コスパ型ビルダーがインフレ期に失速する理由|タマホーム2025年5月期第3四半期に学ぶ転換点

2026.10.27 2026.10.27
コスパ型ビルダーがインフレ期に失速する理由|タマホーム2025年5月期第3四半期に学ぶ転換点 解説動画サムネイル

解説動画はこちら

「価格を上げたら、これまでのように売れなくなった」
「性能の高い新商品を出したのに、営業がうまく売れていない」

資材価格や人件費の上昇が続き、多くの住宅会社が値上げや商品の高付加価値化に踏み切っています。しかし、商品を変えても売り方が変わらなければ、受注はついてきません。その難しさを象徴しているのが、坪単価とコストパフォーマンスで全国に広がったタマホームです。本記事では、2025年6月に収録した動画をもとに、タマホームのビジネスモデルと2025年5月期第3四半期の決算から見えた失速の背景、そして地域の住宅会社が自社の転換に生かせるポイントを、当社代表の解説で整理します。

※本記事は2025年6月時点の情報に基づきます。その後の決算についてはタマホーム最新決算から読む注文住宅ビルダーの成長戦略で解説しています。

タマホームのビジネスモデル:坪単価とコスパで全国へ

タマホームは九州で生まれ、全国展開に成功した数少ないハウスメーカーです。その成長を支えたのは、次のようなビジネスモデルでした。

  • 「坪単価」で価格を分かりやすく打ち出した:坪単価という考え方を業界に広め、良質な家を適正価格で、という分かりやすい価値を示した
  • 自由設計・安定した品質・高めの設備グレード:安さだけでなく、コストパフォーマンスの高さが選ばれる理由だった
  • ロードサイドの大型店舗:総合住宅展示場が主流だった時代に、幹線道路沿いの大きな店舗に実物大の展示場を建てた。今では多くの会社が取り入れている形の先駆けだった
  • 営業を育てる仕組み:新卒採用が多く、間取りまで描ける営業が育つ。歩合を含む給与体系で、売れる営業を多く輩出してきた
  • 地域限定商品:全国一律ではなく、地域ごとに商品を合わせて売ってきた

近年のIR資料では、注文住宅に加えて分譲住宅、リフォーム、不動産を含めた複数の事業を柱として示しており、注文住宅だけの会社ではなくなりつつあります。

2025年5月期第3四半期の決算:引き渡しも売上も大きく減少

項目第3四半期(累計)の状況
引き渡し棟数3,281棟
(前年同期比 約30%減)
売上高約781億円
(前年同期比 約25%減)
主な要因受注状況の厳しさ、
工期の遅れなど
明るい材料分譲住宅の受注は
比較的堅調に推移

※2025年4月に発表された決算を、動画内で解説した内容に基づく概算です。正確な数値はタマホーム株式会社の公表資料をご確認ください。

受注が年間1万棟を超えていたのは、コロナ禍の住宅需要も重なった2019〜2021年ごろです。そこから2022年以降に減少が続き、引き渡し棟数は2年前と比べて半分近くまで落ち込んでいます。注目すべきは、市場全体の縮小よりも減り方が大きいことです。外部環境だけでは説明できない、会社の内側の要因があると考えられます。

失速の背景:商品は変えたが、売り方が変わりきっていない

注文住宅は労働集約型のビジネスです。受注は「拠点の数×営業の人数×1人あたりの受注」で決まり、そこに集客数や契約率が絡みます。動画の解説では、営業の人数と、1人あたりの受注の両方が減っていることが失速の大きな要因と見ています。

コスパ型の会社がインフレ期に直面する壁:これまでは坪単価とコスパで価格勝負、これからは性能体感と暮らしの価値で単価に見合う提案が必要

「デフレの勝者」の売り方が通用しにくくなった

タマホームは、坪単価で価格を押し出し、コストパフォーマンスで勝つことがとても上手な会社でした。ところが資材価格が上がり、単価を上げなければ利益が出ない環境になりました。GX(省エネ性能)に対応した商品など、単価の高い商品の提案も増えています。

このとき起きやすいのが、価格で勝つことに慣れた営業が、高くなった商品を売りにくくなるという問題です。売れなくなった営業が辞め、力のある営業が抜けると、それに続いて人が抜けていく。これは住宅業界でよくある流れであり、全国の拠点で同じことが起きると受注の減少は大きくなります。

規模が大きいほど、売り方の転換は難しい

コスパで売ってきた会社が付加価値型に転換するのは、どの会社でも簡単ではありません。営業が数百人から千人規模になると、一般の営業、営業所長、支店長、エリアの責任者と管理の階層も増え、本社の方針だけでは現場の売り方は変わりません。

一方で、タマホームには地域ごとに商品を合わせてきた文化があります。業績が良かった時期も、この地域限定商品を売り切れていた拠点は強かったといえます。支店・営業所単位でどこまで権限を持ち、地域に合わせた売り方を実行できるか。それが転換の成否を分ける局面に来ている、というのが当社代表の見立てです。

明るい材料は「注文グレードの分譲住宅」

そのなかで、比較的堅調なのが分譲住宅です。タマホームの分譲は34〜35坪程度と地方でも大きめで、スキップフロアのような注文住宅に近い仕様を備えたものもあります。一般的な建売より価格は少し高くても、コストパフォーマンスが良いと受け止められています。

注文住宅を検討していたお客様が「建売ですぐ住めるほうがいい」と考えるケースは、今とても増えています。安さで選ばれる分譲ではなく、大きさや仕様に価値を持たせた分譲は、注文住宅を手がける会社だからこそつくれる商品です。分譲の考え方は、地域の住宅会社にとっても参考になります。

今後の3つの論点と、地域の住宅会社への示唆

タマホームの今後の3つの論点:来場特典の競争と契約率、デフレ型営業からの脱却、採用した人材の育成

1. 来場特典の競争と、契約率の勝負

2025年6月時点で、タマホームは来場特典のQUOカードの金額を一時的に下げたあと、元に戻していました。来場単価が上がるなか、年間100棟を超える規模の会社で来場特典を出していない会社は少数派です。集客はある意味で資金力の勝負になっています。ただし、特典で来場数を集めても、契約率を高められなければ費用は回収できません。来場前にお客様の検討状況を確かめる0次接客で、本当に家づくりを考えているお客様に時間とコストを集中させることが大切です。

地域の住宅会社への示唆:年間30棟程度までの会社なら、来場特典に頼らない集客でも十分に戦えます。規模を拡大するなら、特典をどう使うかと同時に、来場後の契約率を上げる仕組みを先に整えましょう。

2. デフレ型の営業からの脱却

電卓をたたいて値段で勝負する売り方だけでは、単価の上がった商品は売れません。展示場で「この仕様はいかがですか」と設備を説明するだけでなく、断熱や気密などの性能を体感してもらい、暮らしがどう変わるかという価値を伝える売り方への転換が必要です。

地域の住宅会社への示唆:値上げや新商品の投入と同時に、営業の売り方と考え方を変える研修やロープレをセットで行いましょう。商品だけを変えても、営業の意識が「安さで勝つ」のままでは成果は出ません。

3. 採用で人を集めた後の育成

動画収録時点で、タマホームはリファラル採用や人材紹介会社の活用など、経験者の採用を全国で強化していました。人が足りない以上、採用強化は当然の打ち手です。ただし、採用した営業が新しい売り方で売れるようになるかどうかは、受け入れ後の育成次第です。

地域の住宅会社への示唆:採用の数だけを追うのではなく、入社後に自社の商品の価値を伝えられるようになるまでの育成の流れを用意しておきましょう。採用と育成はセットで考えることが、受注の安定につながります。

まとめ:商品を変えるなら、売り方と人も変える

タマホームは、坪単価という分かりやすい価値と大型店舗という新しい売り場で、住宅業界に大きな影響を与えてきた会社です。そのタマホームでさえ、インフレへの転換期には売り方の切り替えに苦労しています。これは決して他人事ではありません。

  1. 値上げや高付加価値商品の投入は、売り方の転換とセットで行う
  2. 営業の人数と1人あたりの受注の両方を見て、減少の原因をつかむ
  3. 拠点・営業所単位で、地域に合った売り方を実行できる権限を持たせる
  4. 分譲を手がけるなら、大きさや仕様で価値を出す
  5. 来場特典で集めるより先に、契約率を上げる仕組みを整える

よくある質問

Q. タマホームの業績が落ち込んだのはなぜですか?

A. 2025年6月時点の動画の解説では、営業の人数と1人あたりの受注がともに減っていることが大きな要因と見ています。資材高で単価を上げざるを得ないなか、コストパフォーマンスで売ってきた営業スタイルからの転換に時間がかかっていると考えられます。

Q. 値上げをしたら受注が落ちました。何から見直すべきですか?

A. まず営業の売り方です。価格の説明ではなく、性能の体感や暮らしの変化といった価値を伝えられているかを確認しましょう。商品の変更と同時に、研修やロープレで営業の考え方を切り替えることが大切です。

Q. 地域の工務店がタマホームと競合したときのポイントは?

A. 価格で真っ向から競うより、地域に合わせた提案や性能の体感、きめ細かな対応で価値を伝えることです。分譲でも、大きさや仕様で付加価値を出せば、注文住宅を検討しているお客様に選ばれる余地があります。

競合分析と営業の転換はピュアグロースへご相談ください

ピュアグロースでは、大手ハウスメーカー出身の実務家コンサルタントが、競合分析から商品・分譲戦略、付加価値を伝える営業への転換まで伴走します。タマホームの動向をまとめたレポートもご用意しています。

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