「入社して何か月もたつのに、契約が取れない」
「店長が厳しく指導しても、部下の数字が伸びない」
住宅営業の世界では、最初からうまくいく人ばかりではありません。本記事で紹介するのは、異業種から一条工務店に転職し、入社から9か月間契約が取れなかったところから立て直し、のちに店長として年間28棟だった店舗を72棟まで伸ばした当社コンサルタントの経験です。売れない時期に何が足りなかったのか、どう抜け出したのか、そして部下全員の数字を引き上げた店舗マネジメントの考え方を、住宅会社の営業・店長の皆様向けに整理します。
前職は医療機器の営業で、社内でも上位の成績を残していました。商品説明には慣れていたため、入社後のロープレテストも一度で合格し、デビュー直後に仮契約も取れました。周囲からも「すぐ売れる」と言われ、本人も手応えを感じていたといいます。ところが、そこから土地が決まらず、本契約に至らないまま時間だけが過ぎていきました。
振り返ると、原因ははっきりしていました。自分の都合しか考えていなかったことです。お客様がどんな背景で家づくりを始めたのか、今何を考え、どんな要望を持っているのか。そして家づくりの経験がないお客様の知識レベルはどのくらいか。こうしたことを把握しないまま、お客様が言うことをそのまま叶えようとする「御用聞き」になっていたのです。

契約の期限が迫るなか、あるご夫婦の土地が一度決まったものの、数日後に「やめます」と白紙になりました。ヒアリングも提案もできていたつもりでしたが、奥様が「通勤が少し遠い」と感じていた気持ちを拾えていなかったのです。
仕切り直しの案内には奥様のお母様も同席されることになり、「反対されて終わるかもしれない」と覚悟したうえで、できる準備をすべてして当日を迎えました。新しい土地にご主人は納得し、奥様が迷い始めたとき、お母様が「悪いところばかり見ずに、良いところに目を向けなさい」と背中を押してくれ、契約に至りました。
このとき学んだのは、必要なときには、お客様に言うべきことをきちんと言うこと。そして、お客様にとってのお母様のように信頼される存在になれば、決まらないことはないということです。
もう一件の仮契約のお客様は資金力のある方でしたが、顧問の税理士から予算の上限を決められており、その範囲では希望エリアの土地が見つかりませんでした。最終的には、お客様自身が見つけた好立地の物件で予算を見直して決まりましたが、「もっと早く、予算を上げればこういう選択肢がある、と提案できていれば」という反省が残りました。
ここから、最初に希望予算を聞いて提案を縛らない、という資金ヒアリングのスタイルが生まれました。考え方の詳細は住宅営業はお客様の予算を聞くな|競合しにくい資金ヒアリングと家づくりの進め方で解説しています。
一度売れ始めると、翌年には年間2桁の契約を取り、その後も2桁を割ることはなかったといいます。それを支えたのは、「売れなくなるのが怖い」という気持ちから続けた地道な習慣です。
ロープレは誰かと組まなければできない、と考える営業は多いものですが、取れなかった商談の振り返りは1人でもできます。コンサルタントになった今も、住宅営業を続けていたら同じように練習を続けると話しています。
店長として任されたのは、地域で最も売れていない店舗でした。営業は9人で、年間28棟。それが1年後には、同じ9人のまま年間72棟になり、店長自身も個人で18棟を契約しました。特定のトップ営業だけが伸びたのではなく、契約ゼロだった営業が5棟に、3棟だった営業が9棟になるなど、全員の数字が上がったのが特徴です。
※棟数は動画内で本人が語った実績です。
原点は、入社時の店長の姿でした。非常に優秀で、同時にとても厳しい店長で、多くのメンバーが萎縮して「聞きたいことを聞けない」状態でした。ところがその店長が退職を前に「これからは数字を持たず、全面的にサポートに回る」と宣言すると、怖さがなくなり、メンバーが質問できるようになって成績がぐっと上がったのです。
この経験から、萎縮するほど厳しくすると成績は上がらないと学び、自分が店長になったら部下が主体的に動ける環境をつくると決めていました。

部下に繰り返し伝えたのは、お客様第一という考え方です。お客様を幸せにするには、どんなきっかけで家づくりを始め、どんな知識レベルで、何を思っているのかを理解しなければなりません。お客様以上にお客様のことを把握できれば、必ず契約できる。自分が売れなかった時期の反省そのものを、部下の行動基準にしたのです。
一条工務店では、初回接客の後にお客様を工場見学へ案内します。部下のお客様と同じ日に工場へ行くときは、店長が全体の案内を引き受けました。部下は売れる案内を目の前で見て学べ、お客様の店長への信頼も高まります。結果として、部下を育てながら自分の契約も取りやすくなり、効率はむしろ上がったといいます。
売れない時期の原因は、能力不足よりも「自分の都合で動き、お客様を理解しきれていない」ことにある場合が少なくありません。お客様の背景と知識レベルを把握し、必要なことはきちんと伝える。取れなかった商談を1人でも振り返り、売れている人と答え合わせをする。店長になったら、部下を萎縮させず、主体的に動ける環境をつくる。この積み重ねが、個人と店舗の数字を変えていきます。
A. お客様が家づくりを始めた背景、今考えていること、家づくりの知識レベルを把握できているかを見直してください。お客様の言うことをそのまま叶えようとする「御用聞き」になっていないかを確認するのが第一歩です。
A. アポが取れなかった商談を思い出し、「あのときこう返していれば」と別の返し方を1人で声に出して練習する方法があります。移動中の車内などでも取り組めます。あわせて、売れている先輩や店長に自分のやり方を確認してもらうと効果的です。
A. 指導が厳しすぎて、部下が萎縮し、聞きたいことを聞けなくなっている可能性があります。部下が気軽に質問できる関係をつくり、店長自身が商談や案内の手本を見せることで、店舗全体の数字が上がりやすくなります。
ピュアグロースでは、大手ハウスメーカーで店長・トップ営業を経験したコンサルタントが、住宅会社・工務店の営業育成や店舗マネジメントを実務に寄り添って支援しています。営業組織の課題を感じている方は、お気軽にご相談ください。