「一条工務店と競合すると、性能の話で押し切られてしまう」
「お客様がInstagramで『一条ルール』を見てきたが、どう話せばいいか分からない」
多くの地域で、一条工務店は最も手ごわい競合の一つです。本記事では、一条工務店で営業や店長を経験した当社のコンサルタント3名の話をもとに、一条工務店の営業フローと集客の実態、営業側が「やられて嫌だったこと」、そして「一条ルール」をめぐる攻防から、工務店が取るべき競合対策を解説します。社員が自社を好きになる理念浸透の仕組みについてはなぜ一条工務店の社員は自社を愛するのかで解説していますので、本記事では「競合したときにどう戦うか」に絞ってお伝えします。
一条工務店があれだけ多くの営業担当者で多くの棟数を売れる理由は、売り方が型として決まっているからです。展示場で接客し、次はここへ案内し、その次はこう進める、という流れが全国共通で定められているため、経験の浅い営業担当者でも一定の成果を出せます。
その型の中心にあるのが、工場に併設された体感施設への案内です。床暖房や耐水害の体験など、施設ごとに内容は少しずつ違いますが、「この会社の規模でこういう家づくりをしているのか」と実感してもらう場です。
施設は全国に限られた数しかなく、店舗から片道1時間半〜2時間かかることも珍しくありません。それでも元営業担当者たちは「遠いからこそ、お客様の1日をもらえる。それで契約できるなら美味しい」と口をそろえます。初回接客で丸1日のアポイントが取れなければ、接客がうまくいっていないという感覚だったといいます。
一条工務店の集客数は実際に多いのですが、その中身は多くの工務店と違います。最近の住宅会社の多くは来場予約で集客していますが、一条工務店は来場予約が多いわけではありません。総合展示場を歩いている人を、とにかく自社の展示場に入れることを徹底しているのです。
名簿を取ることに強く特化しているからこそ、総合展示場の来場者が減っている今は、一条工務店にとっても危機感のある状況だといえます。

一条工務店は性能で差別化しています。そのため、お客様に「性能はどこもほぼ変わらない」と認識されると戦いにくくなり、契約率が下がるといいます。性能という土俵が同じになると、お客様は次にデザインや設備など別の土俵で比べ始めます。他社のキッチンを気に入られ、「あれもいい、これもいい」と比べられるのが一番嫌だった、という声もありました。
工務店側は、性能で一条工務店と同水準であることをきちんと示したうえで、デザインや設備、暮らしの提案で勝負する土俵をつくることが大切です。
東京で住友林業と競合することが多かった元営業担当者は、ある商談を例に挙げました。一条工務店側のプランではキッチン横の通路が1マス(約91cm)だったのに対し、競合は1.5マスで提案してきました。単に「広い方がいい」という話ではなく、「この時間帯にお子さんとすれ違うことが多いですよね。1マスだと狭くないですか。それが何十年も続くんですよ」と、夫婦の生活にまで落とし込んで説明されたのです。
その結果、お客様からは「一条工務店さんは私たちの生活を何も考えてくれていない」と受け取られてしまいました。型の営業はブレが少ない反面、お客様一人ひとりの暮らしに踏み込んだ提案には弱い面があります。ここが工務店の勝ち筋です。
お客様の間でよく話題になるのが「一条ルール」です。一条工務店の営業担当者は「そんなルールは存在しません」「性能を最優先しているからです」と答えることが多いようですが、元営業担当者によれば、設計上の制約は実際にあるといいます。よく挙がるのは、LDKなどで大空間を取ろうとすると垂れ壁や梁が出てくる、吹き抜けを大きく取れない、といった点です。
こうした制約によって「自分たちのやりたいことが叶わない」とお客様が感じると、一条工務店側は戦いにくくなります。工務店としては、相手を否定するのではなく、お客様が叶えたい暮らしを丁寧に聞き、それが実現できるプランを示すことで、自然と比較してもらうのが正攻法です。
Instagramで一条工務店に関するネガティブな投稿を見て来場するお客様もいます。それに対して、元営業担当者たちは次のように切り返していました。
ネガティブな情報をそのまま武器にしようとしても、こうして返されることを想定しておく必要があります。他社の悪い評判に頼るより、自社の提案の中身で選ばれる方が確実です。
一条工務店の営業フローは全国共通です。次に何を言われ、どこに連れて行かれるのかが分かっていれば、霧が晴れたように対策を考えやすくなります。体感施設へ行く前に、自社として比較のポイントをお客様に伝えておく、といった先回りが可能です。
元営業担当者によれば、一条工務店では営業担当者が個人でSNS発信をすることはできないといいます。営業担当者個人が発信できることは、工務店の強みになります。人柄や提案の考え方を事前に知ってもらえれば、「この人に相談したい」という指名につながります。
一条工務店には、社内表彰を受けるような上位約1%のトップセールスが各エリアにいます。トップセールスと、型どおりに売っている大多数の営業担当者とでは、手ごわさがまったく違います。大多数に対してはフローを踏まえた対策で十分戦えます。一方、エリアに強いトップセールスがいる場合は、個別に対策を考える必要があります。
新商品への対策は一条工務店の新商品「Naturia」をどう見るかもあわせてご覧ください。
A. 性能で同水準であることはきちんと示すべきですが、性能だけで勝負するのは得策ではありません。「性能はほぼ同じ」と認識してもらえれば、お客様はデザインや設備、プランなど別の観点で比べ始めます。そこで暮らしに踏み込んだ提案をすることが勝ち筋です。
A. 他社を否定する材料として使うのはおすすめしません。お客様が叶えたい空間や暮らしを丁寧に聞き、それを実現できるプランを示すことで、お客様自身に比較してもらうのが効果的です。
A. 体感施設への案内は営業フローの中心で、行けば契約に近づくと考えられています。行く前の段階で、自社として比較してほしいポイントや、暮らしの視点での検討材料を伝えておくことが大切です。相手の流れを知って先回りしましょう。
ピュアグロースには、一条工務店で営業・店長・育成を経験したコンサルタントが在籍しています。一条工務店との競合で苦戦している、エリアに強い営業がいて勝てない、という方はお気軽にご相談ください。