「引き渡しが増えてきたのに、アフター担当は工務の兼務のまま」
「点検は外注に任せきりで、何が起きているのか社内で把握できていない」
引き渡し棟数が増えるにつれて、どの住宅会社も向き合うことになるのがアフターメンテナンスの体制づくりです。人を増やせば固定費が重くなり、外注に任せきりにすれば現場の情報が社内に残りません。本記事では、建売中心から注文住宅へと事業を広げてきたある住宅会社の相談をもとに、当社代表が少人数でアフターを回す体制の考え方と、点検・補修で集まる情報を商品改善と信頼づくりに生かす方法を解説します。
アフターメンテナンスに何人必要かは、年間の棟数ではなくこれまでに引き渡した累積の棟数(OBストック)で考えます。一般的な目安は、累積の引き渡し300〜500棟に対してアフター担当1人です。実際には「累積1,000棟を工務担当1人が兼務で見ている」という会社も少なくありません。
ここで多くの経営者が悩むのが、「アフターの人件費は単なるコストなのか」という点です。OBからのリフォーム売上で人件費をまかなうという考え方もありますが、当社代表は「OBリフォーム事業は新築ほど利益が出やすいものではない」と話します。売上目標の立て方は大手ハウスメーカー5社のOBリフォーム比較の記事で解説していますが、少人数のうちは、売上を追うよりも点検と補修を確実に回すことを優先する方が、結果的に会社の評判を守れます。
「自分が住宅会社の経営者なら、アフターをまるごと外注するか」という問いに対し、当社代表の答えは「担当者を1人置いたうえで、外注できる体制をつくる」でした。

アフター部門を固定費で抱えると、どうしても「リフォームで売上を立てて元を取りたい」という発想になりがちです。外注を変動費として使い、社内は担当者とパートの最小構成にしておけば、売上に追われずに点検の質に集中できます。
相談の場では、別の住宅会社の取り組みも共有されました。その会社では外注先を使いながらアフター専任を2人置き、さらに自分が施工管理した現場の点検には、その現場監督が最後まで回ることを徹底しています。
自社で施工した物件を2年後に点検すれば、どの納まりがうまくいき、どこに不具合が出たのかが監督自身に分かります。協力会社に任せきりの現場ではこの情報が社内に戻りにくく、改善の機会を逃してしまいます。点検を「作業」ではなく自分の施工を振り返る機会として位置づけることが、品質向上の出発点になります。
この会社では、外注先から上がってくる報告を社内でまとめ、毎月の数字として蓄積しています。記録している主な項目は次のとおりです。
| 記録する項目 | 見えてくること |
|---|---|
| 監督・エリア別の 棟数 | 誰が、どの地域で、 何棟を担当したか |
| 突発対応の件数と内容 | トイレの詰まりなど、 急な呼び出しの傾向 |
| 補修の件数と内容 | クロスのひび割れなど、 繰り返し起きる不具合 |
| 見積もり・受注に つながった件数 | 点検からリフォームや 追加工事に進んだ割合 |
数字で並べてみると、「この不具合は毎回起きている」「この監督の現場は突発の呼び出しが多い」といった傾向がはっきりします。感覚ではなく記録で話せるようになることが、次の改善につながります。
ためた情報は、定期的な改善会議で使います。よく起きる不具合は、次の商品改定や標準仕様の見直しのタイミングでその建材や納まりを使わないように切り替える。デザイン性は高いがメンテナンスの負担が大きい仕様は、お客様が希望しても積極的には勧めない。こうした判断を、点検の記録を根拠に行っていきます。

このサイクルが回ると、引き渡し後の不具合やクレームが減り、アフターの負担そのものが軽くなります。点検情報は、守りのためだけでなく商品を磨くための材料でもあるのです。
お客様が住宅会社を選ぶとき、「建てた後もきちんと見てもらえるか」は大きな判断材料です。点検の実績や、不具合を記録して仕様に反映している取り組みは、商談の場で「建てて終わりではない会社」であることを示す根拠になります。また、OBのお客様にとっては、施工した監督が点検に来てくれること自体が安心につながり、紹介や口コミのきっかけにもなります。
アフター体制は、引き渡し棟数が少ないうちから設計しておくほど後が楽になります。まずは最小構成の体制をつくり、点検と補修の記録を残し始めることから取り組んでみてください。
A. 累積の引き渡し棟数300〜500棟に対して1人が一般的な目安です。少人数のうちは、点検の実作業を外注し、社内は担当者1人とパートスタッフで調整や取りまとめを担う構成から始めるのがおすすめです。
A. 外注は変動費として使えるため有効です。ただし任せきりにすると、不具合の情報が社内に残りません。外注先からの報告を担当者が取りまとめ、施工した監督も点検に関わる仕組みにしておくことが大切です。
A. 突発対応や補修の件数と内容を毎月記録し、繰り返し起きる不具合を改善会議で共有します。商品改定や標準仕様の見直しの際に、不具合の多い建材や納まりを切り替える根拠として使いましょう。
ピュアグロースでは、大手ハウスメーカーの実務経験者を含むコンサルタントが、アフター・メンテナンス体制の設計から、工務・品質の改善、OBとの関係づくりまで伴走します。