる」を見せるのです。
そこまで進めて初めて、ご家族の事情など本当の問題を打ち明けてもらえることもあります。その場合は問題を共有し、「では、いつ頃もう一度確認しましょう」と一度離れる。問題が解決したときに、きちんと声をかけてもらえる関係が残ります。
同氏は、お客様が想定している予算と、営業が「これくらいあれば良い家ができる」と考える予算には、いつの時代も500万円ほどの差があると感じているそうです。建物価格の相場が上がっても、お客様の想定も一緒に上がり、この差は埋まりません。
だからこそ、予算を下げて合わせるのではなく、500万円上乗せすることに意味があると感じてもらう提案をします。月々の支払いに置き換えたときに、その差額を払う価値がある家だと思ってもらえるかどうかが勝負です。
| 価値の伝え方 | ポイント |
|---|---|
| 性能・ メンテナンス | 光熱費やメンテナンス費など 数字で示しやすく、 多くの営業が説明できる |
| デザイン | 間接照明の光が途切れない納まりなど 細部の工夫まで言葉にする。 説明できる営業が少なく差がつく |
| 外観・外構 | 外構業者と協力し、 車庫の配置などで 他社と違う外観に見せる |
また、自社の家を一方的に推すことはあまりしません。客観的なアドバイザーの立場で話すことを大切にしており、それが結果的に「この人の会社で建てたい」という信頼につながっています。
土地からのお客様は、どれくらいの土地にどんな建物が入り、総額がいくらになるのかが最もイメージしにくい状態です。そこで、事前に聞いていた希望エリアから土地をピックアップし、そのなかで最も良いと思う土地を絞り込みます。
そして、それまでの話から想定した大きさの建物と、車2台分程度の駐車スペースを手書きで1/100の縮尺に描いて印刷し、土地の図面の上に置いて見せるのです。「左側はこれくらい空きます」「この部屋の日当たりはこうなります」と具体的に話せるため、お客様の理解が一気に進みます。手間はそれほどかかりません。
あわせて、候補地ごとの問題点を事前に洗い出し、自分なりの解決策を用意しておきます。この準備の徹底が、当たり前の基準の高さにつながっています。

お客様の不安に対しては、まず共感し、解決策は必ずその場で示します。分からないことは分からないと正直に伝え、調べて後日回答しますが、基本はその場での解決です。「何が分からないのかが分からない」というお客様には、「借入額が心配な方が多いのですが、いかがですか」など、こちらから論点を立てて整理します。
また、計画が止まりやすいポイントは初回のうちに自分から伝えます。たとえばご両親との関係など家族間の問題には、営業は介入できない。一方で、それ以外の問題は解決できる知識と経験があると伝えると、お客様は安心します。
クロージングは、テストクローズの繰り返しです。「これが解決できたら、家づくりを前に進められそうですか」と問いかけ、まだなら何が足りないかを確認して解決策を出す。初回から金額まで提示するため、結果的に初回での契約も多くなります。「うちで決めてください」と押すのではなく、最短で判断できる材料を全部出すスタンスだからこそ、お客様も本音を話してくれるのです。
A. 値引きしないことを営業の仕事と捉え、お客様と対等な立場で提供すべき価値をきちんと提供することです。そのうえで、予算との差額を払う価値があると感じてもらえるよう、性能だけでなくデザインの工夫まで言葉にして伝えます。
A. お客様の想定と適正な予算には常に500万円ほどの差があると考え、予算を下げるのではなく、上乗せする意味を伝えます。初回に家族構成や背景を聞いておくと、ご家族の状況に沿った根拠を示せます。
A. 急がせず、ほかのお客様と同じ流れで資金計画や土地・建物の総額まで提案します。そのなかで本当の問題が分かれば共有し、確認の時期を決めて一度離れることで、問題が解決したときに声をかけてもらえる関係が残ります。
ピュアグロースでは、大手ハウスメーカーや地域ビルダーでトップの実績を持つ実務経験者が、商談フローの整備やロープレ、案件会議を通じて、値引きに頼らず粗利を確保できる営業組織づくりを支援しています。