「施工事例を並べると、担当者ごとにデザインがバラバラで会社らしさが出ない」
「性能では差別化しにくくなったが、デザインを組織として強くする方法が分からない」
住宅の性能が横並びになりつつある今、デザインは大きな差別化のポイントです。住友林業で家を建てると、どの設計担当者が描いても「住友林業らしい」おしゃれな家に仕上がります。本記事では、住友林業で設計のデザイン部門・業績部門の両方で全国1位を獲得し、その後営業職でも実績を残した当社コンサルタントの解説をもとに、住友林業のデザイン性を支える仕組みと、工務店が自社のデザインを組織として高める方法を紹介します。
住友林業のデザイン性を支えているのは、大きく分けて育成力、設計力、商品力の3つです。設計力や構造を含めた商品力ももちろん大切ですが、最も重要なのは1つ目の育成力です。
住友林業には優秀な人材が多く入社しますが、入社時の能力はあまり関係ありません。入社後に、ブランドを支えるデザイン力を社内でしっかり身につけさせているのです。その育成力は、さらに次の3つに分けられます。

多くの会社が「こういう家をつくりたい」と思っていても、スタッフがつくった物件を並べるとバラバラになってしまいます。住友林業は、デザインの定義が現場のスタッフにまで分かりやすく落とし込まれています。代表的なのが次の3つです。
これらは大きな方向性で、実際には玄関ドアの上に不要な下がり壁がないかなど、細かなチェックポイントが30項目以上あるといいます。「これを押さえれば住友林業の建物になる」というところまで言語化されていることが強みです。
デザインコードは、決めてしまえばつくること自体は難しくありません。本当に大切なのは、それを定着させる仕組みです。工務店にぜひ真似してほしいのが、この部分です。
たとえば、会社が「これからは植栽を含めて外観を提案する」と決めると、3か月に1回行われる外観評価にその項目が反映されます。完成した実物件の写真を提出し、5点満点で評価される仕組みで、どんなにかっこいい建物でも、植栽がなければ高い点がつかないのです。
この評価は、設計担当者の昇格や賞与にも反映されます。デザインが分からない人が管理職になることはありません。会社が決めたことを実物件に反映しなければ評価されないため、方針が現場の隅々まで行き渡ります。
住友林業でも、「メンテナンスが嫌なので植栽はいらない」というお客様は少なくありません。それでも設計と営業は、植栽によって建物がどれだけきれいに見え、資産価値にもつながるかを丁寧に説明し、せめてシンボルツリーだけは植えましょうと提案を重ねます。
「予算が足りないので外構に回せない」という声もあるでしょう。しかし発想は逆です。植栽は1本数万円程度から取り入れられます。シンプルでコストを抑えた建物ほど、植栽のあるなしで見え方が大きく変わります。予算が厳しいときこそ、植栽を提案すべきなのです。なお、植栽を引き立てるには、その背景となる壁がきれいであることも必要で、こうした点もデザインコードにつながっています。
契約数や売上は数字で評価されますが、デザインの良し悪しは評価しにくいものです。評価されなければ、モチベーションは続きません。目の前の物件を回すのに精一杯で、デザインは二の次になってしまいます。
住友林業では、年に1回、社内のデザインコンペが開催されます。全国の設計担当者が自分の物件を応募し、選考を経て、最終的には大勢の前でプレゼンテーションを行います。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 応募 | 図面とコンセプトをまとめた 大判ボード3枚を提出 |
| 書類選考 | 熱意の感じられない物件は この時点で外れる |
| 社員投票 | 上層部だけでなく スタッフ全員が投票できる |
| 審査 | 設計の責任者クラスと 社外の建築家が審査 |
| 最終発表 | 約10作品が大勢の前でプレゼン 上位は海外視察へ |
1位を取れなくても、社内で発表され「頑張っているね」と言われること自体が一つの評価になります。受賞すれば、海外の著名な建築の視察に行けるご褒美もあり、設計担当者は毎年それをモチベーションにしています。お客様と感覚が合うと感じた物件では「この家はコンペに出そう」と心に決め、手間を惜しまずやり切る。応募の準備は大変ですが、毎年続けるうちに楽しくなり、強制的に場を設けることで、社内で自然に育成が回り始めるのです。
※コンペや評価制度の内容は、解説したコンサルタントの在籍当時の経験に基づくものです。
3つのうち、デザインコンペは比較的すぐに始められます。難しいのは、デザインコードをつくって制度に落とし込むことです。何が正解ということはありませんが、会社としての正解は決めなければなりません。

ホームページの外観写真を見て「どこの会社らしい」と分かるなら、会社としてのデザインコードはできています。しかし、OB邸の完成物件と並べるとリンクしていない会社は、デザインコードが定着していない状態です。物件を全部見てもどれがどの会社か分からないなら、そもそもの方向性が定まっていません。支援の現場で見ても、定着まで実現できている会社はごく少数です。
今は、軒のない箱型の外観をかっこいいと感じるお客様も多くいます。一方で、深い軒があり陰影のある建物のほうが高級感は出ます。最近は大手ハウスメーカーでも、軒のない建物の一部に大きく軒を出すなど、トレンドを取り入れる動きが見られます。軸となるデザインは変えずに、細部は市場を見ながら更新していくことが大切です。
A. 会社らしいデザインをつくるためのルールです。軒の出の寸法、水平・垂直のラインの見せ方、植栽の提案など、誰が設計しても会社らしい建物になるように、寸法やチェックポイントまで言語化したものを指します。
A. 評価の仕組みに組み込むことが効果的です。完成物件を定期的に評価し、方針を反映した項目を入れ、昇格や賞与にもつなげます。あわせて、社内コンペなどデザインが認められる場を設けると、モチベーションが続きます。
A. はい。植栽は1本数万円程度から取り入れられ、シンプルな建物ほど見え方が大きく変わります。コストを抑えた建物の価値を高める手段として、予算が厳しいときこそ提案する価値があります。
ピュアグロースでは、デザインコードの言語化から評価制度への落とし込み、設計担当者の育成まで支援しています。自社で進めるか外部の力を借りるか迷っている段階でも、お気軽にご相談ください。設計と営業の連携については「設計未経験の営業が3日で商談レベルに」もご覧ください。