「営業にもプランを描けるようになってほしいが、何から教えればいいか分からない」
「お客様の間取り変更の要望に、その場で答えられず持ち帰ってばかりいる」
営業が図面を描ける、あるいは図面を読んで判断できる会社は、提案のスピードも質も上がります。ただ、営業にいきなりプランの描き方を教えると、見た目は整っていても構造が成り立たない間取りが生まれ、お客様に迷惑をかけるおそれがあります。本記事では、元住友林業で設計と営業の両方を経験した当社コンサルタントが、営業の育成で最初に必ず教えている「構造」の基本を、間取りの具体例とともに解説します。柱のスパンのルール、床伏図の考え方、要望に応えながら構造を守る工夫、そして構造の次に学ぶべきことまで紹介します。
「営業にプランを描かせたい」という相談を受けたとき、当社コンサルタントがまず返すのは「構造を理解しましょう」という言葉です。図面を自分で描くかどうかは別としても、住宅のプロとして提案する以上、構造を理解したうえで話すことは必須だからです。
特に、耐震性などの性能の高さをお客様にアピールしている会社であれば、営業がその構造を分かっていないのは問題です。プラン研修でも、プランの描き方より先に構造の話から入ります。最初は戸惑う受講者も、実際に手を動かすと「なんとなくモヤモヤしていたことがすっきりした」と前向きな反応がほとんどだそうです。
木造住宅を扱う会社の多くは、「柱と柱の間隔(スパン)は、910mmのグリッドで4マス分=2間まで」といった社内ルールを決めています。ベテランの営業も「2間ですよね」と知識としては答えられます。しかし、実際の間取りを見せて「このプランはルールを守れていますか」と聞くと、答えに詰まる人が少なくありません。
たとえば、20畳のLDKに6畳の和室が隣接する、よくある間取りがあります。LDKの中ほど、昔でいう大黒柱の位置にしっかり柱が入っていれば、4マス分のスパンで組めます。標準的で経済的な設計です。
設計担当者は、こうした判断を「床伏図(ゆかぶせず)」で行っています。1階のLDKに立って天井を張る前の2階の床を見上げたとき、梁などの構造材がどう入っているかを描いた図面です。太い梁と細い材がどこに入るかが分かる図面で、これが描けないと、本当の意味でプランは描けません。

先ほどの間取りで、お客様から「6畳の和室を7.5畳にしたい」と要望があったとします。LDKの幅は変わらないまま和室を広げると、和室とLDKの間の梁を支える柱の間隔が5マス分に広がってしまうことがあります。この場合、その梁にはとても大きな構造材が必要になり、建物の重さも集中します。大きな地震の際には負担がかかりやすく、耐震性能の面で不利になるため、社内ルールでは避けるべき計画になります。
では、7.5畳の和室は諦めるしかないのかというと、そうではありません。和室との間に袖壁や柱を設けて、4マス分のスパンで支えられるようにする。こうすれば和室は7.5畳を確保しながら、構造的にも無理のない、耐震性能をきちんと保った家にできます。
こうした考え方が分かっていないと、お客様の要望に合わせて何気なく間取りを変え、性能を落としてしまうことになりかねません。
大手ハウスメーカーでは、営業が構造まで学ぶとは限りません。その代わり、社内で設計担当者などがすぐにチェックし、間違いがあれば指摘が入る体制が整っています。こうした管理体制がない会社では、営業自身が最低限の構造を理解しておく必要があります。
構造が分かっていることは、受注にも直結します。当社コンサルタントが営業設計として働いていた頃、お客様からよく言われたのが「その場でできる・できないを判断してくれるから話が早い」という言葉でした。要望を持ち帰って設計担当者に確認し、2〜3日後に回答する、というやりとりを繰り返すと、お客様は「テンポが遅い」と感じてしまいます。

構造を理解したうえで、営業が提案の質を高めるために学ぶべき内容は次のとおりです。当社のプラン研修では、1日7時間×3日間を目安に、受講者の理解度に合わせて配分を変えながら進めています。
| 学ぶこと | ポイント |
|---|---|
| なぜ営業が 設計を学ぶのか | 提案スピードや受注へのメリットを 理解し、動機づけをする |
| 建築の基礎知識 | 建蔽率・容積率を、実例のプランと 敷地で実際に計算できるようにする |
| プランの選び方 | プラン集から、敷地と要望に 一番合うものを選べるようにする |
| 敷地の解析 | 敷地の良い点・悪い点を言語化し、 そこからプランを考える |
| プランの伝え方 | 間取りではなく 「どんな暮らしになるか」を伝える |
| コストの理解 | 窓の種類や計画の違いで 金額がどう変わるかを知る |
建蔽率や容積率は、営業なら誰でも用語として知っています。しかし実際の敷地とプランを前に「この家は何平方メートルで、この敷地なら建蔽率は何%になるか」を計算できるかというと、意外と難しいものです。実例を使って、自分で計算するトレーニングが必要です。
世の中にはプラン集が数多く出回っていて、それ自体は効率的でデザインも良い、使える道具です。ただ、どの敷地にどのプランでもよいわけではありません。敷地の特徴とお客様の要望に照らして、最適なプランを選ぶ判断力があって初めて生きてきます。
研修で特に時間をかけるのが、プランの伝え方です。間取りの説明だけで終わってしまう営業は少なくありません。しかしお客様が買うのは、何十年も暮らす住まいです。「この間取りなら、朝はこう動けて、休日はここでこう過ごせる」と、生活のイメージが湧くように伝えることが大切です。土地がまだ決まっていないお客様には、土地を探す前に「こんな家ならこんな暮らし方ができる」と先に伝えるのも一つの方法です。
同じ大きさの間取りでも、計画によって金額は大きく変わります。窓1つとっても、引き違い窓と縦すべり出し窓では単価が違います。デザインや使い勝手の良し悪しとあわせて、コストも理解したうえで提案できるようにしておくと、お客様の予算に合わせた調整がしやすくなります。
営業設計やプランニングというと、プランを描くことだけに目が向きがちです。しかし、お客様に長く安心して住んでいただく家を売る以上、耐震性能を支える構造、使い勝手、コストまで含めて理解することが欠かせません。
プラン研修の全体像や、設計×営業の支援内容は設計未経験の営業が3日で商談レベルにで紹介しています。
A. 構造を理解しないまま描くのは危険です。だからこそ、最初に柱のスパンや床伏図など構造の基本を学ぶことが大切です。社内に設計担当者のチェック体制があれば、それと組み合わせることでさらに安心です。
A. お客様の間取り変更の要望に、その場で可否を答えられるようになります。持ち帰って数日後に回答するやりとりが減り、商談のテンポが良くなるため、お客様からの信頼と受注につながります。
A. 当社のプラン研修では、1日7時間×3日間を目安にしています。構造から敷地の解析、プランの伝え方まで集中して取り組めば、構造を理解したうえで適切なプランを提案できるスタートラインに立てます。その後は実践を重ねて力をつけていきます。
ピュアグロースでは、設計と営業の両方を経験した実務家コンサルタントが、構造の基本からプランの伝え方、コストの考え方まで、営業設計の育成を支援しています。内容の詳細はお気軽にお問い合わせください。