「幹部候補に研修を受けさせても、現場に戻ると元通りになってしまう」
「注意すると黙り込み、言われたことしかやらない部下ばかりになった」
幹部が育つかどうかは、研修の中身だけでなく、その後の上司の関わり方で決まります。ピュアグロースの社外取締役は、大手ハウスメーカーやアイ工務店で社長を歴任し、自ら社員向けのリーダー研修を行ってきた経営者です。本記事では、当社取締役との対談から、幹部を育てるリーダー研修の進め方と、部下が自ら動き出す上司の関わり方を解説します。リーダー研修の目的や「人間の背骨」の考え方については、リーダー研修で幹部に何を教えるかもあわせてご覧ください。
研修の最初に、受講者に必ず投げかける質問があります。「あなたはどんなリーダーになりたいか」。多くの人は、具体的なリーダー像を持っていません。リーダー像がなければ、考え方も行動もぶれ、部下はついてこられません。研修のゴールは、一人ひとりの個性を生かしながら、自分がなりたいリーダー像を固めること。それが固まれば、あとは日々実践していくだけです。

人間の本質は、2,500年前からほとんど変わっていません。古典には、悩んだときにどちらに進めば成功するのかが書かれています。会社が大きくなってから不祥事で道を誤る経営者がいるのは、それが実践できないからです。
たとえば中国の古典『貞観政要』には「諫言(かんげん)」という考え方があります。自分の右腕・左腕に「あなたはおかしい」と言ってくれる部下を持つこと。そうして自ら気づき、正しい経営から道を外れないことが、王道の経営だといいます。論語なども、いまは小学生でも読める解説書がたくさん出ています。どの本から始めても構いません。
もう一つは、自分が目標にしたい経営者を選び、その人がいまの自分の年齢のときに何を考え、どう行動したのか、逆境をどう乗り越えたのかを研究することです。選び方は「この人が好き」という感覚でも、「業界でこの人の業績が良いから」という理由でも構いません。きっかけは何でもよいので、自分で決めることが大切です。
研修では課題図書を読んで感想を書き、ディスカッションし、講師が補足します。重視しているのは、新しい知識を得ることより現場で実践し、やり切ることです。いつまでにやるのか、復習しているのかを逐一確認します。
| 項目 | 進め方 |
|---|---|
| 人数 | 一人ひとりに返答できるよう 10人程度に絞る |
| 回数 | ガイダンスを含めて 5回程度 |
| レポート | 講義内容は同じでも、 返答は一人ひとり変える |
| 研修後 | 社長が毎月フォローし、 考え続ける仕組みにする |
5回受けたら強いリーダーが完成する、ということはあり得ません。講師が社長だった頃は、研修後も毎月フォローし、幹部候補生は毎月考えざるを得ない状態でした。その積み重ねで、社長とリーダーのあいだに共通言語ができます。「論語のこの一節をどう解釈するか」「お客様のためにこの商品開発をどう考えるか」と問えば、同じ基準で話ができるようになるのです。
仕事の基本として、上司と部下で仕事の目的や内容、期限などをきちんと共有することも欠かせません。「頑張っているのに評価されない」「頑張っているように見えない」というすれ違いの多くは、ここを共有していないことから生まれます。
研修では、部下指導の具体的なノウハウも伝えます。パワハラが許されない時代に、どうすれば人が本当に動くのか。講師が「上司が部下に言ってはいけない」と挙げたのが、次のような関わり方です。

行動分析で使われる「ABCモデル」は、A(きっかけ・前提条件)→B(行動)→C(結果)の流れで人の行動を捉える考え方です。たとえば今月3棟の受注目標に対して、1棟しか取れなかったとします。
講師は、主体性のない社員をつくっているのは上司と社長だと言い切ります。業績が悪い部下に悩んだら、まず「その部下の家族や子どもの名前、誕生日、趣味を知っているか」を自問してみてください。上司が自分の悩みも共有すると、部下の方から「ここができないので具体的に指導してほしい」と言ってくるようになります。それが良い会社の姿です。
講師は社長時代、30人ほどの事業部長・営業部長に「どんな叱られ方をしたいか」を事前に選んでもらっていたといいます。諭すように言ってほしい人、お酒を飲みながら言ってほしい人、その場ではっきり言ってほしい人。100人いれば100通りです。腹が立ったときも、居酒屋で話すと決めておけば数時間たって冷静になり、伝えるべきことだけを伝えられます。褒めて伸びるタイプか、叱って伸びるタイプか、上司が相手を知ったうえで関わることが大切です。
成果に応じた報酬だけでつながっている関係なら、他社が倍の報酬を提示すれば人は揺らぎます。人間力を高め合い、トップと役員、リーダーが同じ考え方で団結している会社は、簡単には崩れません。優秀な人を高い報酬で引き抜いて急成長しても、その後が続かない会社は少なくありません。
育成の効果はすぐには見えず、短期の業績で評価すると育成に力を注いだリーダーは報われにくいものです。講師がゼロから立ち上げた事業も、当初は評価が高くありませんでしたが、育てたリーダーたちによって、その後大きく成長したといいます。5年後、10年後に勝つのはどちらか。それが幹部育成に投資する理由です。
幹部を社長の分身として育てる考え方や、優秀な幹部の条件については伸びる会社は幹部を「分身」として育てるもあわせてご覧ください。
A. 研修自体はガイダンスを含めて5回程度が目安ですが、それで完成することはありません。研修後も社長が毎月フォローし、学んだことを実践し続ける仕組みをつくることが重要です。
A. 「分かったか」と確認せず「どう理解したか」を聞く、結果が足りなくてもできた行動を褒める、なぜなぜで問い詰めない、といった上司側の関わり方を変えることから始めましょう。
A. 古典には、時代が変わっても変わらない人間の本質と、迷ったときの正しい判断の仕方が書かれているからです。社長とリーダーが同じ古典を学ぶことで、社内に共通言語ができます。
ピュアグロースでは、大手住宅会社の経営を担ってきた社外取締役によるリーダー研修をはじめ、幹部育成や組織づくりを支援しています。