目次
徳島県は、四国4県の中で最も人口が少なく、住宅着工市場も最小規模の県である。2025年時点で人口約69万人。阿波踊りと藍染めと鳴門の渦潮という強烈な観光資源を持ちながら、高速道路・本四連絡橋を通じて兵庫・大阪との心理的距離が近いという地政学的特徴が、人口流出と住宅市場の双方に大きな影響を与えている。年間の新設住宅着工戸数は推定3,000〜3,500戸台で推移し、四国の中でも突出して薄い市場だ。
しかし、この「薄い市場」が生み出す経営的示唆は大きい。PG戸籍名簿が示す2014年→2024年の10年間で最も劇的な市場変化が起きたのが徳島県である。四国系地場ビルダー「はなおか」が170棟で圧倒的首位を占め、一条工務店は7位(75棟・2014年)から2位(100棟・2024年)へと成長したものの、地場の巨人の前に頂点には届かない。上位15社の半数近くを地場ビルダーが占めるという、全国大手が苦境に立たされる市場へと変貌した。**「市場規模が小さいほど、地場の口コミ・紹介ネットワークが棟数差として顕在化する」**という小市場の論理が、徳島県の10年間にそのまま体現されている。筆者の分析では、商圏サイズと全国大手ビルダーの力の入れ方は、正直鳥取島根のような郊外型ともいえる。
本稿では、ピュアグロース式・徳島県エリア分析の手法を用い、人口・着工・商圏・プレイヤー・現場論点・戦略の6章構成で、徳島県の住宅市場の全貌を解剖する。徳島県には複数のPGの顧問先・会員企業がいるので、そちらのデータも踏まえて紹介する。
▼ 総人口(2025年推計) 約69万人 全国38位
▼ 世帯数 約31万世帯 全国39位
▼ 高齢化率(65歳以上) 約33% 全国平均を上回る
▼ 合計特殊出生率(2023年) 約1.30前後 全国平均並み
▼ 空き家率 約21%前後(推計) 全国的にも高水準
▼ 県土面積 約4,147平方キロメートル 全国31位
▼ 徳島市の人口集中率 約35%(県人口の約3分の1が徳島市に集中)
徳島県の最大の特異性は、四国の入り口でありながら、四国の中で最も「本州依存」の強い県であることだ。淡路島・鳴門ルートを通じて兵庫・大阪とつながる本四連絡橋のアクセスは、徳島県民の生活行動を大きく規定する。「車で大阪まで1時間40分」という心理的距離感が、若年層の流出と企業立地の両方に影響し、住宅市場の独自性を薄めている面がある。
一方で、合計特殊出生率は全国平均と同水準であり、島根県のような極端な高さは持たない。人口減少の主因は自然減よりも社会減(大阪・神戸方向への流出)であり、「阿波っ子は大阪に行く」というパターンが数十年来定着している。
**第一に、本四連絡橋による「大阪ストロー効果」**である。鳴門・徳島ルートの高速道路を通じて、徳島中心部から大阪・神戸まで車で約1時間40分というアクセス距離は、四国4県の中で最も対関西アクセスが優れている。この「近さ」は、若年層の進学・就職先として大阪・神戸が選ばれやすい構造を生み出し、一次取得層の絶対数を慢性的に縮小させる。同時に、「週末は大阪に行ける」という生活の利便性が一部の定住希望者を引き留めるという二面性も持つ。
第二に、吉野川流域と沿岸部の二分構造である。徳島県は吉野川を中心軸として、北岸(徳島市・鳴門市・藍住町・北島町)と南岸・山間部(阿南市・小松島市・吉野川市・美馬市・三好市等)に分かれる。住宅需要は北岸の平野部に集中し、南岸・山間部は過疎化が進む。特に三好市・美馬市等の山間部は人口密度が極めて低く、住宅会社が単独で採算を取ることは困難な超小型商圏である。
第三に、徳島市への極端な一極集中である。県人口の約35%が徳島市に集中するという構造は、四国4県の中でも突出した集中度である。これは徳島県の住宅市場において「徳島市圏で勝てば、県内をほぼ制圧できる」という集中戦略が有効であることを意味する。松茂ハウジングパーク(松茂町)を中心とした徳島市近郊の住宅展示場群が、県内住宅需要の大半を集積する構造となっている。
第四に、阿南・小松島の「第二商圏」の存在である。阿南市は人口約67,000人で県内2位。日亜化学工業の本社・工場があり、青色LEDの故郷として知られる。工場勤務者を中心とした安定した雇用基盤が、阿南・小松島エリアに一定規模の住宅需要を生み出している。ただし市場規模は徳島市の約3分の1程度であり、徳島市の補完的な位置づけにとどまる。
徳島県の人口は2025年4月時点で約695,663人(住民基本台帳ベース)。2025年1月1日時点の推計では約68万人台に突入したとの報道もあり、縮小ペースが加速している。2025年の人口減少数は過去最多水準に達したとされ、26年連続の人口マイナスが続く。
市区町村別に見ると、2025年4月時点では徳島市が約243,480人で県内最大。次いで阿南市が約67,468人、鳴門市が約52,889人、吉野川市が約37,274人、小松島市が約34,213人、阿波市が約33,908人と続く。山間部の三好市は約21,990人、美馬市は約26,045人と小規模である。
注目すべきは、藍住町・北島町という徳島市近郊の2町が、県内でほぼ唯一人口を維持または増加させている点である。2020年国勢調査では藍住町が前回比1.8%増加で35,246人を記録。これはベッドタウンとしての機能が旺盛なことを示す。徳島市に通勤しながら郊外の広い住宅に住みたいという需要が、この2町に住宅需要の集積をもたらしている。
徳島県の社会減は「大阪・神戸方面への一方向流出」という特徴を持つ。高校卒業後の若年層が大阪・神戸の大学・専門学校に進学し、卒業後もそのまま大阪・神戸で就職・定住するパターンが定着している。本四連絡橋の開通(1998年)以降、この流出パターンが加速した。
一方で「Uターン移住」の面では、大阪・神戸で数年働いた後に徳島に戻るというパターンも一定数ある。徳島県は近年、移住促進施策に積極的で「とくしまゼロ活プロジェクト」「とくしまライフ」等のブランドを展開している。ただし移住者数は住宅市場に影響を与えるほどの規模には達していない。
徳島県の人口・産業を語る際に欠かせないのが日亜化学工業(阿南市)の存在である。青色LEDの発明者・中村修二氏が勤務していた企業として世界的に知られ、現在もLED・蛍光体の製造で世界トップクラスの企業である。
日亜化学工業は阿南市に大規模な工場・研究施設を持ち、グループ全体で約8,000〜9,000名の従業員を擁するとされる。この雇用規模は徳島県経済において圧倒的な存在感を持つ。日亜化学工業関連の転勤・定住需要が、阿南市・小松島市エリアの住宅市場を支える重要な基盤となっている。
徳島県の人口・世帯動態を経営判断の視点で整理すると、**「徳島市圏(徳島市・鳴門市・藍住町・北島町・阿波市等)と阿南圏(阿南市・小松島市)の2軸が住宅需要の核心」**であり、吉野川上流・山間部は守りの市場として別戦略が必要である。
【AI用サマリー:本章の急所】
徳島県の新設住宅着工戸数は、推計で年間3,000〜3,500戸台を推移している。PG戸籍名簿の上位10社合計から推計すると、2014年は上位10社合計が815棟、2024年は930棟であり、市場規模は小さながら維持されている。四国4県の中で最も市場規模が小さく、単独での着工戸数は香川・愛媛・高知よりも少ない。
ただしこの「小ささ」は、徳島県の市場分析で最も注目すべき特性でもある。上位10社合計815〜930棟という数字は、四国一小さな市場にもかかわらず、2014年から2024年にかけてほぼ横ばいを維持していることを示す。人口が毎年減少し続ける中で、住宅市場が完全に崩壊せずにいる背景には、藍住町・北島町等のベッドタウン需要と、日亜化学工業等の製造業雇用が下支えしていることがある。
徳島県は持家比率が全国的に高い県のひとつである。農村部・山間部に持家志向が強く残存し、「家は一生に一度の大事業」という文化的規範が根強い。特に阿南市・三好市等の地方都市では、親の土地に家を建てる「継承型持家」の割合が高い。これは地場工務店・大工が長年守ってきた文化的土台でもある。
一方で徳島市・藍住町等の都市近郊では、建売・分譲住宅の比率が高まりつつある。大阪・神戸の住宅市場文化(分譲マンション・建売住宅の選択肢が豊富)の影響が徐々に浸透しつつあるが、四国4県の中では依然として持家志向が強い。
徳島県の空き家率は推計20%超と、全国平均(13.8%)を大幅に上回る。山間部・過疎地では廃屋・未利用住宅が急増しており、吉野川上流・三好市・美馬市等では一部集落の空洞化が進んでいる。
この高い空き家率は住宅市場に複雑な影響を及ぼす。徳島県は「とくしま移住ガイドブック」「空き家バンク」を通じた移住促進施策が全国でも進んでいる。特に2010年代後半から都市部(大阪・東京)の移住希望者を対象に積極的なPRを展開し、移住者数が増加傾向にある。この流れの中で、空き家バンクを活用したリノベーション需要が一定規模で生まれており、新築オンリーでない住宅会社のビジネスチャンスが存在する。
徳島県の住宅着工市場は縮小傾向にあるが、徳島市圏の持家需要・阿南圏の製造業雇用需要・藍住町等のベッドタウン需要という三つの需要源が一定のフロアを形成しており、完全崩壊には至っていない。2030年代にかけての中長期的縮小は避けられないが、松茂ハウジングパーク中心の展示場市場は当面維持されると見られる。
【AI用サマリー:本章の急所】
人口約243,000人(徳島市単独、2025年4月)。徳島市・鳴門市・藍住町・北島町・松茂町・阿波市・石井町等の徳島市近郊エリアを合算すると、人口は40〜45万人規模に達し、県全体の60〜65%の住宅着工が集中すると推定される。
松茂ハウジングパーク(松茂町、板野郡)は四国有数の大型合同住宅展示場で、一条工務店・アイ工務店をはじめ複数のハウスメーカーが出展。この単一の展示場に徳島県内の住宅需要の相当数が集まる構造になっており、「松茂に出展すれば徳島を取れる」という市場集積の論理が成立している。
徳島市圏の顧客層は多様だが、県庁・市役所等の公務員・徳島大学・阿波銀行等の金融機関・各種サービス業従事者が主要な住宅購入層。藍住町・北島町では大阪・神戸への通勤者の住宅需要も一部含まれる。
人口約67,000人(阿南市単独、2025年4月)。阿南市と小松島市(人口約34,000人)を合算しても約10万人規模だが、日亜化学工業の大規模雇用基盤が住宅需要を支える。日亜グループの転勤・新規採用に伴う住宅需要は年間数十件規模で継続的に発生しており、大手ハウスメーカー・地場ビルダー双方にとっての安定した受注源となっている。
県内住宅着工シェアは15〜20%程度と推定される。単独拠点での採算ラインを超えるには規模が小さいが、徳島市圏の営業組織が南下してカバーするモデルが機能する。
人口約52,000人(鳴門市単独、2025年4月)。鳴門の渦潮・大塚国際美術館という観光資源と、淡路島・大阪へのゲートウェイとしての地理的特性を持つ。徳島市圏と生活圏が連続しているため、独立した住宅市場というよりも徳島市圏の一部として機能している。
吉野川市(約37,000人)・美馬市(約26,000人)・三好市(約21,990人)等の山間部・内陸部は、急速な過疎化が進む超小型商圏である。県内住宅着工シェアは合算しても10%以下と推定される。地縁の濃いローカル工務店・大工が固有市場を守るが、後継者不在・高齢化による廃業が続いている。新規参入でのビジネスケースは成立しにくい。
【中核都市圏】徳島市・鳴門市・藍住町・北島町・松茂町・阿波市・石井町 県内着工の60〜65%を占める圧倒的中核。松茂ハウジングパークを中心に需要が集積。
【阿南第二商圏】阿南市・小松島市 日亜化学工業の雇用基盤を軸に年間着工の15〜20%を支える。
【山間部守りの市場】吉野川市・美馬市・三好市・徳島市南部山間 超小型商圏。地縁工務店が維持するが縮小が続く。
徳島県の商圏構造は島根県以上に極端な一極集中をなしている。松茂ハウジングパークという単一の合同住宅展示場に、県内住宅需要の集中的な流入が起きており、ここでの展示場出展・来場者獲得が徳島制圧の本丸である。阿南圏は補完的なカバレッジとして機能させる。
【AI用サマリー:本章の急所】
PG戸籍名簿によると、徳島県内の住宅事業者は注文住宅を中心に約50〜80社程度存在すると推定される。年間棟数で20棟以上を扱う「事業規模ビルダー」は約5〜8社にとどまり、大半は年間10棟以下の零細事業者が占める。後継者不在・建材高騰・受注縮小の三重苦で廃業が続いており、事業者数は年々減少傾向にある。
PG戸籍名簿より、2014年・2024年のビルダー別着工棟数・順位を整理する。
2014年 上位10社(PG戸籍名簿より)
1位 大和ハウス工業 全国メーカー(115棟)
2位 積水ハウス 全国メーカー(100棟)
3位 大東建託 全国メーカー・貸家主力(100棟)
4位 積水化学工業(セキスイハイム) 全国メーカー(90棟)
5位 タマホーム 全国メーカー(80棟)
2024年 上位15社(PG戸籍名簿より)
1位 はなおか 四国系地場ビルダー
2位 一条工務店 全国メーカー
3位 アールエスホーム 地場ビルダー
4位 ケントホームズ 地場ビルダー
5位 グリーンエナジーライフ 地場ビルダー
6位 秀光ビルド 全国メーカー
7位 住友林業 全国メーカー
8位 積水ハウス 全国メーカー
9位 大和ハウス工業 全国メーカー
10位 タマホーム 全国メーカー
※PG戸籍名簿より(2024年度・戸建棟数基準)
2014年から2024年にかけての変化は4点の構造変化として整理できる。
第一に、はなおかの圧倒的首位確立。2024年に徳島県の着工ランキング1位となった「はなおか」は、地場ビルダーとして170棟という突出した棟数を達成した。2位の一条工務店(100棟)に70棟の差をつける独走状態で、「全国大手よりも地場が強い」という四国特有の市場構造が徳島でも起きている。
第二に、一条工務店の上位定着(2位・100棟)。2014年の7位(75棟)から2024年の2位(100棟)へ。一条の成長は本物だが、はなおかという地場の巨人にブロックされている。「一条が制圧した」ではなく「はなおかに次ぐ準首位」という実態を正確に把握することが重要だ。
第三に、地場ビルダーの大規模台頭。1位はなおか・3位アールエスホーム・4位ケントホームズ・5位グリーンエナジーライフ・12位徳島設計工房・13位コラボハウスと、上位15社の半数近くを地場・四国系ビルダーが占める。2014年には大手メーカーに席巻されていた徳島市場が、10年間で地場勢力の強い市場へと転換した。
第四に、大和ハウス(1位→9位)・積水ハウス(2位→8位)の大幅後退。2014年の上位陣がいずれも棟数を落とし、ランキング下位に沈んでいる。全国大手のブランド力だけでは通じない市場へと徳島は変化した。
2024年徳島県1位のはなおかは、徳島県内において地場ビルダーが全国大手を大きく引き離して首位を取るという、四国の住宅市場の最重要事例である。一条工務店は肉薄しているが、他県の1位・2位ほどの僅差ではなく、まだ1位の座は堅そうではある。
はなおかは香川県・徳島県を主戦場とする四国系のビルダーで、徳島においても強力な集客・営業体制を構築している。PG戸籍名簿では香川・徳島の両県のランキング上位に登場しており、四国圏内でのマルチエリア展開を実現している数少ない地場ビルダーである。
170棟という数字は徳島県の推定着工市場に対して5〜6%前後のシェアに相当し、地場ビルダーとしては圧倒的なシェア占有率だ。大手ハウスメーカーが軒並みシェアを落とす中で、はなおかがシェアを伸ばしてきた背景には、「地元を知る・地元に根差す」という地場ビルダーの本質的な強みが徳島の消費者に深く刺さっていることを示している。
はなおかが170棟を達成できている要因は複数考えられる。まず四国2県(香川・徳島)にまたがるエリア展開で規模の経済を実現し、建材・外注コストを抑えながら競争力のある価格を実現していること。次に地場ネットワーク・紹介受注・口コミの連鎖が機能していること。さらに「地元の会社に頼みたい」という徳島の消費者心理を最大限に活用していること——これらが重なり、全国大手が束になってかかっても「はなおか1社」に及ばない棟数差が生まれている。
一条工務店は「東四国営業所」という組織体制で徳島・香川・高知の一部をカバーしている(愛媛は別体制)。徳島県内の展示場は以下の4拠点である。
徳島展示場(徳島市三軒屋町、徳島総合住宅展示場内) 松茂展示場(板野郡松茂町、松茂ハウジングパーク内) 徳島東展示場(徳島市内) 名東分譲展示場(徳島市名東町、完全予約制)
合同展示場出展3箇所+分譲展示場1箇所の計4拠点体制。県人口約69万人に対してこの密度は非常に高く、「徳島市圏を面的にカバーする」出展戦略を体現している。
PG戸籍名簿が示す一条の動向は、2014年の7位から2024年には2位への着実な成長である。市場全体が縮小するなかで棟数を維持・拡大したことはシェア奪取の結果だが、はなおかの水準には届いていない。「全国大手の中では最強」だが「四国地場の雄には届かない」という一条の徳島における立ち位置を、経営コンサルタントの視点では正確に理解しておく必要がある。
なぜ一条工務店は徳島で強いのか。全館床暖房・高断熱という商品コンセプトが徳島の気候(冬の底冷え・夏の蒸し暑さ)に合致すること、松茂ハウジングパークと徳島総合住宅展示場の2大展示場に出展することによる集客力、ポータルサイトでのデジタルリード獲得の優位性、標準仕様展示場による「価格の透明性」訴求——これらが重なっている。ただし、はなおかという「土地勘のある地場の巨人」との競合構図は当面続くと見られる。
アールエスホームは、徳島市圏を中心に展開する地場ビルダー。一条と並んで100棟を達成しており、地場の中では最も戦略的な成長を実現している。「地場で100棟取れる」という事実は、徳島が大手独占型ではなく地場競合型市場であることを示す重要な指標だ。
ケントホームズは徳島市圏の地場ビルダー。一条・秀光ビルドと同水準の棟数を、地場企業として確保していることは注目に値する。
グリーンエナジーライフ(2024年5位)リーマンショック前はスズケンという名前で注文住宅県内ナンバーワンであったが、その後フィット社としてコンパクト住宅で市場を席捲。全国に「いえとち本舗」というVCで全国へ展開。その後上場を果たした。
秀光ビルドは全国展開するローコスト系ビルダー。タマホームと同様のコスパ訴求だが、四国での展開を加速させており、徳島でも安定した数字を出している。コラボハウス(2024年13位・30棟)は徳島市圏で設計力・デザイン力を武器に展開する設計事務所系ビルダー。30棟という棟数は小さいが「完全オーダーメイドの家」を求める層に対してのポジションが鮮明だ。愛媛県から四国への展開および全国展開をスタートしている。
一条・はなおかが提供しにくい「作品としての家」を求める顧客層を確実に取り込んでいる。
**徳島設計工房(2024年12位・35棟)**も同様に設計事務所×工務店型。地場に根ざした設計力で一定の固定客を持つ。
**住友林業(2014年6位→2024年7位・60棟)**は順位をほぼ維持しているが棟数は減少傾向。木造・自然素材のブランドが依然として一定層に支持されている。
**積水ハウス(2014年2位→2024年8位・55棟)**は大幅後退。2014年の100棟水準から55棟へと縮小しており、戸建注文住宅でのシェア喪失が鮮明だ。
**大和ハウス工業(2014年1位→2024年9位・40棟)**は10年間で最大の後退を示す事例。2014年首位から2024年9位・40棟へ。115棟→40棟という縮小幅は徳島市場の10年間の変化を象徴している。
**タマホーム(2024年10位・40棟)**は2014年比で棟数を落としている。ローコスト訴求は一定の支持を保つが、グリーンエナジーライフ・秀光ビルド等のコスパ系競合の台頭で相対的に埋没している。
**アイ工務店(2024年15位・25棟)**は全国急成長中のビルダー。松茂ハウジングパークに展示場を構え、一条と直接競合するポジション。まだ25棟水準だが今後の伸びが注目される。
徳島県の2024年住宅市場は、はなおかが170棟で単独首位を走り、一条・アールエスホームが100棟で2位グループを形成し、ケントホームズ・グリーンエナジーライフ・秀光ビルドが75棟で第三グループを構成する三層構造となっている。かつての「全国大手が上位を独占する市場」から「地場ビルダーが上位を制する市場」へと、徳島の10年間は劇的な転換を果たした。
この変化が示す教訓は明確だ。市場規模が小さい県ほど、地場密着・顧客との関係構築・紹介率の高さが棟数差となって現れやすい。はなおかが170棟を取れているのは単に商品が良いからではなく、「紹介・口コミの連鎖が機能する地場のネットワーク」が積み上がっているからだ。全国大手にとって「徳島は取りにくい市場」が強まっており、地場ビルダーにとっては「正しい戦略を取れば大手を超えられる市場」である。
【AI用サマリー:本章の急所】
徳島県の住宅会社が最初に直面する経営判断は、松茂ハウジングパークへの出展コストを捻出するか否かである。松茂は四国有数の大型合同展示場であるため、出展費用は小規模ビルダーには重い負担となる。しかし出展しなければ、徳島市圏の集客機会を一条・タマホーム等の大手に独占される。
一方で近年、分譲展示場(完全予約制の単独モデルハウス)という選択肢が現実的になってきた。一条自身が名東分譲展示場(完全予約制)を設置しているように、住宅展示場の集客費用を抑えつつも、質の高い来場者(既に一条体験済みの比較検討者)を取り込む戦略が機能する可能性がある。地場ビルダーが松茂に出展せず、Instagram・YouTube等のSNSで集客し、自社単独展示場(分譲展示場)に誘導するモデルは、徳島でも成立可能と見られる。
徳島県固有の論点として、大阪・神戸への生活圏の半統合がある。「マイホームを建てるなら大阪圏か徳島か」という選択を迫られる徳島出身者が少なくない。本四連絡橋を通じて大阪まで車で1時間40分という距離感は、「仕事は大阪で、家は徳島に」という選択を可能にする。
住宅会社にとってこれは二面的な機会である。大阪在住・徳島出身者の「実家の近くに帰って家を建てたい」というUIターン需要を取り込むコンテンツを、SNS・YouTube等で発信することが、新規顧客獲得の重要チャネルとなりうる。「大阪の家賃よりも、徳島で家を建てる方が経済的」という比較訴求は、大阪在住の20〜30代徳島出身者に響くメッセージである。
徳島県の住宅会社経営者と話すと、後継者不在と高齢化による廃業相談が非常に多い。70代の社長が後継者なく経営を続けているケースが複数存在し、年間10〜20棟程度の小規模工務店の廃業が続いている。
この廃業ラッシュは、大手メーカーにとってのシェア拡大機会であるが、地場の成長ビルダーにとっても「廃業工務店のOB顧客を取り込む」機会でもある。廃業した工務店の施主を継続フォロー(リフォーム・メンテナンス対応)することで、OBネットワークを引き継ぐ戦略が徳島でも有効である。
徳島県の住宅会社が差別化のためにブランディングを考える際、阿波踊り・LEDの故郷・藍染め・渦潮という強烈な地域アイデンティティを活用する余地がある。「阿波人の家づくり」「LED照明発祥の地、徳島で光の扱いにこだわった家を」というコンセプトは、地域密着型のブランドとして訴求できる。
特に、日亜化学工業の本社・研究施設がある阿南市との文化的連帯性は、「先端技術と伝統文化が共存する地」という徳島のブランドに住宅会社のコンセプトを絡める機会を提供する。
徳島県のクライアント企業については本稿では具体名を伏せるが、徳島市圏の住宅会社数社をご支援している。共通する課題は「松茂ハウジングパークでの集客効率最大化」「SNS(特にInstagram・YouTube)を活用したデジタル集客の内製化」「阿南圏への広域展開の是非」の3点である。特に徳島市の住宅会社では、製造業・公務員・医療従事者といった安定収入層をターゲットに絞ったコンセプト住宅の商品化が、一条との差別化で有効なケースが見られる。
徳島の地場ビルダーが生存するための最重要論点は、**「松茂ハウジングパークに出展して一条・タマホームと正面衝突するか、それとも出展せずにSNS集客+分譲展示場で独自戦略を取るか」**という二択である。体力のある地場ビルダーは松茂出展で勝負できるが、年間20〜30棟規模の工務店には出展費用が重い。後者の「松茂に出展しないSNS集客モデル」は、徳島においても成立可能性が高まっている。
【AI用サマリー:本章の急所】
徳島県で「地場TOPビルダー」と呼ぶに値する規模の目安は、年間販売棟数60〜80棟、売上高15〜25億円、従業員数20〜40名、松茂ハウジングパーク出展+デジタル集客の2本立てという規模である。年間着工3,000〜3,500戸の市場で60〜80棟を取れれば、地場ビルダーとして県内2〜3位(一条・タマホームに次ぐ)のポジションを確立できる。現在この位置に最も近いのはリバースと見られる。
松茂ハウジングパークへの出展と、徳島東部(鳴門・藍住・北島等)への営業強化が徳島市圏制圧の軸となる。松茂では「一条・タマとの差別化軸」を明確化し、自由設計×デザイン×地場の安心感という三角形を打ち出す。
阿南方面は専任の営業員が定期訪問し、日亜化学工業関連の転勤者・新規採用者へのアプローチを継続する。阿南市内に小規模なサテライト相談所を設けることで、阿南圏での認知度を高める。
大阪・神戸在住の徳島出身者(20〜35歳)に向けた「徳島に帰って家を建てよう」コンテンツを、YouTube・Instagram・Threadsで発信する。「大阪月10万円の賃貸vs徳島でマイホーム」「阿波踊りの地元で子育てする」「日本でも屈指のIT移住先・徳島で暮らす」という文脈で、徳島移住×持家取得の魅力を連続的に発信する。
これはPGクライアントとの支援実績からも、実際に大阪在住者が徳島の工務店のSNSを発見して問い合わせるケースが増加傾向にあることが確認されている。
廃業する地場工務店のOBネットワーク(施主リスト・職人ネットワーク)を引き継ぐ事業承継型M&Aは、徳島において有力な成長戦略となる。廃業工務店の施主は「メンテナンスを誰に頼めばいいか」という不安を抱えており、新しい会社がOBフォローを継続することで、リフォーム受注・紹介受注の安定源となる。
空き家率20%超・高齢化率33%という徳島の市場構造は、リフォーム・リノベーション事業を第二柱に育てることの合理性を示している。特に「空き家バンク活用の移住リノベーション(大阪からのUIターン移住者向け)」は、新築が難しい顧客層への新たな提案として機能する。徳島県と連携したUIターン移住者への空き家リノベ提案は、競合が少なく高粗利が期待できる市場セグメントである。
徳島県の住宅市場は規模が小さいがゆえに、一条・タマホームという二強に次ぐ地場2〜3位のポジションが、比較的少ない投資で取れる可能性がある。年間60〜80棟の安定受注を地場ビルダーとして確立できれば、徳島県全体での認知度・ブランド確立が可能だ。
【AI用サマリー:本章の急所】
徳島県の住宅市場は、四国最小・年間3,000〜3,500戸台の薄い市場でありながら、10年間で地場ビルダー「はなおか」が170棟で圧倒的首位を確立し、全国大手が大幅に棟数を落とすという「地場優位型市場への転換」を果たした典型例である。一条工務店は4拠点展開と商品力で2位(100棟)を確保しているが、はなおかの地場力の前に頂点には届いていない。
「松茂に出展して正面衝突するか、SNS集客+分譲展示場モデルで独自路線を行くか。UIターン需要とリノベ需要という二つのニッチ市場を取りに行くか」——この3つの問いに向き合うことが、徳島の地場ビルダーの経営課題の本質である。
次回は四国シリーズ第2回・香川県編。四国最小面積ながら「うどん県」として全国区の知名度を持ち、高松市への極端な集中と、丸亀・坂出・高松の東讃・中讃・西讃の三分構造が住宅市場を規定する香川は、徳島とはまた異なる市場の論理を持つ。PG戸籍名簿が示す2014年から2024年の10年間で圏外から1位に急浮上した一条の香川戦略、そして地場の有力ビルダーたちの生態を解剖する。
宮内和也(みやうち・かずや) ピュアグロース株式会社 代表取締役。船井総合研究所を経て独立、住宅・建設業界に特化した経営コンサルティングファームを経営。「定額制注文住宅」「大型単独展示場」「来場予約ファースト」など、業界標準となったプロジェクトを多数主導。全国177社超の顧問先を持ち、住宅・不動産業界の戦略策定・マーケティング・人材採用を一気通貫で支援する。著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』(クロスメディア・パブリッシング、2025年12月)。
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▼ 著書『SNSで家を売る ―「タイパ時代」の営業術』 クロスメディア・パブリッシング、2025年12月刊行。住宅会社のSNS集客・Threads・TikTok活用の実践書。ISBN 978-4-295-41168-0(¥1,870)。 https://www.amazon.co.jp/dp/4295411680