縮小する地方市場でシェアを取り切る|カワムラホームに学ぶ地域1番の売り方と多角化経営

2026.10.27 2026.10.27
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「地元の新築市場が年々縮んでいき、このままでは先細りしてしまう」
「地域1番を目指したいが、何から手を付ければいいのか分からない」

人口が減る地方都市の住宅会社にとって、避けられない悩みです。北海道・旭川に本社を置く創業100年超のカワムラホーム様は、市場が縮小するなかでも旭川でトップを守り、新築・中古住宅・リフォームの3つの分野で地域1番の地位を築いています。

本記事では、全国の住宅会社の経営者が参加した旭川本社の視察と当社代表の解説をもとに、縮小する地方市場でシェアを取り切る売り方と拠点づくり、そして新築以外の事業へ広げる多角化の考え方を解説します。

地方市場は「シェア20%」を目指す時代へ

当社代表の解説によると、旭川の新築住宅市場は直近1年でおよそ1,300棟から900棟へと約3割縮小しました。それでも同社は、持ち家と分譲を合わせたシェア20%を狙っています。

これまでは、地域でシェア10%を取れば1番と言われてきました。しかし市場が縮むほど、地域の上位企業への集中が進み、1番であるためには15%、20%のシェアが必要になっていきます。旭川で起きていることは、遠くない将来に全国の地方市場で起きることだと考えるべきです。

※市場規模とシェアの数字は動画内の解説に基づく概算です。

圧倒的1番をつくる売り方

全営業が同じキャッチコピーを言える

「自社の商品のキャッチコピーは何?」と営業に聞いたとき、全員が同じ言葉で答えられるでしょうか。同社では、全営業が「超高性能なのに低価格な家」という言葉を合言葉のように言えるようにしています。言葉がそろっているからこそ、お客様に「なぜコストパフォーマンスが良いのか」を一貫して伝えられます。

苦戦の理由を分析し、訴求を足す

同社は前年度、企画住宅しか訴求できていなかったことが苦戦の一因でした。自由設計やデザインを前面に出すメーカーへの対策が打てていなかったのです。さらに近年は、競合から「企画住宅だから選べない」「後で後悔する」と指摘されるケースも増えていました。

そこで、自由設計にも対応できること、そしてなぜ自由設計もやっているのかという背景を、本社の体感施設で語れるようにしました。あわせて、企画住宅でも選べる仕様をすべて展示した仕様決めの空間を本社に設けています。競合の指摘を実物で打ち消せるうえ、初回の来場時に一緒に見て回ることで、奥様の気持ちを高める場にもなっています。

体感施設は「競合と自社商品」で比較対象を決める

本社の体感施設では、北海道の冬を想定した冷えた空間で、一般的な断熱グレードの住宅と同社の住宅の暖かさの違いを体感できます。ここで重要なのは、何と何を比べるかを、自社が売りたい商品と想定する競合によって決めることです。

建材メーカーのショールームのように、古い基準から最新の基準までを並べるのが正解とは限りません。施設の大きさ、自社商品の強み、競合相手によって比較の組み合わせは変わり、営業トークのシナリオも会社ごとにまったく違います。「売り方」と「売り物」をセットで設計することが、体感型セールスの肝です。

地域1番をつくる売り方の3つのポイント:全営業が同じキャッチコピーを言える、苦戦の理由を分析して訴求を足す、体感施設は競合と自社商品で比較対象を決める

泊まれるモデルハウスと、社名を出さない分譲地

本社前にあったモデルハウスは、体験宿泊ができる施設にリニューアルしました。実際に泊まってみれば、性能とコストパフォーマンスの良さが実感として伝わります。看板でしっかり見せることも含め、プロモーションの一部として設計されています。

また、分譲地に2〜3棟の建売住宅を建てたエリアは、あえて社名を出さず、子育て世帯向けの名前を付けて打ち出しています。注文住宅と分譲住宅でそれぞれ別の顔を持ち、お客様の層ごとにシェアを取りにいく発想です。なお分譲は、売りすぎると翌年の在庫が枯渇して棟数が落ちるため、仕入れとのバランスも欠かせません。

人が育ち、続ける仕組み

シェアを取り切るには、売り方だけでなく、それを実行し続ける人と組織が必要です。同社では次のような仕組みを整えています。

  • トップセールスの表彰:年間22棟以上を販売した営業だけが金色のバッジを付けられる。社長や副社長でも基準に届いていなければ銀色。将来トップセールスが役員になったとき、尊敬される証になるよう設計している
  • 入社前から3年目までの研修:営業の実務ではなく、社会人としてのマインドや目標設定を学ぶ。1年目の最終回は、銀行やメーカーも招いたプレゼンで締めくくる
  • 経営理念の言語化:ミッション・ビジョン・バリューに行動指針を加え、会社や採用の説明会で一貫して語る

社長は、他社の良い取り組みを素直に取り入れ、やらせるときは徹底的に管理すると語ります。やってみて合わないものはやめればよい。いいものはまず試すというカルチャーがあるからこそ、社員も前向きに受け入れてくれるといいます。

新築・中古・リフォームの3分野で1番になる

同社の強さの核心は、新築だけでなく、中古住宅とリフォームでも地域1番を取っていることです。旭川の本社1階はリフォームのショールームになっており、水回りや設備の入れ替え、外壁塗装に加え、LDKなどの増築で空間を広げる提案に力を入れています。本社から歩いてすぐの場所には、別ブランドの中古住宅×リノベーションの店舗も構えています。

中古住宅×リノベーションの市場が広がっている

土地と建物の価格が上がり、新築の単価は大きく上昇しています。さらに金利の上昇で住宅ローンの審査も厳しくなり、新築を買えない一次取得者の受け皿として、中古住宅のリノベーションやリフォーム済み中古住宅の再販の市場が広がっています。

項目当社代表の解説による目安
販売価格新築ローコスト分譲住宅の
7〜8割程度
成立しやすい商圏人口30万〜50万人程度、
土地の坪単価30万〜50万円程度
(坪単価が高いほど差が出やすい)
主な顧客新築が予算的に難しい
一次取得者

新築会社にとっては、水回り専門店や増改築など二次取得者向けのリフォームよりも、新築と同じ一次取得者に営業する中古住宅×リノベーションの方が、ビジネスモデルとして取り組みやすいのが特徴です。

縮小市場での多角化の考え方:まず新築で地域1番を目指し、新築と同じ一次取得者に向けた中古住宅×リノベーションやリフォームの店舗化で事業の柱を加える

多角化の前提は「既存事業で伸ばせていること」

ただし、当社は多角化を無条件に勧めているわけではありません。既存事業で伸ばせていない会社が、新しい事業でうまくいくことは難しいからです。まず新築で地域1番を目指し、その強みと相性の良い事業を1本加える。これが基本の考え方です。

  • 注文住宅が強い会社:新築と同じ顧客層に向けた中古住宅×リノベーション
  • 不動産・建売が強い会社:中古住宅の買取再販、またはリノベーションとの組み合わせ
  • OB顧客が多い会社:増築を含むリフォーム事業の店舗化

地方では、地域1番のリフォーム会社でも年間売上5億円程度というケースが少なくありません。リフォームで10億円規模を目指すなら、店舗化して展開することが重要になります。どの事業が最適かは、商圏の競合関係、土地の坪単価、物価上昇の度合いによって変わります。

よくある質問

Q. 縮小する地方市場で、どのくらいのシェアを目指すべきですか?

A. これまでは地域でシェア10%を取れば1番と言われてきましたが、市場が縮むほど上位企業への集中が進みます。旭川のカワムラホーム様のように、15〜20%を目標に置く時代になりつつあります。

Q. 体感施設をつくるときのポイントは何ですか?

A. 何と何を比較するかを、自社が売りたい商品と想定する競合によって決めることです。施設だけでなく、営業トークのシナリオまでセットで設計しなければ、体感型セールスの効果は十分に出ません。

Q. 新築会社が多角化するなら、どの事業が向いていますか?

A. 新築と同じ一次取得者を対象にできる中古住宅×リノベーションは、比較的取り組みやすい事業です。ただし、既存事業で伸ばせていることが前提です。自社の強みや商圏の条件に合わせて選ぶことが大切です。

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