「性能と価格しか見ていないお客様に、間取りやデザインの話がまったく響かない」
「一条工務店と競合すると、性能の土俵で押し切られてしまう」
一条工務店は、販売棟数で日本トップクラスのハウスメーカーです。多くの会社がベンチマークし、さまざまな競合対策が語られていますが、それでも勝ち続けているのは、表面的な対策だけでは通用しないからです。
本記事では、一条工務店の本社がある静岡県で、アイ工務店の支店長として日常的に一条工務店と競合してきた当社コンサルタントの解説をもとに、商談と商談の間にお客様の価値観を育てる「育客(いくきゃく)」という考え方と、Instagramを使った具体的な進め方を紹介します。一条ルールや性能比較の切り返しについては一条工務店と競合したらどう戦うかの記事もあわせてご覧ください。
現場の営業から見ると、一条工務店で契約するお客様には、次のような傾向があります。
一方で、間取りやデザインにこだわりたい方、月々の支払いや総額を抑えたい方は、他社を選ぶ傾向があります。つまり、お客様が「性能と価格のバランス」だけで判断している限り、性能に特化した会社の土俵で戦うことになるわけです。
ここで営業担当者が「間取りやデザインも大事ですよ、こだわりましょう」と伝えても、興味のないお客様には響きません。「私たちは性能と価格のバランスで選びたいので」と返されて終わってしまいます。トークの上手なベテランや、自分のオーナー様の素晴らしい施工事例を持っている営業なら切り返せることもありますが、経験の浅い若手営業には難しいのが現実です。
そこで有効なのが育客です。お客様を追いかける「追客」ではなく、お客様が家づくりの価値観を自分で広げていけるように育てるという考え方です。そして、その育客を営業担当者が直接行うのではなく、Instagramに任せるのがポイントです。

注文住宅を検討するお客様の中心は、20代後半から40代前半です。この世代は、朝起きて最初にInstagramを開き、調べものも検索エンジンよりInstagramで行う人が少なくありません。
初回の商談で、「家づくりの勉強になるので、よかったらこのアカウントとこのアカウントをフォローしてみてください」と紹介しておけば、お客様が毎日Instagramを開くたびに、間取りやデザインの工夫を紹介する投稿が自然と目に入ります。家づくり中のお客様なら、興味がなくても一応見てみようと思うものです。特に奥様がよくご覧になります。
営業担当者が「デザインも大事です」と言うと売り込みに聞こえますが、第三者の発信を見て、お客様が自分で「こういうのもいいね」と感じることには説得力があります。営業担当者がやることは、アカウントを紹介するだけです。
育客の効果は、次の商談で確認できます。1週間後のアポイントで「紹介したアカウント、ご覧になりましたか」とこちらから聞いてみましょう。
| お客様の反応 | 読み取れること |
|---|---|
| 「この外観、 私たちもやりたいです」 | 育客が進み、 間取りやデザインにも 関心が広がっている。 前向きな検討客になっている |
| 「正直、 しっくりきませんでした」 | 性能・価格以外の 価値観には乗ってこない。 無理に戦わず 見極めの材料にする |
育客はお客様の前のめり度合いを測る「効果測定」にもなります。反応が良ければ、商談のテーマを性能だけでなく、間取りや暮らし方へと広げていけます。
注意したいのはタイミングです。紹介してから1週間程度で確認するのが目安です。1〜2か月放置すると、お客様の価値観がどんどん先に進み、自社の提案レベルを超えたところまで行ってしまうこともあります。

この方法が効くのは、性能や価格を軸に選ばれやすい会社(性能特化型のメーカーや、建売・規格住宅中心の会社など)と競合したときです。デザイン性を強みにする会社と競合しているときに使うと、お客様の関心を相手の得意分野に向けることになるため、逆効果になります。
お客様がInstagramで見たアイデアを「やりたい」と言ってきたとき、それに応えられなければ意味がありません。オプション提案になることも想定し、紹介するアカウントは営業担当者自身もフォローして中身を理解しておく必要があります。また、自社の標準仕様や価格帯から大きく外れるアカウントばかりを紹介すると、お客様の期待が上がりすぎてしまう点にも注意しましょう。
造作洗面の特集、無垢床、設備など、自社の強みと一致するテーマを発信しているアカウントを選ぶと効果的です。たとえば無垢床が標準の会社なら、無垢床について解説したLINEコンテンツをつくり、その中に無垢床を紹介しているアカウントのQRコードを載せておく。こうした導線を組んでおけば、営業担当者ごとの差も出にくくなります。
競合の情報を調べる営業は多いものの、競合の営業担当者の立場に立って「何をされたら嫌か」を考える営業は多くありません。たとえば住宅ローンの事前審査です。自分が「事前審査を出しましょう」と提案したときに、「それならもう○○さんで出してきました」と言われたら、先を越されたと感じるはずです。自分がやられて嫌なことは、先に自分がやっておく。これも競合対策の基本です。
また、ガス衣類乾燥機やハイブリッド給湯器など、競合の標準仕様では提案しにくい設備について深く勉強しておくことも、差別化の材料になります。相手を悪く言うのではなく、お客様の選択肢を広げる提案で勝負することが大切です。
トップ営業というと、商談中のトークが完璧な人を想像しがちです。しかし、毎年20棟以上を受注しながら引き渡しまで担当するような営業ほど、商談以外の時間をうまく使っています。自分が手を動かさずに、すでにあるものを活用してお客様の価値観を育てる。育客は、受注の最大化と時間効率の両立につながる考え方です。
A. お客様を追いかける「追客」ではなく、お客様が家づくりの価値観を自分で広げていけるように育てる考え方です。営業担当者が直接説得するのではなく、Instagramなど第三者の発信をきっかけに、お客様自身が間取りやデザインの大切さに気づけるようにします。
A. 性能や価格を軸に選ばれやすいメーカーや、建売・規格住宅中心の会社と競合しているときに効果的です。デザイン性を強みにする会社と競合しているときは、相手の土俵に誘導することになるため使わないほうがよいでしょう。
A. 1週間後程度の次回商談で確認するのが目安です。「見てみてどうでしたか」と聞くことで、お客様の前のめり度合いを測れます。長く放置すると、お客様の価値観が自社の提案の範囲を超えて進んでしまうこともあります。
ピュアグロースでは、大手ハウスメーカー出身の実務家コンサルタントが、競合ごとの対策トークや、LINEコンテンツ・SNSを組み合わせた育客の導線づくりまで、現場に入って支援しています。「どうしてもこの会社に勝ちたい」というご相談もお気軽にどうぞ。