「断熱材や塗料が入ってこなくなるかもしれない。今のうちに多めに発注しておくべきか」
「契約済みの物件の原価が、着工までにどこまで上がるのか読めない」
中東情勢の悪化によるナフサ(石油化学製品の原料)の供給不安は、樹脂系の建材を中心に住宅資材の価格と供給に大きな影響を与えました。本記事では、当社代表が2026年3月31日時点で緊急に解説した内容をもとに、資材の供給不足が起きたときに住宅会社が取るべき行動を、建材の供給・発注・契約の観点から整理します。資金繰りの対策は資材高騰・着工遅れに備える住宅会社の財務対策、価格への影響とコスト構造は大手と同じグレードの家をなぜ安く建てられるのかで解説しています。
※本記事の情勢・値上げ情報は2026年3月31日時点の解説に基づくものです。その後の状況は変わっている可能性があるため、最新の情報は取引先のメーカーや商社にご確認ください。本記事では、今後の資材ショックにも通じる考え方を中心にまとめています。
ナフサは原油から精製される石油化学製品の基礎原料です。日本はその多くを中東に依存しており、ホルムズ海峡の通行が滞ったことで調達が難しくなりました。アジア全体で原料の奪い合いが起き、化学メーカー各社が減産や値上げを相次いで発表しました。
解説時点で値上げの通知が先行していたのは、断熱材と、塗装・防水工事に欠かせないシンナー(塗料用の溶剤)です。断熱材では4割程度、シンナーではそれ以上の値上げを打ち出すメーカーもあり、出荷数量の制限も始まっていました(※2026年3月末時点の報道・メーカー発表に基づく)。省エネ基準への適合が義務化され断熱材の使用量が増えている中での値上げは、住宅会社にとって大きな負担です。
影響は断熱材と塗料にとどまりません。
| 分野 | 主な建材の例 |
|---|---|
| 管材・外装 | 雨どい・排水管、 樹脂サッシなど |
| 内装・床 | ビニルクロス、床材、 人工大理石など |
| 断熱・防水 | 断熱材、防水シート、 養生材など |
| 塗装 | 塗料、シンナーなど |
このように、ナフサ由来の製品は住宅資材のほぼ全域に及びます。一部の建材には一定期間の在庫があるとされていましたが、調達の奪い合いはすでに始まっている、というのが解説時点の見立てでした。また、住宅以外の大型建築でも、屋上防水や塗装ができず工事を切り離して完成させる、新規案件を受けられないといった声が出ていました。
資材の品薄は今回が初めてではありません。東日本大震災のときには断熱材が手に入らなくなり、ウッドショックやアイアンショックでも資材が高騰しました。こうしたときに繰り返し起きてきたのが、メーカーが前年度の取引量(棟数)をもとに出荷の優先順位を決めることです。
その結果、取引量の多い大手ハウスメーカーや大手ビルダーが先に資材を押さえ、地場の工務店には物が回ってこない、ということが起こります。資材が止まれば着工が止まり、入金も止まります。資材の問題は、そのままキャッシュフローの問題です。
資材が入らないと聞くと、焦ってあらゆる業者に問い合わせ、必要以上の量を発注したくなります。しかし、これはパニックバイイングと呼ばれ、需要を実態以上に膨らませて混乱を加速させます。東日本大震災のときもウッドショックのときも、こうした動きが資材価格をさらに押し上げました。
まずやるべきことは、焦って発注することではなく、状況を正確に把握し、整理することです。

資材の遅れは数か月後に工期の遅れ、入金のずれ込みとなって表れます。解説時点では、現預金を月商の1〜2か月分上乗せで確保し、金融機関の借入枠をすぐに確認することを勧めていました。具体的な手元資金の目安や金融機関との交渉手順は、財務対策の記事で詳しく解説しています。
購買担当や現場担当から、商社やメーカーへ直接、供給の見通しを確認しましょう。最終的には、すでに発注されている物件から優先して資材が割り当てられます。数か月先までの引き渡し予定と発注予定を早めに固め、仕入れ先に示しておくことが、地場の工務店が資材を確保するための現実的な手段です。
メーカーの値上げは、通常は数か月前に通知されます。しかし今回のように急な事態では、これから契約する物件の原価がどこまで上がるか分かりません。そこで、契約書に「不測の事態で資材価格が変動した場合は追加費用をいただく可能性がある」という特約を設け、お客様に事前に説明しておくことを勧めています。後からのトラブルを防ぐと同時に、会社の利益を守るための備えです。
「情勢が落ち着けば価格は戻るのか」という疑問もあります。メーカーが次に確保する原料は、すでに上がった価格で調達したものです。ウッドショックやアイアンショックでも、資材価格が元の水準に戻ることはほとんどありませんでした。解説時点では、坪単価で数万円程度の上昇を見込んで動くべきだとしていました(※動画内の見立てです)。
早く発注した物件ほど早く原価が確定します。家づくりを検討中のお客様には、価格と金利の見通しを正直に伝えたうえで、判断の材料を示すことが大切です。金利の上昇も重なるため、夫婦での借入れなども含めた資金計画の提案力がこれまで以上に問われます。
A. 必要以上の発注は避けましょう。多くの会社が一斉に多めに発注すると、需要が実態以上に膨らみ、品不足と価格高騰をさらに加速させます。まずは仕入れ先と供給の見通しを確認し、実際の引き渡し予定に基づいた発注計画を早めに固めることが大切です。
A. 資材不足のときは、取引量の多い会社やすでに発注されている物件が優先されやすくなります。数か月先までの発注予定を前倒しで固めて仕入れ先に示し、日頃から購買担当と商社・メーカーとの情報交換を密にしておくことが有効です。
A. これから結ぶ契約には、不測の事態で資材価格が変動した場合の追加費用について特約を設け、契約前にお客様へ説明しておきましょう。特約の内容は、専門家にも確認したうえで定めることをおすすめします。
ピュアグロースでは、資材高騰期の原価・仕入れの見直し、資金繰りの対策、販売価格の考え方まで、住宅会社の経営を支援しています。ナフサショックの事実関係と打ち手をまとめたレポートもご用意していますので、あわせてご活用ください。