「モデルハウスに良い家具を置いているのに、なぜか高級感が出ない」
「お客様への提案で、デザインの話になると言葉に詰まってしまう」
性能やプランの説明は得意でも、インテリアや空間の見せ方になると自信がない。そんな住宅営業・設計担当の方は少なくありません。ピュアグロースでは、支援先の経営者様とともに、イタリア・ミラノで開催される世界最大級の家具見本市「ミラノサローネ」を視察しました。本記事では、大手ハウスメーカーで設計コンペ全国1位を獲得し、営業と設計の両方を経験した当社コンサルタントの解説をもとに、世界の最新トレンドと、同じ家具でも「高く見える空間」と「安っぽく見える空間」を分けるポイントを紹介します。モデルハウスやショールーム、お客様への提案でそのまま使える「デザインのプチトーク」としてもご活用ください。
日本では「ミラノサローネ」という名前が知られていますが、実際には見本市会場での展示と、ミラノの街中で開かれる「フオーリサローネ」を合わせた、世界的な家具とデザインの祭典です。「デザインの予言の場」とも言われ、いま売れている商品よりも、2〜3年後に流行する最先端のものが集まります。
会場全体を通して感じたのは、デザインの価値が「物の消費」から「空間の体験」へとさらに移っていることです。家具単体の良し悪しより、どんな空間でどう過ごすかが問われています。
今年の色の傾向として多かったのはブルー系統です。コロナ禍以降、自宅でどう過ごすかが重視されるようになり、落ち着きやリラックス感を与える色が求められています。一方でオレンジや黄色といった元気な色も多く見られました。共通していたのは、どの色もトーンを少し落とした「くすみ色」だったことです。たくさんの色を組み合わせてもゴテゴテせず、空間になじんでいました。メタリックや黒の光沢といった尖った素材より、アースカラーが中心です。
これまで主流だったモダンでかっこいいテイストから、ナチュラルな木の素材感を生かしたものが増えていました。木の素材にうまく色を入れ、モダンさを残しつつリラックス感を出す。この組み合わせが各社に共通していました。
高級キッチンメーカーの展示では、天板やコーナーにR(丸み)をつけたデザインが目立ちました。製作の難易度が高く、技術力のあるメーカーでないと実現が難しいものですが、柔らかい空間づくりのために求められている形です。国内メーカーも今後こうした商品を開発してくると考えられます。
これまで家具の脚は、細くシャープにするのが流れでした。今年はどの展示でも、しっかりと厚みのある、存在感のある脚が多く見られました。また、背景の壁に織物素材を貼ったり、天井から布を垂らして光を当てたりと、ファブリックの素材感を生かした空間づくりも一つのトレンドです。
独特の曲線をもつ照明や、触ると柔らかく形を変えられるペンダント照明など、照明器具には印象的なプロダクトが多くありました。シンプルな家でも、デザイン性の高い照明を1つ置くだけで「映える」空間になります。モデルハウスのリビングなど、コストを抑えて取り入れやすいポイントです。
なお、ある有名家具メーカーの展示では、商品イメージを伝えるアートをAIの画像生成で作っていました。絵心がなくても、イメージを伝えるビジュアルは作れる時代になっています。
今回の視察で最も学びが大きかったのは、ブースごとの見せ方の差です。大きなドーム状の会場に各社がブースを並べるなか、作り込まれたブースのすぐ横に、置いている家具は決して悪くないのに安っぽく見えるブースがありました。広い区画と大きな観葉植物を用意した資金力のありそうな会社でも、見せ方次第で高級感はまったく出ません。
差を生んでいたのは、大きく次の2つです。

ライティングがうまくなるコツを一言でいうと、「どう暗く見せるか」です。日本の住宅では、とにかく明るくするのが当たり前になっています。クレームを恐れて天井にダウンライトをたくさん付けると、空間は均一に明るくなり、その分だけ平板で安っぽい印象になります。
うまい会社の展示は、どこも天井際に影がありました。建築家の作品を紹介する雑誌の写真を思い浮かべてください。窓際は明るく、天井の方は暗く、ほどよい陰影がある。あの世界観です。同じキッチン、同じソファーでも、天井面まで明るく照らした展示と、天井を暗く落として商品だけを照らした展示では、「どちらが高そうか」と聞かれれば多くの人が後者を選ぶでしょう。

たとえば特殊な素材の家具なら、暗いダークトーンの空間に置き、家具の背後から照明を当てて逆光で影を見せるだけで、格段にかっこよく見えます。物の良さだけでなく、それをどう合わせ、どう空間をコーディネートするかが価値を決めるのです。プランや性能ももちろん大切ですが、照明によって空間の見え方は大きく変わります。
海外の展示会で気分が上がるのは当然ですが、大切なのはそれを自社のビジネスにどう落とし込むかです。住宅会社で「世界観」で勝負している会社はまだ多くありません。いまはお客様がSNSの写真を見て、ぱっと見で判断する時代です。性能の説明だけでなく、見せ方で価値を伝える力が差になります。
| 場面 | 取り入れ方 |
|---|---|
| モデルハウス | 天井を照らしすぎず、 見せたい所にだけ光を当てる |
| インテリア | デザイン性の高い照明を リビングに1つ置く |
| 色の提案 | トーンを落とした差し色を 1〜2色から取り入れる |
| 写真・パース | どこで切り取るかを決めてから 撮る・描く |
写真の撮り方も重要です。支援先の提案パースを見ると、切り取り方で損をしているケースが少なくありません。あえて広めに撮っておき、どこでトリミングするかを最初から決めて撮影する。良いデザイナーは例外なく写真が上手です。外注のカメラマンだけに頼らず、社内でもレベルの高い写真を撮れるようにしておくと、モデルハウスや施工事例、SNSの発信がすべて変わります。「この写真はなぜおしゃれに見えるのか」を言語化し、社内のルールにしていくことをおすすめします。
A. まずは照明です。天井まで均一に明るくするのではなく、見せたい家具や壁にだけ光を当て、天井際に影ができるようにすると、同じ家具でも高級感が大きく変わります。
A. ミラノサローネでは、トーンを落としたくすみ色やブルー系、ナチュラル寄りの木の素材感、丸みのあるラウンドデザイン、存在感のある家具の脚、ファブリック素材などが目立ちました。いずれも落ち着きやリラックス感を重視した傾向です。
A. 生活に必要な明るさは確保したうえで、天井面などを照らしすぎないことがポイントです。調光できる照明や間接照明を組み合わせれば、暮らしやすさと見栄えを両立できます。まずはモデルハウスやショールームで試してみるのがおすすめです。
ピュアグロースでは、大手ハウスメーカーで設計と営業の両方を経験したコンサルタントが、プラン提案やモデルハウスの見せ方、営業担当の提案力強化を支援しています。