「売れる月と売れない月の波が大きく、毎月の目標が安定しない」
「忙しくなると、商談準備がどうしてもおろそかになる」
住宅営業の成果を安定させるには、才能やセンスよりも「数字の立て方」と「準備の量」が大きく影響します。本記事では、鹿児島・宮崎エリアで分譲住宅(建売住宅)を販売する国分ハウジング不動産のトップ営業の方をお招きした対談から、その売り方を解説します。
この方は新卒入社3年目で、直近1年間に分譲住宅を年間40棟販売。前年の21棟から大きく伸ばし、来場されたお客様の契約率は43%に達しました。現在は管理職として部下を持つプレイングマネージャーでもあります。成果を支えているのは、商談回数から逆算したKPIと、徹底した商談準備です。
年間40棟は、会社から与えられた目標ではありません。当時の社内には年間30棟を売った人もいませんでしたが、「会社が大きくなれば30棟を売る人は出てくる。40棟なら向こう5年は抜かれない」と考え、自分で40棟を掲げて1年間走り切りました。
売れる理由を聞くと、返ってきた答えは「圧倒的な物量」でした。新しいことを取り入れるのも大切だが、取り入れたことを長い期間やり続けられるかどうか。その中身は、数字で逆算した行動量と、毎日欠かさない準備の2つです。
年間40棟を達成するには、月に3棟以上の契約が必要です。多くの営業は来場数と契約率から逆算しますが、この方は商談回数からKPIを立てています。

「数字は裏切らない」という考えのもと、KGI(契約棟数)を達成するためにKPI(商談回数)を何としても死守することを最も大事にしています。数字に追われるのではなく、翌月も見据えて数字を追いかけているため、個人として厳しい月はなかったといいます。
管理職として部下を指導する際も同じです。部下ごとにKPIは変わりますが、「月に何件電話をかければ何件接触でき、そこから何件来場につながっているか。だから毎月この件数の電話をしてください」と、数字で行動を指示しています。
夜遅くにその日の商談が終わっても、翌日に商談があれば準備を欠かしたことはありません。売れるようになると準備の手を抜く営業は少なくありませんが、この方は一度も手を抜いたことがないといいます。理由は「準備をしていないと、お客様の前に立つのが怖いから」。予想外の質問に答えられない不安を払拭できるのが準備だからです。
「自分が思いつくものを120%準備しても、お客様にとっての100%ではない。営業の当たり前はお客様の当たり前ではない。120%準備して、ようやくお客様の50%くらいに応えられる」。この考え方が、準備の量を支えています。
初回の商談では、来場前の電話の段階で最低限「場所」「予算」「建物へのこだわり」の3つを聞きます。お客様の住まい探しがどこまで進んでいるかによって、その日どこまで話を進めるかを逆算して準備します。
| お客様の状況 | 準備する資料 |
|---|---|
| 建物にこだわりがあり エリアは未定 | さまざまなエリア・間取りの 分譲住宅の資料 |
| エリアが決まっている | そのエリアの分譲住宅に加え、 土地情報まで用意 |
| 予算に不安がある | ローン期間全体(例:40年=480か月)の キャッシュフロー表 |
| 将来に不安がある | 将来売却する場合の 想定シート |
分譲住宅の営業でありながら土地情報まで準備するのは、お客様に合ったものを買っていただくのが一番だと考えているからです。お客様が注文住宅を選ぶなら注文住宅の営業を紹介します。そのうえで「デザインの自由度なら注文住宅、予算を抑えるなら分譲住宅」と、それぞれの良い点・悪い点を丁寧に説明し、お客様に選んでいただきます。
この方のこだわりは、商談の中身だけにとどまりません。お客様がそこまで見ているかは分からなくても、1%でも契約率が上がる可能性があるならやる。その積み重ねが成果につながると考えています。

成果が出る前の新人時代には、時間外にポスティングをしたり、物件の前で車を止めてくださったお客様に声をかけたりと、泥臭い行動も重ねてきました。
意外なのは、年間40棟を売った年のほうが、初回接客で決まる割合が下がったことです。21棟だった前年は初回で決まる割合が5割ほどありましたが、40棟の年は2〜3割ほどでした。
以前は1回で決めることを急ぎ、申し込みをいただいたお客様へのフォローが手薄になったり、すぐ次のお客様の商談に移ったりしていました。40棟の年は、「このお客様とは何回目の商談でここまで話を進める」と逆算して商談を組み立てたことで、結果的に契約数が伸びました。数字に追われていた年と、数字を追いかけた年の違いです。
40棟のうち約7割は、建物が完成する前の段階で販売しています。お客様は最初、インターネットに掲載されている物件だけを見て判断しがちです。しかし、完成前の物件はまだネットに出ていないものも多くあります。表に出ている物件だけでなく、まだ公開前の物件も含めて提案することが、お客様にとって選択肢を広げることになります。
分譲住宅の売り方やお客様の本音を引き出す接客については、値引きせずに売れる分譲営業の極意|年間粗利1.7億円を生む「本音営業」と0次接客もあわせてご覧ください。
年間40棟・契約率43%という成果の裏にあるのは、特別なトークではなく、商談回数から逆算したKPIを毎月守り切ることと、お客様ごとに資料を作り込む準備の量でした。売れ始めても準備の手を抜かず、1%の可能性にこだわり続ける。その姿勢は、管理職として部下を指導する際にも数字と行動の形で受け継がれています。
A. 過去の実績から「1件の契約に何回の商談が必要か」を出し、目標棟数を掛け合わせて月の商談回数を決める方法があります。たとえば1契約に5.6回の商談が必要なら、月3棟には月17回の商談が目安になります。
A. 事前の電話で場所・予算・建物へのこだわりを聞き、その日どこまで話を進めるかを逆算します。お客様の状況に応じて、複数エリアの物件資料、土地情報、長期のキャッシュフロー表、将来売却の想定シートなどを用意します。
A. 1回で決めることを急ぐより、お客様ごとに「何回目の商談でどこまで進めるか」を設計するほうが、結果的に契約数が伸びるケースがあります。紹介したトップ営業も、初回で決まる割合は下がった一方で、年間の契約棟数はほぼ倍増しました。
ピュアグロースでは、大手ハウスメーカー出身の実務家コンサルタントが、KPIの設計から商談準備、案件ごとの打ち手まで、営業組織の成果づくりに伴走しています。