「初回商談の準備は、資料をそろえて終わりになっている」
「若手の準備にフィードバックしたいが、上司の時間が足りない」
来場予約が入ってから初回商談までの準備で、契約率には大きな差がつきます。本記事では、元アイ工務店の支店トップ営業で、現在は当社で営業支援を担当するコンサルタントが実演したAIを使った初回商談の準備の流れを紹介します。ポイントは、AIに情報を集めさせるだけでなく、AIと「壁打ち」をして提案の仮説を磨くことです。慣れれば5分ほどで終わる準備が、商談の質を大きく変えます。
※準備にかかる時間を短縮する考え方や、間取り・エリア分析の具体的な指示の出し方は「AIで商談準備を10分に|0次接客の情報から顧客の不満と提案を導く方法」で解説しています。
実演では、「来週土曜日に来場予約が入った」という場面から準備を始めます。使うのは、Googleの生成AI「Gemini」と、取り込んだ資料だけをもとに回答する「NotebookLM」、そして営業ノウハウを学習させたAIボットです。

予約フォームには、来場日時、人数、お名前、住所などが届きます。ここから、ネット上に公開されている情報の範囲で手がかりを探します。たとえば勤務先が分かれば、Geminiに「この会社はどんな会社か、業績や給与体系を教えて」と聞くと、会社の規模や事業内容、職種の傾向が出てきます。
実演の例では、技術系の会社にお勤めの方でした。そこから「数字に強い方だろうから、性能について必ず聞かれる」「土日休みなので打ち合わせは週末中心になる」「社員食堂があるようなので、昼休みの過ごし方がアイスブレイクの話題になりそう」といった仮説を立てていきます。AIが出すのは材料であり、仮説を立てるのは営業本人です。
なお、お客様のプライバシーが最優先です。調べるのは公開されている情報の範囲にとどめ、得た情報をむやみに口にしたり、外部に出したりしないこと。社内ルールや、利用するAIツールのデータの取り扱い設定も事前に確認してください。
住所からは、今の住まいの環境が分かります。賃貸物件の情報が公開されていれば、間取りや築年数、設備条件を確認できます。また、Geminiに住所を伝えて「このエリアの特徴を、生活環境の良い点・悪い点に分けて分析して」と依頼すると、交通の便や周辺環境を整理してくれます。高速モードより、じっくり考えるモードのほうが良い答えが返ってきやすいとのことです。
集めた情報は、お客様ごとにNotebookLMのノートブックを作って入れていきます。予約フォームの内容、勤務先の分析、今の住まいの情報、エリア分析などを、「予約フォーム」「会社情報」「現住居」「立地分析」のように名前を付けてソースとして追加します。最後に「お客様の情報をまとめて」と指示すれば、バラバラの情報を整理した顧客像が出てきます。
ここからが本番です。まとめた顧客情報をAIボットに渡し、初回商談の勝ちパターン・負けパターンを出してもらいます。そのうえで、自分が準備しようとしている内容をAIに伝え、フィードバックをもらいます。実演では、次のような準備案をAIに投げました。
AIからは厳しめのフィードバックが返ってきました。どれも、営業の上司や先輩が指摘するような内容です。

性能の数値を並べるだけでは、情報量の勝負になり、競合と横並びになります。「この数値だから何なのか」で終わってしまうのです。「帰宅して短時間で室温が安定する」「エアコン1台でこの範囲まで快適になる」「電気代が年間でこれくらい変わる」というように、数値を暮らしの変化に置き換えたトークを準備します。
ホテルライクの事例をそのまま見せても、画像共有サービスで見る写真と同じ扱いになってしまいます。実演のお客様は仕事中心の生活で、家で過ごすのは主に夜でした。そこで「昼はサブ、夜が主役の家」というストーリーで、照明計画を中心に提案を組み立てることにしました。
標準プランとデザインプランを並べると、比較されて安いほうを選ばれて終わりがちです。代わりに、ベースの案と理想の案を示し、照明・内装・外構にそれぞれいくらかかるかを見せたうえで「どこまでやりたいですか」と聞きます。値引きの交渉ではなく、こちらが主導権を持って家づくりの優先順位を一緒に決める相談にするのです。
AIからは「土地とプランのセット提案が足りない」という指摘もありました。営業が設計も担う会社なら、エリアの土地情報を集め、要望をもとにしたゾーニングと事例、資金計画までそろえた「たたき台」を初回に用意できます。どこまで用意するかは自社の商談フローに合わせて判断します。
壁打ちの結果もNotebookLMに入れ、最後に「初回商談で準備することリスト」「お客様に聞くことリスト」を出させます。実演では、次のような内容が出てきました。
| 準備すること | お客様に聞くこと |
|---|---|
| 暮らしのストーリーに 変換したコンセプト | 資金計画の 優先順位 |
| 設計の考え方で語る トーク | 提示した土地の評価と 絞り込み |
| 選ばせない 資金計画 | 仕事終わりの 夜の過ごし方 |
| 土地とプランの セット提案 | 今の住まいの 不満や課題 |
| 性能を将来の暮らしに 置き換えた説明 | ご実家との 関わり |
あとは、このリストに沿って資料をつくるだけです。商談後は、リストの内容を実行できたかを振り返り、次回の準備につなげます。説明しながらの実演では時間がかかりましたが、慣れれば作業自体は5分ほどで終わります。
実演で使ったAIボットは、当社のトップ営業出身コンサルタントのノウハウを学習させたものです。ただ、営業の進め方は会社ごとに違います。営業が設計を兼ねる会社もあれば、申し込み後にプランを出す会社もあります。そこでおすすめしているのが、自社のトップ営業や店長のノウハウを入れた「店長ボット」をつくることです。
つくる際は、トップ営業へのヒアリングを録音し、そのデータも入れると、より深いアドバイスができるボットになります。
支援先でこの方法を伝えると、多くの営業がNotebookLMへの情報の取り込みまではやってくれます。差がつくのは、集めた情報から「この人は何に困っているのか」と問いを立て、どこまで深掘りできるかです。売れている営業は自然にできている一方、若手は最初はほとんどできません。案件会議や営業研修と組み合わせて、問いを立てる力を一緒に鍛えていくことが大切です。
また、若手はAIに敏感でも、営業部長や経営者が必要性を感じていないために会社として取り組めないケースもあります。一方で、40代以上でも売れている営業ほど、AIを積極的に使いこなしています。初回商談の準備はAI活用のごく一部にすぎず、商談中の使い方、商談後の案件会議、契約後のお客様満足の高め方まで、AIと組み合わせられる場面は数多くあります。
A. 実演では、調べものや分析にGemini、情報の集約と整理にNotebookLM、提案へのフィードバックに営業ノウハウを学習させたAIボットを使っています。まずはGeminiとNotebookLMの2つから始めるのがおすすめです。
A. AIが出すのは材料と指摘です。お客様が何に困っているのかという問いを立て、仮説を組み立てるのは営業本人です。AIとの壁打ちで自分の考えの抜け漏れに気づけるため、むしろ考える力を鍛える練習になります。
A. お客様のプライバシーが最優先です。調べるのは公開されている情報や、予約フォーム・ヒアリングでいただいた情報の範囲にとどめ、外部に出さないことを徹底してください。AIツールのデータの取り扱い設定や社内ルールも事前に確認しましょう。
ピュアグロースでは、AIを使った商談準備の定着から、自社の営業ノウハウを入れたAIボットの作成、案件会議や営業研修まで、現場に入って一緒に取り組んでいます。お気軽にご相談ください。